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データ解析法の高度化一突き抜け補正法の開発一

測定によって得られたスペクトルから、 2次元処理によって各フラグメントのイベントを切り出し、断面 積を導出する。ここでは、イベントデータ処理から二重微分断面積導出までのデータ処理、補正法の詳細を

述べる。

3.7.1 イベントデータ処理

実験で得られたリストデータは、以下の情報が1イベント毎にかかれたバイナリデータとなっており、

●信号識別子

●カソード波高チャンネル

●アノード波高チャンネル

●ブラッグピーク波高チャンネル

●時間差チャンネル

本研究では測定データの二次元イベント処理にはCERNで開発されたPAW(Physics Analysis Workstation) [83]

を用いた15。個々のイベントに対して、二次元処理によって粒子弁別を行い、各測定角度に対するエネル ギースペクトルを導出する。

イベント処理の手順のとしては以下に示すようになる。

1.突き抜けイベントの選別(検出器内で止まった粒子のイベントと突き抜けイベントの識別) 2.検出器内で止まった粒子に関して粒子弁別

3.低エネルギー成分に関して時間差法による弁別

4.エネルギーキャリブレーションによる波高スペクトルからエネルギースペクトル‑の変換 5.突き抜けた粒子イベントに関して、ブラッグピークにより粒子弁別

6.突き抜け波高スペクトルからエネルギースペクトルに変換 7.それぞれのイベントの論理和をとり、一つのスペクトルにする。

以上のようなイベント処理を行い、各粒子に対してエネルギースペクトルを導出し、その後サンプル中や 入射窓でのエネルギー損失に対する補正を行う。得られたスペクトルを立体角、ビーム電流値から導出した 入射陽子フラックス、サンプルの有効原子密度などを用いて二重微分断面積に変換する。以下に詳細につい て述べる。

3.7.2 フラグメントの弁別

粒子弁別は基本的には、図3.89に示すようなエネルギーとプラッグピーク波高の二次元プロットに二次 元ROIをかけイベントを切り出すことによって行う。ただし、プラッグピークでは弁別不可能な低エネル ギー領域や同位体の弁別には時間差情報を用いる。

突き抜けイベントと検出器内で止まった粒子は別々に扱う。時間差情報から突き抜けイベントの選別が行 えるので、まず、時間差0の部分を抜き出し、検出器内で止まった粒子に関して、ブラッグピークによる弁 別を行う。突き抜けイベントと低エネルギー領域の弁別に関しては、後節で詳しく別途に述べる。

16その際、 KODAQシステムのバイナリデータフオートマットとPAW用のバイナリフオートマットは異なるため、茨木氏によっ

て書かれたプログラム(sortkdq.i) [58]を用いてPAW用のデータフォーマットに変換して行った,

3.7.3 エネルギー校正

測定によって得られたスペクトルの波高値(チャンネル)からエネルギーに変換するため、エネルギー軸 の校正を行う。エネルギー校正では、まず増幅器からADCまでの測定系の校正をリニアパルサーによって 行い、パルサーを用いて一定間隔の波高値をアノード、カソードのプリアンプのテストパルスに入力して、

実際の測定系で測定する。得られたパルサーの値に対する波高値を最小自乗法でフィットし、エネルギー軸 の校正を行う。パルサー値が0の値に外挿して、波高値の0点をカソード、アノード共に求める。

パルサー波高値の校正にはエネルギーの分かっている241Am α線源と実際のフラグメント測定時に得ら れたα粒子や3Eeの突き抜けイベントのエッジを用いた。 241Am α線源からのα粒子は厳掛こは単色では なく、主なものは

Eα ‑ 5.486 MeV (86%)

5.469 MeV (12.7 %)

であり、本研究のBCCはこれらのピークを分離する程の分解能を有していないので、ここでは・ Eα ‑ 5・49 MeVと仮定した。また、荷電粒子用検出器の場合、 α粒子は検出器外部から入射するため、入射窓でのエ ネルギー損失を計算によって補正している。一方、突き抜け粒子のエッジ臥粒子の飛程が検出器長さと等 しくなる点であり、検出器の有感額域の大きさによって決まり、検出器のガス圧が一定であれば、各粒子の ェッジのエネルギーは常に同じ値となる。これらのエネルギー値がわかる粒子を用いて以下の式から波高 値の校正を行った0

