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CQ17

急性期の眼発作に対してインフリキシマブによる消炎効果は期待できる

か?

推奨

17

インフリキシマブには急性の眼発作の消炎効果が期待できるが、十分な全 身スクリーニング検査を行った後に導入することを推奨する。

エビデンスレベル:

2a

同意度:

4.19

推奨度:

C1

解説

Markomichelakis

らは、高用量メチルプレドニゾロン静注とトリアムシノロン硝子体内

注射、インフリキシマブの単回投与の

3

群間で眼発作時の急性炎症に対する短期有効性 と安全性を検討している1)。この報告によると、インフリキシマブは高用量メチルプレド ニゾロン静注やトリアムシノロン硝子体内注射に比べ早期に消炎効果および黄斑浮腫の 早期退行がみられた。

このように、インフリキシマブは、速効性と強い抗炎症作用が期待できることから、急 性の眼発作の消炎に対しても有用であると考えられる。

EULAR Recommendation 2018

で は、急性期の視機能低下が懸念される眼炎症発作に対して、インフリキシマブが治療第一 選択薬として推奨されている2)。一方、アダリムマムは、インフリキシマブに比較して、

急性期のベーチェット病に対する治療実績のエビデンスが十分蓄積されていない。

インフリキシマブ導入に関しては事前の全身スクリーニング検査が必須であり、眼発作 直後に導入することは物理的に困難である。十分な全身スクリーニングを行った後に導入 することを推奨する。

参考文献

1. Markomichelakis N, et al. A single infliximab infusion vs corticosteroids for acute panuveitis attacks in Behcet’s disease: a comparative 4-week study. Rheumatology. 2011; 50: 593-597.

2. Hatemi G: 2018 update of the EULAR recommendations for the management of Behcet’s syndrome. Ann Rheum Dis 2018;

77: 808-818.

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CQ18

インフリキシマブの導入により、視力の回復は期待できるか?

推奨

18

インフリキシマブにより、視力の回復を期待できるが、視力の回復は眼組 織の器質的傷害により異なるため、個々の患者のリスクとベネフィットを 勘案して導入の適応を決めることを推奨する。

エビデンスレベル:

4

同意度:

4.38

推奨度:

C1

解説

インフリキシマブ投与により、視力の維持もしくは回復が得られた報告は数多くあり

1-6)、一定の効果は期待できる。インフリキシマブにより得られる抗炎症作用や眼発作抑制 作用が、視機能維持および回復に寄与していると考えられる。しかしながら、炎症発作に より既に不可逆的な、器質的組織傷害をきたした症例においては、インフリキシマブによ りその後の炎症発作による視機能低下を予防できたとしても、現状の視力以上の回復は期 待できないことが想定される。したがって、インフリキシマブの導入に関しては、個々の 患者のリスクとベネフィットを勘案して適応を決めることを推奨する。

インフリキシマブは強力な抗炎症作用により眼発作を予防するため、従来は、既存治療 で効果不十分で失明の危険性のある低視力患者の最後の砦として使用されてきた。しかし ながら、反復した眼発作により不可逆的な組織傷害をきたした後の低視力患者にインフリ キシマブを導入しても、充分な視力の回復は望めない。したがって、現在は、組織傷害を 来す前の視力が良好な時期にインフリキシマブの治療介入を行うことの重要性も提唱さ れている。また、長期観察における良好な治療成績も蓄積されつつある4), 5),6)

参考文献

1. Ohno S, et al. Efficacy, safety, and pharmacokinetics of multiple administration of infliximab in Behçet's disease with refractory uveoretinitis. J Rheumatol. 2004; 31: 1362-1368.

2. Niccoli L, et al. Long-term efficacy of infliximab in refractory posterior uveitis of Behcet's disease: a 24-month follow-up study. Rheumatology (Oxford). 2007; 46: 1161-1164.

