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第2章 BEPS への取組みに対する基本的認識 及びコンセンサス 及びコンセンサス

第1節 BEPS に対する課税権の確保に係る基本的な考え方

1.課税権の確保に対する諸外国の非対称性

(1)課税権の確保に対する諸外国のスタンスの相違

課税権の確保に対する諸外国のスタンスは、その国の置かれたポジショ ン等(国の規模や経済的、政治的、社会的な立場等)によって大きく異な るものであり、例えば、無形資産による所得の国外流出といった場合には、

国内において研究開発から特許(パテント)を取得している件数が著しく

多い米国やドイツは、その国外流出に対して移転価格税制を制度的に強化 するなどして課税損失を防ごうとしているわけである。

一方で、英国、フランス、ベネルクス3国のような国は、パテントボッ クス制度を導入して、これによりパテントの国内流入を促進させ流出利益 を貰い受けようとしていることから、その意味では無形資産に対してタッ クス・ヘイブンのような行動を選択しているわけであり、このように無形 資産に対しては先進国間においても非対称的なスタンスが見受けられるわ けである。

BEPSについても、無形資産による所得の国外流出がその一例になるが、

先進国、新興国、途上国、そしてタックス・ヘイブンの国・地域で、その スタンスは大きく異なるわけであり、上記のように先進国の間でも大きく 異なっているわけである。

加えて、国際的に影響力の大きいこれら先進国の行動を認識する際には、

国の中においてもスタンスが全く異なる勢力が存在していることに留意し なければならない。例えば、米国では、多国籍企業や富裕層等の強者に有 利な政策を展開する共和党サイドと、社会的な弱者を支えようとして多国 籍企業や富裕層等への課税強化をしようとする傾向にある民主党サイドと では、全く反対の行動にでることが想定される。

また、新興国であるインド、中国、ブラジル、ロシアなどのBRICSに ついては、やはり、共通点として人口が多く、先進国の製造拠点の一面を 持ち、わが国を追い抜く経済力をつけてきており、今後の強まる発言権も 考慮して、国際課税における、特に源泉地国としてのこれらの立ち位置を 強く主張してくることを認識しなければならない。特に、インドについて は、これまでの国際課税原則を無視してまでも自国の課税権を死守するス タンスを取っており、源泉地国としての課税権の確保のために最高裁の判 決を覆す法律改正までしたところである。BEPSに関する個々の事案にお いても、これらの国が自国にその課税権があると強行に主張し譲らないこ とは想定されるところであり、今後のBEPSの国際的な議論の中でも十分

に留意されるべきことであると思慮する。

(2)タックス・ヘイブンへの認識

タックス・ヘイブンの国・地域については、新たな課税制度等を創り上 げるときに、国際課税上でどこにどのようにそのような国・地域について 有利又は不利になるのかをよく考えて対処することになると思慮する。こ こでより注意すべきなのは、形式的にタックス・ヘイブンであることが明 確であるピュア・タックス・ヘイブンよりも、OECDやEUの加盟国でタッ クス・ヘイブンの特徴を有している国々の存在である。それらは、自国が タックス・ヘイブンであるとは認めず、OECDやEUもタックス・ヘイブ ンであるとは認定しないものの、BEPSへの対応策への強い協力を宣言し ながら、実態として自身はBEPSとなる行動を取り続けることが想定され る。

なお、国土が狭小であって国民も数万人から数百万人のタックス・ヘイ ブンである国・地域にとっては、国家運営に必要な歳入額は国の規模によっ て限られる。例えば、ケイマン諸島は人口が4万人程度であり、シンガポ ールは540万人程度である。したがって、必要な歳入額はある一定である と考えられる。

必要な歳入額はある一定であれば、実効税率を下げても、海外から流入 する所得額がより大きくなることにより、その額が大きければ大きいほど、

BEPSによって収得できる税収(以下「BEPS税収」という。)は増えるの で、タックス・ヘイブンによっては、広く薄くより効果的に税収を確保す るために、流入する所得額の増加を勘案して、(場合によっては、個別の多 国籍企業ごとに)実効税率をより下げるかもしれない。

