第 2 章 ASR と凍害環境下における道路トンネルの実態調査とその評価
2.5 覆工コンクリートの高品質化および高耐久化
2.5.2 フライアッシュ中流動覆工コンクリートの適用性
(1)中流動覆工コンクリートの採用
覆工コンクリートの施工性の改善や品質の向上を目的として,従来の覆工コンクリート よりも流動性を高め,スランプフローが35~50cm程度の中流動覆工コンクリートを適用す る事例が増えている。これは,覆工コンクリートの吹上げ打設を型枠バイブレータの振動 だけで行えることを基本としたものであり,東・中・西日本高速道路(株)のトンネル施工 管理要領「中流動覆工コンクリート編」によるものである 42)。また,地球温暖化対策とし て二酸化炭素排出量を抑制することが課題となっており,産業副産物を混和材として積極 的に利用することが検討されている。石川県では,北陸電力七尾大田火力発電所で高品質 な分級フライアッシュを供給していることから,施工性の改善だけでなく,圧縮強度の長 期的な増加が大きいこと,凍結融解抵抗性や中性化抵抗性を有すること,温度ひび割れの 抑制効果が高いこと,乾燥収縮量が少ないことなど,覆工コンクリートの長期耐久性に寄 与できるフライアッシュを用いた中流動覆工コンクリートの適用が望まれている。
(2)中流動覆工コンクリートの特性
中流動覆工コンクリートの特性には以下のような項目が考えられる。
ⅰ)施工性の改善
流動性の向上により型枠振動機のみでの締固め作業が可能となり,狭隘空間での作業 が必要なく,技量や熟練度への依存度も減少することから,施工性の改善につながる。
ⅱ)高品質・高耐久性の覆工コンクリート
高い流動性と充填性によりジャンカや充填不足といった初期欠陥の発生を大幅に低減 できるとともに,フライアッシュの特性により乾燥収縮や温度応力ひび割れの低減効果 が期待できるため,高品質・高耐久性の覆工コンクリートが期待できる。
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ⅲ)二酸化炭素排出量の削減
フライアッシュを用いることでコンクリート材料由来による二酸化炭素排出量の削減 を図ることができる。
(3)中流動覆工コンクリートの留意点
中流動覆工コンクリートの留意点には以下のような項目が考えられる。
ⅰ)型枠への側圧増大
施工性・流動性が良いために打設速度が早くなり,型枠への側圧が大きくなるため,
型枠の設計や打設中の側圧管理が必要となる。
ⅱ)初期強度の遅延
普通コンクリートよりも初期強度の発現が若干遅延することが予想される。
2.5.3 フラアッシュ中流動覆工コンクリートの試験練り
(1)試験練りの配合設計
フライアッシュ中流動覆工コンクリートの配合は,所要のコンシステンシー,ワーカビ リチィー,流動性および充填性が確保できるように,試験練りにより選定しなければなら ない 42)。今回,七尾大田火力発電所で生産された分級フライアッシュを用いて中流動覆工 コンクリートの試験練りを実施したので,その結果を報告する。表2.5.1にフライアッシュ 試験成績表を示す。表2.5.2に示す配合の設計条件42)をもとに,表2.5.3に示す2種類の配 合により試験練りを実施した。配合Bの設定は,配合Aによる試験練りの後,フレッシュ コンクリートの粘性が若干強かったため,フレッシュ性状の粘性改善のため,セメント量 とフライアッシュ量を固定としたうえで,細骨材率(s/a)を50%から49%に変更したもの である。さらに,目標空気量(4.5%)に近づけるためAE剤を増量した。
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表2.5.1 フライアッシュ成績表
品 質 規定値
JISⅡ種 試験値
二酸化けい素 (%) 45.0以上 57.0
湿分 (%) 1.0以下 0.2
強熱減量 (%) 5.0以下 2.9
密度 (g/cm3) 1.95以上 2.33
粉末度 45μmふるい残分(%) 40以下 0.8 比表面積 (g/cm3) 2500以上 4610 フロー値比 (%) 95以上 107 活性度指数(%) 材齢28日 80以上 95
材齢91日 90以上 101 メチレンブルー吸着量(mg/g) - 0.83
表2.5.2 フライアッシュ中流動覆工コンクリート試験練りの配合条件42)
設計基準強度 (材令28日)