3.I.1節で述べたグリッド電離箱の原理より、粒子のエネルギーはアノード波高値(Pa)とカソード波高 値(Pc)を用いて、 3.15式で表される。

E=Pa+qPc

(3.15)

Uは遮蔽不完全度であり、グリッド・アノード間距離とグリッド構造によって、 (3・7)式で決定され、本 傾出器では3.63%である。また、 Pcは3・5式において、荷電粒子用の実験体系では、検出器に入射するフ

ラグメントはコリメートされているため、 0巴0とみなせ、

pcwc・E・(1一芸) となる。まず、 Eと豆によってPcを校正し、

Pa=E‑qPc

(3.16)

(3.17)

より、 Pcを用いてアノード波高も校正する。

ここで、粒子が検出器に付与するエネルギーEと引まSRIMコードの値をもとに導出したoエネルギー 校正で用いた粒子とそのエネルギー、虎の値を表3,11にまとめる。また、図3・93に、 PIOガス200torrで 計算された各粒子の5の値をエネルギーに対する関数として示すo得られたキャリブレーション値は各粒 子に対して、検出器のエネルギー分解能の範囲内で一致することを確認した。

表3.ll:エネルギー校正で用いた粒子とそのエネルギー、房の値 particle Energy (MeV)

豆(cm)

a (241Am)    5・20   8・48 α (detector range)  8・28  18・03 3Ee (detector range)  7・46

18.25

U 0 0 0 0 免ニニナメ ラ$ニ

‑‑.‑‑?ie  llB 

‑12C 

llll 

01020304050 

Energy (MeV)

図3.93: Plo 200 torrでの各粒子の豆の計算値

113

3.7.4 二重微分断面積の導出

二重微分断面積は次式によって導出される。

些堕遡一響×育てて×;一面

l 1

dEdn ここで、

(3.18)

幾許‥二重微分断面積(I)ouble Difrerentialcross‑Section : DDX) (cm2/(sr・MeV))

響:測定角度郎こおけるエネルギービン:△E (MeV)あたりの収量

N‥サンプルの原子数密度(atom/cm3) t:サンプルの厚さ(cm)

Ⅰ:入射陽子数 e:幾何学的検出効率

△n:サンプルに対し検出器がはる立体角(sr)

ェネルギ‑ビンは統計量によって決定し、リチウム以上の核種ではl MeVでパンチング処理を行い、収 量はl MeV当りに直して規格化した。

サンプルの原子数密度は、ポリプロピレンサンプル(密度: 0.90g/cm3)の場合、.水素と炭素の高分子 材料であるが、水素によるフラグメント生成は原理的に無いので、炭素の分だけの密度に換算して用いた。

また、図3.94に示すように、サンプルの向きは測定角度に対して垂直になるようにした。陽子ビームが通 過するサンプルの実効的な厚さはサンプルの向きによって異なり、図3.94に示すように厚さをdとすると 測定角度βによってd/cosβとなる。

測定系の立体角nはビーム径(ビームプロファイラーから決定)とカソード極板の20mm少のコリメー タによって決まり、以下の示すベッセル関数を用いて表した平行円板どうしの立体角の計算式【7】によって 導出した。また、 3.19式で得られた立体角は4Wで規格化して用いた。

n=誓(.‑;(02・W2)+筈(要害.拘2)一芸(撃・芸鎖岬‑2))) (3・19,

4・=RB/L w=Rd/L

R8:泉源の半径

Ftd:検出器の半径(カソードコリメータの半径) L:線源・検出器間距離

荷電粒子用BCCは入射窓にサポートグリッド(Ta)を用いている.用いたグリッドはフラグメントの飛 程に対して十分厚い(0.1Ⅱ皿)ので、グリッド部分に入射したフラグメントはそこで停止し、検出器には 入ってこない。そこで、グリッド領域の面積を入射窓の面積から差し引くことによって、幾何学的検出効率 を決定し、 94.1 %とした。決定した立体角を含めた検出効率は表3.12に示すように、 241Am α線源によっ て実験的に決定したものを5 %以内で再現することを確認した。

図3.94:サンプルの有効厚さと立体角

̲   表3・12:立体角の計算と実験値の比較

source solidangle (Sr) Bq (decay/ら) Counts

De肋radius

Live time (ら)

