• 検索結果がありません。

光通信用波長多重送信器の小型集積化に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "光通信用波長多重送信器の小型集積化に関する研究"

Copied!
178
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

光通信用波長多重送信器の小型集積化に関する研究

大山, 貴晴

https://doi.org/10.15017/1866321

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

博 士 論 文

光通信用波長多重送信器の 小型集積化に関する研究

九州大学

大学院システム情報科学府

大山 貴晴

(3)

光通信用波長多重送信器の 小型集積化に関する研究

大山 貴晴

2017 年 ( 平成 29 年 ) 9 月

(4)

1

目次

1

章 序論 ... 5

1.1 研究の背景 ... 5

1.2 研究の方針 ... 8

1.3 波長多重送信器の構成と研究開発動向... 9

1.4 研究の目的 ... 13

1.5 論文の構成 ... 14

2

章 二連コリメート光学系による

4

波長多重送信器 ... 17

2.1 まえがき ... 17

2.2 二連コリメート光学系の構成 ... 18

2.3 二連コリメート光学系の設計 ... 21

2.3.1 コリメート光学系 ... 22

2.3.2 二連コリメート光学系の光学過剰損失の見積もり ... 24

2.4 二連コリメート光学系を有するTOSAの作製方法 ... 29

2.5 EADFBレーザアレイ ... 31

2.6 特性評価結果 ... 34

2.7 まとめ ... 47

3

章 直接光結合系による

4

波長多重送信器 ... 49

3.1 まえがき ... 49

3.2 AWGを用いたハイブリッド集積構成 ... 50

3.3 直接光結合系の設計... 51

3.3.1 直接光結合系の光結合損失 ... 52

3.3.2 スポットサイズ変換器(SSC)集積による光結合損失の見積もり ... 54

3.4 SSC集積EADFBレーザ ... 55

3.4.1 横テーパSSC集積EADFBレーザの直接光結合 ... 55

3.4.2 縦横テーパSSC集積EADFBレーザの直接光結合 ... 57

3.5 直接光結合による単一レーンTOSAの基本特性 ... 59

3.6 アレイ回折格子(AWG)型光波長合分波器 ... 62

3.6.1 石英系平面光波回路(PLC)の作製方法 ... 62

3.6.2 AWGの構成と設計... 64

3.6.3 マッハ・ツェンダ型干渉計(MZI)同期AWG ... 66

3.6.4 MZI同期AWGの作製と特性 ... 67

(5)

2

3.7 直接光結合系によるTOSAの作製方法 ... 67

3.8 特性評価結果 ... 70

3.9 EADFBレーザアレイによるTOSAの特性 ... 81

3.10 まとめ ... 87

4

PLC

ハイブリッド集積による

4

波長多重送信器 ... 89

4.1 まえがき ... 89

4.2 PLCプラットフォーム ... 90

4.2.1 PLCプラットフォームの構造と作製方法 ... 91

4.2.2 PLCプラットフォームの設計と作製 ... 95

4.3 パッシブ調芯による直接光結合の見積もり ... 95

4.4 複数個の半導体レーザのフリップチップ実装方法 ... 97

4.5 DFBレーザ... 99

4.6 PLCハイブリッド集積による基本特性 ... 100

4.7 4波長多重送信器の作製 ... 102

4.8 特性評価結果 ... 105

4.9 まとめ ... 113

5

8

波長

WDM

送信ボードおよび

WDM

受信ボード

... 115

5.1 まえがき ... 115

5.2 AWGを有するPLCプラットフォーム ... 116

5.3 送信器側AWGプラットフォームとDFBレーザ ... 119

5.4 受信器側AWGプラットフォームと屈折型PD ... 122

5.4.1 薄膜半田と半田バンプの一括形成方法 ... 123

5.4.2 複数個の屈折型PDのフリップチップ実装方法 ... 125

5.5 8波長WDM送信ボードおよび受信ボード ... 130

5.6 特性評価結果 ... 130

5.7 まとめ ... 141

6

章 結論 ... 143

6.1 総括 ... 143

6.2 今後の展望 ... 146

略称リストおよび記号リスト ... 149

参考文献 ... 153

(6)

3

研究業績 ... 161

謝辞 ... 175

(7)

4

(8)

5

1

章 序論

1.1

研究の背景

現代社会においては、ヒトとヒトとの間に関わらず、ヒトとモノ、モノとモノといったあらゆる対象間 においてコミュニケーションが取られるようになってきた。こうしたコミュニケーション手段となる電気 通信においては、特に 1990 年代より目覚ましい発展を遂げてきたインターネットがある。インター ネットの普及は、情報通信技術(Information communication technology : ICT)の適用拡大を生み、

そして、21世紀を迎えて以降、あらゆる対象同士が通信でつながる、モノのインターネット(Internet

of things : IoT)が言われるようにまで至った。今やICTに支えられたあらゆる情報資源は、クラウド

コンピューティングにより共有され、仮想空間といえどもそこにはもう一つの世界を成立ならしめて いる。こうした膨大な情報資源の蓄積からも構成されるに至った現代社会は、要求の有無に関わ らず一層常に何らかの情報を取得し相互にやり取りをする、すなわち常時コミュニケーションの世 界である。こうした情報世界を成立させるため、伝送媒体に有線と無線との別を問わずして、その 通信容量をますます増大させている。

伝送媒体に光ファイバを用いる光通信は、現代の通信インフラストラクチャを構成する。光通信 は、伝送媒体である光ファイバと信号光源である半導体レーザの双輪の研究開発の歴史である [1.1]

まず、光ファイバは、1966年に、石英ガラスの純度向上による低損失化により伝送の媒体として 通信応用に足りうることが理論的に予測されたことを始めとする[1.2]。1970 年、波長 0.8 m 帯に おいて理論予測である 20 dB/km という当時としては低損失な光ファイバが開発され[1.3]、これが 光通信実用化への大きな契機となったと目されている。以降、高純度ガラス母材を作製する技術 が進展し、1974年に内付化学気相堆積(Modified chemical vapor deposition : MCVD)法[1.4]に より、実用に供せる光ファイバを作製できるようになった。1973 年に、光ファイバの最低損失波長

帯が波長1.41.7 m帯にあると予想され[1.5]、また1975年に光ファイバの材料分散が零になる

波長が1.3 m帯であることが明らかになった[1.6]。そして、波長1.4 m帯におけるOH基による

吸収損失を低減したことにより、1976年に1.3 m帯においては0.47 dB/kmという低損失化が達 成され[1.7]、続いて1979年に1.55 m帯において0.2 dB/km以下の最低損失が確認された[1.8]。