シンガポールやオランダとかは、巨大な多国籍企業ごとに「プライベー ト・ルーリング(Private ruling)」(10)等によって実効税率を決めていると も聞く。

(10) 特定の取引等に適用される法律等の解釈に関する納税者の照会に、税務当局が個

別に回答するもの。

したがって、BEPSの観点でタックス・ヘイブンを考えるときに重要な こととして、これらの法定税率とか実効税率という数値以上に、当該タッ クス・ヘイブンがどの程度の規模の国家であり、国家の運営のためにどの 程度の歳入額を必要としているのかということを十分に認識した方がよい ものと考える。

なお、税源浸食によりタックス・ヘイブンの国・地域が収得できる税収 について、これを算定式で表すと、一般的に、以下の式で求められるもの と考える。

〔税率〕↓ ×〔所得額〕↑ +〔その他の手数料等〕=〔BEPS税収〕

この式からわかるように、タックス・ヘイブンの国・地域は、実効税率

〔税率〕を引き下げることで、税源浸食を起こし〔所得額〕を国内に呼び 込んでいるわけである。ここで重要なことは、小規模な国・地域の必要と する歳入額がある一定規模で済むということである。

したがって、〔税率〕をかなり下げても、流入する所得額が大きくなれば、

必要な歳入額を確保することが可能である。また、ピュア・タックス・ヘ イブンの国・地域は〔税率〕がゼロであるが、多数の多国籍企業からの年 単位での〔その他の手数料〕のみで必要額が集まるということで、その無 税が実現できているわけである。小規模な国家は必要な歳入額が一定額で あり、ケイマン諸島などのピュア・タックス・ヘイブンの国・地域は、〔税 率〕がゼロでも、〔その他の手数料〕の合計で必要額に足りてしまうわけで ある。ただし、〔所得額〕は際限なく増えるものではなく、流出所得は全世 界で取り合っているわけである。

(3)BEPSへの取組みでの国際的協調の必要性

最後に、OECD のBEPS報告書は、BEPSに対する課税権の確保に関 して、先進国、新興国、途上国、タックス・ヘイブンの国・地域等で異な るスタンスが見受けられる状況であっても、「BEPSへの効果的な対応のた めには、国際的に協調された行動を取ることが重要である」とし、「一部の

国が協調せずに、基準を満たさない場合、負の外部効果や底辺への競争を 生じさせる」と述べており、BEPSの効果的な対応のためには国際的な協 調が一部の抜け駆けを認めることなく必要であるとしている。しかし、こ の取組みを進めていくには、本質的に一筋縄ではいかないところがあるわ けである。

2.BEPSにより侵害を受けた課税権への居住地国と源泉地国の主張の在り方 BEPSにより国際的二重非課税が生じている場合に、そのBEPSに関わる 居住地国と源泉地国のどちらが課税権の主張を行うのかについては、単に居 住地国であるとか源泉地国であるとかで判断されるのではなく、侵害を被っ た課税権に係る所得について本来帰属すべき法的管轄が課税権を主張できる ものとすべきであると思慮する。したがって、租税条約上の取扱いも含めて、

当該課税権の法的管轄への帰属の在り方についての一定のコンセンサスが必 要であり、それが不十分である場合には、BEPSによる課税権への主張に関 して国際的二重課税が生じることがあり得ることになり得る。

なお、租税条約上の取扱い等から居住地国に課税権が認められたとしても、

その居住地国の課税権が無税又は低課税であることから、引き続き多国籍企 業に対し国際的二重非課税が与えられるのであれば、これは源泉地国から BEPSによる課税権への主張が認められるものと思慮する。

3.BEPSに関わる法的管轄間における課税権の回復の在り方

BEPSから損失を受けた課税権が複数の法的管轄に帰属する場合には、そ れら法的管轄に対する課税権の回復がどのようになされるべきかについては、

所得の本来帰属すべき法的管轄の在り方に沿った配分になるべきである。

具体的には、米国議会の公聴会のAppleのケースで考えると、Appleは米

国以外のApple製品の売上収益からの所得(全世界所得の60%)を販売活動

の源泉地国からアイルランドに移転させている。これに対し、小委員会は、

その勧告で、チェック・ザ・ボックス規則とルック・スルー規則を改正する

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