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第1章 OECD の BEPS 行動計画及び EU の取組み

第4節 EU の租税不正及び脱税に対する 34 のアクションプラン

BEPSに関連する国際的な動きとして、OECD のBEPS行動計画の公表に 先立つこと半年前の2012年12月6日に、欧州委員会は、「An Action Plan to strengthen the fight against tax fraud and tax evasion(租税不正及び脱税に 対する取組みを強化するためのアクションプラン)」の公表を行っている。

これにより欧州委員会は、以下の「EUの租税不正及び脱税に対する34のア クションプラン」を加盟国に示し、項目ごとに期限を定めてその実施について 加盟国に指示したところである。

したがって、EU加盟国は、現在、「BEPS行動計画における15のアクショ ンプラン」と「EUの租税不正及び脱税に対する34のアクションプラン」の双 方について併行して検討を進めているわけであり、内容的には後者の方がより 具体的なものもあることから、EU 加盟国においては前者より後者の方が先行 して検討が進められていくことが想定される。

そこで、本論文においても、この「EUの租税不正及び脱税に対する34のア クションプラン」の内容について、その公表に基づき具体的に確認を行ってお く。なお、このアクションプランについてはその実施時期から、以下のⅠ、Ⅱ、

Ⅲ①、Ⅲ②及びⅢ③の5つに分類しておく。

〔EUの租税不正と脱税に対する34のアクションプラン一覧〕

Ⅰ 既存の欧州委員会イニシアティブの改善及びより良い活用(既に実行中 のもの)

1. 執行協力のための新しいフレームワーク 2. 貯蓄税制ループホールの閉鎖

3. ドラフトの租税回避防止及び税務協力協定

4. VAT不正に対するクイック・リサーチ・メカニズム

5. VATリバース・チャージ・メカニズムの選択適用

6. EUのVATフォーラム

Ⅱ 2012年6月時点での新しい欧州委員会イニシアティブ

7. 第3国にグッド・ガバナンスの最小基準を適用する奨励措置の勧告 8. アグレッシブ・タックス・プランニングに係る勧告

9. 租税グッド・ガバナンスためのプラットホームの創設 10. 有害な企業課税と関連領域の改善

11. 「欧州ポータル納税者番号」(TIN on EUROPA)

12. 税制分野の情報交換のための標準様式

13. 完全又は部分的な変性アルコールのためのユーロ変性剤

Ⅲ 将来に向けての開発されるべき欧州委員会イニシアティブ

①(2013年中に開発されるべき)短期間で実施されるアクションプラン

〔ミスマッチへの取組み及び濫用防止規定の強化〕

14. 親会社・子会社指令(2011/96/ EU)の修正

15. EU法令の濫用防止規定の見直し

〔EU基準、手段及びツールの推進〕

16. 自動的情報交換の基準とEUの ITツールの推進

〔タックスコンプライアンスの向上〕

17. 欧州納税者規約

〔タックス・ガバナンスの強化〕

18. 他の法執行機関との協力の強化

〔執行協力の強化〕

19. 税務調査のために同時管理の利用と外国職員の立合の推進

〔第3国に関するアクション〕

20. VATの執行協力の第3国との交渉の欧州評議会承認の取得

②(2014年までに開発されるべき)中期間で実施されるアクションプラン

〔情報交換の強化〕

21. 自動的情報交換のためのフォーマットの策定 22. EU納税者識別番号(TIN)の利用

23. IT手段の合理化

〔租税不正と脱税の傾向とスキームへの取組み〕

24. マネーフローを追跡するガイドライン

25. コンプライアンス・リスクマネージメントの強化 26. 直接課税へのEUROFISCの拡張

〔タックスコンプライアンスの強化〕

27. ワンストップショップ・アプローチの創設

28. 自発的ディスクロージャーのインセンティブの開発 29. 租税ウェブポータルの開発

30. 行政罰と刑事罰の調整の提言

31. EU標準税務調査ファイルの開発

③(2014 年を超えて開発される)より長期間で実施されるアクションプ ラン

32. 熟練調査官の専門チームによる合同調査のための方法論 33. 国内データベースへの相互直接アクセスの開発

34. すべての租税の執行協力のための単一の法的手段の策定

これらの内容については、OECD の BEPS との関連性等に鑑み、①BEPS への対応に有効と思われるアクションプラン、②アグレッシブな租税回避スキ ームへのアクションプラン、③加盟国間の情報交換や執行協力を向上させるた めのアクションプラン、④執行の効率性を向上させるツール等の開発・改善に 係るアクションプラン、⑤納税者のタックスコンプライアンスを向上させるた めのアクションプラン及び⑥その他のアクションプランの6つのカテゴリーに 分類して、以下に示すこととする。

1.BEPSへの対応に有効と思われるアクションプラン

(1)「Ⅱ- 7. 第3国にグッド・ガバナンスの最小基準を適用する奨励措置の勧 告」

現状の委員会の分析は、潜在的かつ事実上のダメージが、租税問題のグッ ド・ガバナンスの最小基準に従わない法的管轄によって引き起こされたこ とを、加盟国が認識しているということである。それらの法的管轄は、一 般的にタックス・ヘイブンと考えられる。

