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3. 2. 2 北朝鮮の狙いと「平壌宣言」

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今回の日朝首脳会談において、北朝鮮はこれまでの一貫した態度とは18 0度異なる姿勢で臨んだ。では、北朝鮮がなぜこの時期に日朝国交正常化 に熱心になったのか、主として次の四つの要素があったと思われる。

まず、日本からの経済支援実現を急ぎたいという意図が挙げられる。金 正日総書記は8月20日からシベリアを訪問してプーチン大統領と会談を行 い、シベリア鉄道と朝鮮半島縦断鉄道の連結に合意していた。この鉄道連 結には、大きな資金が必要とされる。そのためには、日朝関係が改善され、

日本の北朝鮮への経済協力が実現することが必要な条件のひとつになる。

日朝関係が改善されれば、この地域での物流が活性化し、投資が活性化さ れ、鉄道の利用価値も高まる。日朝関係の改善から利益を受けるロシアは、

関係改善にしばしば言及してきた。日朝首脳会談の背景には、ロシアの北 朝鮮に対する期待と、その期待に答えたい北朝鮮の姿勢があった。

次に、米国のブッシュ政権の北朝鮮に対する強硬姿勢が働いたと考えら れる。これまで北朝鮮は、米国との対話を外交政策の最優先課題としてき た。クリントン政権末期に米朝関係は大きな進展を見せたが、ブッシュ政 権になって両国関係は逆展開をするようになった。「9・11テロ」後、ブッ シュ大統領は反テロの手段として大量破壊兵器(WMD)を製造する国に 対して厳しい姿勢で臨み、「悪の枢軸」論を展開した。現在、米国は対イ ラク戦争準備を着々と進める一方、北朝鮮に対する厳しい姿勢を緩めよう ともしない。北朝鮮は、イラクの次に新たなターゲットになるのではない かと強く意識し、日本との関係改善を急ぐべきだと判断したのであろう。

南北間の協力、日本との関係改善を図ることで、ブッシュ政権の強硬姿勢 に対応しようという思惑が見受けられる。

三つ目は経済面であるが、現在の北朝鮮の経済状況は「崖っぷち」に立 たされているといえる。この経済的困難を打開するために7月から北朝鮮 は新しい経済政策を一挙に打ち出した。6月までに金日成生誕90年、金正 日総書記の還暦、朝鮮人民軍創建70年の祝典を終えて、7月から大胆な経 済改革に踏み切った。この経済改革は、中央政府が社会主義経済体制のも とでの低物価、低賃金制度をもうこれ以上維持できなくなり、やむを得ず 配給制を廃止し、その代わりに物価と賃金を大幅に調整し、国民を市場に 押し込めたものである。

最後に、北朝鮮に対する中国、ロシアなどの援助には限りがあり、大統 領選挙を控えている韓国の援助も今後は不透明で、日本にしか頼ることが できないというのが北朝鮮の認識であろう。したがって、日本の経済援助 を引き出すためには、今までの懸案処理をせざるを得なくなった。「平壌 宣言」を見ると、北朝鮮がこれまで守ってきた立場から大きく後退したこ

とがうかがえる。特に過去の歴史認識問題において、金正日総書記は小泉 首相が提案した「賠償」と「財産請求権」の放棄、及び経済協力において の「日韓方式」を全面的に受け入れた。一部の人はこれを「金正日の全 面的な降伏」であるというが、むしろ「戦略的な前進」ではないだろうか。

首脳会談を通じて日朝国交正常化交渉の枠組みは一応作られた。2002年 10月9日、日本政府は北朝鮮が日本の要求を受け入れて拉致事件の生存者 の「一時帰国」を認めたことで、「国交正常化交渉に臨む北朝鮮側の姿勢 が誠実なものである」と判断し、以下のような日朝交渉の基本方針を決め た。①国交正常化交渉本会談を同月29、30日の二日間マレーシアのクアラ ルンプールで再開する、②同交渉では、まず、拉致問題を日朝間の諸懸案 の最優先事項として取り上げる、併せて、工作船問題や日本及び国際社会 の重大な懸案である核問題及びミサイル問題を含めた安全保障の諸問題の 解決に努める、③「平壌宣言」の原則と精神にのっとって、北朝鮮の誠意 を見極めつつ、慎重に交渉を進める、④日米韓の緊密な連携の下、正常化 交渉を進める

首脳会談後初の国交正常化交渉を控えた10月15日、北朝鮮は拉致被害者 の中5人の生存者を日本へ「一時帰国」させた。これにより日朝関係は急 展開を見せ始めるかに見えた。しかし、翌日、米国は北朝鮮の核開発の情 報を流して日朝協議を壊し、米国が主導権をとる状況に持っていった10。 つまり、米国は北朝鮮の核疑惑問題を公表することにより、日本が拉致問 題だけに目をとらわれないように釘を刺したのである。このような中で、

クアラルンプールにおける日朝国交正常化交渉は双方の歩み寄りのないま ま幕を閉じ、小泉政権が進める日朝交渉も膠着状態に落ちてしまったので ある。

最近、北朝鮮が核・ミサイル問題をエスカレートさせるにつれて、日本 の世論は北朝鮮に対してますます厳しくなりつつある。もし北朝鮮が弾道 ミサイルの発射か核兵器開発に直決する核燃料再処理施設の再稼動という

「レッドライン」を超えることになれば、制裁論議は避けられない。それ に伴って、一時検討されていた食糧支援は遠のき、「アメよりもムチ」の

考えが徐々に広まり、日本政府内では既に経済制裁措置の検討が始まった という11

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