第 13章
13.2 径路積分
正準形式の定式化では,Green関数と生成汎関数をそれぞれ
式(12.1) :Gµ···(x,· · ·, y,· · · , z,· · ·)≡H⟨0|T{AµH(x)· · ·ψH(y)· · ·ψ¯H(z)· · · }|0⟩H, 式(13.28) :Z[Jκ, σ,σ]¯ ≡⟨0|S′|0⟩
⟨0|S|0⟩
によって定義したところ,生成汎関数からGreen関数を導く式(12.91):
Gµ···(x,· · ·, y,· · ·, z,· · ·) = (−1)n¯ (1
i )n
δnZ[Jκ, σ,¯σ]
δJµ(x)· · ·δ¯σ(y)· · ·δσ(z)· · ·
0
が示された.正準形式の場の量子論から,Green関数に対する径路積分の表式を導くことも可能である.しか し我々は生成汎関数に対する径路積分の表式を天下りに引用し,その正準形式との等価性を確認して満足する ことにする.証明は次の2段構えとなる.
• まず2つの形式が自由場の場合に等価であれば,
相互作用を含む場合にも等価であることを13.2.2項で示す.
• 次に2つの形式が自由場の場合に等価であることを13.2.3項と13.2.4項で示す.
13.2.1生成汎関数
生成汎関数に対する径路積分の表式は,虚構的な場の項も含めた作用 X′=
∫
d4x(L0+LI+LS) を用いて
Z[Jκ, σ,σ] =¯ 1 N
∫
DADψ¯DψeiX′ と与えられる(ただしDA=∏3
µ=0DAµ).規格化定数Nは条件Z[0,0,0] = 1から N =
∫
DADψ¯DψeiX, X ≡
∫
d4x(L0+LI) : QEDの作用 と定まる.これを式(12.91):
Gµ···(x1,· · ·, y1,· · ·, z1,· · ·) = (−1)n¯ (1
i )n
δnZ[Jκ, σ,σ]¯
δJµ(x1)· · ·δ¯σ(y1)· · ·δσ(z1)· · ·
0
に代入すると,Green関数に対する径路積分の表式 Gµ···(x1,· · ·, y1,· · · , z1,· · ·) = 1
N
∫
DADψ¯Dψ{eiXAµ(x1)· · ·ψ(y1)· · ·ψ(z¯ 1)· · · } が得られる.
13.2.1について
■Green関数の定義について 径路積分形式では生成汎関数からGreen関数を導く式(12.91)をGreen関数
の定義と見なす.このとき生成汎関数を径路積分で表した式(13.63a)が,式(13.28)で定義される正準形式で の生成汎関数と一致すれば,2つの形式でGreen関数は一致することになる.したがって理論の予言もまた一 致する.
■Green関数の径路積分表式(13.70)について 汎関数微分の性質(12.56d)および式(12.88a)を用いると δ
δJµ(x1)eiX′ =ieiX′
∫
d4xδJκ(x)
δJµ(x1)Aκ(x) =ieiX′Aµ(x1)
を得る.同様にGrassmann場による微分に対しても汎関数微分の性質(12.56d)が成立すると仮定し,同様 に式(12.88b)を用いると
δ
δ¯σ(y1)eiX′ =ieiX′ψ(y1), δ
δσ(z1)eiX′ =−ieiX′ψ(z¯ 1) となる.以上より
Gµ···(x1,· · · , y1,· · ·, z1,· · ·) =1 N
∫
DADψ¯Dψ(−1)n¯ (1
i )n
δn
δJµ(x1)· · ·δ¯σ(y1)· · ·δσ(z1)· · ·eiX′ 0
=1 N
∫
DADψ¯Dψ{eiXAµ(x1)· · ·ψ(y1)· · ·ψ(z¯ 1)· · · }: (13.70)
を得る.以上で用いた公式(12.56d),(12.88)の導出では,正準形式に特有の事情を仮定していないことに注 意しよう.
13.2.2自由場と相互作用をする場
径路積分形式の枠組みの中で,自由場の生成汎関数Z0の経路積分表式 Z0[Jκ, σ,¯σ] = 1
N0
∫
DADψ¯DψeiX0′, N0=
∫
DADψ¯Dψexp (
i
∫ d4xL0
)
に対して
Z[Jκ, σ,σ] =¯ 1 NI exp
{ ie
∫
d4xIδ(x) }
Z0[Jκ, σ,σ]¯ が示される.ただし
Iδ(x) = (
−1 i
δ δσ(x)
) γµ
(1 i
δ δ¯σ(x)
) (1 i
δ δJµ(x)
)
: (12.119), NI= N N0
である.よって経路積分表式のZ0が正準形式と同じであれば,上式は正準形式の生成汎関数(12.121):
Z[Jκ, σ,σ] =¯ 1
⟨0|S|0⟩exp {
ie
∫
d4xIδ(x) }
Z0[Jκ, σ,σ]¯ と同じものである(どちらもZ[0,0,0] = 1となるように規格化されている).