すべての加盟国はこの状況に対して、異なった方法で対応をしてきた。国 内市場で営業するときの与えられた自由を考慮に入れて、事業者は、最も 脆弱な対応の加盟国を通して、そのような法的管轄でアレンジメントを組 成するかもしれない。結果として、加盟国の租税収入の全体的な保護は、

加盟国の 1 つの最も脆弱な対応と同じぐらいの効果のみとなる傾向があ る。このことは、加盟国の税源が浸食されるということだけでなく、事業 のための公正な競争的な条件を危険にさらし、究極的に、国内市場の経営 を歪めることになる。

この問題に取り組む観点で、委員会は、租税問題のグッド・ガバナンス の最小基準に合わない第3国を識別するための一連の基準及びそれらの基 準に従うかあるいは従うことを確約するかどうかに従って、第3国に関し ての措置の「ツールボックス」を、加盟国により採用することを勧告して いる。それらの措置は、コンプライアンスのない法的管轄を予定されるブ

ラックリストに載せること及び租税条約(DTCs)の再交渉、一時停止あ るいは締結を含む。ブラックリストに載せられた第3国で事業を促進する ことを避けさせるために、委員会は、加盟国に追加的かつ補完的なアクショ ン、しかし、すべての観点でEU法に沿っているものを採用することを求 めている。

さらに、加盟国は、最小基準に従うことは確約するけれども、技術援助 を必要としている第3国の税務当局を援助するために、専門家のアドホッ クな派遣を考慮するべきである。

この勧告は、懸案である領域において、最小基準を適用しない法的管轄 に関して、加盟国によってとられた姿勢について連携を取らせるための実 務的に重要な最初のステップである。さらに予定されるイニシアティブへ の必要性を判断するために、委員会は勧告の採択の後3年以内に、この領 域で加盟国のアプローチとアクションを再評価するであろう。

(2)「Ⅱ- 10. 有害な企業課税と関連領域の改善」

アニュアル・グロース・サーベイ2012で示されたように、企業課税の ための行動規範(Code of Conduct for business taxation;以下「規範」と いう。)のコンテキストで、最近において議論されている作業に与えられる 新しい推進力のために、委員会は、喫緊の必要性についてさらに指摘をし ている。

過去の数年にわたって、進展を成し遂げ、具体的な目的を達することが、

規範の範囲に含まれるであろう課税手段を評価する役割を負った行動規範 グループにおいて、ますます困難になってきている。このことは、よりいっ そう複雑な問題が取り扱われるということだけでなく、同様に、期待され た結果、そのような結果のためのタイムテーブル及びそれらの実施を監視 する手段を、改善し厳しくする必要があるという事実に部分的に関連づけ られる。

それゆえ委員会は、規範の当初の目標を達成することの効率性を改善す るためのアクションを考えることを加盟国に要請する。例えば、政治的な

決定が緊急に必要とされるときに、より早急に議題を評議会レベルに上程 することによって。さらに、行動規範グループは最近において、解決策が 早急に必要とされるミスマッチの問題を議論している。もしミスマッチを 取り除くような解決策が承認されず、明確な期限に合わせて実行されない のであれば、その代わりに、委員会は、立法上のアクションを提案するの に適切な用意ができていている。

加えて、既存の指令が、二重非課税を許すことによって、アグレッシブ・

タックス・プランニングに機会を提供するか、あるいは、適切な解決策を 妨げることが見受けられるケースでは、委員会は行動を取るであろう。さ らに、作業により、国内市場の経営にとって有害であり、全体的な租税収 入を減らす、国外移住者及び資産家のための特別な租税制度が強化される べきである。

委員会は、その役割として、選ばれた第3国の企業税制の行動規範の効果 的な促進を確保すること及びグローバルに公正な租税競争を推進すること において、第3国との適切な合意でグッド・ガバナンス規定を協定すること 並びに租税と開発に係る委員会のスタンディング・ポリシーと合致した途上 国を支援することによって、加盟国を支援し続けるであろう。

(3)「Ⅲ①- 14. 親会社・子会社指令(2011/96/ EU)の修正」

ハイブリッド・ローン及びハイブリッド事業体のような問題並びに法的 管轄の間のそのようなストラクチャーの能力の差異を取り扱うミスマッチ の領域は、特に重要性を有する領域である。加盟国との詳細な議論は、特 定のケースで同意された解決策が、親会社・子会社指令の立法上の修正な しで達成することができないものであることを示している。その目標は、

指令の適用が、ハイブリッド・ローンのストラクチャーの領域で、二重非 課税に対する効果的なアクションを意図せずに防止しないようにすること を確かなものにすることである。

(4)「Ⅲ①- 15. EU法令の濫用防止規定の見直し」

委員会は、利子・ロイヤルティ指令、合併指令及び親会社・子会社指令

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