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第3章  フラグメント測定システムの開発

3.4  BCC試験器の製作

図3.20: BCCの構造

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図3.21: BCCの概念図

3.4.2 検出ガス供給システム 1)検出ガスの選択

BCCの検出ガスには、以下に示す4つの条件が要求される。

1.低い電子付着性 2.大きな電子流動速度

3.低いバックグラウンド生成率 4.高い阻止能

1.はフラグメントによって生成した電離電子がドリフト中、ガス原子と再結合することなく、アノードで 完全に収集されるために必要である。フラグメントの入射エネルギーはアノードの信号によって決定され るが、電子がガス中を流動する距離は粒子の飛程によって大きく異なるため、この条件は非常に重要であ る。不活性で化学的に安定な希ガス元素(例えばAr,Kr,Xeなど)を主とする検出ガスとして用いること で、この条件をほぼ満たすことができる。

2.の条件は電子付着を避けかつデッドタイムを低減するのに必要である.前述の希ガスにC02やCH4な どの有機物ガスを数パーセント混合することよって大きく改善され、条件を満たすことができる。

3.の条件は中性子入射反応の場合、検出器自体が中性子によって照射され、ガス中の原子からもフラグ メントが生成され、測定のバックグラウンドとなるためであり、これを満たすためには検出ガスとして荷電 粒子生成断面積の小さい原子番号の大きなガスを用いればよい。

4.の条件は測定対象粒子の上限エネルギーを高くし、ガス圧を低くして、 S/Nを高めるため必要である。

阻止能は原子番号とともに大きくなるので、 3.の条件からも原子番号の大きなガスが有利であるが、図3.23 に示すように、電離箱に用いられる代表的な混合ガスの電子流動速度は一般に原子番号が大きくなるにつ れて遅くなるので、 2.の条件との兼ね合いで決定する。

本研究で用いるBCCでは電離電子のドリフト距離が270mmと長い.そのため、 1.を満たすものの中で 次に考慮すべき2.の条件に着目してガスの種類と圧力を定めた。 1.と2.の条件から最も大きな流動速度を 有するArにCH4を混ぜた混合ガスを選択し、混合率については中性子入射反応を想定した場合、 Cのよ うな軽元素はバックグラウンド荷電粒子を多く生成する恐れがあるので、 3.バックグラウンドの生成と流 動速度の兼ね合い(2.)から、 10%の混合率を選択した。ガスの流動速度はカソード・グリッド電界とガ ス圧の両方のパラメータから決まり、 Ar+CH4 10%ガスの曲線のピーク値にあたる6cm/psecとなるよ うに電界とガス圧の関係を定めた。ガスの流動速度から、本試験器はカソード・グリッド間距離は270mm で一定で、印加電圧の上限が〜l kV(放電のため)であったことから、ガスの圧力を200torrと設定した。

また、ガス圧を上げると、軽粒子に対する感度やガスによるバックグラウンドの寄与が上がるため、本研究 では200to汀を定格値として実験を行った。このガス圧においてカソード・グリッド間の270cmの有感領 域から決定される各粒子の突き抜けエネルギーはα粒子で〜8 MeV、 Li粒子で〜16 MeV、 Be粒子で〜24 MeV、 B粒子で〜32 MeV、 C粒子で〜42 MeVとなっている。

2)ガスフローシステムの構成

中性子によるフラグメント測定では収量が少ないことから長時間の測定が必要になる。長時間の測定で は、検出器構造材からのアウトガスが放出されることが予想され本検出器のガス圧が200 torrと低いため、

アウトガスの影響を受けやすく検出器内のガスの純度が低下しやすい。ガス純度の低下は電離電荷の流動 速度の低下や電子付着などを引き起こし、ガス中に生成した電離電荷が正常にアノードに収集されない状 況を生む可能性がある。

そこで、本研究では検出器内のガスの純度を保つため、封じ切り型ではなく、ガスを流しながら一定の圧 力を保つガスフロー型を採用した。図3.22に本研究で用いた真空排気系と検出ガス供給系の模式図を示す。

本研究のガスフローシステムでは、排気はロータリーポンプで行い、ガスボンベとBCCの間に圧力コント ロールバルブを配置して、供給系の制御を行い、定圧200 torrを保つようにガスを供給する。また、検出 器とロータリーポンプの間にはマスフローコントローラーを配置し、それによって排出量を調整している。

また、検出器はガスフローシステムからゴムチューブもしくは絶縁フランジによって電気的に浮かせた状態 になっており、ガスフローシステムによる電気的ノイズを避けるような配慮している。

