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ユニタリーゲージにおけるラグランジアン密度

第 13章

19.1 ユニタリーゲージにおけるラグランジアン密度

第 19 章 電弱標準理論

19.1節 ユニタリーゲージにおけるLagrangian密度

系は光子,荷電レプトン,中性レプトン,W±ボゾン,Z0ボゾン,Higgsボゾンから成る

19.2節 (電弱理論に対する)Feynman規則

応用例 (最低次の計算)

19.3節 ニュートリノ-電子弾性散乱 19.4節 電子-陽電子消滅の電弱過程

19.5節 Higgsボゾン(の存在について)

Lagrangian密度Lの物理的な意味を解釈するために,ゲージ場Wiµ, BµW±ボゾン場Wµ, WµZ0 ボゾン場Zµ,電磁場Aµによって表す.さらに非現実的な場ηiを理論から取り除くためにユニタリーゲージ を採用し,Higgs場を

Φ(x) = 1

2 ( 0

v+σ(x) )

と表す.するとLagrangian密度は L=L0+LI,

L0= ¯ψl(i/∂−mll+ ¯ψνl(i/∂−mνlνl 荷電レプトン(質量ml),ニュートリノ(質量mνl)

1

4FµνFµν 光子

1

2FW µν FWµν+mW2WµWµ W±ボゾン(質量mW)

1

4ZµνZµν+1

2mZ2ZµZµ Z0ボゾン(質量mZ) +1

2(∂µσ)(∂µσ)−1

2mH2σ2, Higgsスカラーボゾン(質量mH) LI=LLBI +LBBI +LHHI +LHBI +LHLI

と書き換えられる.ただし各ボゾンと各レプトンの質量は mW =1

2vg, mZ= mW cosθW

, mH=√

2, ml=vgl

2, mνl=vgνl

2

である.自由場項L0の表式を見ると,系は光子,荷電レプトン,中性レプトン,W±ボゾン,Z0ボゾン,

Higgsボゾンから成ることが明白である[目論見通り].ボゾンの質量項はSU(2)×U(1)ゲージ不変性の自発

的な破れを生じるHiggs場のLagrangian密度LHに由来しており[本稿における導出(式(6))参照],またレ プトンの質量項はレプトンとHiggs場の相互作用項LLHに由来している[本稿における導出(式(8))参照].

なお各相互作用項は以下で与えられる.

LBBI =igcosθW[(WµWν−WνWµ)∂µZν+ (∂µWν−∂νWµ)WµZν(∂µWν−∂νWµ)WνZµ] +ie[(WµWν−WνWµ)∂µZν+ (∂µWν−∂νWµ)WµZν(∂µWν−∂νWµ)WνZµ] +g2cos2θW(WµWνZµZν−WµWµZνZν)

+e2(WµWνAµAν−WµWµAνAν)

+egcosθW{WµWν(ZµAν+AµZν)2WµWµAνZν} +1

2g2WµWν(WµWν−WµWν), LHHI =−λvσ31

4λσ4, LHBI =1

2vg2WµWµσ+1

4g2WµWµσ2+ vg2

4 cos2θWZµZµσ+ g2

8 cos2θWZµZµσ2, LLBI =eψ¯l/ l

g 2

2¯νlW/(1−γ5l+ ¯ψlW/(1−γ5νl}

g

4 cosθW

ψ¯νlZ/(1−γ5νl

+ g 4 cosθW

ψ¯lZ(1/ 4 sin2θW−γ5l, LHLI =1

vmlψ¯lψlσ−1

vmνlψ¯νlψνlσ.LLHとの混同に注意]

以上により

W±, Z0ボゾンの質量は,

実験的に値の知られている微細構造定数α,Fermi結合定数G,弱混合角θWを用いて mW =

( απ G√ 2

)1/2

1 sinθW

= 77.5GeV, mZ = ( απ

G√ 2

)1/2

2 sin 2θW

= 88.4GeV と表される(輻射補正・繰り込みを無視した場合).

