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合理的な陽極配置の実橋への適用

ドキュメント内 著者 麻田 正弘 (ページ 141-148)

第 3 章 塩害環境下における ASR で劣化したコンクリート橋への電気防食工法の適用と検証

3.4 合理的な電気防食工法の実橋への取り組み

3.4.3 合理的な陽極配置の実橋への適用

(1)実橋の概要

本橋は,石川県能登半島の国道249号線に架かる橋長36m のPC ポストテンション方式 単純T桁橋である(3.2節に示したJ橋である)。1980年に架設され,これまでに塩害対策 として上部工の主桁や横桁にはコンクリート塗装が施されてきた。しかし,写真3.4.1(a)に 示すように,鋼材腐食に伴うコンクリートのはく離やさび汁の発生などの再劣化が生じて いた。また,ASR による劣化を併発しており,主桁の端部では写真 3.4.1(b)に示すように,

PC鋼材に沿って0.1mm程度のひび割れが生じていた。再劣化の生じた上部工の対策として,

経済性(LCC),施工性,維持管理および周辺への影響などの観点から比較検討を行い,線 状陽極方式による電気防食工法による補修が最適な補修工法であると判断された。なお,

本橋では,3.3節に示したように,電気防食工法を適用後にASRによるひび割れ幅の変化を 亀裂変位計により測定し,ASRによる膨張の推移を監視している。

2)防食対象範囲

上部工の長期的な耐荷性能の確保を目的として,曲上げ部を含む主桁PC鋼材の配置範囲 を電気防食工法による防食対象範囲に設定した。上フランジおよび支間中央部のウェブの 鋼材は,腐食が生じてもすぐに耐荷力の低下は引き起こさないため,表面被覆工法により 補修し,再劣化が生じた段階で対策を行うことで初期コストの縮減を図った。防食回路は1 回路,防食対象面積は496m2である。

写真3.4.1 実橋の劣化状況

(a) かぶりコンクリートのはく離 (b) ASRが原因と考えられるひび割れ

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3)陽極配置方法

本橋では,鋼材の腐食が比較的軽微であったことから,陽極の設置間隔はウェブ面を 300mm,下フランジを250mm程度とし,陽極幅は従来使用していた15mmから10mm幅の ものに変えた。また,鋼材量が多い下フランジ底面では,図3.4.4に示すように切削溝1本 につき 2 枚の陽極を設置することで陽極量を大きくし,防食の最適化とともに,材料費,

溝切削費の低減によるコスト縮減を図った。通電点は,図3.4.5に示すように各主桁の横桁 間に1ヶ所ずつの計20ヶ所設けた。

3.4.5 照合電極,排流端子,通電点の位置図

3.4.4 陽極配置図

(陽極2枚)

チタングリッド陽極

(陽極1枚)

桁 下 面 桁 側 面

陽   極   設   置   図

13 6 チタングリッド陽極

60°程度

1015

15 10 6

:陽極 1枚/溝

:陽極 2枚/溝 50 

   

250

50

170

1900

160 214

 125

7

3

210

, 7 8 9

3@300=900

640

  40170

214

1900

 125 1 250

主 桁 断 面 図

チタングリッド陽極

125   2.0%

50   

 

14 10

200

150  

640 640

50200

125   2.0%

1460 2 - 2 1 - 1

640 180

1460

180

1205

11 1

6 12

9 14 2

210 9

チタングリッド陽極

40 150  

1205 200

6

8

10 5

6 4

13

8 5

7

CL

主   桁   側   面   図

850

5200

8200 500 500 500 651

5200

8650 100 7450

7450 100 8650

50 16140

50

651 1250 850

1700 1700

4900 4900 550

100

600 500 8200 675

4680

1900

1250

550

4680 A1

ディストリビュータ

2 2

1 チタングリッド陽極(1枚)

1 A2

海 側 山 側

CL

(R e f. 2) 照 合 電 極

通 電 点 , 排 流 端 子 通 電 点 通 電 点 通 電 点 , 排 流 端 子

照 合 電 極 ( Ref. 1 ) 直 流 電 源 装 置 へ

G 2 G 1

G 5 G 3

G 4 照 合 電 極 ( Re f. 3 )

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(4)モニタリング回路

適切な防食電流の供給と防食効果の確認ができるように,モニタリング回路として埋め 込み照合電極を図3.4.5に示すようにG1桁,G3桁,G5桁の3ヶ所設けた。

(5)電気防食の施工

① 施工フロー

電気防食工法における施工フローを図3.4.6に示す。

以下に各工種の詳細について述べる。

② 排流端子,照合電極設置工

排流端子および照合電極は,図3.4.5に示す箇所に設置した。排流端子は,コンクリート 中の鋼材に溶接し,照合電極は写真3.4.2(a)に示すように埋め込み式の照合電極を設置した。

③ 導通確認工

断面修復部の全断面を対象として,写真3.4.2(b)に示すようにコンクリートをはつりだし た際に排流端子と鋼材をデジタルマルチメータにより接続し,鋼材間が導通状態にあるこ とを示す規格値45)の1.0mV以下にあることを確認した。

④ マーキング工

陽極設置位置はマーキングを行い,その後,写真 3.4.2(c)に示すように電磁誘導法により 溝切削位置のかぶり深さを測定し,溝切削に伴う鋼材の切断がないように留意した。また,

