このように、日本は日米同盟に基づき米国との協力を最も優先し、その 上で米国と韓国の意向を前提にして行動する以外にない。敢えて個別分野 での日本の具体的な協力を指摘すれば、軍事においては、情報共有、後方 地支援、医療部隊派遣、海上協力などがある。また、外交においては、米 韓関係改善の支持、日米韓政策調整グループの緊密化が望まれる。他方、
日朝関係については、関係が正常化していない以上、大幅な経済援助では なく、国連世界食糧計画を通じての食糧援助の継続が最も現実的である。
なお、長期的な視野からさらに可能性を押し進めるとすれば、既に述べ た集団的自衛権行使の容認を初め、弾道ミサイル防衛の推進などは日米同 盟強化に必須であろう。
2. 6 むすび
本稿の結論は次のとおりである。日本は日米同盟を基盤とし、韓国とア メリカの意向を踏まえて行動するより他はない。これは2002年9月17日の 小泉訪朝以前から現在に至るまで不変である。もし日本が外交的イニシア ティブをとって北朝鮮の核開発問題を解決しようとするなら、日本の政策 担当者がそうした機会を正確に見極め、これをとらえるべく大胆に行動す ることが必要である。しかし、それを望むことは現状では難しい。仮に日
本が何らかのイニシアティブをとった場合でも、日本は日米同盟を大前提 として行動するしかない。結局、日本は韓国とアメリカの意向と行動を踏 まえた上で自らの役割を担う以外にない。日米韓3ヵ国の安全保障協力の枠 組みにおいても、日本はこうした制限を受けながら行動するより他はない。
外交・安全保障政策においては、無理をしないことが肝要である。理想 を言えばアイデアはいくらでも出せる。しかし、常に限界を見据え、その 範囲でできることを模索すべきである。このことは日本の朝鮮半島におけ る役割を考える上でも当てはまる。
◆注釈
1 US Department of State, Transcript: NSC's Rice Briefs, October 25, 2002.
2 US Dpartment of Defense, News Breif by Secretary Donald Rumsfeld, November 4, 2002.
3 US Department of State, William J. Perry, Special Advisor to the President and the Secretary of State, Review of United States Policy Toward North Korea: Findings and Recommendations, Office of the North Korea Policy Coordinator, October 12, 1999.
4 US Department of State, Senate Armed Services Committee Subject: Security Implications of the Nuclear Agreement with North Korea, Thursday, January 26, 1995.
5 U.S. News & World Reports, “Rethinking South Korea's Defense,”February 6, 2003.
6 US Department of State, Transcript: Kelly says US Has Not Made Final Decision on N.
Korea; Assistant Secretary of State's Nov. 19 Press Briefing, November 20, 2002.
7 US Deparment of Defense, News Transcript: Deputy Secretary Wolfowitz Q&A at US-Korea Relations Forum, February 6, 2003: and Department of Defense, Testimony Before the Senate Foreign Relations Committee, Hearings on the North Korean Nuclear Accord, January 25, 1995.
8 北朝鮮の核開発の意図については、外交交渉カード確保が目的であるとする説と、核保有 そのものが目的であるとする説がある。専門家の多くは後者の立場に傾斜しつつあるが、
両方の説は矛盾しない。北朝鮮の意図が曖昧である以上、どちらか一方の立場に決めても 詮無いことである。「万策を用意している」というアプローチは現実的なものである。
9 この場合のバーチャル(virtual)には、「仮想的」と「実質的」という二つの意味が含まれ ている。つまり、日米同盟と米韓同盟は正式文書に基づいた同盟であるが、日韓同盟はそ うした正式な同盟ではないという意味で「仮想的」である。しかし、日韓同盟は北朝鮮に 対して抑止効果を持つという意味で「実質的」な同盟ということができる。
3. 1 はじめに
2002年後半から金正日総書記は、大胆な国内経済改革に踏み切るとと もに、対外的にも積極的な外交に乗り出した。その象徴的な出来事となっ たのが同年9月に行われた日朝首脳会談である。日朝首脳会談において金 正日総書記は、自ら拉致問題と不審船の事実を素直に認め、今までにない 譲歩を見せた。そして、拉致被害者5人の「一時帰国」が実現され、日朝 国交正常化交渉も「平壌宣言」が定めたとおり10月末にマレーシアの首都 クアラルンプールで行われるなど、日朝関係は急展開し始めるかに見えた。
対日関係の改善と平行して、北朝鮮は米国をも対話のテーブルに引き寄せ ようとした。昨年10月初旬、ジム・ケリー米国務次官補の平壌訪問を契機 に、北朝鮮は核開発再開を認めるとともに、米国との間で不可侵条約の締 結を呼び掛けた。しかし、その意図とは逆にブッシュ政権が強硬な姿勢を 見せると、北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)査察官追放、及び核拡散防 止条約(NPT)脱退宣言と、安保理による制裁措置は「宣戦布告と見なす」、
「休戦協定の履行義務を放棄する」と激しく警告するなど、次々とカード を切りながら危機をエスカレートさせている。現在でも北朝鮮は「二国間