[1]症状、身体所見 (1)
主症状(a)
眼症状(I)
眼所見の特徴ベーチェット病において眼症状としてみられるのはぶどう膜炎であるが、ベーチェ ット病におけるぶどう膜炎は「眼炎症発作」といわれるとおり、急性突発性に生じ比 較的速やかに消退するというのが特徴の一つであり、眼炎症発作と次の眼炎症発作の 間には炎症所見がほとんどみられないことが多い。また、もう一つの大きな特徴は、
眼炎症発作が繰り返し生じるということである。したがって、たった
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度のぶどう膜 炎所見をみてベーチェット病に特徴的な眼所見かどうかを判断するのは難しく、複数 回のぶどう膜炎所見(眼炎症発作)から判断されるべきである。ベーチェット病の眼炎症発作は、非肉芽腫性ぶどう膜炎を呈し、虹彩毛様体を中心 とした前眼部の眼炎症発作、網膜脈絡膜を中心とした後眼部の眼炎症発作、あるいは その両者にまたがる眼炎症発作としてみられるが、発作毎にその部位をかえて生じる ことも多い。また、眼炎症発作の多くは片眼性に生じ、毎回必ず左右どちらか決まっ た眼ということは少なく、左右交互に生じることも多い。両眼同時に生じることもあ る。
(Ⅱ)
前眼部所見前眼部の所見として、毛様充血に加え、前房内、前部硝子体への炎症細胞の浸潤が 細隙灯顕微鏡検査で観察される。その程度は様々であるが、炎症が強い場合には前房 に大量の炎症細胞が前房内に浸潤し、それ
らが沈殿した前房蓄膿を呈するが(図
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)、線維素析出が見られることは少ない。した がって、前房蓄膿はサラサラとしておりニ ボーを形成し、体位の変動により容易に形 が変化する。角膜後面沈着物は微細な形状 であることが多く、豚脂様の形態をとるこ とはない。虹彩後癒着を呈することは少な く、虹彩結節や隅角結節は見られない。び まん性硝子体混濁を伴うこともある。
(Ⅲ)
後眼部所見後眼部の所見として、
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個から複数個の網膜白色斑が散在してみられる網脈絡膜炎 がみられ、時に網膜出血を伴う(図2
)。黄斑部に出現すると直接的な視力低下に繋 がる(図3
)。閉塞性血管炎や強い硝子体混濁を伴うこともある。網膜白色斑は発作 直後には毛羽だった柔らかい印象の白色斑としてみられるが、時間とともに辺縁がは っきりとしたやや硬い印象の白色斑となり、その後消退する。他のぶどう膜炎で見ら れる白色斑よりも比較的速やかに5
~10
日程度で消退するのが特徴である。網膜白図1 前房蓄膿
前房に浸潤した炎症細胞(ほとんどが好中 球)が沈殿してニボーを形成している。
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色斑の消退の後には、その程度に応じた網脈絡膜萎縮、網膜血管白線化、視神経萎縮 が生じる(図
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)。これらの所見は不可逆性であるため、後眼部の眼炎症発作を繰り 返すことは恒久的な視力障害、視野障害などの視機能低下に繋がっていく。(Ⅳ)
検査所見(i)
フルオレセイン蛍光眼底造影フルオレセインを静脈内投与し眼底カメラ あるいは走査型レーザー検眼鏡を用いて連続 撮影をおこなう検査である。ベーチェット病で は、網膜血管の透過性亢進を示唆する「シダ状 蛍光漏出」が全象限にみられることがひとつの 特徴であるが(図
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)、その他、視神経乳頭過蛍 光、血管壁の組織染がみられることが多い。ま た、閉塞性血管炎を呈する場合には、無灌流領 域を示す低蛍光領域がみられ、時には網膜新生 血管を示唆する蛍光漏出がみられることがあ る。(ⅱ)
光干渉断層計眼底に近赤外線を当て、その反射波を解析して網膜の断層像が得られる検査である。
黄斑部に炎症発作が生じた場合にびまん性黄斑浮腫として描出される。また、合併症 図
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網脈絡膜炎(周辺部)網膜白色斑の散在および網膜出血が みられ、硝子体混濁も伴っている。
図
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網脈絡膜炎(黄斑部)黄斑部に網膜白色斑の散在および網 膜出血がみられる。
図
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シダ状蛍光漏出フルオレセイン蛍光眼底造影検査に てシダ状蛍光漏出がみられる。
図
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眼炎症発作(網脈絡膜炎)後の 網脈絡膜萎縮35
としての嚢胞様黄斑浮腫の描出にも有用である。
(V)
合併症(i)
併発白内障長期に及ぶぶどう膜炎に伴い生じてくる白内障である。その成因にはぶどう膜炎の 影響に加え、治療として用いられる副腎皮質ステロイド薬(点眼、眼周囲注射、全身 投与)の影響も混在する。進行すると手術が必要となるが、ベーチェット病では活動 性のみられる時期に手術を行うと眼炎症発作を誘発することが知られており、術前
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か月以上の消炎期間をおくことが望ましいとされる。ただし最近では、事前にインフ リキシマブ導入により術後の眼炎症発作誘発を抑えることが可能との報告もある。(ⅱ)
続発緑内障ぶどう膜炎の経過中に眼圧上昇が見られるものを続発緑内障といい、併発白内障と 同様にぶどう膜炎の罹病期間が長くなるにつれて多くみられる合併症である。ベーチ ェット病でもよく見られる合併症である。多くは点眼治療でコントロールされるが、
重症な場合手術が必要となる。
(ⅲ)
嚢胞様黄斑浮腫嚢胞様黄斑浮腫は炎症の増悪とともに見られることもあるが、炎症の寛解期にも遷 延して見られることがある。副腎皮質ステロイド薬(後部テノン嚢下注射または内服)
に反応し改善が見られることが多いが、反応の悪い場合もある。
(ⅳ)
眼球癆頻回の眼炎症発作による毛様体の組織障害が強いと、房水産生機能が低下し低眼圧 となる。そのまま眼球が萎縮し眼球癆に至ることもある。
眼症状に関する図はすべて以下から転載した。
Behçet
病(ベーチェット病)眼病変診療ガイドライン 日本眼科学会雑誌2012.
(南場研一)