理論に含まれるパラメーターは

g, g, v, λ, gl, gνl の6つであり[−µ2=λv2λvから決定される],

v

v= 1

(G/ 2)1/2 と表されるので,その値を実験的に知ることができる.

結合g, g

gsinθW=gcosθW =e の関係を用いて値を実験的に知ることができる.

結合gl, gνlの値は,質量ml, mνlの実験的な値と ml= vgl

2, mνl= vgνl

2 の関係を用いて知ることができる.

λの値は決まっておらず,Higgsボゾンの質量mHが分かれば,

mH=√

2= 2λv2 の関係から値を知ることができる.

19.1 について

LB+LHの式(19.2)について まず式(17.43):

W= 1

2(Wµ+Wµ), W= i

2(Wµ−Wµ) および式(17.45):

W= cosθWZµ+ sinθWAµ を用いて,ゲージボゾンのLagrangian密度(17.58b):

LB =LB0 +ijkWWµWkν1

4g2εijkεilmWjµWkνWW

を書き換えよう.右辺第2項は ijkWWµWkν

=g(WW−WW)∂µW3ν+g(WW−WW)∂µW1ν+g(WW−WW)∂µW2ν

=g(WW−WW)∂µW3ν+g(WµW1ν−WµW2ν)W+g(WµW2ν−WµW1ν)W

=g{i(WµWν−WµWν)}(cosθWµZν+ sinθWµAν) +g{i(WµµWν−WµµWν)}(cosθWZν+ sinθWAν) +g{−i(WνµWν−WνµWν)}(cosθWZµ+ sinθWAµ)

=igcosθW[(WµWν−WνWµ)∂µZν+ (∂µWν−∂νWµ)WµZν(∂µWν−∂νWµ)WνZµ] +ie[(WµWν−WνWµ)∂µZν+ (∂µWν−∂νWµ)WµZν(∂µWν−∂νWµ)WνZµ] (∵gsinθW=e: (17.47))

と変形でき,右辺第3項は

1

4g2εijkεilmWjµWkνWW

=1

4g2jlδkm−δjmδkl)WjµWkνWW

=1

4g2WjµWkν(WW−WW)

=1

4g2(W1µW2ν−W2µW1ν)(WW−WW)

1

4g2(W2µW3ν−W3µW2ν)(WW−WW)

1

4g2(W3µW1ν−W1µW3ν)(WW−WW)

(ajk,µν≡WW−WWは添字j, kについて反対称なので,

W1µW2νa12,µν+W2µW1νa21,µν= (W1µW2ν−W2µW1ν)a12,µν,etc.)

=1

4g2(W1µW2ν−W2µW1ν)(WW−WW)

1

4g2·2W3νW(W1µW+W2µW)

1

4g2·(2W3µW)(W1νW+W2νW)

=1

4g2{i(WµWν−WµWν)}{i(WµWν−WµWν)}

1

4g2{2(cos2θWZνZν+ 2 sinθWcosθWZνAν+ sin2θWAνAν)}2WµWµ

1

4g2{−2(cos2θWZµZν+ 2 sinθWcosθWZµAν+ sin2θWAµAν)}(WνWµ+WνWµ)

=1

2g2WµWν(WµWν−WµWν)

+g2cos2θW(WµWνZµZν−WµWµZνZν) +e2(WµWνAµAν−WµWµAνAν)

+egcosθW{WµWν(ZµAν+AµZν)2WµWµAνZν} (∵gsinθW=e: (17.47))

と計算できるので,ゲージボゾンの自己相互作用に関する項LBBI を式(19.3a)で定義すれば ijkWWµWkν1

4g2εijkεilmWjµWkνWW =LBBI ,

LB=LB0 +LBBI (5)

となる.