1977 年、現在の光ファイバの大量生産方法である、気相軸付け(Vapor phase axial deposition : VAD)法[1.9]が開発された。

一方、信号光源となる半導体レーザは、室温での連続発振可能となるGaAlAs/GaAsダブルヘ テロ接合による波長0.8 m帯ファブリペロー型半導体レーザが 1970年に報告[1.10]されて研究 開発が加速する。そして、前出の光ファイバの最低損失波長 1.5 m 帯および零材料分散波長 1.3 m 帯における半導体レーザの研究開発が、これら波長帯の基板となる InGaAsP/InP 系によ って進められた。まず1976年に1.1 m帯の発振[1.11]が確認されて、1977年に1.3 m帯発振

(9)

6

[1.12, 1-13]、そして1979年に1.5 m帯発振[1.14]と続いた。その後、1981年に単一モードで発 振する分布帰還型(Distributed feedback : DFB)レーザが実現された[1.15]

このように、低損失光ファイバと安定に単一モード発振できる半導体レーザを手にしたことで、

光信号の長距離伝送が可能となった。現在、波長分散の小さい1.3 m帯と低損失帯である1.55

m帯が、長距離光通信の波長帯として使用されている。

さらに、光ファイバに希土類元素を添加した光増幅器が、1987 年に報告されてより[1.16]、低損 失光ファイバにおいても蓄積される伝送損失を光のままで補償することが可能となり、伝送距離を 飛躍的に延伸すること可能となった。単芯のシングルモード光ファイバ(Single mode optical fiber : SMF)における伝送容量の拡大は、時分割多重(Time division multiplexing : TDM)伝送方式によ って、伝送信号速度すなわちビットレートを高速化することにより進められた。しかし、半導体レー ザをはじめ変調回路などの周辺電子回路の高速化が電子デバイス限界に迫ろうとしており、TDM 伝送方式に依存した大容量伝送にも技術限界が言われて来た。こうした中で、SMF の伝送容量 の飛脚的な向上を図ったのが、波長分割多重(Wavelenght division multiplexing : WDM)伝送方 式であった。WDM伝送方式は、一本のSMFにおいて複数の異なる波長信号を用いて多重伝送 する技術を用いた方式であり、1990 年代より本格的に導入が図られることになった。そのシステム の基本構成を、図 1-1 に示す。光信号の送信器側には、異なる波長で発振する複数の半導体レ ーザが配置されている。各々の半導体レーザから送信される各々異なる波長による光信号は、波 長合波器により同一のSMFに多重化されてWDM信号となって伝送される。長距離伝送の途中 には相応数の光増幅器が設置されている。そして、これら光信号を受信器側では、まず波長分波 器により WDM 信号を異なる個別の波長信号に分割し、それぞれがフォトダイオード(PD)で受信 される。ここで 用いられる 波長 合波 器と波 長分 波 器としては、石英 系平 面 光波 回路(Planer lightwave circuit : PLC)[1.17]によるアレイ回折格子(Arrayed-waveguide grating : AWG)型波長合

分波器 [1.18]が最も実用的なもののひとつである。

当初、光ファイバ通信は、大陸間海底ケーブル網や、国内バックボーンネットワークや長距離 大都市間ネットワークといった幹線網において導入が図られてきた。しかし、情報量の増大に対応 するため、光通信の適用先は、市内間やビル間といったメトロ、アクセス網はもとよりデータセンタ やビル内にまで及ぶようになってきた。世界のデータセンタのインターネットプロトコル(Internet protocol : IP)トラフィック量は、2015年において4.7 ZByte/年から、2020年には実に 3倍以上の 15.7 Zbyte/年に達するとの予想が報告されている[1.19]。また、我が国におけるインターネット上の トラフィックは、ブロードバンドサービス契約者の総ダウンロードトラヒックからの試算によれば、2015 年において5.4 Tbit/sにも及ぶと推定されており、これは前年比52.8 %増にもなると報告されてい る [1.20]

通信規格のひとつに、IEEE (The institute of electrical and electronic engineers)802委員会で 標準化されるイーサネット (Ethernet)がある[1.21]。コンピュータネットワークの物理層とデータリン ク層を構成するための通信規格であるイーサネットは、ローカルエリアネットワーク(Local area

(10)

7

network : LAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(Metropolitan area network : MAN)、ワイドエリア ネットワーク(Wide area network: WAN)の範囲にわたって利用されており、現在通信規格の主流と なっている。イーサネット規格は、1 Mbit/s から 10 Mbit/s100 Mbit/s1 Gbit/s10 Gbit/s と 時代を追うごとにデータ伝送速度を上げてきており、2010 年には、40 Gbit/s100 Gbit/s の規 格が標準化されるに至っている。各データ伝送速度の規格においては、伝送媒体にメタルケーブ ルを用いて電気信号通信をする規格や、伝送媒体に光ファイバを用いて光信号通信をする規格 がある。

データ伝送速度が上がり、伝送距離10 km以上をカバーするイーサネット規格は、伝送媒体に SMF を使用する光通信である。この中にあって、 データ伝送速度 10 Gbit/s 規格の内の 10GBASE-LX4[1.22]40 Gbit/s, 100 Gbit/s 規 格 の 内 の 40GBASE-LR4, 100GBASE-LR4,

100GBASE-ER4[1.23]については、ビットレートを低速にした 4 つの異なる波長レーンを用意し、

先に述べたWDM伝送方式を応用して、データ伝送速度を得る仕様となっている。ここで、レーン というのは、あるデータ転送速度を持つチャンネルに対し、そのチャンネルデータ転送速度を超え ない範囲で分割されたデータ転送速度を持つサブチャンネルの個々を指していう。よって、チャン ネルは、構成されるレーン全てが同時に動作していることになる。これは、データ伝送速度を単一 レーンで実現するのには、電子デバイスや電気インターフェース等の周辺部品が高速化に追い ついていないこと等、標準化制定当時の技術レベルを総じて考慮した結果、解決すべきハードル が高いということが背景にある。そのため、データ伝送の高速大容量化の要請に応えるべく、複数

(11)

8

の波長レーンに分割することで、レーンあたりのビットレートを現実的なものとし、かつ WDM 伝送 方式を採用することで、標準化が進められるに至っている。さらに、現在標準化策定が議論されて いるビットレート400 Gbit/sの次世代イーサネット規格 400GBASE-LR8[1.24]についても、レーン あたり 25 Gbaud として多値強度変調方式である 4 値パルス振幅変調(4-level pulse amplitude

modulation : PAM4)を採用しレーンレートを50 Gbit/sにまで高速大容量化し、これを8つの波長

レーンを用いるWDM伝送方式によって400 Gbit/sのデータ伝送速度を得る構成が検討されて いる。このように、データ伝送速度の向上には、WDM伝送方式を用いた複数レーン構成による標 準化が、今度も続くものと考えられる。