ガス圧の調整では圧力測定値からのフィードバックによって弁の自動調整を行っている。真空計(Baratron

Type lO2A absolute presstm gauge ・, MKS社製)は1000 torr‑1 torrの範囲を4桁の精度で測定できるも

のでその出力を015 Vの電気信号で出力する。その出力信号を圧力自動制御装置(MXS社製)で受け取り、

デジタルで表示する。実際の測定では測定前後でそのガス圧が変わっていないことをここから確認した。ま た圧力自動制御装置はBaratronと連動し希望ガス圧を設定すると、 Baratronによって計測された圧との、

差異をなくすようにBaratronの上流にあるコントロールバルブ(MXS社製)によって圧力弁調整を自動 に行うようになっている。また、ガスの封入に当たっては、残留ガスを取り除くため、検出器内とその配管 をロータリーポンプでl to汀以下まで真空排気してからガスを200 torrまで封入した。

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Rduced Electric Field (Y/cnn。rr)

Bduced Electric Field (Y/cT/Torr) 図3.23:検出ガスの流動速度(左上: Ar+ CH4、

Xe + CO2)

Rduced ElecLrlc Field tV/czIPbrr)

nctluced ElecLrlc Field (Y/印jTorr)

右上:Ar+CO2、左下:Kr+CH4、 Kr+CO2、右下:

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3.4.3 データ収集・処理システム

本測定においてはBCCから以下の4つの情報を取り込み,データ収集後に適切な条件を設定してデータ 処理を行うことにする.これによってS/N,粒子弁別など最適なデータを得ることができる・

1.カソード波高情報 2.アノード波形情報 3.プラッグピーク波高情報 4.カソード・アノード時間差情報

本研究では一つの検出器から多くの情報を取得し、それらの同時測定を行うことから,データ収集には多 数パラメータのデータを比較的容易に取り扱うことのできるCAMACシステムを採用した。 CAMACシス テムは,比較的安価に多種多様の信号の取得に対応することが可能であるため、本実験に適している。 BCC では遅い信号を取り扱うため、必要に応じてスロー系のNIMモジュールを採用し、 CAMACモジュールと NIMモジュールを組み合わせて測定システムを構築した。図3.24、図3.25に回路図と図3.26、図3・27に 各信号のタイミングチャートを示す。

1) CAMACハンドラー

cAMAC規格モジュールを使用するために,これらを制御するためのCAMACハンドラーが必要である が,本研究では東京大学原子核研究所の′J、俣氏によって開発されているKODAQ 【124】を用いる。 CAMAC システムは高エネルギー物理の分野で広く使われ,それに対応してデータ収集システムも巨大なものとなっ ているが, KODAQは比較的小規模のシステムを前提に開発されており,ウインドウズ98が搭載された pc7上において動作する。ユーザーはC言語で書かれたソースプログラムおよび環境設定ファイルを書き 換えることにより,データの取り込み,スペクトル表示等の設定を行う。

測定に必要なクレートコントローラとPCインターフェースは、それぞれ東陽テクニカのcc7700と cc/PCIを用いた・

2)信号処理の概要

BCCの測定回路ではアノードの信号のみを利用し、それを2系統に分け、一つを短い時定数で波形整形 することにより、粒子弁別を行うためのブラッグピーク情報を出力させ、もう一方は検出器内に生成した電 荷がアノードで全て収集されるのに必要な長い時定数で波形整形することで、粒子のエネルギー情報を得

る【12叫。

本測定では、図3.24に示すように、新たにカソードからも信号を取得することによって、カソード波高 やカソード・アノード時間差情報を得、飛程に関する情報を得る。また、本検出器を陽子だけでなく中性子 入射反応に対しても対応させるため、カソード信号とアノード信号の同時計数をとることによって、サンプ ル以外で発生したバックグラウンドを除去する【114, 117】。

検出器のカソード信号、アノード信号を電荷積分型前置増幅器(本研究ではORTEC社製142PC)によっ て積分し、 Energy信号とTiming信号の2つの信号を得る80 1系統はリニア系統として波高情報取得のた めに、取得波形に適した時定数を持つ増幅器(本研究ではORTEC社製571と460)によって波形整形・増 幅する。その出力信号を後で述べるゲート信号のタイミングに合うように遅延回路でタイミングを調整し、

vADCのアナログ信号として入力し, AD変換を行う。

もう1系統はロジック系統として、トリガー信号、 VADCのゲート信号、カソード・アノ‑ド時間差の スタート・ストップ信号等の生成に用いる。トリガー信号はカソード・アノードのコインシデンスをコイン