AMR23 (241Am α) 1.59 × 10‑3    5340    972   1451

Calculation 1.66 x lO 3

3.7.5 低エネルギー領域への拡張

プラッグピークによる弁別では低エネルギー領域の弁別に原理的な限界があること臥3・2節で述べた。

本研究では、低エネルギー領域の弁別臥時間差法(時間差とエネルギー波高値の二次元プロット)によっ て行う。図3.95に時間差とエネルギー波高値の二次元プロット図3・90の低エネルギー部分の拡大図を示す が、同じ測定において得られたブラッグピークとアノードの二次元プロット図3・89と比べると低エネルギー まで弁別できている。

実際に両手法で各粒子のエネルギースペクトルを導出し・比較した図を図3・96に示す。また・それぞれ の粒子に関しての弁別限界値を、プラッグピークによる弁別の原理的な限界と共に表3・13に示+・ブラッ グピーク法ではほぼ粒子の原子番号Zが限界となっているが・時間差法ではほぼプラッグピーク法の原理 的な弁別限界まで弁別できている。

よって本測定で臥低エネルギー領域の弁別に時間差法を適用したo

表3.13:粒子弁別準による弁別限界の比較         一‑

Time differece method Brags peak threshold atomic number Brags peak method

particle

2       ‑2 MeV 〜0.8 MeV 0.6 MeV 3     ‑4 MeV     ‑2 MeV l・7 MeV 4     〜5 MeV     〜3 MeV     2・75 MeV 5     ‑6 MeV     〜4 MeV      3・S MeV

6      ‑6 MeV      〜4 MeV 4 MeV

図3.95‥図3.90の低エネルギー部分の拡大図

αLi Be ち C

L A J   C J

( ) t J ( ) , J

F

r

)

l

JL Je .I et Ja SJ nd

^B Je ua eJ oJ yp d

ol oO 粕、ニニツ ++‑.‑OOoooooOooooooooooooooooooooooo 

● 

●0 

0‑1 .oO i0‑1  ィヌニニ儼fHニF F D R

‑一一■■■ 

llll 

●●●SoOooOoooooOo 

●o 

L0‑2 LOO lO  lO  LOO 10  lO  loo 10  10   トニ

●lO.llt ‑■■■ 

一 

一 

Be 

tlll  llll 

8旬脅昏Ooo 

一 

OB 

[email protected] 

■‑ 

.+oooo 

●oc 

llll 

0246810 

Energy (MeV)

図3.96:時間差による弁別とプラッグピークに弁別によって得た各粒子のエネルギースペクトルの比較

117

((

JS ,A a M) Jq u) tu TD ad s J au

3.7.6 高エネルギー領域への拡張

3.3節で述べたように、突き抜け成分では粒子は全エネルギーを付与せず突き抜けてしまうため、落とし たエネルギーは部分的であるので、検出器内で止まった粒子とは別に取り扱う。時間差0の部分を抜き出 し、そのイベントをエネルギーvs.プラッグピーク波高の二次元プロットで表示することによって・図3・97 のように突き抜けを粒子だけ表示させることができる。この二次元プロットで各粒子に対してROIをかけ ることによって、各粒子の弁別を行う。

3.3節で述べたように、突き抜けの粒子のAE情報からEの情報を引き出す。実際には・各粒子に対して 検出器長さに対するAE2を計算によって求めそれと入射エネルギーEinの関係を、以下の式によってフィッ トし、 Einを△Eと各粒子による4つのパラメータで決定される関数で表現した。表にフィットで・得られ た各粒子に対するパラメータを示す。図3.98にフィット結果を示すが全体わたってよくフィットできている のがわかる。

‑▲ZE      ‑▲E

Ein =Ed+aleT +a2eT

Ein =補止によって生成される入射エネルギー Ed =検出器に落とす最大エネルギー

(検出器長さのレンジをもつ粒子のエネルギー) AE=検出器に付与したエネルギー

al,a2,bl,b2:粒子によって決定されるパラメータ

表3.14:フィットで得られたパラメータ particle Ed al a2  bl b2

α   8.35  86.08 1.526 394.3 0.384 7Li 15.96 454.19 1.091 123.81 3.69 7Be  21.28 1708.76 1.039 170.76 5.28

ここで、

(3.20)

このフィットで得られた関数を用いて、ベリリウムのスペクトルに適用した結果の例を図3・99に示+o補 正値は接合部で滑らかにつながっており、そのエネルギーもkinematicsから予想される最大エネルギー付 近まで求められてることが確謬された。この補正によって測定エネルギー領域は、補正を行わない場合に比 べ2倍程度まで大幅に拡張された。