(N/mm2)
Gmax (mm)
スランプおよび スランプフロー
(cm)
空気量 (%)
セメント の種類
最低単位 セメント量
(kg/m3)
18 25 21±2.5
35~50 4.5±1.5 N 270
注1)粉体量は最低セメント量270kg/m3に混和材80kg/m3を加えた350kg/m3を標準とした。
表2.5.3 フライアッシュ中流動覆工コンクリート試験練りの配合表
種別
水セメント比 W/C
(%)
水結合材比 W/(C+F)
(%)
細骨材率 s/a (%)
単位量 (kg/m3) セメント
C
混和材 FA
水 W
細骨材 S
粗骨材 G
混和剤 AD 配合
A 63.1 48.6 50.0 270 80 170 856 866 2.800
配合
B 63.1 48.6 49.0 270 80 170 842 881 2.800
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(2)試験練りの試験結果
材料の計量,ミキサーによる撹拌,スランプフロー試験など,試験練りの状況を写真2.5.1 に示す。
試験練りのコンクリート試験の結果として,スランプおよびスランプフローと空気量の
結果を表2.5.4に示す。配合Aおよび配合Bとも各試験値は規格値以内に収まっている。配
合Aのスランプフロー値44.0cmに対し,配合Bのスランプフロー値は48.0cmとなり,配 合Bの方が流動性が増加している。
圧縮強度試験の結果を表2.5.5および図2.5.1に示す。材令28日で配合Aは38.4N/mm2, 配合Bは37.1N/mm2となり設計基準強度18N/mm2を十分上回っている。その後も強度増加 が進展しており,材令91日では配合Aは49.7N/mm2,配合Bは47.21N/mm2を示している。
試験前,フライアッシュを混和材とすることで粘性の増大によりポンプ圧送性能が低下 するのではないかと懸念されたが,試験練りにおいてコンクリートの撹拌状況やスランプ フロー状況を観察したところ,材料分離抵抗性や適度な流動性が確保されることを確認し た。
今後は,加振変形試験(型枠バイブレータを想定した変形試験)とU型充填試験による 充填性の確認,コンクリートの長さ変化試験や透気試験(トレント法)による品質の確認,
若材令(16,20,24時間)における圧縮強度の確認,模擬覆工コンクリートの打設試験による 施工性向上などを規格化することで,北陸地方におけるフライアッシュを用いた中流動覆 工コンクリートの実用化は可能であり,覆工コンクリートの高品質化の実現につながるも のと考えられる。
また,フライアッシュを用いた中流動コンクリートは,覆工コンクリートだけでなく,
広い打ち込み面積を有する床版構造物,過密配筋となるラーメン構造物,締め固めが困難 な薄い壁状構造物など,適用性が増えていくものと考えられる。
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(e) スランプフロー測定 (f) 圧縮試験用供試体作成
*中流動覆工コンクリートの試験練りでは,真柄建設(株),金沢デンカ生コンクリート(株), 電気化学工業(株),グレースケミカルズ(株)のご協力を頂き実施しました。
写真2.5.1 中流動覆工コンクリートの試験練り状況
(a) 材料の計量 (b) ミキサーによる撹拌
(c) 練り混ぜ状況 (d) スランプフロー試験
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表2.5.4 スランプ,スランプフローおよび空気量試験結果
種 別 スランプ (cm)
スランプフロー (cm)
空気量 (%)
配合A 23.0 44.0 3.8
配合B 23.0 48.0 5.2
表2.5.5 圧縮強度試験結果
材 令 (日)
圧縮強度 (N/mm2)
配合A 配合B
3 17.0 18.4 7 26.5 25.0 28 38.4 37.1 56 44.1 42.3 91 49.7 47.2
図2.5.1 圧縮強度試験結果(材齢と圧縮強度の関係図)
17.0 26.5
38.4
44.1
49.7
18.4 25.0
37.1
42.3
47.2
設計基準強度 18N/
3 7 28 56 91
0 10 20 30 40 50 60
圧縮強度(N/)
材令(日)
配合A 配合B