• 検索結果がありません。

推奨

8

眼症状、全身症状が安定しており、低疾患活動性が得られている症例では コルヒチンの減量、中止を提案する。

エビデンスレベル:

6

同意度:

4.63

推奨度:

B

解説

ベーチェット病眼病変に対するコルヒチンの減量・中止基準は確率されていない。しか しながら、コルヒチンの眼発作抑制効果は強くはなく、コルヒチン投与により長期間眼発 作が抑制されている症例では、疾患活動性が低下している可能性が高い。したがって、コ ルヒチンの投与により眼症状、全身症状が安定しており、低疾患活動性が得られている症 例ではコルヒチンの減量、中止を提案する。しかしながら、コルヒチンの減量、中止に際 しては、眼外症状の有無についても十分考慮し、他科と連携して判断することが大切であ る。

参考文献

なし

117

CQ9

コルヒチン投与中の全身モニタリングはどうするか?

推奨

9

コルヒチン投与中は、診察時の問診や定期的な全身検査を行うことを推奨 する。

エビデンスレベル:

3

同意度:

4.88

推奨度:

A

解説

コルヒチンの副作用として下痢、ミオパチー、白血球減少、血小板減少、精子数減少な どが報告されている1)-4)。またシクロスポリン併用例にミオパチーが発症しやすいことが 報告されている 5,6)。コルヒチン投与前、および開始後の自覚症状の問診、定期的な血液 生化学検査(血液検査:赤血球、白血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板、血液 像など、生化学検査:

AST, ALT,

アルカリフォスファターゼ、クレアチンキナーゼ、ビリ ルビン、総蛋白、コレステロール、中性脂肪、尿素窒素、クレアチニン、電解質など)を 行うことが推奨される。特にミオパチー発症症例では血清中クレアチンキナーゼ(血清

CK

)の上昇がみられることから、血清

CK

値には注意が必要である。ミオパチーを生じ た場合、コルヒチンの中止、または減量を検討する6)

参考文献

1. 三村康男:ベーチェット病の眼病変に対するコルヒチンの使用経験 眼紀. 1975;26:902-908.

2. 斎藤一宇、大口正樹、杉浦清治:Behcet病のコルヒチン療法の検討 眼科. 1977; 19:115-120.

3. 松尾信彦、高畠稔。尾島真、山名征三:ベーチェット病のコルヒチン療法 厚生省特定疾患ベーチェット病調査 研究班 昭和51年度研究業績集:147-151, 1977.

4. Sarica K, Süzer O, Gürler A, Baltaci S, Ozdiler E, Dinçel CUrological evaluation of Behçet patients and the effect of colchicine on fertility. Eur Urol. 1995;27:39-42.

5. 柴田興一、竹内恵、菊池美由紀、小林逸郎、丸山勝一:サイクロスポリン使用中にミオパチーを呈したBehcet の一症例 臨床神経学. 1991;31:847-852.

6. 高本光子、蕪城俊克、吉田淳、沼賀二郎、藤野雄次郎、川島秀俊:コルヒチンにより血清中CK上昇を認めたベ ーチェット病の6 臨眼. 2005;59:1691-1694.

118

CQ10

シクロスポリンは眼発作抑制に対して有効か?

推奨

10

シクロスポリンは眼発作抑制に有効であり、コルヒチンが効果不十分で眼 発作を繰り返す症例に対して、シクロスポリンの投与を提案する。

エビデンスレベル:

1b

同意度:

4.13

推奨度:

C1

解説

ベーチェット病ぶどう膜炎に対するシクロスポリン内服の治験は高用量(

10mg/kg/

)

で行われ、コルヒチン内服(

1mg/

日)よりも有意にぶどう膜炎の再燃を抑制した1)。しか し、高用量のシクロスポリン内服は副作用として腎障害の発症リスクを上昇させるため、

現在では比較的低容量(

3

5mg/kg/

日)での投与が推奨されている2,3)。比較的低容量(

3

5mg/kg/

日)でも眼発作の抑制効果が期待できるが、無効例も

28%

ある2)。このように、

シクロスポリンは眼発作抑制に有効であり、コルヒチンが効果不十分で眼発作を繰り返す 症例に対して、シクロスポリンの投与を提案する。しかしながら、シクロスポリンよりも

