表1−17.土壌におけるアンモニア態窒素の推移(1982年)
Table 1−14. Contents of the soil NH4−N(1982)
Applied−
N* NH4−N
Date of Sampling
May27 June 7 June 18 June30 Ju ly 7 Ju ly19 July30 Aug.ユO Aug.23
(6) (17) (28) (40) (47) (59> (70) (81) (94)
0 Tota1 38,8 一 14.2 19.6
2,5 Total Fertilizer Soi1
102 28,4 73.6
16,0 0,9 15.1
17.6 0.6 17.0
]
7.5 征btal Fertilizer Soi1
202 200 194 165 154 109
37 46 85
101 31.8 44,5 5,5 56,5 26.3
45,8 2,3 43,5
87,8 68.4 78.6
窒素の吸収は,移植後約10日から急激におこり,その速度は分ケツ盛期が最も高く,以後最高 分ケツ期にかけてやや低下する。これらの時期には,圭壌中には基肥NH4−N及び土壌から放出 されたNH4−Nが多量に存在している。土壌からのNH4−Nは,基肥量に対応して増大している。
稲はこれらNH4−Nを吸収し,その吸収速度は,稲体の増加とともに増大するが,土壌からの NH4−Nの放出速度が減少するために,土壌中のNH4−N量が減少し,最高分ケツ期には土壌中 にはNH4−Nがほとんどなくなり,吸収速度も大きく減少するものと考えられる。最高分ケツ期 以降についても,稲のNH4−N吸収力はかなり大きいが,土壌からのNH4−Nの放出がそれに比 して小さいため,土壌NH4−Nが大変低い水準で推移する。これらの結果はジ分ケツ盛期前の窒 素吸収は稲体量に依存し,それ以後の窒素吸収は土壌のNH4−N放出量に依存していることを示 している。しかしこのNH4−N放出量は土壌の性格だけではなく,稲からの能動的な吸収(林・
原蒔!1964)にもよっていると推定され.,したがって気象条件はこの両者を通じて稲の窒素吸 収に影響を与えている。
3)基肥窒素の行動の特徴
基肥窒素の行動は三つの流れについて追跡された。これらの結果は既応の研究(Patrick and R。d罐)・976;庄子ぎ?・97、)に大変類似して、・た。
施された基肥NH4−Nは」当初から急激に土壌に固定される。この固定反応が60〜70%進行 した時期に稲の吸収の最盛期をむかえる。この固定反応はNH、一Nの多量に存在する時期(施肥 後面30日)に終了し,又稲による吸収はNH4−Nの消失まで続く。それ以後は,固定された基 肥窒素及び稲に吸収された基肥窒素は,収穫時まで一定の値を示す。この結果は,固定された窒 素の再無機化がほとんど無いことを示している。油鼠回収部分の基肥窒素も施肥当初に大変招き いものの,その後の増大はゆるやかで,NH4−Nの消失時まで増加が続く。未回収部分は,誤差 の集まる部分ではあるが,本水田が減水深がほとんど無いことから,かなりの部分が脱窒によっ て失われたと推察される。
以上の結果から,基肥窒素の稲による利用の制限因子として,土壌による固定(有機化)が重 要な役割をもつことが明らかとなったρこの反応は,湛水初期の土壌生物の増殖(Furusaka et一 。ll)・969)と良く対応して進行して、・る.即ち,稲のNH、一N吸収加・充分に大きくなる前}、,
土壌中のNH4−Nを少なくとも当作では利用しえない形態に有機化する。19、82年目ごとく,そ の増殖過程がある程度進行した時期に施肥をすると,それ以降の微生物の進行には限度があるた め,固定量はかなり減少させうること
も明らかにされた。
2.鹿島台水田における窒素の流れ
ここでは,これまでに得られた結果に Af㎜叩ト…
RloO P題anいN 基づいて,本実験条件下での窒素の流れ
についてのモデル化の試みを行った。前 述のごとく,この流れは相互に影響しあ っているものの組合せであり,そのすべ てについてはデーターが得られてもいな いため,非常に単純な系を想定して行っ た。しかし,本水田における窒素の流れ の概略を示していると考えられる。
本水田における窒素の流れを図1−26 のごとく仮定した。これらの窒素の流れ 及びプールに集積する:量が,基肥窒素量 によってどのように変動するかを検討し
N2−f[x
For n[zar−N
L.,,.