そこで次節以降で自由場の生成汎関数について,2つの形式の等価性を証明する.ここでは準備として,自 由場の生成汎関数Z0の経路積分表式が,自由な電磁場の生成汎関数
Z0[Jκ] = 1 N1
∫
DAexp(iX[Jκ]), X[Jκ] =
∫ d4x
{
−1
2(∂νAµ)(∂νAµ) +JκAκ }
(ただしZ0[Jκ= 0] = 1となるように規格化定数N1を選ぶ)と,自由スピノル場の生成汎関数 Z0[σ,¯σ] = 1
N2
∫
Dψ¯Dψexp(iX[σ,σ]),¯ X[σ,σ] =¯
∫
d4x{ψ(i/¯ ∂−m)ψ+ ¯σψ+ ¯ψσ} (ただしZ0[σ= 0,σ¯= 0] = 1となるように規格化定数N2を選ぶ)に分解できることに注意を促しておく:
Z0[Jκ, σ,σ] =¯ Z0[Jκ]Z0[σ,σ].¯
正準形式においてもこのように分解できるため(式(12.110a)参照),後は自由電磁場と自由スピノル場のそれ ぞれに対して,生成汎関数が2つの形式において同一であることを示せば良い.
13.2.2について
■式(13.71)について X0′ ≡∫
d4x′{L0(x′) +LS(x′)}:(13.76b)に対して式 (13.70)の導出の際に用いた 関係
1 i
δ
δJµ(x)eiX0′ =eiX0′Aµ(x), 1 i
δ
δ¯σ(x)eiX0′ =ieiX0′ψ(x), −1 i
δ
δσ(x)eiX0′ =−ieiX0′ψ(x)¯ を再び利用すると,
eIδeiX0′ = (eψγ¯ µAµψ)eiX0′ =LIeiX0′ : (13.71)
を得る.(汎関数)微分は1つずつ実行しなければならず,3つの微分Iδに対して一気に IδeiX0′ = (ieiX0′)(IδX0′)
としてはいけないことに注意する.
13.2.3自由な電磁場
自由電磁場の生成汎関数に対する経路積分表式(13.79a):
Z0[Jκ] = 1 N1
∫
DAexp(iX[Jκ]) が,正準形式における表式(12.110b):
Z0[Jκ] = exp (
−i
2[JκDFκλJλ] )
に一致することを示した.
*
証明の概略は以下のようである.まず生成汎関数の経路積分表式における作用を X[Jκ] =−1
2
∫
d4xd4x′Aµ(x)Kµν(x, x′)Aν(x′) +
∫
d4xJκ(x)Aκ(x), Kµν(x, x′)≡ −gµνδ(4)(x−x′)□x′
と書き換える.すると式(13.24):
A[J, ϕ]≡ −1 2
∫
d4xd4x′ϕ(x)K(x, x′)ϕ(x′) +
∫
d4xJκ(x)ϕ(x) に対する公式(13.33):
I[J]≡N
∫
Dϕexp(A[J, ϕ]) = exp (1
2[J K−1J]
)
の導出と同様の計算により,これを
Z0[Jκ] = exp (i
2[JκKκλ−1Jλ] )
と変形できる.ここに
Kµν−1(x, x′) =
∫ d4k (2π)4
gµν
k2 e−ik·(x−x′)
であり,これは極k0=|k|の扱い方に関する曖昧さを持つ.そこで式(12.106)のときと同様に,生成汎関数 から導かれる2点Green関数が光子伝播関数にならなければならないことを要求すると,k2→k2+iεと修 正して
Z0[Jκ] = exp (
−i
2[JκDFκλJλ] )
とすれば良いことが分かる.