1.2

研究の方針

通信規格に準拠した信号の送受信を実現するデバイスが、トランシーバである。前節で述べた 背景から、データ伝送速度 100 Gbit/s のイーサネット規格に至っては、伝送媒体が SMFのみと なったことで、今後光トランシーバの開発がますます重要になってくる。光トランシーバにおいても、

ベンダ間の相互互換性を確保するために、その形状や入出力インターフェース配置,形状等が規

定されるMSA(Multi-source agreement)と呼ばれる光トランシーバ業界の仕様が検討され、標準化

策 定 が な さ れ て い る 。100 Gbit/s イ ー サ ネ ッ ト 用 に は 、CFP(Centum form-factor pluggble)-

MSA[1.25]による光トランシーバが標準化されている。第1世代のCFP光トランシーバは、その容

積が160 cc (外形: 82 mm, 長さ144.8 mm, 厚さ13.6 mm)の大きさがある。これは、図1-2(a) に概略構成を示すように、その内部には、異なる発振波長を有するビットレート 25 Gbit/s で駆動 可能な半導体レーザ(Laser diode : LD)を内蔵した4個のTOSA(Transmitter optical sub-assembly) と波長合波器とを、また波長分波器とビットレート 25 Gbit/s で受光可能なフォトダイオード(Photo diode : PD)を内蔵した4個のROSA(Reciever optical sub-assembly)とを、光ファイバを用いて相互 間を光コネクタで接続して組み立てられているものである。ここで、TOSA とは、内蔵する半導体レ ーザにより、電気信号を光信号へ変換する部品のことであり、ROSA とは、内蔵する PD により光 信号から電気信号へ変換する部品のことであり、それぞれがパッケージ内に気密封止された小型 光部品である。CFP は、こうした個別の光部品を組み立てるため、そのサイズが大きく消費電力も 大きいものであった。その後、第2世代のCFP2、第3世代のCFP4MSAが発行され、小型化, 省電力化が追求されている。CFP2の容積は55 cc (外形: 41.5 mm, 長さ107.5 mm, 厚さ12.4 mm)程、CFP4のそれに至っては20 cc (外形: 21.5 mm, 長さ92 mm, 厚さ9.5 mm)足らずに 小型化されたため、第 1世代の CFP のように個別の光部品を組み合わせて構成する形態では、

もはや要求サイズを実現することが不可能である。そこで、図 1-2(b)に示すように、異なる波長で 発振する 4 個の半導体レーザと波長合波器とで構成される機能を気密封止された同一パッケー ジ内で一体化集積したTOSAと、波長分波器と4個のPDとで構成される機能を気密封止された 同一パッケージ内で一体化集積した ROSA の開発が必要となった。これら多波長化に対応した 一体化集積TOSA,ROSAの実現は、第1世代のCFPで見られた相互の光部品間を接続する光

(12)

9

ファイバや光コネクタを不要とすることで、光トランシーバの一層の小型化を推し進めることが可能 となる。

光部品の集積において重要なポイントのひとつが、構成光部品間の光結合損失の低減である。

これは、光通信における光信号は、伝送媒体である光ファイバを介するため、出来るだけ途中の 光学的な損失は排除する必要があるためである。コストやサイズを無視して、途中に光信号再生 機能を実装できる光通信システムであれば話が別であるが、特に汎用性を求められるイーサネッ トにそれを求めることはできない。

以上から、本研究の方針として、複数個の半導体レーザと波長合波器を一体化集積して光送 信器の小型化を図る構成および方法について検討の焦点を絞ることとした。すなわち、図 1-2(b)TOSA 部分を構成するための多波長送信器について論じることとする。また、本研究において 半導体レーザを扱う多波長送信器側の集積化を選定したのは、一般に PD を扱う多波長受信器 のそれよりも光ビームの結合トレランスがサブm オーダーと厳しいため、本研究によって得られる 知見の適用先に、幅広い汎用性が期待できると考えたためである。

1.3

波長多重送信器の構成と研究開発動向

本研究の方針とした複数個の半導体レーザと波長合波器を一体化集積した光送信器の構成

(13)

10

形態に関して、その開発動向から見てみると、図 1-3 に挙げるように、(a)モ ノリシック集積 (Monolithic integration)、(b)ハイブリッド集積(Hybrid integration)、(c)ディスクリート集積(Descrete integration)の三形態に大別して考えることができる。これらの集積形態の間には、明確な区別を つけることできないが、ここでは、以下のように考えることにする。モノリシック集積は、図1-3(a)の概 略図に示すように、複数の半導体レーザと波長合波器を同一チップ内に半導体プロセスによりは じめから一体化集積した形態と考える。ディスクリート集積は、図 1-3(c)に示すように、複数の半導 体レーザと波長合波器を構成する光学部品のそれぞれを寄せ集め、微小な空間光学系を組み 上げることによって集積した形態と考える。そして、ハイブリッド集積は、図 1-3(b)に示すように、ア クティブデバイスである複数の半導体レーザ部分とパッシブデバイスである波長合波器部分とい ったように機能が最適化された光学部品を単位として集積した形態と考え、これはモノリシック集 積とディスクリート集積の中間形態として考えることができる。

1-1 に、SMF を使用するイーサネット規格である 40GBASE-LR4、100GBASE-LR4、あるい

100GBASE-ER4 で採用されている、4 つの波長レーンと波長合波器とを一体化集積して光送

信器を構成することを目標に報告された集積事例をまとめる。ここで光結合系というのは、半導体 レーザと合波器との間の構成をいう。それぞれの集積形態における特徴を以下に述べる。

モノリシック集積は、前工程である半導体プロセスによって全ての機能を一括して同一チップ内 に集積する形態で、最も小型化が期待できる。はじめから機能要素が一体化集積されているので、

後工程での煩雑な光学調芯が不要になるといった特徴がある。しかし、様々な機能要素を同一材 料の半導体基板上に一括形成するため、機能要素別に性能最適化を図ることが困難である。表 1-1における報告例[1.26, 1.27, 1.28]は、モノリシック集積形態によるものである。文献[1.26, 1.27]

によれば、発振波長の異なる4つの半導体レーザと、光合波回路として多モード干渉(Multimode

(14)

11

interference : MMI)型で構成される4入力1出力MMI光カプラが、InP基板上にモノリシック集 積されている構成である。そのチップサイズが、幅2.4 mm, 長さ2.0 mmと非常に小型ではあるが、