NHrN
㌔僑
Or9−N
Soほ 募2
図1−26,仮定した水田系における窒素のフローと プール
Table 1−26, A tenもa偵ve nitrogen−flow−model in the paddy field system
た。叉各窒素量は下記の仮定式に基づくとした。
ホ
ネ ホa)施肥窒素量:二〔土壌NH4−N+植物体一N+土壌有機一N+損失一N〕(肥料由来)
ぷ ホ ヰ
ホぷb)土壌放出窒素量=〔土壌NH4−N+植物体一N+再固定一N+脱窒一N〕(土壌由来)
,)助詞定一ゴフ施肥固定一N=土壌由来NH4−N/施肥NH、一N
d).土壌一N脱劉施肥脱窒一土壌蛛NH、一N/施肥N孤一N
(*:測定した窒素量,**:測定されなかった窒素量.).
推定の方法は,各年次ごとに,測定した各プールの収穫時における値(式中*印)と,基肥量と の直線回帰を行った。これらはいずれもr=0.9以上の相関を示した。c)式及びd)式から再固定 量及び土壌一Nの脱窒量を決定し,基肥量との相関をとった。これらもr=0,8以上の相関を示し た。次にb)式に基づいて,各要素の回帰式とたし合せ,土壌放出窒素量と基肥量との関係式を導 いた。得られた式は表1−19にいくつかの基肥量に対する各量計算例は表1−20に示すごとくで あった。各年次の間での差異は,それぞれの気象条件の差によると推定され,第1節でのべた傾向 との一致は見られる。
表1−19.収穫時における各窒素プール又はフローの基肥量との関係式 Table 1−19. Fomulated relation−ships between the applied−N and the nitrogen−pools
1979 1980 1981
Rice plant N (PN)
Soil immobilized N (SN)
Loss N
(LN)Sqil releaSQd N (RN)
PN =0.469 X−0,02 PNS=0.599 X十9.34
禽1=騰圭‡瓢
LNf;0,171X十〇.10**
ホみ(LUS鴬0.025 X十〇.77)
RNs=o・667 X十11・75
鴬0.407X−0.10 二〇.174X十7.88
=0.360X十〇.18
=0.043X十1.64
;0207X十〇.07
鴬0.025X十〇.77=0.242X十10.29
=0.410X.一〇.12.
二〇.209X−6.20 コ0,499X十〇.02
=0.130X十2.27 二〇,093X十〇.07 二〇.025X十〇.49 二〇.362X+8.96
・)
・・)
***)
f:ferもilizer, S:Soil atむhe maximum tillering stage Applied the 1982 s/fromula
表1.一20.試算した1作における各窒素量(kg/10 a)
Table 1−20, Calculated values of the nitrogen−pools and−flows at the harvest
1979 1980 1981
Applied N Soil released N Total amount Absorbed N fertilizer 〔
Soil
SQil imlnobilized N fertilizer 〔
Soil Loss N fertilizer 〔
Soi1
5
15.1 20,1 14.7 2.3 12,3
318
1,9 1,9 1,9 1,0 0,9
10 18,4 28,4 20,0 4,7 15.3 5,9 3,8 2,1 2,8 1.8 1,0
5
11,5 16.5 10.7 1.9 8.8 3.8 1.9 1,9 2,1 1.1 1.0
10
12,7 22,7 13.6 4.0 9.6 5.9 3.8 2.1 2.8 1.8 1,0
5
10,8 15.8 9,2 1,9 7.2 5,4 2.5 2.9 1,1 0.5 0.6
10 12.6 22.6 12.3 4.0 8.3 8,6 5.0 3,6 1.7 1.0 0.7
