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第3章 ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメ ントの無効化

第1節 ハイブリッド・ミスマッチ・ドラフトの概要

第3章 ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメ

④ ルールは、相互調整(co-ordination)又はタイブレーカー・ルール

(tie breaker rule)の活用により、二重課税を防止できるものである べきである。

⑤ ルールは、現行の国内法の下での混乱を最小限にすべきである。

⑥ ルールは、明確性があり透明性があるべきである。

⑦ ルールは、執行にフレキシビリティを与える一方で、一貫性がある べきである。

⑧ ルールは、納税者にとって実行可能(workable)なものであるべき である。

⑨ ルールは、税務当局の執行にとって容易なものであるべきである。

2.ハイブリッド・ミスマッチ・ルールに対して策定される勧告案

(1)ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの類型

ハイブリッド・ミスマッチ・ドラフトでは、勧告(Recommendation)

の対象となるBEPSを生じさせるハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメ ントを、以下の3つの類型に分類している。

(a)ハイブリッド金融商品及び譲渡(Hybrid financial instruments &

Transfers)

これは、金融商品の下で所得控除可能な支払(deductible payment)

がなされる一方で、その受取者の法的管轄の法律の下ではそれが課税所 得として取扱われないことで、国際的二重非課税を生じさせるものであ る。

(b)ハイブリッド事業体支払(Hybrid entity payments)

これは、ハイブリッドな支払者に係る性質付け(characterisation)

の違いの結果として、所得控除可能な支払が課税対象とならなくなるこ とや、他の法的管轄において2度目の所得控除を受けることを引き起こ したりするものである。

(c)リバース・ハイブリッド及びインポーテッド・ミスマッチ

これは、受取に関して非課税である仲介受取者(intermediary payee)

に対して代行的になされる支払のことである。これには、以下の2つの アレンジメントがある。

(ⅰ)リバース・ハイブリッド(Reverse hybrid)

これは、仲介受取者に係る性質付けの違いの結果として、仲介人と 投資家の双方の法的管轄において、所得控除可能な支払が課税対象と ならなくなるものである。

(ⅱ)インポーテッド・ミスマッチ(Imported mismatches)

これは、仲介人が別個のハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメン トの関係者であり、支払がそのアレンジメントの下で生じる所得控除 と相殺されるというものである。

(2)類型ごとに策定された勧告案の概要(Summary of Recommendations)

ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントに対する勧告については、

上記の類型ごとに、次の〔Table 1. Summary of Recommendation(勧告 の概要)〕に一覧表としてまとめられている。

この表では、ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの効果を無効 とする勧告案として、「国内法の改正に係る勧告」と国際的二重課税を排除 するための「リンキング・ルールに係る勧告」が類型ごとに示されている。

 方法(Mechanics)

国内法の改正に当たり国際的二重課税のリスクに対して十分に配慮 をするために、リンキング・ルールは、ハイブリッド・ミスマッチが生 じたときにはいつでも適用がなされる「第一義的対応(primary rule)」 と、相手方の法的管轄で第一義的対応が適用されなかったときのみに適 用がなされる「第二義的又は防御的対応(secondary or defensive rule)」 に、分けられるべきであるとしている。

 対象範囲(Scope)

勧告の策定は、ルールが明確であり総体的なものであることを要求す

るが、総体的で広範なハイブリッド・ミスマッチ・ルールの適用を運用 することには困難が伴うであろう。これらコンプライアンス・コストや リスクに係る困難性については、それぞれのルールの基礎をベースに検 討されなければならない。

ハイブリッド・ミスマッチ・ルールに現れる個別のコンプライアン ス・コストやリスクは、そのアレンジメントの性質やその納税者の役割 にも依存するものである。

対象範囲については、ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの 類型ごとの検討が必要であるとしており、特に、ハイブリッド金融商品 及び譲渡については、ドラフトの現段階では検討中となっている。

以下に、類型ごとに示されたハイブリッド・ミスマッチ・ルールの勧告 案をみてみる。

〔Table 1. Summary of Recommendations(勧告の概要)〕 分類ハイブリッドの要ミスマッチの タイプ国内法の改正 係る勧告リンキング・ルールに係る勧告 第一義的対応防御的対対象範囲 ハイブリッド 融商品及び譲 (Hybrid financial instruments & Transfers)

金融商品の課税上の取扱い が異なることで、当該金融 品の下での支払が異なる性 質を有することが起きてい る。

D/NI (支払者所得 控除+受取者 益金不算入)

所得控除さ た支払に対して は配当免除を否 源泉税の税 控除の相応な制

支払者の法的管轄におい て損金算入を否認受取者の法 的管轄にお て所得とし 支払を益金 算入

(検討中 ハイブリッド 業体支払 (Hybrid entity payments)

事業体又はアレンジメント の課税上の取扱いが異なる ことで、2それ以上 法的管轄において当該事 体又はアレンジメントの下 での支払に異なる性質が付 与されることが起きている

D/NI (支払者所得 控除+受取者 益金不算入)