光合波回路が4入力1出力MMI光カプラであることから、6 dBもの原理的な光学損失が存在す る。そのため、光送信器の光出力の点で課題が残る。そこで、文献[1.28]によれば、光合波回路 に、多連マッハ・ツェンダ干渉計(Mach-Zehnder interferometer : MZI)で構成するフィルタをモノリ シック集積した形態を採用している。この多連 MZI による光合波器では、モノリシック集積する半

(15)

12

導体レーザの発振波長に整合するように透過フィルタ設計することで、原理的な光学損失が無い 構成にすることができる。しかし、フィルタ透過の中心波長条件と複数ある半導体レーザの発振波 長条件を一括同調させる必要があり、これは半導体プロセス制御性や温度特性等からくる半導体 レーザの最適動作点を満足させることが困難であることから、実用に供するには課題が残るもので ある。

次に、ディスクリート集積を見てみる。この方式は、光源としての複数の半導体レーザに、波長 合波器を構成する光学部品、すなわち、フィルタ、レンズといった微小なバルク光学部品を、組み 上げる形態である。この形態は、構成要素がもともと個別(ディスクリート)であるため、後工程でい かに光学調芯にかかる手間やコストを要せず、光学的結合損失を低減できるかにかかっている。

1-1における報告例[1.37, 1.38]は、ディスクリート集積形態によるものである。文献[1.37]によれ ば、4つの半導体レーザからの光出力を、微小レンズでコリメート光に変換し、帯域フィルタと全反 射ミラーとで構成した波長合波器を介して、レセプタクル内 SMF に対し集光させる、四連コリメー ト光学系で組み立てている。半導体レーザからSMFへの集光光学調芯には、サブミクロンオーダ ーの調芯精度が要求される。ここでは、個々の半導体レーザに対して設置された微小レンズを保 持する金属ホルダに、高出力レーザ光を照射することにより、冷却後に金属変形を誘起させること で、個別のレンズ調芯を可能にしている。このレーザ光照射を所要回数実施する、すなわちハン マリングすることで、光学調芯精度として±0.3 m 以下の高精度を達成している。しかし、個別に 微小レンズ保持金属ホルダを整列し、高出力レーザ照射スペースを確保する必要があるため、一 層の小型化には限界がある。尚、この光学調芯技術は、文献[1.36]に見られるように、波長合波 器を AWG にしてハイブリッドとディスクリートの混成で試みられた報告もなされている。ここでは、

半導体レーザからの出射ビームを AWG の入力導波路へ集光させるレンズの位置決め調芯に、

高出力レーザ照射によるハンマリングを応用している。

文献[1.38]による報告も、4つの半導体レーザと、帯域フィルタと全反射ミラーそして偏波波長フ ィルタとで構成した波長合波器を介して構成する、四連コリメート光学系で組み立てている。ここで は、光学調芯ずれを補償するために、コリメート用レンズの後段にさらに調整用のレンズを挿入し ている。その結果、レンズだけでも 9 個も要する等、構成光学部品点数が多くなり、組み立ての際 に複雑な光学調芯工程を要する。その点、文献[1.35]による報告によれば、微小レンズの光学調 芯と半田固定の機構を MEMS(Micro electro mechanical systems)技術によりあらかじめ集積して おくといった方法も提案されている。しかし、 MEMS技術に期待する可動機構は、組み立て時の レンズ光学調芯工程で一度機能するだけであるため、前工程での半導体プロセス負荷がモノリシ ック集積同様に大きい。

そして、ハイブリッド集積について見てみる。ハイブリッド集積は、前述したように、いわばモノリ シック集積とディスクリート集積の中間形態というべきもので、ここでは、複数の半導体レーザと AWGに代表されるようなPLC導波路型の波長合波器が、レンズ等を介さずに直接光結合して集 積された形態と考えることとする。文献[1.29]によれば、4 つの発振波長を有する半導体レーザア

(16)

13

レイを、AWGに対し、光学レンズを用いることなく、半導体レーザのビーム出射端面とAWG の入 力導波路端面とを直接光結合させた形態である。これは、先にディスクリート集積のところで紹介

した文献[1.36]において、集光レンズを不要にして構成部品を削減した形態とみることもできる。し

かし、文献[1.29]の報告で使用された AWG のサイズが大きいこともあって、CFP4 光トランシーバ に内蔵できるまでに小型化が図られていない。加えて、100 Gbit/s 級の伝送性能を有する TOSA としての言及がなされていないことや、パッケージの気密封止に課題が残る等、コンセプト提案の 域を脱していない。

その他にも、シリコンフォトニクスによる構成等、現時点では性能不十分ではあるが、今後の高 密度集積には期待される集積形態もあり、多波長送信器の構成をとっても多様な形態で研究開 発が進められている[1.39]

1.4

研究の目的

1-4 に、多波長送信器を構成する上で考慮すべき課題を挙げる。まず、光信号を扱うため、

光学損失が低い複数レーンから成る光学系設計が必要である。そして、複数の半導体レーザを、

高速に駆動可能な高周波電気設計が必要であり、さらに、複数レーン構成のため集積密度が上 がり発熱が大きくなるため、放熱設計が必要となる。これら、光学系設計、高周波電気設計、放熱 設計に加え、多波長送信器の小型化が必須な方向にあるため、部品そのものの小型化や構成部 品点数の削減が要請されるところとなる。小型化を推し進めようとすると、新たな組み立て方法の 開発が必要になると共に、特性上では複数あるレーン相互間のクロストークの影響を被り易くなっ てくる。このため、光学系、高周波電気、放熱の相互を意識した送信器設計を試みる必要がある。

こうした中にあって、本研究では、波長レーン数の増大に対応する拡張性すなわちスケーラビリテ ィを追求した、低損失な光学系設計に主眼を置いて、多波長送信器の小型化を目指すことを目 的とした。

(17)

14

(18)

15

1.5

論文の構成

本論文は、検討した光学系構成形態の別に従って、図1-5に示すような関係を持って、以下の 各章により構成されている。また、各章で検討した集積形態の概略構成も併せて図示する。

2 章では、4 つの波長レーンから構成される多波長送信器の研究について論じる。具体的には、

光学系における光学損失低減を図るため、半導体レーザの一部にモノリシック集積形態を取り入 れ、また波長合波器の構成にディスクリート集積形態を取り入れた二連コリメート光学系による4波 長送信器を検討した。ここでは、モノリシック集積半導体レーザとして、2つの発振波長を有する電 界吸収(Electroabsorption : EA)型変調器を集積した分布帰還(Distributed feedback : DFB)型レー

