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第3章  フラグメント測定システムの開発

3.5  BCC試験器の特性の検証

試験器を用いて、 BCCの検出器特性、データ処理手法の妥当性を検討するために次の検証を行った。

1.飽和特性試験(ガス、グリッド) 2.電界の一様性

3.5.1 飽和特性試験

BCCの動作を保証する上で、電離箱領域内に十分な電界が形成され、電離電子が完全に収集されている ことを確認する必要がある。本研究では3.4.2節に示したようにPIOガスを採用し、その流動速度の最適 値などの考察から、そのガス圧を200to汀と決定した。この条件で、 241Amからの5.49MeVQ粒子のピー

クチャンネルを観測し、カソード電圧を変えいくことで飽和特性試験を行った。飽和特性は一般的に電極間 電界eのガス圧Pに対する比の関数(e/P)として出力波高を観測することにより調べるが、本研究ではガ ス圧は200torrと決定しているため、カソード電圧の関数として測定を行った。同時に、エネルギー分解 能の測定も行うため、測定に用いた241Am線源を1cmの距離で1Ⅲum少のAl窓によりコリメートし、エ ネルギー分解能の劣化を引き起こす成分をAlコリメータで検出器手前で除いた。

図3.29に測定された241Amからのα粒子のスペクトルをしめすが、 5.49 MeVに対応したピーク状のス ペクトルが得られた。このときピークの半値から測定系のエネルギー分解能は250keVと測定された。ス ペクトルの低エネルギー領域に見られるテール成分はコリメータのエッジ部分でのエネルギー損失やBCC ガスでの後方散乱などによりエネルギーを一都失ったものと考えられる.

グリッドをグラウンドに落とし、グリッド・アノード電圧比を固定してカソード・グリッド間の電界を カソードの印加電圧を変えることによって変化させた。カソード電圧の変化のもと、 241Amからのα粒子 のアノードスペクトルにおけるピークチャンネルの変化を図3.30に示す。エネルギー分解能はまだ十分で はないが、およそ‑ 500Ⅴあたりから飽和が達成されており、本研究においてはカソードの印加電圧とし て‑ 800Vを用いた。その領域では十分な電圧が印加されているといえる。

次に、アノード・グリッド間とグリッド・カソード間の電位差の比V^G/Vocを変化させることにより、

アノードの印加電圧がグリッドにおける電子捕獲を防止するのに十分な値であることを検討する。アノー ド・グリッド間とグリッド・カソード間の電圧比の変化のもと、同様に241Amからのα粒子の測定を行っ た。図3.30に241Amからのα粒子のアノードスペクトルにおけるピークチャンネルの変化を示す。およそ 0.1あたりから飽和状態となっている。当初、 3.10式に基づいてVAG/VToc=0・10と設定して実験を行って

いたが、安全のためにこれより高いV.lG/VGCを0.15に設定した。

241Amα Spectra

2    4    6    8

α particle energy 【MeV)

図3.29: 241Amからのα線スペクトル

H.V. (Cathode) [夢S1

200  400  600  800 1 000

● SaLturation curye (gas)

o Sa:ttmtion curve

0.1      0.2

H.V.(Anode)nlV.(Cathode) [野id]

図3.30:飽和特性(ガス、グリッド)

0 0 0 0

2

1

( q

3 )

P J

a P

O u

V

3.5.2 リングによる電界の一様性

飽和特性結果から検出器にかける電圧はカソードー800Ⅴ、グリッドOV、アノード120Vと決定した。そ こでリング電極にはカソート800V・グリッドOV間に一様電界が形成されるように、抵抗分割によって 電圧をかけるが、このリング電極は無限平板ではないので、その形状によって検出器内の電場がゆがむ可能 性がある。そのため、この検出器ジオメトリーでの電場について計算を行った。

比較的粗いメッシュにおいても、比較的少ない反復計算で高い精度の計算が可能である有限要素法に着日 し、静電場の計算においてよく用いられるRelimtion法に基づいて電界計算を行った【12司。条件として2 次元上に147×308点を打ち、端の4辺をグランドに保ち、カソード・アノード・グリッド・リングを実 際の配置に合わせて配置し、各々の印加電圧を一定に保った。そのような条件でRelaDCation法を用いて極 板以外の場所について計算を行った。

計算結束を図3.31、図3.32に示+.そのうち、中心に当たる分布、リングから1Ⅱ‑内側に当たる分布、

中心から25mm外側にあたる部分について、カソード・アノード間の電界の様子を見ると、図3・32のよう に半径25 Elnにおいても電界が一様に形成されていることが示された。またリングから1 mm内側に当た る分布ではリング形状による電界のゆがみが確認されたが、その領域はリングのわずか外側のみであった。

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aOe 

‑800      120

図3.31:電界計算二次元プロット

1 00     200     300

Distance from cathod (m)

図3.32:電界計算一次元プロット

0 0   0 4

( >

) p

t a

t J

D P

t 9

9 t

3.5.3 BCCのフラグメント入射に対する応答試駿

試作したBCCを用いて核子入射反応によるフラグメント測定予備実数を行い、実際にフラグメントを 入射さ、検出器の粒子弁別特性や測定回路の妥当性を評価した。特に以下の項目について、整備・試験を 行った。

