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血栓症の3大要因 ベーチェット病による血栓症の

病態に関与する要因* ベーチェット病以外の血栓症の 原因(鑑別診断)

血流の停滞 赤血球凝集能の亢進 フィブリノゲンの増加 血液粘稠度の亢進 微小循環不全

静脈瘤や動脈瘤による血流の 乱れ静脈や動脈の閉塞

長期臥床(下肢麻痺、脊椎 損傷、脳血管障害)

長距離旅行(エコノミークラス 症候群)

肥満 妊娠 心不全 血液凝固機能の

亢進 トロンボモジュリンの低下 vonWillebrand因子の増加 一酸化窒素の減少 第Ⅴ因子Leiden変異**

Protein C欠損症の合併 Protein S欠損症の合併 血小板凝集能の亢進

Protein C欠損症 Protein S欠損症

アンチトロンビン欠乏症 多血症抗リン脂質抗体症候群

悪性腫瘍薬剤(経口避妊薬、止血薬、ス テロイド)

血管内皮の障害 血管炎

好中球の機能過剰による血管 内皮細胞障害

静脈瘤

手術 外傷 骨折熱傷

各種カテーテル検査 *文献5より改変 処置

**日本人では報告がない

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CQ6

ベーチェット病の動脈病変と鑑別すべき疾患は何か?

推奨

6

高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、感染性動脈瘤、慢性動脈周囲炎を含む

IgG4

関 連疾患、結節性多発動脈炎、バージャー病、閉塞性動脈硬化症、動脈硬化性 動脈瘤など大型および中型動脈に病変を生じる疾患を鑑別することを提案す る。

同意度:

4.50 推奨度: B

解説 高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、感染性動脈瘤、慢性動脈周囲炎を含む

IgG4

関連疾患、

結節性多発動脈炎、バージャー病および閉塞性動脈硬化症などを鑑別する必要がある。静脈 病変と同様、臨床経過、随伴する皮膚粘膜症状、眼症状などの血管外症状が鑑別の決め手に なるが、動脈病変で初発する稀な例においては上記を鑑別する必要がある。

血管病変は腸管病変と共存する頻度が有意に高い1)。高安動脈炎に潰瘍性大腸炎が合併す ることがしばしばあり、皮膚粘膜症状、眼症状も類似することがあるので特殊型ベーチェッ ト病との鑑別を要する。ベーチェット病が

HLA-B*51

と関連するのに対し、高安動脈炎は

HLA-B52

と関連するので、両者の鑑別に

HLA

は参考所見となると考えられる2)

参考文献

1. Ideguchi H, et al. Characteristics of vascular involvement in Behçet's disease in Japan: a retrospective cohort study. Clin Exp Rheumatol. 2011; 29(4 Suppl 67):S47-53

2. Terao C, et al. Takayasu Arteritis and Ulcerative Colitis: High Rate of Co-Occurrence and Genetic Overlap. Arthritis Rheumatol. 2015; 67(8):2262-32

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CQ7

ベーチェット病の肺動脈病変と鑑別すべき疾患は何か?

推奨

7

肺動脈瘤を来す高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、

Hughes-Stovin

症候群を、腫瘤 を形成し、喀血を来しうる疾患として感染症(肺アスペルギルス症,肺結核 症)、悪性腫瘍、気管支拡張症などを鑑別することを提案する。

同意度:

4.79 推奨度: B

解説 肺動脈瘤は無症状で経過することもあるが、喀血、胸痛などの原因となる。皮膚粘膜 症状、眼症状などのベーチェット病が先行し、血管病変が遅れて出現することが多いが、

20~30%

は血管病変が出現するまでベーチェット病の診断が確定しない例、あるいは血管病

変が先行し、経過中にベーチェット病の診断に至る例がある。

肺動脈瘤の鑑別には巨細胞性動脈炎,高安動脈炎、また、頻度は低いが

Hughes-Stovin

症 候

*

Marfan

症候群、

Loeys-Dietz

症候群

**

Ehlers-Danlos

症候群などがある。また、免疫抑 制療法施行中に出現した新規肺病変では感染症の鑑別診断が必要であり、腫瘤を形成し、喀 血の原因になるという観点からは悪性腫瘍も鑑別に上げられる1)。ベーチェット病患者で突 然の胸痛や呼吸困難を生じた場合には肺動脈瘤や肺血栓塞栓症以外に心筋梗塞や解離性大 動脈瘤、気胸なども鑑別する。

*Hughes-Stovin

症候群はベーチェット病の皮膚粘膜眼症状を欠きながらも、その血管病変

と同様の炎症性の肺動脈瘤と深部静脈血栓症

(deep vein thrombosis

DVT)

を主徴とする疾患 で、べーチェット病の類縁病態と考えられている1,2)

**Loeys-Dietz

症候群は

TGF-レセプター遺伝子変異が原因の常染色体優性遺伝の疾患

で、

Marfan

症候群に類似しているが、より広範囲な動脈瘤や動脈解離形成の傾向がある3)

参考文献

1. Seyahi E, et al. Pulmonary artery involvement and associated lung disease in Behçet disease: a series of 47 patients. Medicine (Baltimore). 2012; 91(1):35-48

2. Khalid U, et al. Hughes-Stovin syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2011; 6:15

3. Loeys BL, et al. Aneurysm syndromes caused by mutations in the TGF-beta receptor". N. Engl. J. Med. 2006; 355 (8): 788–

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