(EADFB レーザ)を設計,作製し、また、ディスクリート集積による波長合波器には、偏波多重を

取り入れた空間光学系を設計した。尚、目標とした動作仕様には、100 Gbit/sイーサネット用光トラ ンシーバの仕様とし、4波長レーンでレーンあたり25 Gbit/sで動作可能な TOSAの設計,作製方 法ついて論じる。さらには、これら検討結果をもとに作製した4 波長 TOSA の特性評価結果につ いてまとめる。

3 章では、多波長送信器の光学系の簡易化によって一層の小型化を図るため、波長合波器の 構成には、PLCによってワンチップで合波機能が提供できる AWG合波器とEADFBレーザとを 直接光結合して構成する 4波長 TOSA の研究について論じる。ここでの集積目標サイズは、100

Gbit/sイーサネット用CFP4光トランシーバに収容可能なTOSAとした。その小型化のため、比屈

折率差が2 %の石英系PLCによるAWGを採用し、半導体レーザからの光出力を直接、AWG の入力導波路に光結合させるハイブリッド集積形態の検討を行った。直接光結合による光結合損 失低減のため、スポットサイズ変換器を集積した EADFB レーザを新たに設計,作製すると共に、

AWGにおいては広帯域低損失化設計を検討した。さらには、これら検討結果をもとにした4波長 TOSAの作製方法と、その特性評価結果についてまとめる。

4章では、多波長送信器の集積度向上を図る目的で、石英系PLC上に直接DFBレーザを複 数個フリップチップ実装した、PLCハイブリッド集積による4波長送信器の研究について論じる。こ こでは、半導体レーザをフリップチップ実装しただけで光軸高さが一致するようにPLCを集積プラ ットフォーム化する設計を試み、かつ光学調芯にはパッシブ光学調芯による実装を採用して、複 数個の半導体レーザを一括して半田固定する方法について検討した。具体的には、4 つの 10

Gbit/s DFBレーザを実装したPLCプラットフォームに、AWGを直接接続して構成した4波長

送信器を作製し、その特性評価結果についてまとめる。

5章では、4章で検討したPLCハイブリッド集積技術を応用し、波長合波器であるAWGそのも のに複数個のDFBレーザを直接フリップチップ実装する形態によって構成する WDM送信器の 研究について論じる。ここでは、今後の波長レーン数を拡張する動向を考慮して、8 レーンの WDM構成を試みた。さらには、この構成技術を、波長分波器である AWG に複数個の PD を直 接フリップチップ実装した WDM 受信器の作製にも応用し、周辺駆動回路を含めたボード化を試 みて、送信ボードと受信ボードの対向した伝送特性を評価したので、その結果についてまとめる。

(19)

16

6 章では、結論であり、各章で得られた結果を要約し、本研究の到達点をまとめる。また、本研 究の今後の展望について述べる。

(20)

17

2

章 二連コリメート光学系による

4

波長多重送信器

2.1

まえがき

本章では、4 つの波長レーンから構成され、これら波長信号を合波する機能を有する多波長送 信器の集積化について論じる。光送信器においては、その光学系における光学損失低減が、光 出力パワーを確保する上で検討すべき重要な課題となる。この集積化検討を行うにあたり、具体 的には、100 Gbit/sイーサネット規格IEEE 802.3ba[1.23] に対応した光トランシーバに使用される 送信側仕様を目標に据えることとした。これは、現在仕様化が完了して最も伝送速度が高い 100

Gbit/s イーサネット規格 IEEE 802.3ba では、SMF を使用する光送受信は、4 つの波長信号を

WDMで合分波することとなったという背景にも沿うためである。また、4 波長集積化における送信 器サイズの目標としては、100 Gbit/s イーサネット規格に対応した光トランシーバ向け業界標準で

あるCFP-MSA[1.25]の第2世代であるCFP2への収容を可能とするTOSAを構成することを目標

にした。

100 Gbit/sイーサネット規格IEEE 802.3baで仕様化されているのは、伝送距離10 kmを保証す

100GBASE-LR4と、伝送距離 40 kmを保証する100GBASE-ER4とがある。表2-1に、これら 規格の主要項目をまとめる。いずれも波長帯1.3mで、周波数間隔800 GHz4波長レーンの WDM伝送方式で、各レーンのビットレートが25.78125 Gbit/sの構成である。本章で目標とするの は、伝送距離 40 km を保証する 100GBASE-ER4 とした。そのためには、平均光出力パワーPavg

が-2.9 dBm以上、動的消光比(Dynamic extinction ratio : DER)が8 dB以上必要である。加えて、

光変調振幅(Optical modulation amplitude : OMA)が、0.1 dBm以上要求されている。光信号の1 レベルの光出力パワーをP1、0レベルの光出力パワーをP0すると、光変調振幅OMAP1-P0で 定義される。平均光出力パワーPavg=(P0+P1)/2 と動的消光比 DER=P1/P0 で、この光変調振幅 OMAを表すと、次式となる。

OMA = P1− P0= 2Pavg

DER − 1 DER + 1

(2-1) ここで動的消光比DERが、最低の8 dBしか得られないと仮定すると、式(2-1)より、平均光出力 パワーPavgが-1.5 dBm 以上必要である。このため、TOSA の光学損失低減と高消光特性設計が 必要となる。

本章では、TOSA の光学損失低減を図るため、図 2-1 の集積概略構成図に示すように、モノリ シック集積とディスクリート集積を混用した集積形態について検討した。まず、2.2節において、2レ ーン分の波長発振を有するふたつのモノリシック集積レーザチップと、レンズやフィルタ等のディス クリート光学部品を集積して偏波多重合波器を構成する二連コリメート光学系について述べる。

2.3節では、二連コリメート光学系の光学的過剰損失を見積もり、2.4節でその構成を有するTOSA

(21)

18

の作製方法について述べる。また、2.5節では、高消光特性を得るため、新たに開発した EADFB レーザアレイについて述べる。2.6節では、これらEADFBレーザアレイと二連コリメート光学系から 成るTOSAの特性評価結果について述べる。

2.2

二連コリメート光学系の構成

2-2に、検討した4つの波長レーンを有するTOSAの構成を示す。まず、図2-2(a)は、文献 [1.26, 1.27]で報告されている、モノリシック集積による構成であり、本章で検討する光学構成の比 較として示す。ここでは、異なる4つの波長を発振する半導体レーザと原理的な光学損失6 dB

(22)

19

(23)