TNF

阻害薬の方が、より有効であることが期待できるため、特に不可逆的な視力障害を 引き起こしうる重篤な網膜ぶどう膜炎を有する症例では、シクロスポリンよりも

TNF

阻 害薬の投与が推奨されている4

シクロスポリンは、通常、導入時には1日量

5 mg/kg

を朝夕食後の分

2

で経口投与を開 始する 3。他剤の併用投与がある場合でも、原則

5mg/kg/

日からの導入でよい。

12

時間 間隔で食後に内服させるのが一般的であるが,効果が弱いと判断される症例では,最高血 中濃度を高くする目的で食前投与を行う場合もある。剤型は、マイクロエマルションタイ プのネオーラル®が、腸管からの吸収がより安定している5)

参考文献

1. Masuda K, Nakajima A, Urayama A, Nakae K, Kogure M, Inaba G. Double-masked trial of cyclosporin versus colchicine and long-term open study of cyclosporin in Behçet's disease. Lancet. 1989;1(8647):1093-6.

2. 小竹聡, 市石昭, 小阪祥子, 吉川浩二, 皆川玲子, 松田英彦: ベーチェット病の眼症状に対する低用量シクロス ポリン療法. 日眼会誌 96: 1290-1294, 1992.

3. ベーチェット病眼病変診療ガイドライン作成委員会:Behçet病(ベーチェット病)眼病変診療ガイドライン.

116:394-426. 2012.

4. Yamada Y, Sugita S, Tanaka H, Kamoi K, Kawaguchi T, Mochizuki M. Comparison of infliximab versus ciclosporin during the initial 6-month treatment period in Behçet disease. Br J Ophthalmol. 2010;94(3):284-8.

5. Fujino Y, Joko S, Masuda K, Yagi I, Kogure M, Sakai J, Usui M, Kotake S, Matsuda H, Ikeda E, Mochizuki M, Nakamura S, Ohno S. Ciclosporin microemulsion preconcentrate treatment of patients with Behçet's disease. Jpn J Ophthalmol.

1999.43:318-326.

119

CQ11

シクロスポリンの減量・中止はどのようにするか?

推奨

11

眼症状、全身症状が安定しており、低疾患活動性が得られている症例では シクロスポリンの減量を提案する。副作用が出現もしくは血中濃度が高値 の際には、状況に応じて速やかな減量または中止を推奨する。

エビデンスレベル:

6

同意度:

4.69

推奨度:

B

解説

シクロスポリン投与により低疾患活動性が得られ安定している場合、シクロスポリンの 減量を検討する。減量は症状をみながら

5mg/kg/

日→4mg/kg/日→3mg/kg/日のように1~

数ヶ月単位で緩やかに行う1-3)

日和見感染症、横紋筋融解症、あるいは急性型神経ベーチェット病など重篤な副作用が 疑われる場合には、速やかにシクロスポリンの投薬を減量または中止し、関連診療科の医 師による適切な治療を早急に行う2)

シクロスポリンによる肝・腎機能障害がみられた際にも、シクロスポリンを速やかに減 量または中止する。肝・腎機能障害の確認のために定期的に血清中

AST

ALT

、クレアチ ニン、

BUN

などの測定を行う。血清

AST

ALT

は正常上限値の

1.5

倍未満を保つように する。この値を超えた場合はシクロスポリンを減量する1)。また血清

AST

ALT

が正常上 限値の

2.0

倍以上に上昇した場合は、速やかに中止する。血清クレアチニンは治療開始前 基準値の

1.3

倍未満、

BUN

は治療開始前基準値の

1.5

倍未満を保つようにする。この値を 超えた場合はシクロスポリンを減量する。また血清クレアチニンが治療開始前基準値の

1.5

倍以上、または

BUN

が治療開始前基準値の

2.0

倍以上に上昇した場合は、速やかに中 止する1)。また、シクロスポリンのトラフ値(シクロスポリン

CQ2

参照)が

150 ng/ml

以 上で維持されると腎機能障害の発生頻度が高くなるとの報告がある3)。したがって、開始 初期はトラフ値が

200ng/ml

を超えないようにし、長期にわたり使用する場合は症状の経 過をみながら、トラフ値が

150ng/ml

を超えないように減量する。この値を超えた場合に はシクロスポリンの減量を検討する1-3)