3. Al-Rayes H, et al. Safety and efficacy of infliximab therapy in active behcet's uveitis: an open-label trial. Rheumatol Int.

2008; 29: 53-57.

4. Vallet H, et al. Efficacy of anti-TNF alpha in severe and/or refractory Behçet's disease: Multicenter study of 124 patients. J Autoimmun. 2015; 62: 67-74.

5. Takeuchi M, et al. Evaluation of the long-term efficacy and safety of infliximab treatment for uveitis in Behçet's disease: a multicenterstudy. Ophthalmology. 2014; 121: 1877-1884.

6. Fabiani C,et al. Ten-Year Retention Rate of Infliximab in Patients with Behçet's Disease-Related Uveitis. Ocul Immunol Inflamm. 2017 Nov 3 :1-6.

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CQ19

インフリキシマブが無効(一次無効)もしくは効果不十分(二次無効)の症

例にはどのように対応するか?

推奨

19

患者背景を考慮の上、併用薬の追加やインフリキシマブの増量、投与間隔 短縮もしくはアダリムマブへの変更を行うことを提案する。

エビデンスレベル:

4

同意度:

4.63

推奨度:

B

解説

インフリキシマブは抗炎症作用が強く、多くの患者において非常に高い有効性を発揮す る。しかしながら一方で、インフリキシマブが最初から効かない一次無効症例、もしくは 治療経過中に徐々に効果が減弱してくる二次無効症例も一定の割合で存在する。山田ら は、インフリキシマブ投与後

7

週もしくは

8

週頃(次回投与の

0

2

週間前頃)に症状の 再燃を来すことが多いと報告している。すなわち、インフリキシマブの経時的な血中濃度 の低下により、患者の病勢によっては、その疾患活動性を抑制できないレベルになってい ることが推定されている。そのような場合は、シクロスポリンやプレドニゾロンの追加併 用、インフリキシマブの増量や投与間隔の短縮などにより、コントロールが可能であると 報告している1)。また、竹内らの報告でも同様であり、インフリキシマブの投与間隔の短 縮もしくはシクロスポリンなどの併用薬の追加により、症状の再燃がみられた患者の約

90%

で症状のコントロールが可能であった2)

現在、ベーチェット病に対し使用可能な生物学的製剤は限られており、安易な切替は治 療の選択肢を減少させる可能性がある。そのため、インフリキシマブ治療で効果不十分な 症例においては、併用薬の追加、もしくはインフリキシマブの投与間隔の短縮または増量 を検討することを推奨する。しなしながら、ベーチェット病ではインフリキシマブの増量 や投与短縮は認められていないため、そのような治療を行う際は所属施設の倫理委員会で の承認を得る必要がある。それでも無効もしくは効果不十分である場合は、アダリムマブ など他の薬剤へ変更することを提案する。

参考文献

1. Yamada Y, et al. Timing of recurrent uveitis in patients with Behcet's disease receiving infliximab treatment. Br J Ophthalmol. 2011; 95: 205-208.

2. Takeuchi M, et al. Evaluation of the long-term efficacy and safety of infliximab treatment for uveitis in Behçet's disease: a multicenter study. Ophthalmology. 2014; 121: 1877-1884.

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CQ20

眼発作が消失した患者では、インフリキシマブを中断できるか?

推奨

20

眼発作が消失した患者でも、一定の期間はインフリキシマブを中断しない ことを推奨する。

エビデンスレベル:

5

同意度:

4.81

推奨度:

A

解説

眼発作が消失した患者に対してインフリキシマブの投与中断後の経過を評価したエビ デンスは少ない。川口らは、副作用や効果不十分によりインフリキシマブを投与中断せざ るを得なかった患者