20

有する4入力1出力MMI光カプラがモノリシック集積されている半導体レーザアレイチップ[2.1, 2.2]を用いている。そのため、半導体レーザアレイチップからの光出力が唯一であるため、出射さ れた光ビームのレセプタクル内SMF への入射調芯が1箇所でよい。すなわち、TOSA としての光 学調芯が、光出力部となるレセプタクルを取り付ける工程の 1 回で済む。ここで採用されている光 学系は、半導体チップからの出射ビームをコリメートビームに変換する第1レンズと、コリメートビー ムをレセプタクル内のシングルモード光ファイバへ集光する第2レンズのふたつの光学レンズを用 いて構成されるコリメート光学系である。この単一コリメート光学系を持つ光モジュールの構成は、

4章の図4-20で述べるように、実用化されて通常に用いられているものである。

一方、本研究で採用した構成を、図 2-2(b)に示す。単一コリメート光学系(2-2(a))に対して異 なる点は、半導体レーザアレイチップの構成を2波長ずつにし、それらの合波器を2入力1出力 MMI 光カプラにすることで、原理的な光学損失を 3 dB に低減できることである。このため、使用 する半導体レーザアレイチップは、異なる2 つの波長を発振するものを、2 チップ使用する構成と なる。そして、これら2チップから出射される各々の光ビームの合波方法には、原理的に光学損失 が無い偏波多重を採用した。すなわち、モノリシック集積部分において、MMI 光カプラの合波規 模を半分にして光学原理損失を3 dBにして、ディスクリート集積部分において、偏波多重を採用 することにより、4 波長レーン構成でありながら、モノリシック集積の図 2-2(a)に対して、光学損失を 3 dB改善することができる。

検討する図 2-2(b)の構成詳細をみると、ふたつの半導体レーザアレイチップからの出射ビーム それぞれを、同一のレセプタクル内 SMF へ導く、二連のコリメート光学系から構成されている。偏 波多重回路は、第 1レンズと第 2 レンズとで挟まれたコリメートビーム領域内において配置された 光学部品、すなわち45度ミラー、1/2波長板、そして偏波フィルタとで構成される。

本偏波多重回路による波長多重は以下のとおりである。検討する光学系構成では、第2レンズ 以降の集光位置を共用する、ふたつのコリメート光学系(光路0,光路1)で構成されているとみなす ことができる。ふたつの半導体レーザアレイチップ(レーザアレイ 0, レーザアレイ 1)からの出射ビ ームの偏波は、TE(Transverse electric)モードである。ここで、光路1側のレーザアレイ1からの出 射光については、一旦、45 度ミラーで 90 °光路変換された後、1/2 波長板を介して偏波面を

TM(Transverse magnetic)モードに偏波回転変換させる。その後、偏波回転変換されてTMモード

偏波になった光は、偏波フィルタに入射する。この偏波フィルタは、図 2-3 に示すように、ブリュー スター角 45 °の入射角において全反射特性を有するように設計している。それ故、この偏波フィ ルタ面に対して、45度の入射角を持つTMモード偏波光は、この偏波フィルタによって90度光路 変換されて、レセプタクルの方向へ導かれる。一方、光路0側のレーザアレイ0からのTE モード 偏波光は、偏波フィルタを透過してそのままレセプタクルへ導かれる。すなわち、この偏波フィルタ によって、ふたつの半導体レーザアレイチップからの出射光が偏波多重によって合波されるので ある。

ここで、コリメート光学系の設計において、同一レーザからの出射ビームのレセプタクル内 SMF

(24)

21

への集光レンズ設計であると考えると、図2-2(a)のコリメート光学系と、図2-2(b)の二連コリメート光 学系は、同じコリメート光学系の設計と考えることができ、コリメート光学系における設計で生じる光 学損失は同等であると仮定する。よって、図2-2(a)と図2-2(b)における原理的な光学損失の差分、

すなわち図2-2(a)の構成では、4入力1出力MMI光カプラに光学原理損失6dBがあるのに対

し、図2-2(b)における2入力1出力MMI光カプラの光学原理損失は3dBであるので、原理的に

はその差である3dBの光出力パワー改善を見込むことができるという訳である。

2.3

二連コリメート光学系の設計

二連コリメート光学系の課題として考えられるのが、レセプタクル内SMFに対し、ふたつの光路 から来る各々のビームを、最終的に合わせ込んで集光させる必要がある点である。すなわち、半 導体レーザアレイチップにおける波長合波器の構成を、従来の4入力1出力MMI光カプラから 今回2入力1出力MMI光カプラにしたことで、原理的には3dBの光出力パワー改善を図るもの であるが、実際には二連のコリメート光学系を組み立てる際に伴って発生する光学過剰損失を見

(25)

22

積もることが、設計のポイントとなってくる。以下に、その見積もりについて述べる。

2.3.1

コリメート光学系

二連コリメート光学系の設計の前に、まず基本となる単一コリメート光学系について説明する。

単一コリメート光学系における、レセプタクル内 SMF に集光させる手順としては以下の通りである。

まず、図 2-2(a)のように、第 1 レンズをレーザ出射の近端において光学調芯し固定する。この際、

実際には設計からずれた位置、すなわち誤差のある位置で第1 レンズが固定される。この固定位 置の誤差によって、第 1 レンズによる、光軸方向ずれ、光軸に垂直な方向ずれ、そして光軸に対 する回転ずれが発生する。これら誤差の発生により、第 2 レンズを透過したビームの結像位置が 異なってくる。

次に、どの程度の結像位置ずれが生じるかを、見積もってみることにする。ここでは、見通しを 良くするため、コリメート光学系の構成を、共焦点 2 枚レンズ系として考えてみることにする[2.3]。

共焦点2枚レンズ系は、図2-4(a)に示すように、焦点距離がf1の第1レンズと、焦点距離がf2の 第2レンズの 2枚のレンズを用いて、第1 レンズの焦点距離f1の位置に半導体レーザのビーム 出射端面位置が来るように配置し、また第 2 レンズ透過後の焦点距離 f2の位置にビームの結像 位置すなわちレセプタクル内SMF端が来るように配置し、かつこれら2枚のレンズ間距離を各々 の焦点距離の和f1+f2となるように配置した光学系である。加えて、さらに考察を単純化するため、

半導体レーザからの出射ビーム形状を、SMF同様に真円形の広がりを有するガウス形状と仮定し、

半導体レーザからの出射ビームとSMFのスポットサイズを、それぞれ1と2とする。ここで、スポッ トサイズは、ガウス形状のパワーピーク値から1/e2に減少する半径である。

まず、第1レンズと第 2レンズを固定する位置が、光軸方向についてのみ位置ずれを生じた場 合を考察してみる。その様子を、図 2-4(b)に示すように定義する。各々レンズ位置が、L1, L2だ け光軸方向(z軸方向)にずれがあったとすると、第2レンズ透過後の結像位置ずれzは、