かぶり深さが設計の溝切削深さである 15mm を確保できない場合は溝を拡幅し,線状陽極 を従来システムと同様に水平設置するようにマーキングした。

⑤ 溝切削工

溝切削は,図3.4.4に示すように幅6mm程度,深さ15mm程度となるように,写真3.4.2(d) に示すようにコンクリートカッターを用いた。今回は通常のエアーカッターを用いたが,

施工条件や施工規模などの条件に応じて騒音・粉塵対策型の人力カッターや,専用機器に よる切削を選択することができる。溝切削,溝内部の清掃を行った後には,鋼材と陽極の 短絡を防止することを目的として,写真3.4.2(e)に示すように溝内金属探査を行った。この 方法は,露出した金属とコンクリート中に取り付けた排流端子とが電気的導通があること を利用して,直流電圧計と接続した金属製のブラシを溝内部に移動させることで,コンク リート中の鋼材の電気的導通がある箇所を検出するものである。

⑥ 陽極材設置工

主桁底面の陽極設置状況を写真3.4.2(f)に示す。切削溝1本につき2枚の陽極を設置する 場合には,陽極同士の接触を避けるため約300mmピッチの間隔にてゴム状のスペーサーを 陽極間に埋設した。また溝内の露出金属が検出された箇所は,陽極材に絶縁材料であるブ チルゴム系テープを被覆することで陽極材と露出した金属とが接触しないような対策を施 した。陽極材の設置後は,陽極とディストリビュータをスポット溶接にて堅固に接続し,

陽極間が接続されていることを確認した。

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⑦ 陽極材被覆工

主桁側面の陽極被覆状況を写真3.4.2(g)に,主桁底面の陽極被覆状況を写真3.4.2(h)にそれ ぞれ示す。陽極被覆材料は,無機系の流動性の高いセメント系のものを使用した。主桁側 面の充てんは,溝の下面に簡易な型枠を設置した後に溝の内部に材料を流し込む方法を用 いた。また主桁底面は,簡易型枠をセットした後に,写真に示すような圧入ガンを約 100

~150mm のピッチで溝内に差し込み材料を圧入した。陽極被覆の完了後には,陽極と鋼材

の絶縁を写真 3.4.2(i)に示すように通電点と排流端子を接続し,鋼材と陽極が絶縁状態にあ ることを示す規格値45)の 10mV 以上にあることを確認した。また,陽極間の導通は,写真

3.4.6 施工フロー図

準備工

排流端子,照合電極設置工 導通確認工

溝切削工 マーキング工

完 成 直流電源設置工

配線・配管工 陽極材被覆工 陽極材設置工

通電調整工

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3.4.2(j)に示すように各陽極の先端部と通電点をデジタルマルチメータにより接続し,陽極 間が導通状態にあることを示す規格値45)の1.0mV以下にあることを確認した。

⑧ 配線・配管工

通電点,排流端子,照合電極等の設置位置にはプルボックスを設置し,直流電源装置と プルボックス間の配線,配管を実施した。

⑨ 直流電源設置工

使用した直流電源装置の設置状況を写真3.4.2(k)に示す.直流電源装置内のユニットは,

電気防食による各種の計測を行うための計測ユニット,直流電源装置,測定データを電子 メールにて送付するための遠隔監視ユニット,ASR によるひび割れ幅を測定するための計 測用端子から構成される。

⑩ 通電調整工

配線・配管および直流電源装置の設置が完了した後に,防食基準45)である100mV以上の 電位変化量が得られる電流量の設定を行うために分極試験を実施した。その結果を図 3.4.7 に示す.ここで分極量は,防食電流を流す前の鋼材の電位と,所定電流を流した際の鋼材 のインスタントオフ電位の差である。本橋では,防食基準を満足するようにコンクリート 表面積に対して5mA/m2の電流量を設定した。また分極試験から約1週間経過後には,通電 を一時的に停止し,停止直後の鋼材のインスタントオフ電位と,通電停止から24時間後の 電位の差(復極量)を測定し,防食基準を確保していることを確認するための復極試験を 実施して工事を完了した。

5)コスト縮減効果

本橋にて,従来工法の15mmのチタングリッド陽極を使用した場合に対して,今回採用 した新しい陽極設置方法を採用した場合のコスト縮減効果は,陽極設置工費では約20%,

電気防食の全体施工費としては約15%のコスト縮減につながった。チタン系の線状陽極を 用いた電気防食工法のコスト縮減を目的として,陽極の配置方法,溝1本あたりに設置す る陽極枚数および陽極幅を変更することで,防食効果を確保しつつ電気防食の全体施工費 として約15%のコスト縮減を可能にした。

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写真3.4.2 電気防食工法の施工

(a) 照合電極の設置状況 (b) 鋼材間の導通確認状況 (c) 鋼材かぶりの確認状況

(d) 溝切削状況 (e) 露出金属探査状況 (f) 主桁底面の陽極設置状況

(g) 陽極被覆状況(主桁側面) (h) 陽極被覆状況(主桁底面) (i) 陽極鋼材間絶縁確認状況

(j) 陽極間導通確認状況 (k) 直流電源装置設置状況

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3.4.7 分極試験の結果

0 50 100 150 200 250 300 350

0.1 1 10 100

電流密度(mA/m2 ,コンクリート表面積)

分極量(mV)

Ref.1 Ref.2 Ref.3

防食基準1 ) 防食効果あり

5

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ドキュメント内 著者 麻田 正弘 (ページ 141-148)