7

例のうち、

5

例は従来治療を行うことで

1

年間眼発作を生じること なく寛解状態が維持できたと報告している1)。一方、インフリキシマブの国内第Ⅱ相試験 終了後に実施された長期投与試験では、試験開始までのインフリキシマブ中断期間で眼発 作の再燃が認められている2)。インフリキシマブは、ベーチェット病を治癒させるのでは なく、活動性の炎症を強力な抗炎症作用により強制的に押え込んでいるに過ぎず、投与を 中断すると炎症が再燃することが危惧される。

ベーチェット病による網膜ぶどう膜炎においては、眼発作により失明に至るリスクが懸 念される。また、ベーチェット病は眼外症状を呈することも多いため、そのような症状が ある場合には、眼症状が安定している患者においても、インフリキシマブを継続的に投与 することが望ましい。現在、インフリキシマブの中断に対する臨床研究も進められており、

ベーチェット病の非活動性の程度を慎重に判断する中止基準も検討されている。非活動性 の程度によっては、リスクとベネフィットを十分勘案した上で、中断を検討することは可 能である。

一方、インフリキシマブ治療により

3

年間寛解状態が継続したが、その後に重篤な血管 病変をきたした症例も報告されているほか、類似の報告が散見される3)。中止、休薬後も 関連診療科と連携し、全身的な観察が必要である。

したがって、眼発作が消失した患者でも、一定の期間はインフリキシマブを中断しない ことを推奨する。

参考文献

1. Kawaguchi T, et al. Clinical course of patients with Behçet's uveitis following discontinuation of infliximab therapy. Jpn J Ophthalmol. 2014; 58: 75-80.

2. 申請資料概要(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 インフリキシマブ 平成19126日). 3. Magro-Checa C, et al. Life-threatening vasculo-Behcet following discontinuation of infliximab after three years of

complete remission. Clin Exp Rheumatol. 2013; 31: 96-98.

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CQ21

眼発作が消失した患者では、インフリキシマブの投与間隔を延長すること

は可能か?

推奨

21

眼発作が消失した患者におけるインフリキシマブの投与間隔の延長は基本 的に行わないが、リスク・ベネフィットを十分に勘案し判断することを提 案する。

エビデンスレベル:

6

同意度:

4.20

推奨度:

C1

解説

ベーチェット病において、インフリキシマブにより眼発作が消失した患者に対して、投 与間隔の延長を行い、その後の経過を評価したエビデンスはない。

ベーチェット病患者におけるインフリキシマブの有効性は、血中濃度と相関するという 報告があり 1,2、長期的な有効性を保つためにも血中濃度を維持することが重要となる。

また、一般的に、生物学的製剤に対する抗製剤抗体は、薬剤の有効性を減弱させる要因の 一つと考えられており、その出現率は薬剤血中濃度が低くなるほど高くなることが示唆さ れる3,4

眼発作が消失した患者では、インフリキシマブの投与間隔を延長しても十分な血中濃度 が維持される症例もあると考えられるが、一方で、血中濃度が十分維持されず、症状の再 燃や抗製剤抗体の出現が助長される症例の存在も否定できない。したがって、抗製剤抗体 の面からも、原則的にはインフリキシマブの投与間隔を規定週数(8週間隔)より延長し ないことが望ましいが、投与間隔の延長に際しては、リスク・ベネフィットを十分に勘案 し判断することを提案する。

参考文献

1. Sugita S et al. Relationship between serum infliximab levels and acute uveitis attacks in patients with Behcet disease. Br J Ophthalmol. 2011 Apr;95(4):549-52.

2. 大野 重昭. 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等克服研究事業(難治性疾患克服研究事業))分担研究報 告書 「ベーチェット病に関する調査研究」平成25年度総括・分担研究報告書.

3. Pradeu T et al. The speed of change: towards a discontinuity theory of immunity? Nat Rev Immunol. 2013 Oct;13(10):764-9.

4. Schaeverbeke T et al. Immunogenicity of biologic agents in rheumatoid arthritis patients: lessons for clinical practice.

Rheumatology (Oxford). 2016 Feb;55(2):210-20.