第 2 章 ASR と凍害環境下における道路トンネルの実態調査とその評価
2.6 結 論
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が作用し,ASR による表面ひび割れは発生しにくいと考えられたが,坑口付近では土 被りが小さいため圧縮力が小さくなり,表面ひび割れが発生できる状況であったと推 察された。一方,坑奥部でASRが進行した場合,土被りが大きく圧縮力が卓越するた め,ひび割れは表面に現れにくく,内部で方向性のあるひび割れが進展することが推 察された。坑門のASRによる劣化は表面の亀甲状のひび割れが特徴的であった。
(5) 在来工法でASRが発生したトンネルに使用された骨材と同じ産地の骨材について,ア ルカリシリカ反応性を調べた結果,化学法の判定結果より能登産の安山岩砕石はすべ て潜在的有害(ASTM C 289)の領域にプロットされ,ペシマム混合率を有することが確 認された。また,手取川産の川砂利は化学法の判定ライン付近に位置していたが,モ ルタルバー法では無害でないと判定された。
(6) 在来工法における覆工コンクリート中のアルカリ量は約 2.2kg/m3程度と推定され,現 行のJIS A 5308のASR抑制対策のアルカリ総量規制値3kg/m3を下回っていたが,能登 産の安山岩砕石のように,化学法によるSc値が大きい値(ASTM C 289による潜在的 有害の範囲Sc>100mmol/lが目安)を示す反応性の高い鉱物を含有しているものは,実 構造物でASRが発生していた。
(7) NATMによるトンネルの施工が標準化されてから,石川県におけるASRの発生は少な くなった。しかし,能登の安山岩砕石を使用した一部のNATMによるトンネルの覆工 コンクリートで,ASR による劣化が確認された。能登の安山岩砕石からは多量(約
0.5kg/m3)のアルカリがコンクリート中に溶出することやペシマム混合率の問題がある
ことなど,現行のASR抑制対策に限界があることを示唆していた。このような反応性 の高い安山岩砕石や,ペシマム混合率に注意が必要な砂利・砂に対するASR抑制対策 には混合セメントの使用がもっとも効果的である考えられた。
(8) ASR が発生したトンネルの覆工コンクリートの表面水分率を測定した結果,在来工法 の覆工コンクリートの測定値にバラツキが見られた。これは,覆工コンクリートのひ び割れや横断方向の打継目などから滲み出た漏水の影響によるものであった。ASR の 発生範囲は,坑口付近に限定されたトンネル,また坑奥部まで及んでいたトンネルが あり,水分環境以外に,使用されたコンクリートの反応性骨材の含有率の違いが推察 された。一方,NATMの覆工コンクリートの表面水分率は,在来工法に比べ全体的に1
~2%程度低く,坑口の測定値を最大として坑奥へ向かって滑らかに減少していた。
(9) NATM の吹付けコンクリートで化学法により無害と判定された骨材において,急結剤 による高濃度のアルカリ環境により,珪質頁岩で遅延膨張性のASRが生じた事例があ った。
(10) 覆工コンクリートの巻厚不足やASRによる劣化でコンクリート強度が低下し,覆工コ
ンクリートが不安定化する恐れがある場合,プレキャストコンクリートライニング版 による内巻き補強が有利となる場合があった。この工法では,道路面から側壁コンク リートを立ち上げ,アーチ状のプレキャストコンクリートライニング版の下端を直接
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支持させることにより,あと施工アンカーが不要となるものである。一方,覆工コン クリートのせん断補強やASRの劣化によるはく落防止のため,鋼板接着工を適用した 事例があった。鋼板接着工では,鋼板内部に水分が溜まりASRを促進させる場合があ ること,ASR で劣化したコンクリートへのあと施工アンカーに長期的な引抜き耐力が 得られるかどうか,また,鋼板を接着したコンクリート表面の経過観察ができないこ と,などの問題点があり,適用する場合には十分に留意する必要があった。
(11) ASR により劣化した坑門の対策として,水の供給を絶つために実施した表面被覆工や
防水工は再劣化する場合が多くあり,その後の経過観察も困難になることから実施す べきでなかった。コンクリートのASRによる劣化が著しい場合には,打換え工の選択 が有利となる場合があった。
(12) ASRが発生したトンネルの対策では,対策によりASRを促進させないこと,コンクリ
ートの膨張が継続するか適切に判断すること,などの留意が必要であった。
ASRと凍害の複合劣化を生じた覆工コンクリートのはく落現象
(13) 山間部に位置する道路トンネルで,ASR が原因による劣化と凍結融解作用の繰り返し
が同時に作用する複合劣化により,覆工表面からコンクリート片のはく落が生じた。
