本 TOSA の光源として開発した半導体レーザは、二連コリメート光学系における 2 波長レーン 分の光源を担うため、発振波長が異なるふたつの EADFB レーザと、それらから発振された光信 号を合波する2入力1出力MMI光カプラから構成された、モノリシック集積EADFBレーザアレ イである。各々のDFBレーザの後段には、光出力パワーを監視するモニタ用PDを集積している。
このように、2波長レーン分のEA変調器、DFBレーザ、モニタPD、そして2入力1出力MMI光 カプラがモノリシック集積されることで、4チャンネルTOSAの組み立て工程の内、2波長レーン分 の光学調芯を省くことができるため、製造に関わるコスト削減効果は大きい。
伝送距離40 kmを保証する100GBASE-ER4では、表2-1に示したように、8 dB以上の高い動
的消光比 DER が求められる。また、低消費電力化の観点からは、レーザ自身にとって高温度対 応が求められる。図2-10 に、作製した EADFB レーザアレイの結晶成長方向に見た断面構成の
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概略を示す。n-InPを基板に、アクティブ領域であるDFBレーザとEA変調器には、InGaAlAs系 の多重量子井戸(Multi quantum well : MQW)構造を用いた[2.6]。InGaAlAs系は、EADFBレー ザで使用されるInGaAsP 系に対し、温度特性や消光特性において有利な特性を期待できるため
である[2.7]。DFBレーザにおいては、広温度範囲において光出力パワーを確保する必要がある。
特に高温度では、正孔に比べて有効質量が軽い電子が溢れ出してしまうことから、対向する正孔 と再結合しやすく、その結果発光効率が低下しやすくなることが考えられている。そこで、本 DFB レーザにおけるInGaAlAs 系活性層に、圧縮歪 MQW構造を導入し、InGaAsP 系のそれよりも、
伝導帯オフセットEc を一層大きくし、価電子帯オフセットEvを小さくできることを利用して、溢れ 出す電子の抑制効果を大きくしている。その結果、高温度にわたる広温度範囲おいて光出力パ ワーを確保している[2.8]。
同じく、InGaAlAs 系 MQW 構造による大きいEcは、EA 変調器の温度に対する消光特性改
善にも寄与する。EA 変調器の消光特性は、集積した DFB レーザからの発振波長と EA 変調器 の吸収ピーク波長との差である離調に依存する。ここで、MQW 構造によるEA 変調器は、逆バイ アス電圧を印加することで、吸収ピーク端が長波長側にシフトする量子閉じ込めシュタルク効果を 用いることによって光変調を可能にしている。ただし、この吸収ピーク端は、印加電圧が大きくなる につれて吸収ピークが不明瞭になり、また低温度になるほど離調が大きくなるため、一層大きい逆 バイアス電圧を印加しないと消光比が稼げないという課題があった。そこで、InGaAlAs 系 MQW
のEcは、 InGaAsP系のそれよりも大きいこともあって、電子閉じ込め効果が大きいため吸収ピー
クを大きくとることができるようになり、その分低温度側にわたっての温度範囲においても大きい消 光比を確保することができるようになる。これに加えて、InGaAlAs系MQWのEvは、InGaAsP系 のそれよりも小さいこともあって、EA 変調器を高速変調動作させる際に問題となる光吸収時の発 生正孔が留まりやすくなる現象を抑制しやすくなるため、消光比改善にも寄与する。
さて、2 波長レーン分の EADFB レーザを集積したモノリシック集積レーザアレイを使用するた
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め、離調が長波長レーン側の方で大きくなるため、消光特性に関してレーン間で違いが生じる。
