第 2 章 ASR と凍害環境下における道路トンネルの実態調査とその評価
2.3 ASR が発生したトンネルの劣化の特徴と対策の実態調査
2.3.3 ASR が発生したトンネル覆工の表面水分率調査
ASR におけるアルカリシリカゲルの給水による膨張はコンクリートの相対湿度が80%以 上の場合に生じやすくなることが調べられている28)。そこで,間接的ではあるが,ASRが 発生した覆工コンクリートの表面近傍の含水状態を調査するため,写真2.3.4に示す高周波 表面水分計を用いて表面水分率の測定を実施した。測定方法は,覆工コンクリート側壁部 の地上高1.5mの箇所で,1箇所の測定で20cm間隔の格子状に9点を測定し,その平均値 を測定値とした。使用した測定器の測定可能範囲は0~12%であり,コンクリート表面が漏 水している箇所では測定できない。
ASRが発生したトンネルのうち,在来工法で建設されたトンネル3箇所およびNATMで 建設されたトンネル3箇所について表面水分率の測定を行った。図2.3.5には在来工法のト ンネルの測定結果を,図2.3.6にはNATMのトンネルの測定結果を示す。測定は,坑口から 覆工1スパンごと(10.5mまたは7m)に行い,トンネル坑奥へ向かって実施した。図2.3.5
および図2.3.6の横軸はスパン番号で,左端は坑口を表す。なお,NATMトンネルⅡは延長
写真2.3.4 高周波表面水分計による覆工コンクリート表面の測定
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図2.3.5 ASRが発生したトンネルの覆工コンクリートの表面水分率の測定結果
(在来工法)
7.3
5.4 9.9
6.2 7.0
6.4 5.1
6.1 7.3
5.1
4.4 4.6 4.7 4.6 4.5 4.7 4.5
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
覆工表面水分率(%)
スパン番号(7m/スパン)
在来工法 トンネルⅠ
坑口 ASR外観劣化あり
〃 なし
9.1
5.5 5.6 5.3
6.7 6.3 6.2 6.7 6.4
8.7
6.9 7.4 8.5 8.3
9.3
5.6 5.2
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
覆工表面水分率(%)
スパン番号(10.5m/スパン)
在来工法 トンネルⅡ
坑口 ASR外観劣化あり
〃 なし
4.8 5.0 4.5 4.8
7.5
5.1
3.5 4.9
4.0 4.0 4.4 4.4 3.8 4.4
3.8 4.0 4.3
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
覆工表面水分率(%)
スパン番号(10.5m/スパン)
在来工法 トンネルⅢ
坑口 ASR外観劣化あり
〃 なし
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図2.3.6 ASRが発生したトンネルの覆工コンクリートの表面水分率の測定結果
(NATM)
6.0 6.2 5.3
4.7 5.0 4.9 4.8 4.8 5.0 4.7
4.3 4.5 4.5 4.5 4.6 4.3 4.6
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
覆工表面水分率(%)
スパン番号(10.5m/スパン)
NATM トンネルⅠ
坑口 ASR外観劣化あり
〃 なし
4.8 5.1
3.8 3.5 3.5 2.9 2.5
2.2 2.0 2.3 2.2
1.7 1.5 1.3 2.0
2.6 2.1
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
覆工表面水分率(%)
スパン番号(10.5m/スパン)
NATM トンネルⅢ
坑口 ASR外観劣化あり
〃 なし
6.3 5.9
5.2 4.8 4.8 4.7 4.7 4.7 4.6 4.7 4.8 4.8 4.8 5.0 5.0 5.4 5.4
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
覆工表面水分率(%)
スパン番号(10.5m/スパン)
NATM トンネルⅡ 坑口
ASR外観劣化あり
〃 なし
坑口
- 46 - が短いため両坑口からの測定値となっている。
図 2.3.5 および図2.3.6 より以下のことが考えられた。在来工法の覆工コンクリートの表
面水分率は,測定値にバラツキが見られた。この原因は,覆工コンクリートのひび割れや 横断方向の打継目などから滲み出た漏水の影響によるものであった。また,ASR の発生範 囲は,坑口付近に限定された在来工法トンネルⅡと,トンネル坑奥部まで及んでいた在来 工法トンネルⅠ,Ⅲに分かれた。在来工法トンネルⅡの表面水分率は,在来工法トンネル
ⅠやⅢと比較して,同程度かあるいは大きな値を示していたが,ASR の発生範囲は坑口付 近に限定されていた。この理由は,覆工コンクリートの水分環境以外に,使用されたコン クリートの反応性骨材の含有率の違いによるものと推察された。
一方,NATM の覆工コンクリートの表面水分率は,在来工法に比べ全体的に 1~2%程度 低く,坑口の測定値を最大として坑奥へ向かって滑らかに減少していた。これはNATMの 覆工コンクリートの背面で全周に設置された防水シートにより,地山から覆工コンクリー トへ湧水の浸透がなくなり,坑口付近にのみ,降雨の影響が及んだためと考えられた。NATM で覆工コンクリートにASRが発生していたのは,坑口付近に限定され,降雨や日射の影響 により,相対湿度や温度変化の大きい範囲に限られていたことがわかる。