次にユニタリーゲージ(19.1):

Φ(x) = 1

2 ( 0

v+σ(x) )

において,Higgs場のLagrangian密度(18.34):

LH= (DµΦ)(DµΦ)−µ2ΦΦ−λ(ΦΦ)2 を考える.共変微分の式(18.35)は

DµΦ= [

µ+ i 2g

{ W1µ

(0 1 1 0 )

+W2µ

(0 −i i 0

) +W3µ

(1 0 0 1

)}

+ i 2gBµ

] 1

2 ( 0

v+σ )

= 1

2 ( i

2g(W1µ−iW2µ)(v+σ)

µσ+2i(gW3µ−gBµ)(v+σ) )

=

( i

2gWµ(v+σ)

1

2µσ+ i

2

2{(gcosθW+gsinθW)Zµ+ (gsinθW−gcosθW)Aµ}(v+σ) )

を与える.上式最右辺において,式(17.47)より gcosθW+gsinθW= g

cosθW, gsinθW−gcosθW= 0 となることに注意すると,

(DµΦ)(DµΦ) =1

4g2WµWµ(v+σ)2+1

2(∂µσ)(∂µσ) +1 8

g2 cos2θW

ZµZµ(v+σ)2

=mW2WµWµ+1

2(∂µσ)(∂µσ) +1

2mZ2ZµZµ+LHBI , mW =1

2vg, mZ = vg 2 cosθW

= mW

cosθW

: (19.4), LHBI =1

2vg2WµWµσ+1

4g2WµWµσ2+ vg2 4 cos2θW

ZµZµσ+ g2 8 cos2θW

ZµZµσ2: (19.3c) となる.これを

−µ2ΦΦ−λ(ΦΦ)2=1

2µ2(v+σ)21

4λ(v+σ)4

=−v(µ2+λv21

2(µ2+ 3λv22−λvσ31

4λσ4+ const

=1

2mH2σ2+LHHI + const, mH=√

2: (19.4), LHHI =−λvσ31

4λσ4: (19.3b) (∵v= (−µ2/λ)1/2: (18.59)) と辺々足して定数項を落とすと,

LH=mW2WµWµ+1

2mZ2ZµZµ+1

2(∂µσ)(∂µσ)−1

2mH2σ2+LHHI +LHBI (6)

を得る.LBの式(5)とLHの式(6)を辺々足して,LB0 の具体的な表式(17.59)を代入すると,レプトンを除 いたLagrangian密度LB+LHの式(19.2)が導かれる.

LL+LLHの式(19.7)について 共変微分の式(17.40a)は具体的には DµΨLl =

[

µ+ i 2g

{ W1µ

(0 1 1 0 )

+W2µ

(0 −i i 0

) +W3µ

(1 0 0 1

)}

i 2gBµ

] (ψLν

l

ψlL )

= (µψνL

l+2ig(W1µψlL−iW2µψlL+W3µψνL

l)2igBµψLν

l

µψlL+2ig(W1µψνL

l+iW2µψLν

l−W3µψLl)2igBµψLl )

を与えるので,レプトン系のLagrangian密度LL

LL=i( ¯ΨLl/ Ll + ¯ψRl / lR+ ¯ψνRl/ Rνl) : (17.39)

=L0+LLBI , L0= ¯ψlLi/∂ψLl + ¯ψνL

li/∂ψνL

l+ ¯ψlRi/∂ψRl + ¯ψRν

li/∂ψνR

l : (17.12)

= ¯ψli/∂ψl+ ¯ψνli/∂ψνl: (17.10), LLBI =i

{ i 2¯νL

l( /W1−iW/2Ll + i 2

ψ¯Lν

l(gW/3−gB)ψ/ Lν

l

+ i

2¯lL( /W1+iW/2Lνl i 2

ψ¯Ll(gW/3+gB)ψ/ lL−igψ¯lR/ Rl }

となる.ここで上式で定義したレプトンとゲージボゾンの相互作用項LLBI (これは相互作用項(17.42),(17.48) に他ならない)が,式(19.3d)に一致することを確かめよう.Higgs場の共変微分DµΦを計算した際に示し たように,