13.2.3について
■式(13.88)について
X[Jκ] =−1 2
∫
d4xd4x′ {
A′µ(x) +
∫
d4yKµλ−1(x, y)Jλ(y) }
×Kµν(x, x′) {
A′ν(x′) +
∫
d4y′Kνρ−1(x′, y′)Jρ(y′) }
+
∫
d4xJκ(x) {
A′κ(x) +
∫
d4yK−1κλ(x, y)Jλ(y) }
=−1
2[A′µKµνA′ν]
−1 2
∫
d4xd4x′d4y′Kµν(x, x′)Kνρ−1(x′, y′)A′µ(x)Jρ(y′)
−1 2
∫
d4xd4x′d4yKµλ−1Kµν(x, x′)A′ν(x′)Jλ(y)
−1 2
∫
d4xd4x′d4yd4y′Kµλ−1(x, y)Kµν(x, x′)Kνρ−1(x′, y′)Jλ(y)Jρ(y′) +
∫
d4xJκ(x)Aκ(x) + [JκKκλ−1Jλ] において式(13.86)を用いると,最右辺の2,3行目はいずれも12∫
d4xJκ(x)Aκ(x)となるので,5行目の第1 項と相殺する.また最右辺の4行目は−12[JκKκλ−1Jλ]となるので,式(13.88):
X[Jκ] = 1
2[JκKκλ−1Jλ]−1
2[A′µKµνA′ν] を得る.
■式(13.92)について 指示に従い式(13.86)を δµτ
∫ d4k
(2π)4e−ik·(x−x′′)=
∫
d4x′{−gµνδ(4)(x−x′)□x′}
∫
Dντ(k) d4k
(2π)4e−ik·(x′−x′′)
=−gµν□x
∫
Dντ(k) d4k
(2π)4e−ik·(x−x′′)
=
∫ d4k
(2π)4Dµτ(k)k2e−ik·(x−x′′) と書き換えると,式(13.92):Dµν(k) =gµν/k2を得る.
13.2.4自由なスピノル場
自由電磁場の生成汎関数の場合と同様の方法により,自由なスピノル場に対する経路積分表式(13.80a):
Z0[σ,¯σ] = 1 N2
∫
Dψ¯Dψexp(iX[σ,σ])¯
が,正準形式における表式(12.110c):
Z0[σ,σ] = exp (¯ −i[¯σSFσ]) に一致することを示した.
13.2.4について
■式(13.100)について 式(13.96)右辺第1項の被積分関数におけるψの引数xはx′としても構わない.そ のように式(13.96)を修正した後,式(13.99)を代入すると
X[σ,¯σ] =
∫
d4xd4x′ {
ψ¯′(x) +
∫
d4y¯σ(y)K−1(y, x) }
×K(x, x′) {
ψ′(x′) +
∫
d4y′K−1(x′, y′)σ(y′) }
+
∫ d4x
[{
ψ¯′(x) +
∫
d4y¯σ(y)K−1(y, x) }
σ(x) + ¯σ(x) {
ψ¯′(x′) +
∫
d4y′K−1(x′, y′)σ(y′) }]
=[ ¯ψ′Kψ′] +
∫
d4xd4x′d4y′ψ¯′(x)K(x, x′)K−1(x′, y′)σ(y′) +
∫
d4xd4x′d4y¯σ(y)K−1(y, x)K(x, x′)ψ′(x′) +
∫
d4xd4x′d4yd4y′σ(y)K¯ −1(y, x)K(x, x′)K−1(x′, y′)σ(y′) +
∫
d4xψ¯′(x)σ(x) + [¯σK−1σ] +
∫
d4x¯σ(x)ψ′(x) + [¯σK−1σ]
となる.ここで式(13.98)を用いると,最右辺の2,3行目はそれぞれ−∫
d4xψ¯′(x)σ(x),−∫
d4x′σ(x¯ ′)ψ′(x′) となり,4行目は−[¯σK−1σ]となるので
X[σ,σ] = [ ¯¯ ψ′Kψ′] + [¯σK−1σ]
を得る.これを生成汎関数の式(13.80a)に代入すると Z0[σ,σ] = exp(i[¯¯ σK−1σ]) 1
N2
∫
Dψ¯Dψexp(i[ ¯ψ′Kψ′]) となる.規格化条件(13.80a)を考慮して式(13.100):
Z0[σ,σ] = exp(i[¯¯ σK−1σ]) を得る.
■式(13.102)について 指示に従い式(13.98)を
−
∫ d4p
(2π)4e−ip·(x−x′′)=
∫
d4x′{δ(4)(x−x′)(i/∂x′−m)}
∫ d4p
(2π)4S(p)e−ip·(x′−x′′)
=
∫ d4p
(2π)4S(p)(i/∂x−m)e−ip·(x−x′′)
=
∫ d4p
(2π)4S(p)(/p−m)e−ip·(x−x′′) と書き換えると,式(13.102):S(p) =−1/(/p−m)を得る.