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電気防食工法を適用した PC 橋の防食状態

ドキュメント内 著者 麻田 正弘 (ページ 124-130)

第 3 章 塩害環境下における ASR で劣化したコンクリート橋への電気防食工法の適用と検証

3.3 塩害と ASR により複合劣化した PC 橋への電気防食工法の適用の検証

3.3.4 電気防食工法を適用した PC 橋の防食状態

電気防食工法適用後の維持管理について,土木学会の指針(案)19)では,通電電流,電源 電圧,鋼材電位,そして防食効果の確認の指標となる復極量などの定期的な測定項目を示 している。現地での測定は,海洋環境で建設されたPC構造物の場合,初年度は年2回,以 降は初年度の点検結果に基づき1~3年に1回程度を目安としている。それに対して4つの PC橋では,写真3.3.7に示す遠隔監視システムを用いたモニタリングを実施している。採用 しているシステムは,直流電源装置内に内蔵した計測ユニットを用いて自動的に取得した 計測値を,電子メールにて定期的に所定のメールアドレスへ自動配信し,事務所内のパソ コンを用いてデータ処理を簡単に,かつ安価に行うことが可能なものである。電源電圧,

防食電流量,鋼材のインスタントオフ電位は 1日に 1回,防食効果を確認するための復極 量の測定は1ヶ月に1回の頻度で自動計測を実施している。

1)通電電流量・電源電圧

4つのPC橋での電気防食工法における通電方法は,直流電源装置から一定電流を流す定 電流方式である。一般に,電気防食工法を適用して長期間が経過すると鋼材の防食に必要 となる電流量は低下する傾向にある19)。しかし,電気防食回路内に何らかの原因によって,

短絡や回路の切断などの異常が生じた場合,通電電流量や電源電圧に変動が生じることか ら,この変化を評価・判定して電気防食装置の機能を確認することができる。図 3.3.10

よび図3.3.11に4つのPC橋の通電電流量(A),電源電圧(V)のモニタリングによる経時

変化を示す。通電開始以降,4橋の値とも安定しており異常値を示していない。なお,4橋 の防食電流密度は,それぞれ1.7mA/m2,3.0mA/m2,4.9mA/m2,7.6mA/m2であった。

2)鋼材電位(インスタントオフ電位)

鋼材電位は,電圧降下による影響を含まない通電電流を遮断した直後のインスタントオ フ電位を測定している。この鋼材電位が-1000mV(v.s.CSE)より卑な電位を示すと鋼材表面 で水素発生反応を生じ,PC 鋼材の場合はこの水素がPC 鋼材の金属組織内に侵入して水素 脆化が発生する危険性が生じる8)。図3.3.12に4つのPC橋のインスタントオフ電位(mV) のモニタリングによる経時変化を示す。4橋のモニタリング結果では,いずれのインスタン トオフ電位とも-1000mV(v.s.CSE)より貴な電位であり水素脆化の危険性は認められなかっ た。また,外気温の低い冬期に卑な値となり,夏期に貴な値を示している。これは,外気 温が低いほど鋼材の腐食性が小さいことによると考えられる。

3)復極量

コンクリート中の鋼材に電気防食工法を適用した場合の防食基準は,鋼材の電位変化量

(復極量)が100mV以上あれば良好な防食状態とされている8)。図3.3.13に4つのPC橋

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の復極量(mV)のモニタリングによる経時変化を示す。モニタリング結果に示すように,

E橋の第1回路の照合電極Ref.1を除き,4橋とも100mV以上の復極量が認められ,防食効 果が発揮されていた。E橋の第1回路の照合電極Ref.1では,2年程前から測定時期により

復極量が100mVを満足していない。ただし,通電時の鋼材のインスタントオフ電位の経時

変化に大きな変化は生じていないため,防食効果は持続されており,電気防食システムは 正常に機能していた。照合電極そのものの機能を確認する必要があると考えられた。

一方で,復極量は外気温の低い冬期に増加している。これは冬期に鋼材のインスタント オフ電位が卑化することにより復極量が増加したものと考えられた。逆に,夏期の場合に は,それが減少している。したがって,1回/年の定期点検を実施するのであれば,復極量 の小さい夏季に電流調整をすることが望ましいと考えられた。

写真3.3.7 電子メールを利用した遠隔監視装置付き直流電源装置

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3.3.10 通電電流量(A)の経時変化

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3.3.11 電源電圧(V)の経時変化

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3.3.12 鋼材電位(インスタントオフ電位)(mV v.s.SCE)の経時変化

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3.3.13 復極量(mV)の経時変化

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ドキュメント内 著者 麻田 正弘 (ページ 124-130)