参考文献

1. 望月學、後藤 浩、川島秀俊、岡田アナベルあやめ、両角國男:非感染性ぶどう膜炎におけるネオーラルの安全 使用マニュアル2013年版,pp5-26.

2. ネオーラル添付文書. 日本標準商品分類番号 873999. 20178月改訂(第21版)

3. ベーチェット病眼病変診療ガイドライン作成委員会:Behçet病(ベーチェット病)眼病変診療ガイドライン.

116:394-426. 2012.

120 CQ12-1

CQ12-2

シクロスポリンは神経ベーチェット病を誘発する可能性があるか?

神経ベーチェット病の既往のある患者にシクロスポリン投与は避けるべき か?

推奨

12

シクロスポリンは急性型神経ベーチェット病症状を誘発する可能性があ り、その既往のある患者にはシクロスポリンの投与をしないことを推奨す る。

エビデンスレベル:

3

同意度:

4.94

推奨度:

A

解説

シクロスポリンはベーチェット病患者において急性型神経ベーチェット病を誘発する ことがある1-5)。後ろ向き研究においてベーチェット病の全体の急性神経ベーチェット病 となる患者は

6.6%

であったのに対して、シクロスポリン投与例では

25.5

%にみられ、ま た、シクロスポリン未使用例よりも投与患者では有意に発症率が高かった-5)。シクロ スポリンは他疾患(腎移植など)で神経症状を誘発することは極めて稀(1%未満)で あり、シクロスポリンによる神経症状の誘発はベーチェット病に特徴的な副作用である

3)。すなわち、ベーチェット病はもともと神経症状を発症し易い病態であり、シクロス ポリンに対する易刺激性があると考えられる。したがって、ベーチェット病患者では、

経過観察中に頭痛、発熱、感覚麻痺、運動失調、めまい、意識混濁、構音障害、痙攣、

感情失禁などの神経症状の発現には十分注意する1,2)。また、高血圧症状(頭痛、めまい など)、感染症状(発熱、咳、咽頭痛など)など他の副作用の発現にも注意が必要であ る。ただし、シクロスポリン誘発の急性型神経ベーチェット病は、シクロスポリンと無 関係で発症した神経ベーチェット病とは異なり、シクロスポリンを中止すればその後再 発しないことが知られている5)。また、コルヒチンが急性型神経ベーチェット病の再発 を有意に抑制することが報告されている5)

したがって、シクロスポリンは急性型神経ベーチェット病症状を誘発する可能性があ り、その既往のある患者にはシクロスポリンの投与をしないことを推奨する。

参考文献

1. ネオーラル添付文書. 日本標準商品分類番号 873999. 20133月改訂(第19版)

2. ベーチェット病眼病変診療ガイドライン作成委員会:Behçet病(ベーチェット病)眼病変診療ガイドライン.

116:394-426. 2012.

3. Kötter I, Günaydin I, Batra M, Vonthein R, Stübiger N, Fierlbeck G, Melms A. CNS involvement occurs more frequently in patients with Behçet's disease under cyclosporin A (CSA) than under other medications--results of a retrospective analysis of 117 cases. Clin Rheumatol. 2006;25(4):482-6.

4. Kotake S, Higashi K, Yoshikawa K, Sasamoto Y, Okamoto T, Matsuda H. Central nervous system symptoms in patients with Behçet disease receiving cyclosporine therapy. Ophthalmology. 1999:106(3):586-9.

5. Hirohata S, Kikuchi H, Sawada T, Nagafuchi H, Kuwana M, Takeno M, Ishigatsubo Y. Analysis of various factors on the relapse of acute neurological attacks in Behçet's disease. Mod Rheumatol. 2014;24(6):961-5.