• 検索結果がありません。

3. 3. 3 北朝鮮の「暴走」と米国の苦しい対応

ドキュメント内 …h…L…–…†…fi…g2 (ページ 55-60)

2002年10月16日夜(日本時間17日午前)、米国務省は北朝鮮が同月初め の米朝高官協議の際、ケリー国務次官補(東アジア・太平洋担当)に核兵 器開発(濃縮ウランによる開発)を進めていると認めたとの声明を発表し た。声明は、北朝鮮が核開発を断念することを前提とした1994年の米朝枠 組み合意を違反したとして重大な懸念を表明し、計画の即時中止を求めた31。 北朝鮮は核開発計画を認めるとともに、94年の米朝枠組み合意は「米国の せいで無効になっている」と主張した。さらに、北朝鮮は核開発計画の放 棄の条件として次の4条件、つまり、①不可侵条約の締結、②平和条約の締 結、③経済制裁の全面解除、④ブッシュ大統領の訪朝を提示したという32。 10月25日、北朝鮮は核開発の一方的破棄を拒否し、米朝間の不可侵条約 を正式に提唱した。同月27日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳 会議は北朝鮮が核開発計画を放棄する約束を目に見える形で守るよう求め る「北朝鮮に関するAPEC首脳声明」を採択した33。11月14日、KEDOの 理事国が北朝鮮への重油支援を翌月から中断することを決定した。続いて 29日、IAEA(国際原子力機構)は、北朝鮮に核開発の破棄と関連施設に 対する査察を促す決議案を採択した。12月2日、北朝鮮の白南淳外相はIA EAに書簡を送り、核兵器開発の放棄と核査察受け入れを求めるIAEA理 事会決議について、「一方的な決議で絶対に公正だとは見なせない」「決議 はいかなる場合にも受け入れられないし、特に核問題と関連したわが政府 の原則的な立場に変わりはない」として拒否の立場を通報した34。12月1 2日、北朝鮮外務省は核凍結を解除し、電力生産に必要な核施設の稼動と

建設の即時再開を宣言した。翌日には、IAEAに書簡を送って寧辺の核施 設からの封印と監視カメラの撤去を要請した。続いて21日には、自ら核施 設の封印を撤去した。さらに、2003年1月10日に北朝鮮は「核不拡散条約

(NPT)」を脱退し、IAEAとの保障措置(核査察)協定の拘束から完全に 脱することを宣言する声明を発表した35。2月12日、北朝鮮はIAEAが核 問題を国連安保理に付託したことについて直ちに朝鮮中央通信を通じて

「IAEAが我々の核問題を論議するのは法律上からみても、国際関係の慣行 から見ても全く妥当性のない内政干渉である」とIAEAと激しく非難した。

2月20日、朝鮮人民軍のミグ19戦闘機1機が朝鮮半島西側の海上で軍事境 界線にあたる北方限界線(NLL)を南側に越え一時、韓国領空を侵犯した という36。同24日には、「シルクワーム」型地対艦ミサイルを発射したが、

3月に予定している米韓合同軍事演習を牽制する狙いで、今後弾道ミサイ ルの発射もありうることを示唆している37。実際、北朝鮮がテポドンなど 長距離弾道ミサイルに使えるロケットエンジンの燃料実験を既に今年初め に行ったという38。また、北朝鮮が寧辺の実験用黒鉛減速炉(5000キロワ ット)再稼動させたことが、27日、ホワイトハウスの高官によって明らか になった39。これは94年の米朝枠組み合意で凍結されていた施設で、新た な「核カード」を切ったことを意味する。3月3日、米国防総省は北朝鮮の ミグ29など戦闘機4機が2日午前、北朝鮮に近い日本海上空で(朝鮮半島の 東岸から約240キロ離れたところ)米軍のRC135S電子偵察機に接近、約2 0分間にわたり追尾したが、そのうち1機はレーダー照射まで行ったことを 明らかにした40。3月10日、北朝鮮は東北部沿岸の新城里付近から日本海 に向けて地対艦ミサイルを再発射したが、2月24日に次いで今年二回目の 発射になる。韓国国防省によると、射程160キロメートル地対艦誘導弾が 発射地点から100キロメートル離れた日本海に落下したという41。米軍側 の情報によると、今北朝鮮はその東北部などの複数のノドンミサイル発射 基地に軍車両などを集結させ、発射準備を進めているという42

上述したように、ここ半年間北朝鮮は全面的な「瀬戸際作戦」に乗り出 し、一段と危機をエスカレートさせている。そのため現在、朝鮮半島はま

すます緊張が高まり、平和と戦争の「十字路」に立たされている。北朝鮮 の「暴走」はいずれも「瀬戸際外交」の一環と見られる。これは北朝鮮の 一連の言動からも伺える。NPT脱退声明の中で、北朝鮮はNPTから脱退 はするが、核兵器を製造する意思はなく、現段階においての核開発は電力 生産をはじめ平和的目的に限られることをアピールした。また、米国が中 断されている重油供給を再開し、敵視圧殺政策を放棄すれば、NPTからの 脱退を再考し、核兵器を製造しないことを米朝間の別途の検証を通じて証 明して見せることもありうると表明した43