gW3µ−gBµ= g cosθWZµ

である.同様に式(17.45)と式(17.47):gsinθW=gcosθW=eを用いると

gW3µ+gBµ=(gcosθW−gsinθW)Zµ+ (gsinθW+gcosθW)Aµ

= g

cosθW

(12 sin2θW)Zµ+ 2eAµ であり,また式(16.16)の箇所で見たように,任意のレプトン場ψに対して

ψ¯LγαψL= ¯ψPRγαPLψ= ¯ψγαPL2ψ= ¯ψγαPLψ=1 2

ψγ¯ α(1−γ5)ψ, ψ¯RγαψR= ¯ψPLγαPRψ= ¯ψγαPR2ψ= ¯ψγαPRψ= 1

2

ψγ¯ α(1 +γ5)ψ なので,

LLBI = 1 2

2¯νlW/(1−γ5l 1 4 cosθW

¯νlZ(1/ −γ5νl

1 2

2¯lW/(1−γ5νl+ { g

4 cosθW

ψ¯lZ/(12 sin2θWl+e 2

ψ¯lA(1/ −γ5l }

+gsinθW

2 cosθW

ψ¯l(sinθWZ/+ cosθWA)(1 +/ γ5l

=eψ¯l/ l

g 2

2¯νlW/(1−γ5l+ ¯ψlW/(1−γ5νl}

g 4 cosθW

ψ¯νlZ/(1−γ5νl

+ g

4 cosθW

ψ¯lZ(1/ 4 sin2θW−γ5l: (19.3d)

を得る.以上をまとめると,式(19.3d)の相互作用項LLBI を用いてレプトン系のLagrangian密度は

LL= ¯ψli/∂ψl+ ¯ψνli/∂ψνl+LLBI (7) と表される.

次にレプトンとHiggs場の相互作用項(18.44):

LLH=−gl( ¯ΨLlψRl Φ+Φψ¯Rl ΨLl)−gνl( ¯ΨLlψνRlΦ˜ + ˜Φψ¯Rl ΨLl) は,ユニタリーゲージのHiggs場

Φ= 1

2 ( 0

v+σ )

: (19.1), ∴Φ˜ = 1

2 (v+σ

0 )

に対して

LLH= 1

2(v+σ){

gl( ¯ψlLψlR+ ¯ψlRψlL) +gνl( ¯ψLνlψνRl+ ¯ψνRlψνLl)}

= 1

2(v+σ)(glψ¯lψl+gνlψ¯νlψνl)

=LHLI −ψ¯lmlψl−ψ¯νlmνlψνl (8) LHLI =1

vmlψ¯lψlσ−1

vmνlψ¯νlψνlσ: (19.3e), ml=vgl

2, mνl= vgνl

2 : (19.8)

と計算される.ただし第2の等号では任意のレプトン場ψに対して

ψ¯LψR+ ¯ψRψL= ¯ψPR2ψ+ ¯ψPL2ψ= ¯ψ(PR+PL)ψ= ¯ψψ となることを用いた.

最後にLLの式(7)とLLHの式(8)を辺々足すと,レプトンを含む項LL+LLHの式(19.7)を得る.

■式(19.14),式(19.15)について 式(19.4):mW =vg/2,式(17.49):gW =g/2√

2,式(16.43):G/ 2 = (gW/mW)2を順次用い,式(19.14):

v=2mW

g = 1

2 mW

gW = 1

2 1 (G/

2)1/2 = 1 (G

2)1/2

を得る.これと式(19.6):gsinθW=gcosθW=eを再び式(19.4)に代入すると,式(19.15):

mW = 1 2vg= 1

2 1 (G

2)1/2 e sinθW

= ( απ

G√ 2

)1/2

1 sinθW

, mZ = mW cosθW

= ( απ

G√ 2

)1/2

2 sin 2θW

を得る.