Δz = m2((πω12 λ )

2ΔL2

f12 − ΔL1(1 −ΔL1ΔL2 f12 ))

(2-2) で与えられる。ここで、mは、像倍率と呼ばれるものであり、

m = 1

√(πω12 λ )

2

(ΔL2 f1f2)

2

+ (f1

f2ΔL1ΔL2 f12 )

2

(2-3) である。ここで、一層単純化して考察するため、仮に2枚レンズ間の組み立て距離が、設計通りの f1+f2すなわちL2=0で実現できたとする。この場合、式(2-2)より、

(26)

23

(27)

24 Δz = −m2ΔL1

(2-4)

を得る[2.4]。すなわち、第 1 レンズの光軸方向ずれL1によって生じる第 2 レンズ透過後の結像

位置ずれzは、像倍率m2乗に比例する。通常の半導体レーザに対するSMFへの光結合 では、像倍率mの設計値として 4~6 あたりが用いられる。さて、第 1レンズの搭載固定精度とし ては、組み立てに使用される実装装置の搭載精度にも依存するが、一般に±5 m程度をみてお く必要がある。そうすると、第 1 レンズの搭載位置の光軸方向(z 軸方向)ずれに伴う、結像位置ず れz は、少なくとも∓80 m ~ ∓180 m 程度が発生することを考慮しておく必要がある。その結 果、この光軸方向ずれz分だけを、レセプタクル調芯の際にSMF端面を前後させて光学調芯を する必要がある。

次に、第1レンズと第2レンズの固定位置に、光軸方向(z軸方向)に垂直な方向にのみ位置ず れが生じた場合を考察してみる。ここでも見通しよくするために、x 軸方向にのみ位置ずれが生じ たと仮定し、その様子を、図 2-4(c)に示すように定義する。ここで、各々のレンズにおいて、x1,

x2だけ位置ずれがあったとすると、第2レンズ透過後の結像位置ずれxは、

Δx =f2

f1Δx1+ Δx2= mΔx1+ Δx2

(2-5) で表される。すなわち、第1レンズの位置ずれx1によって生じる第2レンズ透過後の結像位置ず れxは、像倍率mに比例する。この式(2-5)から、第1レンズの位置ずれx1で生じた第2レンズ 透過後の結像位置は、第 2 レンズの位置を調整することで、すなわちx2を調整することにより相 殺することができるということがわかる。さらに、仮に第 2 レンズの調整が多少甘くなっても、レセプ タクル調芯の際にSMF端面をx軸方向に動かすことで、追い込み調芯をすることができる。

以上述べてきたように、コリメート光学系が単一である場合には、組み立て途中で生じる第 1 レ ンズの位置ずれによって生じる結像位置ずれzとxは、まず第2レンズ調芯で、そしてレセプタ クル調芯の際にSMF端面を、それぞれ z軸方向とx 軸方向とに動かして調心することで補償す ることが可能である。

2.3.2

二連コリメート光学系の光学過剰損失の見積もり

本研究で検討する二連のコリメート光学系では、ふたつある半導体レーザアレイチップの各々 の光路から来るビームの結像位置が異なることが想定される。この点が、前節で述べた単一コリメ ート光学系と異なって、二連コリメート光学系における光学過剰損失の主要因となる。よって、この 要因による光学損失見積もりを事前に把握し、第2レンズ透過後のレセプタクル内SMF端におけ る、ふたつの光路からのビームの結像位置ずれを一致させる補正工程を考慮することが、本光学 系を成立させる上で必要となってくる。

まず、光路0と光路1のそれぞれからのビームが、第2レンズを透過して以降、各々結像位置

(28)

25

が異なった場合の光学過剰損失を見積もってみることにする。ここでも、見通しをよくするため、半 導体レーザアレイチップからの出射ビームの形状を伝搬方向に対し真円形の広がりを有するガウ ス形状と仮定する。ここでは、半導体レーザから出射されるビームの遠視野像(Far field pattern;

FFP)における半値全幅(Full width half maximum; FWHM)を35 °と仮定する。これは、スポット

サイズ10.72 m に相当する。ここで、半値全幅 FWHM から、スポットサイズは、次式で求

められる。

ω = λ

πtanFWHM

√2ln2

(2-6) また、光路0と光路1の二連あるコリメート光学系は、同一レンズ設計で光路長も同じ単一コリメ ート光学系を重ね合わせたものと仮定する。使用するレンズ 1 とレンズ 2 における設計像倍率 m=f2/f15 とした。もちろん、ふたつのビームの結像対称は、レセプタクル内 SMF 端面である。

尚、各々の半導体レーザアレイチップから出射される光パワーも、同じであるとする。

2-5 に示すように、第 2 レンズ透過後のそれぞれの光路からの結像位置を定義する。ここで は、レンズや光路途中にあるミラー、フィルタ類の固定位置誤差により、光路0,光路1のそれぞれ からの結像位置が、空間的に異なったと想定し、受光面である SMF 端の垂直方向に沿った光路 0,光路1それぞれからの結像位置の距離をrとし、光軸方向に沿った光路0,光路1それぞれか らの結像位置間の距離をz とする。このように、それぞれの光路からのビームの結合位置が異な った場合、レセプタクル内 SMF 端における光結合を両光路に対して得ようとするならば、両光路 のそれぞれからの結像位置の中間点に、SMF端を持って来るようにレセプタクル調芯を行うことに

(29)

26

なる。すなわち、それぞれの光路からの結像位置にとっては、最適な位置に SMF 端が来ないこと になるため、この点が本光学構成の光学過剰損失の主要因となる。

さて、半導体レーザから出射されたスポットサイズ1のビームが、設計像倍率mで拡大されて、

スポットサイズ2SMF端に入射する際の光結合効率は、次式で与えられる[2.5]。

η = κ exp (−κ (1 2(s

2)

2

( 1

(mω1)2+ 1

ω22) +π2θ2

2 12(z) + ω22) + rθz (mω1)2))

κ = 4

(1 ω2 + ω2

1)2+ ( λz πmω1ω2)

2

ω1(z) = mω1√1 + ( λz πmω12)