つまり、EA 変調器のバイアス電圧を一定にして印加すると、長波長レーン側の消光比が小さくな る。このため、同等の消光比を得ようとすると、長波長レーン側の EA 変調器には、一層大きいバ イアス電圧を印加する必要がある。そこで、高消光特性を得るため、EA変調器には引張歪MQW 構造を導入することにした。これは、以下の理由による。圧縮歪MQW構造では、価電子帯の第1 バンドと第2バンドとの間のエネルギー差が大きく、そのバンド端の状態密度が小さいため、EA変 調器の光吸収係数が制限される。一方、適切に引張歪をMQW構造に導入することによって、第 1 バンドと第 2 バンドのエネルギー差を近づけることができ、バンド端状態密度を大きくすることが できる。その結果、引張歪MQW 構造による光吸収係数は、圧縮歪MQW構造のそれよりも大き くすることが可能となり、消光特性改善を図ることができる。
DFBレーザとEA変調器の横方向の光閉じ込め導波路の構造は、MQW層上のp-InP層を上 部クラッドとしてエッチングしたリッジ導波路である。EA 変調器の電極は、高周波駆動に影響を与 える寄生容量をできるだけ低減できるよう、SiO2 上においてリッジ導波路脇に最短で引き出して、
ワイヤボンディング結線が可能な最小サイズで形成している。
バッシブ領域である2入力1出力MMI光カプラの導波路コアとモニタPDには、InGaAsP層 を用いた。MMI光カプラは、2入力1出力の場合には原理的に光学損失が3dB存在するが、構 造がシンプルであることから小型に集積しやすく、また波長依存性が小さいこともあって一般に広 く適用されている。MMI光カプラを含めたパッシブ光導波路には、そのコアにInGaAsP層を使用 し、上部クラッド層としては、導波路損失を低減するためにノンドープの InP 層を用いている。また 横方向の光閉じ込め構造としては、下部クラッドまでをエッチングしたハイメサ構造を適用すること で、光導波路中の放射や曲がり部における伝搬損失低減を図っている。ハイメサ構造パッシブ導
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波路は、モニタPDとDFBレーザとの間、DFBレーザとEA変調器の間にも取り入れることで、モ ノリシック集積チップ全体の光学損失低減を図っている。
以上述べてきたように、DFBレーザ部においてはInGaAlAs系圧縮歪MQW層、EA変調器部
にはInGaAlAs系引張歪MQW層、パッシブ光導波路部にはInGaAsP層を、活性層もしくはコア
層に適用し、またDFBレーザ部と EA変調器部の上部クラッドには p-InP層を用いる一方で、パ ッシブ光導波路部の上部クラッドには、ノンドープInP層を適用するといった層設計となっている。
このように異種の層構成を光導波路方向に接続する方法には、突合せ結合接続技術、選択結晶 成長技術等があるが、ここでは、異なる集積要素である DFB レーザ、EA 変調器、パッシブ導波 路を独立に最適設計することが可能な、有機金属気相成長法(Metal organic chemical vapor
deposition : MOCVD)と半導体エッチングのプロセスを繰り返す突合せ結合接続技術を用いて、
モノリシック集積EADFBレーザアレイを作製した[2.2]。
図2-11に、作製した EADFBレーザアレイの外観写真を示す。DFBレーザには、単一波長の 発振を安定化するために、/4 位相シフトグレーティング構造を入れている。DFB レーザ間のピッ
チは100 mで配置し、チップサイズは幅0.4 mm, 長さ1.6 mmである。モニタPD、EA変調器、
DFBレーザ、そしてMMI光合波器の光導波方向の長さは、それぞれ150 m、400 m、90 m、
そして96 mである。また、チップの厚さは裏面研磨で150 mとし、その裏面全面をグランド電極
としている。100GBASE-ER4の仕様は4波長レーンなので、レーン0用に0でとレーン1用に1
で波長発振するレーザアレイ0と、レーン2用に2でとレーン3用に3で波長発振するレーザア レイ 1 の 2 種類を設計した。これらの発振波長は、動作温度が 40~50 ℃で得られように設計し た。また、光ビーム出射端においては端面反射の影響を抑圧するため、出力導波路の方向は劈 開面の法線方向に対し 5 °傾けられており、さらにチップの前面および後面には無反射(Anti reflection : AR)膜コーティングを施した。