はく落が発生したトンネルではASRの劣化は覆工表面には現れず内部で進行していた。
この現象は覆工コンクリート内の湿度分布が影響しており,覆工背面側では地山から の湧水の影響を受け湿度が高く,覆工表面側はトンネル内の交通風の影響でしばしば 乾燥状態になり,湿度は背面側から表面側に向けて低くなっていたと考えられた。ま た,はく落が生じたトンネル付近では,-5℃を下回る凍結融解の繰り返し回数が年間 20回程度以上生じており,凍害への配慮が必要な地域であった。
(14) ASRと凍害による複合劣化が生じた覆工コンクリートのはく落メカニズムは,ASRに
より生じていた覆工コンクリート内部の膨張力および打継目への圧縮力等が作用して いた状態で,冬期,打継目における漏水の凍結による打継目への圧縮力の増加,さら に微細なひび割れ内の浸透水の凍結による膨張力が加わり,ASR による微細なひび割 れをはく離面として生じた可能性が大きかった。
(15) 道路トンネルを維持管理していくうえで,覆工コンクリートの材料劣化に着目してい
く必要があり,コンクリートの耐久性の観点からも,トンネルの耐用年数を検討して いく必要があった。
覆工コンクリートの高品質化および高耐久化
(16) 覆工コンクリートの施工は,型枠と地山に挟まれたアーチ状のコンクリートをトンネ
ル内側から打設する厳しい条件下にあり,かつ,施工サイクルの制約から十分な型枠 在置期間が取れないため,覆工コンクリートの品質を確保するためには,技術的に多 くの課題が残されていた。
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(17) 覆工コンクリートの施工性の改善や品質の向上を目的として,スランプフローが 35~
50cm程度の中流動覆工コンクリートを適用する事例が増えており,北陸電力七尾大田 火力発電所で生産された分級フライアッシュを用いて中流動覆工コンクリートの試験 練りを実施した。コンクリートの撹拌状況やスランプフロー状況を観察したところ,
材料分離抵抗性や適度な流動性が確保されることを確認した。今後は,加振変形試験 とU型充填試験による充填性の確認,コンクリートの長さ変化試験や透気試験による 品質の確認,若材令(16,20,24時間)における圧縮強度の確認,模擬覆工コンクリート の打設試験による施工性向上などを規格化することで,北陸地方におけるフライアッ シュを用いた中流動覆工コンクリートの実用化は可能であり,覆工コンクリートの高 品質化の実現につながるものと考えられた。
- 77 - 参考文献
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2) 大代武志,平野貴宣,鳥居和之:富山県の反応性骨材とASR劣化橋梁の特徴,コンク リート工学年次論文集,vol.29, No.1, pp.1251-1256, 2007. 7.
3) 丑屋智志,出口一也,野村昌弘,鳥居和之:福井県の骨材のアルカリシリカ反応性と ASR劣化橋梁に関する調査,コンクリート工学年次論文集,Vol.33, No.1, pp.1007-1012, 2011. 7.
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5) 土木学会:コンクリートライブラリー124,アルカリ骨材反応対策小委員会報告書-鉄 筋破断と新たなる対応-,pp.Ⅱ-88,2005. 8.
6) 日本道路協会:道路トンネル維持管理便覧,pp.19,1993.11
7) 砂金伸治,角湯克典,真下英人:うき・はく落による変状の健全度評価に関する考察,
トンネル工学報告集,第21巻,pp.195-201,2011.11
8) 日本道路協会:道路トンネル維持管理便覧,pp.54,1993.11.
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10) 麻田正弘,鳥居和之:石川県におけるトンネルのASR劣化状況と対策に関する実態調 査,コンクリート工学年次論文集,Vol.35,No.2,pp.1465-1470,2013. 7.
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14) 日本道路協会:道路トンネル技術基準(構造編),pp.91-124,1989. 6.
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17) 橋本 徹:北陸産分級フライアッシュを使用したコンクリートの性能評価と実用化に関 する研究,金沢大学博士論文,pp.114-124,2014. 6.
18) 真下英人,石村利明,森本智:トンネルクラック評価手法,土木研究所研究成果,pp.33-38, 2000-2002.
19) 日本工業規格:JIS A 5308付属書2アルカリシリカ反応抑制対策の方法,1989.12.