北朝鮮の核問題をめぐって、周辺の大国は苦しい対応に迫られている。

朝鮮半島の非核化という大義名分においては足並みを揃えているものの、

具体的なスタンスには大きな隔たりが見える。北朝鮮と伝統的な友好関係 を保っている中ロ両国と日米韓の間に隔たりがあれば、三国協調体制にあ る日米韓の間にも「温度差」が現れるようになった。昨年11月9日に行わ れた日米韓三国局長級会合で、米国は「約束を破った者に代価を支払うの は、最悪だ」とし、KEDOを解消すべきだと主張した。これに対し、日韓 は逆に核開発に口実を与えかねないとし難色を示したが、米国の「厳しさ」

と日韓の「柔軟さ」は非常に対照的だった44。現在、米国と韓国は人道的 な次元から食糧支援を続けると言っているが、拉致問題を抱えている日本 政府は世論と国民感情に配慮し先延ばしている。今後とも、北朝鮮に対し て強硬な姿勢を崩していないブッシュ大統領と、金大中前政権の「太陽政 策」を引き継ぎ「平和繁栄政策」を掲げている盧武鉉新大統領および国交 正常化交渉を焦る小泉首相との間には微妙な三角関係が見られることにな りそうだ。特に、イラク問題に足を縛られている米ブッシュ政権は「二正 面作戦」というジレンマに苦しんでいる。米国にとって目下、国家戦略の 最優先課題はイラクのフセイン政権の打倒である。北朝鮮問題は当面、外 交努力による解決を目指すことになっている。

北朝鮮の核問題において鍵を握っているのは当然ながら米国である。ク リントン政権における北朝鮮政策は「アメ」と「ムチ」という二重構造だ ったが、これまでのブッシュ政権の北朝鮮政策は「ムチ」一色であったと

いえよう。しかし核危機が高まるにつれ、このような政策に変化が生じ、

非常に曖昧な政策を取らざるを得なくなった。

現在、米国は日米韓の協調体制を軸に北朝鮮に対する軍事的、外交的プ レッシャーをかける一方、中国とロシアを引きずり込んだ国際包囲網の構 築を目指している。2002年12月11日、ブッシュ大統領はABCテレビのイン タビューで、北朝鮮核開発問題は外交圧力と(各国との)協調で放棄する よう説得する立場を示した。これは北朝鮮の核問題を多国間の協議の場を 設けて、外交ルートを通じた解決を図るというブッシュ政権の基本方針を 表したものと見られる。この基本方針に基づいて、米国は積極的且つ多角 的な外交交渉に取り組むほか、北朝鮮に対する国際包囲網を狭めつつある。

まず、米国は日米韓協調体制の枠を中心に、北朝鮮に対する三国の足並 みを揃えるための積極的な外交活動を展開している。2002年10月26日、日 米韓首脳はロス・カボスのホテルで会談し、北朝鮮に核開発計画の即時廃 棄を求めることで合意した。会談で三首脳は、中国、ロシアなど関係国と 連携し、平和的解決を目指す方針で一致した。また、三首脳は「北朝鮮に 核兵器のためのウラン濃縮計画を迅速かつ検証可能な方法で撤廃するよう 求める」との日米韓共同声明を発表した45。翌27日に閉幕したAPEC首脳 会議は、日米中などの主導の下で「特別声明」を発表した。声明は、北朝 鮮が「アジア・太平洋共同体にその一員としてより大きな参画を果たすこ とにより経済的な利益を受ける」としたうえで、北朝鮮に核兵器計画の放 棄を求め、平和的解決を再確認した46。同じ頃、中国江沢民主席の訪米と 首脳会談も行われたが、両首脳は朝鮮半島の非核化と核問題の平和的解決 で一致した。その後米国は、日米安保協議、日米韓政策調整会合を通じて 三国間の政策調整を行った。特に、ブッシュ政府は関係諸国の結束を促し、

対北朝鮮圧力強化へ足並みを揃えるため、政府高官によるアジア歴訪を頻 繁に行っている。ブッシュ政権の対北朝鮮戦略は、多国間の制裁枠組みを 通じ北朝鮮の孤立化を加速させ、核開発断念に追い込むという新たな「封 じ込め」政策である。しかし、武力行使も対話もせず、国際包囲網構築を 進めることで北朝鮮の核開発を阻止しようとする米国の狙いにはまだ決め

ドキュメント内 …h…L…–…†…fi…g2 (ページ 55-60)