2

(2-7) ここで、ふたつのビームの結像位置ずれの間にzとxがあったとしても、設計像倍率mで拡大さ れるとし、結像したビームのスポットサイズを m1とした。また、ふたつのビームの結像位置間の距 離をs (=√Δ𝑥2+ Δ𝑧2)とおき、結像したビームスポットとSMF端との間の距離をz とおいた。式(2- 7)より、光路 0,光路 1それぞれからの結像位置の違いに伴う光学過剰損失を見積もってみる。本 来は、経路途中の光学部品の実装ずれに伴って発生する角度ずれに起因する光学過剰損失 が発生する。しかし、ここでは単純化して考えるため、まず角度ずれは生じていない(=0)と仮定 して、考察することにする。

(30)

27

軸ずれを生じていない(r=0 m, z=0 m, =0)時の、結合効率は、0.24 dBである。これは、

スポットサイズが異なることに起因する光学損失であり、単一コリメート系であっても生じる原理的 なものである。図2-6に、式(2-7)をもとに、光路0,光路1のそれぞれからの結像位置の違いに伴う 光学過剰損失、すなわち角度ずれを生じていない(r=0 m, z=0 m, =0)時の結合損失で正規 化した光学過剰損失の計算結果を示す。この図から、光学過剰損失を、例えば1 dB以内に抑制 しようとするならば、両ビーム間で光軸方向に沿った距離r が一致(r=0 m)していたとしても、

光軸方向に対し垂直な方向におけるビーム間結像位置ずれzは、±4 mも許されないことがわ かる。

さて、本構成の光路1側においては、2枚レンズに挟まれた光路途中に、45度ミラーと偏波フィ ルタが挿入されるため、光路1側を伝播するビームにとっては、これらによって、2回の90 °光路 変換が発生する。後述するように、これら 45 度ミラーと偏波フィルタは、量産性を考慮してパッシ ブ実装するため、実際にはある程度の搭載角度ずれが発生する。そのため、光路1側にとっては、

これら搭載角度ずれが加わることにより、結像先であるレセプタクル内 SMF 端に対して光学的結 合損を生じる原因となる。そこで、次に、この45度ミラーと偏波フィルタの搭載角度ずれに伴う、光 学過剰損失を見積もってみることにする。

ここでも、見通しよくするため、図2-7 に示すように、光路 1側のビームが、ミラーと偏波フィルタ の搭載角度ずれの影響を受けて、光軸に対して合計の角度ずれを生じて伝播し、SMF端に結 像しているものと仮定する。この時、光路0側からのビームは、軸ずれ、角度ずれもなく設計通りに レセプタクル内SMF端に結像しているものとする。すなわち、が生じることによる光学過剰損失 が、光路1側だけで発生するものと仮定するのである。図 2-8に、角度ずれに対する過剰損失 を見積もった結果を示す。この図から、光路1側の光学過剰損失を、例えば1 dB以内に抑制しよ

(31)

28

うとするならば、その角度ずれを、±2.8 °以内にする必要があることがわかる。

さて、各光学部品には、その光学特性を保証する有効径が存在する。本光学構成では、第2レ ンズの前段にアイソレータを挿入している。アイソレータの大型化は、部品コストに効いてくるため、

この有効径iの制限が本光学設計の境界条件のひとつとなる。すなわち、アイソレータの有効径

i内においてビームが透過する範囲で、ミラーと偏波フィルタ双方からのビーム角度ずれを許 容できるように設計する必要がある。なぜならば、この有効径iの範囲から外れてしまうと、ビーム が蹴られてしまい、そもそも光学系自体が成立しなくなるためである。レーザから出射されたビーム は、第1レンズを透過して、そのフィールド径を0.40.5 mm程にまで拡大する。そして、ここでは、

アイソレータの開口有効径iとして、0.8 mmのものを使用するものとすると、そのフィールド周辺に

は、0.15 mm程の余裕があるとみなせる。ここで、アイソレータの入射面から第2レンズを介してレ

セプタクル内SMF端面までの経路長をLiとし、それを5.7 mmとすると、ビーム蹴られが無く許容 できる角度ずれの最大は、約±1.5°(=±tan-1(0.15/5.7))程度である。この時の、光学過剰損

失は、図2-8より0.3 dBであることがわかる。前述したように、角度ずれは45度ミラーと偏波フ

ィルタの搭載角度ずれの合計として仮定した。量産性を考慮し、これら光学部品をパッシブ搭載 することを前提にすると、光学部品実装装置で容易に扱えるようにするため、45 度ミラーと偏波フ ィルタの形状を同一で作製し、さらに、これらを実装固定する先の面状態および固定方法を同一 にできるものとすれば、ミラーと偏波フィルタの搭載精度としては、それぞれに対しての半分の、

/2の角度ずれまで許容できると仮定できる。すなわち、45度ミラーと偏波フィルタそれぞれに求 められる実装精度としては、ビーム蹴られが無く許容できるの最大±1.5°の半分、すなわち

であるから、概ね同じ回転方向に 0.7 °以内の実装精度が要求されるということになる。この

図 2-13 は、 EA 変調器に印加したバイアス電圧 V b に対する各レーンの静的消光比 (Static  extinction ratio : SER)を測定した結果である。この時の各レーンの DFB レーザへの注入電流 I f は
図 3-24 に、 TOSA のケース温度 T c を -10  ℃から 85  ℃の範囲で変化させた際の、ケース温度
図 3-34 に、作製した EADFB レーザアレイチップの写真を示す。チップの素性は、横テーパ SSC を集積した図 3-6 と同じ EADFB レーザであり、 0.25 mm ピッチで 4 波長レーンの並びでウェ ハプロセスしたものを、 4 チップ毎に劈開したものである。チップサイズは、幅 1.00  mm,  長さ 0.92  mm, である。図 3-35(a) に、 EADFB レーザアレイチップを実装したキャリアを、 AWG の入力導波路 端面に取り付けた PLC サブブロックを、図 3-35(b

参照

関連したドキュメント

WINC 構造を有する超小型 MZ-Mode-MUX を提案す る。コア・クラッド間の屈折率差の大きなシリコン導 波路を用いることで、従来の石英系 Mode-MUX に比.

図6 理論データ:81チャンネル FBG の反射スペクトル 4-2 実験結果 次に、我々の数値計算結果を確証するため、いくつかの 45 チャンネル FBG と

1. 緒  言

情報通信 れた状態を示す。幅が CFP の約 1/4 である QSFP+ を採用 することで 1 ラインカード当たりの伝送容量を

Limiting I/F では TIA が電圧増幅をおこない、TIA の出 力電圧で電気信号からクロック情報を抽出するクロック・ データ抽出器(CDR:

1. 緒  言

「 Connected Car」社会における新たなビジネス 自動走行の実現に向けて 車や人の位置情報など

フォトカップラーの出力を 2段の N 訓 Dゲートを介して RB1 低回 32C 入力)に入力している.このゲートを RB3出カによって EEPROM