支払者の法的管轄におい て損金算入を否認受取者の法 的管轄にお て所得とし 支払を益金 算入 関連者(示し合 て行動をする者を含 む)及びストラクチャ ードンジメント に限定 D/D (異なる法的 管轄での重複 所得控除

投資家受取者)の法的管 轄において損金算入を否認支払者の法 的管轄にお て損金算入 否認

第一義的対応に ては、限定な 防御的対応では 連者(示し合わせて行 動をする者を含む びストラクチャー アレンジメントに 限定 リバースイブ リッド (Reverse hybrid)

事業体の課税上の取扱いが 異なることで払につい 受取者の所得に算入されな いことが起きている。

D/NI (支払者所得 控除+受取者 益金不算入)

仲介者の法 管轄での税務申 告及び情報報告 の実施 投資家受取者)に益金算 入を要求 投資家が益金算入をしな い場合には、仲介者の法的 管轄が、その投資家の課税 上の取扱いに合わせた対応 を取る

支払者の法 的管轄にお て損金算入 否認

管理されたグル のメンバ(示し合わ せて行動をする者を 含む)及び濫用防止に 限定 インポーテッド・ ミスマッ

(Imported mism

atches)

支払がハイブリッド・ミス マッチメントの で生じた費用と相殺されて いる。

アンチハイブ ールの導

3.「ハイブリッド金融商品及び譲渡」の無効化に係る勧告案の概要

(1)「ハイブリッド金融商品及び譲渡」の定義

ハイブリッド・ミスマッチ・ドラフトでは、ハイブリッド金融商品及び 譲渡(以下「ハイブリッド金融商品等」という。)の定義として、以下の考 えが示されている。

 ハイブリッド金融商品等の定義に係る考え方

 どのような金融商品をミスマッチ・ルールの対象とするかについて は、法的管轄の国内法に委ねるべきではあるが、少なくとも、ミスマッ チ・ルールの適用を行う法的管轄の法令の下で何が債券(debt)又は 株式(equity)として取扱われるかを盛り込むべきである。定義には、

必要に応じて、納税者が債券や株式の代わりに利用する取決め

(arrangements)も盛り込まれるべきである。

 ハイブリッド金融商品は、取決めの下でなされる支払が支払者の法 的管轄で所得控除可能ではあるが、受取者のネットの課税所得の計算 において経常所得(ordinary income)に算入されない場合に、いか なる金融商品(ハイブリッド譲渡を含め)をも対象となるように、広 範囲に定義されるべきである。

個々の法的管轄において通常の居住者である納税者間で締結され た同じような取決めが、課税結果においてミスマッチを引き起こして いるに十分であるならば、金融商品はこれら目的にとって「ハイブ リッド」として取扱われるべきものである。

 ハイブリッド譲渡については、以下の場合における、資産に関して 納税者と別の関係者とで締結したすべての取決めとして定義される べきである。

 その納税者が資産の所有者であり、当該資産に係る契約相手の 権利が当該納税者の義務として取扱われており、かつ、

 契約相手の法的管轄の法令の下では、当該契約相手は資産の所 有者であり、当該資産に係る当該納税者の権利が契約相手の義務

として取扱われている場合

租税目的での資産の所有権に関しては、その資産からの相応する キャッシュフローのベネフィシャル・オーナーとして当該納税者が課 税される結果となるルールを盛り込むべきであるとしている。

(2)ハイブリッド金融商品等に係るミスマッチ・ルールの勧告案の概要 ハイブリッド・ミスマッチ・ドラフトでは、ハイブリッド金融商品等に 係る国際的二重非課税を無効化するミスマッチ・ルールとして、以下の勧 告案が示された。

① 法的管轄は、ハイブリッド金融商品等の下でなされるいかなる支払に ついても、その受取者がいかなる法的管轄においても経常所得としてそ の支払を所得に算入しないのであるならば、その支払に係る所得控除を 否認すべきである。

② 法的管轄は、ハイブリッド金融商品等の下でなされるいかなる支払に ついても、その支払者がそのような支払に所得控除(又は同等の租税負 担の減額)を行い、かつ、支払者の法的管轄が上記①の勧告に従ってハ イブリッド・ミスマッチ・ルールの適用をしないのであるならば、受取 者に経常所得として算入することを要求すべきである。

③ 所得控除された支払(配当)に関しては、国内法の下で配当控除がな されるべきではない。これにより、ミスマッチは生じないことになろう。

 ハイブリッド譲渡の効果の無効化への更なる勧告案

ハイブリッド・ミスマッチ・ドラフトでは、納税者が、ハイブリッド 譲渡の下で同一の源泉所得に対して直接税額控除を 2 回行うことに関し て、以下の取扱いを導入すべきであるとしている。

 ハイブリッド譲渡の下でなされる支払について、源泉所得税を軽減 するすべての法的管轄は、その取引の下でのネットの課税所得額に比 例させて、そのような軽減からの利得を制限するルールを導入すべき である。

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