7personaJ Computer

80だrEC社製142PCでは、 Energy信号とTiming信号は同じ形状の波形が出力される

シデンスモジュール(Ⅹ血works社製KN470)によって生成し・ ⅦDCのコンバージョンタイムを考慮 して約150 psec遅延してhterrupt registerモジュール(Ⅹai‑ works社製KC3411)に入力し・ KODAQ に対してデータ収集開始の割り込みをかけるoこのトリガー信号にLatdhモジュール(Kaizu works社製 KN1500)でⅦtoをかけることによって,回路全体の不感時間としている。なお・これらのロジック信号 処理用のモジュールは全てNM規格のものである・最終的にPC ‑取り込む物理量は3つの波高情報(カ ソード、アノード、ブラッグピーク)とカソード・アノード時間差の4成分であり,データ取り込み・表示 と並行してこれらイベントデータをハードディスク‑ダンプする・

3)リニア系統(波高)

ァノード信号のリニア系鍬ま、ブラッグピーク情報とエネルギー情報を取得するため・前置増幅器のEnergy 信号出力をさらに二つに信号を分け、異なる時定数を持つ二種類の増幅器に入力するoカソード信号・ア

ノード信号におけるエネルギー情報を取得する系統で臥増幅器としてORTEC社製571Ampliferを用い た。このとき、増幅器の時定数(波形整形時間)はPIOガスの電子の流動速度(6 cm/FLS l3・4・2参照1)か ら、アノードから最も遠い位置であるカソード付近で生成した電離電子がアノードに届くまでの最大時間 4.5 psを考慮して6psとした。また・この時定数より大きい時定数での測定でも波高値が変わらないのを 確認した。これらの出力はVADC (teclmoland社製C‑TM 405)のアナログ入力レンジ(0から+2・5̀V)

に合うようにゲインを調零し、カソード信号用とアノード信号用のVADCにそれぞれ入力した。

ァノード信号のもう一方のEnergy信号出力は遅延線増幅器(ORTEC社製460)によって短い時定数で 波形整形し、ブラッグピーク情報に関連した波高値を取得する。図3・28にPIOガスの200torrのブラッグ ヵ‑プと一定流動速度(6cmルS )から導出したアノードで観測される時間とプラッグピークの関係図を示 す。おおよそすべての粒子に対して0・2FABでプラッグピークに達することがわかる。・増幅器の時定数は、

ブラッグピーク値を完全に迎える時間で、増幅器が備えている時定数である0・25 FLSを採用した。

ェネルギ‑の波高値とプラッグピークの波高値は増幅器の時定数が大きく異なるため、タイミングは同 じでも、図3.27に示すようにピーク位置が大きく異なる。本研究で用いたVADCはゲート信号にピーク位 置を合わせる必要があり、エネルギーの波高値のタイミングでアノードゲートを作成し、プラッグピークの 波高値は遅延増幅器(ORTEC社製427A)で14 1虚程遅らせて、同じゲートでピークホールドしそれぞれ の波高のピーク値を取得した。

4)ロジック系統(コインシデンス・ゲート・時間差)

ロジック系統では、タイミングを取得するため、前置増幅器出力を速いタイミング検出用増幅器(ORTEC

社製474)で波形整形する。その出力はCFD (Constzmtfraction Discriminator : CANBBERA社製2126A)

9によってあるしきい値以上の波高を持つ入力に対してタイミング信号を出力する。このCFDの出力信号 がカソード、アノードそれぞれのタイミング信号となる。

本BCCでは、カソードーアノード間の流動時間は4・5psと計算されるので・カソードから生成したフ ラグメントはカソード信号が出力されてから4・5FLS以内にはグリッドに到達し、アノード信号を出力するo そのため、測定回路では、図3・26に示すようにカソートアノードが一定時間内にコインシデンス(同時 計数)をしたものだけ、トリガー信号を出力させ、真の信号として取得する。コインシデンス条件を作る ために、時間的にアノードより速く出力されるカソード信号をGG (Gate Generator : K血works社製 KN1500)に入力し、このモジュ‑ルによって信号幅を広げ・同時計数としてみなす時間差を決定する。本 研究では、時間差にゆとりを持たせ8psとしたo作成したカソードゲート信号をアノード信号とともにコ

ィンシデンスモジュールである4FIV (恥ple 4‑fold 1‑veto coincidence:Kaizu Works社製KN470)に入力

〇二の

cf・Dは広いダイナミックレンジ(‑5 mV〜‑5V)を有しており

ジッタが少なく良好なタイミング出力が確認されている。