表1−20によれば,本水田では,標準的な基肥(5kg/10a)及び気象条件であれば, 1作につ いて約15kg/lo&の窒素が土壌から放出され, NH4−Nのプール又は流れを基肥と合わせて20kg /10aの窒素が通過する。その内,稲に利用される窒素は約73%,脱窒等による損失は約1割,土
壌有機態窒素へは約2割が集積する。気象条件が低温寡照になると,土壌から放出される窒素量が 激減する。又脱窒による損失もあるが,これら窒素の流れの稲による利用をより制限している要因 は土壌によるNH4−Nの有機化であることがわかる。この固定反応は,前述のごとく,稲が活着し 根を充分に土壌中にはり,NHrNの吸収を活発に行えるようになる前に,その80%が終了する。
さらにこの反応は,低温の影響をうけにくく,1980・81年の条件では土壌NH4−Nプールを通過 する窒素の25〜35%を固定すると推定される。したがって,この反応は,基肥窒素の稲による利 用率を低下させるのみでなく,特に低温下で土壌からの窒素の放出が少ない条件での初期の窒素利 用率を著しく制限する因子になっていると結論される。水田系における窒素の動態をより効:果的に 利用するには,この現象の抑制又は回避する方法を作出する必要がある。
3. 「地力窒素」と残留基肥窒素について
前節までに述べたごとく,稲が吸収する窒素の大きい部分が地力窒素によって占あられている。
又稲作期間中に土壌NH4−Nを通過する地力由来のNE塾一Nは,基肥量の2〜3倍以上と推定され る。前節では,窒素動態の効果的利用を妨げる要因として,NH4−Nの土壌による固定が大きな役
割を持つことを示した。ここでは,窒素動態に関与する窒素量をより大きくすること,固定された 窒素の再利用を通じて,その効果的な利用も可能であろうとの視点から,「地力窒素」についての 検討を行った。
なお,ここでは当作の基肥によらない窒素を「地力窒素」又は「地力窒素由来」とした。
1)地力窒素の稲による吸収
表1−21に地力窒素の稲による吸収経過等を示した。 地力窒素は生育の全期間を通じて吸収 が行われている。しかし,残留基肥窒素について見ると,その吸収は前期にかたよっていること がわかる。表1−22は,各窒素の最高分ケツ期における吸収量を収穫期におけるそれの割合で 示したものである。全生育期間の約%弱であるこの時期の吸収量は,地力窒素全体について見れ ば約%となっている。しかし,いずれの肥料水準についても,残留基肥の値は地力窒素のそれよ り高く,又81年残留基肥の値壱恥80年残留基肥のそれよりさらに大きい。
一方この吸収量を土壌に存在する量との比較で見ると次のごとくである。地力窒素の収穫期で の吸収量は土壌全窒素の3〜5%であるが,残留基肥窒素のそれは残留量の10〜20%の値を示 している。又81年残留分と80年残留分では,後者が2〜3%小さな値を示している。
これらの結果は,残留基肥窒素が次作以降では,地力窒素と似たパターンで再放出されるが,
残留時間の短いものほど放出されやすく,その放出も前期にかたよる傾向のあることを示してい る。
次に,残留基肥窒素の効果については次のごとくである。残留基肥窒素が収穫時稲吸収地力窒 素に占める割合は,次作で2〜8%(当該作での基肥水準で大きく変化する),次々作1〜2%
(当該作3.8kgN/10a)である。これらの値から,標準的な基肥7.5kg/loaの区で推察すれば,
数年間にわたる残留基肥窒素が稲吸収地力窒素に占める割合は,10%の水準になる。吉開4)ら (1978)は,当作基肥残留率を20%(関東地方)とすれば,多年にわたる残留量の積算は,基 肥の約3倍と推定している。これらの値は,基肥の利用率の上からも,又その地力窒素への寄与 からも無視しえない値である。ただし,基肥量を過大に多くしてゆくことは,土壌からの放出量 を過大にし,土壌窒素の減少をまねくという報告がされている( 30高井ら,)1975)。
2)基肥残留窒素の形態について
表1−23は最高分ケツ期まで及びそれ以降収穫時までに稲が吸収した窒素の同位体比の変化 を示している。いずれの期間についてもその同位体比は,土壌全窒素の値を大きく上まわってい