1.散乱チェンバー 2.粒子弁別能 3.計数率

フラグメントの入射試験は放射線医学研究所サイクロトロン施設において、 70 MeV陽子で炭素、アルミ ニウムのターゲットを照射し、 300方向発生したフラグメントをBCCに入射させることによって行った。

大気中では、フラグメントはそのエネルギーをほとんど失ってしまい、検出器の有感領域まで到達できな いため、図3.33、図3.34に示すような真空チェンバーを新たに作製し、サンプル・ BCC間を真空状態に 保つようなシステムを構築した。

図3.33:陽子70 MeV入射反応実験体系

1)散乱チェンバー

新たに作製した真空チェンバーでは、図3.34に示すように、 8つの角度に固定したポートを取り付けた。

それぞれの角度は入射ビーム方向に対して、 Oo方向が2つ、 300方向が2つ、 450方向が4つとなってい

る。各ポートは入射ビーム側から見るとOo、 300、 450、 600、 90ox2、 1200、 1350、 1500と多くの

角度のポートで構成され、検出器の配置を換えることによって多くの角度情報が取得できる。

通常、 Ooのポートは入射ビームの入口と出口であり、出口のポートはカーボンからなるビームダンプと なっている。ビームダンプはチャンバーから絶縁物のテフロンを挟み込むことによって電気的に隔離し、入 射電流値つまり、入射粒子数を測定する。他のポートではフラグメント測定用のBCC‑の接続ポートの他

に、真空を破ることなくサンプル交換を行うサンプルチェンジャーの入るポート、検出器のエネルギーキヤ 1)ブレーションに剛、る241.h壕準α簸演頼入口、ビームビューア氾のぞき窓、ロータ1)‑ポンプにつな がる真空排気口からなっている。また、真空排気の際にBCCの入射窓に大きな圧力差が生じないようにす

るため、 BCCと真空チャンバーは圧力的に均等に排気・吸気される必要があり、そのためのBCCと真空 チャンバーを接続するためのボートが用意されている。

図3.34:散乱チェンバー

2)粒子弁別能・計数率試簾

測定サンプルとして、ポリプロピレン4〝m厚、アルミニウム2J皿厚、回路調整・動作試験用として厚 い炭素箔100 J皿厚を用いた。サンプル厚の決定に関しては後節で詳しく述べる。

陽子入射反応試験の概要を図3.35に示す。サイクロトロンで70 MeVに加速された陽子ビームはサイク ロトロン側のカブトン100〝m厚のビーム窓を通過し、ターゲットチャンバー側の入射窓25〝m厚のマイ ラーフイルムを通過し、ターゲットチャンバー内に入射する。ここでの入射ビームのエネルギーロスは入射 ェネルギ‑70MeVに対して数100keVと小さく、フラグメント測定にはほとんど問題にならない。入射 ビームはサンプルを通過後、ビーム量測定のために炭素元素で構成されるビームダンプに入射する。測定時 のビーム量は〜2nAであり、ビーム径はZnSビームビューアで確認し、 〜5mm少であった。サンプルか ら放出されたフラグメントはBCCと真空チェンバーのしきいであるPl1‑さ2.5pmのマイラー膜(20mm¢) を通過しBCC‑入射する。ここのマイラー膜にはBCC側のガス200to汀と真空チャンバーとの圧力差が 生じるため、タンタルのm血(30mesh,0.1×100×100mm ;ニラコ社製)で支持した。 BCCに入射した フラグメントはカソード極板以前のガスで生じた電荷を取り込まないようにするためのカソードと等電位 のシールド電極(Al2 pm, 10 mmQ)、カソード電極(A1 2 FLm, 50mm¢)を通過し、電離箱領域に達する。

測定系の立体角はシールド電極のコリメ‑ション径で決定され、 1.26×10 3 srとなっている。また、 BCC 有感部までのフラグメントのエネルギーロスを少なくするために阻止能の小さく、薄いものが手に入り易

いアルミニウム箔を電極に用いているが、中性子入射を対象として設計したため、シールド電極とカソー ド電極に加えてさらに入射窓の2.5Fbmのマイラー膜を入れる必要があった.そのため、フラグメントはこ の三枚の箔を通過することとなり、大きなェネルギ‑損失を生じる。このエネルギー損失は比較的大きく、

後で述べるように測定エネルギー下限を悪化させており、試験器の改良すべき点の一つである。

図3.36にポリプロピレン4J皿サンプルから得られたアノードのエネルギー信号・ブラッグピーク信号 の2次元スペクトルを示す。プラッグピークによる粒子の弁別は図3.37に示したTRJMによるシュミレー ションで得られたものと近い形で、明瞭に行えているoこのとき、ビーム電流値は数nAで、照射時間は20 分程度であった。計数率としては、十分であり1日8時間のマシンタイムの中で十分統計の良いデータが取 得できることがわかった。この結果によって検出器の粒子弁別性、プラッグピーク・エネルギー測定回路の 妥当性が示された.なお、核種の同定・エネルギーキャリブレーションは、 241Amα線源を用いて行った。

241Ama線源によって得られたプラッグピークvs.アノード波高の二次元プロットを図3.36に、プラッグ ピークとアノードに関する波高スペクトルを図3.44に示す。