3. 木質バイオマスの供給
3.2 素材生産力増強と持続可能な森林経営
3.2.1 高性能林業機械の導入による生産性の向上
(1) 地域に適した素材生産における作業システムの検討
各地域の森林の状況・地形・地質に合わせて、車両系・架線系の適切な 選択を行い、施業方法・作業システムを検討します。
[解説]
大規模な木質バイオマス利用設備の新設は、該当地域における木材の新規需 要になることから、素材生産力およびチップ生産能力の増強による燃料用木質 バイオマスの供給力の向上が必要となります。
なお、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT 制度)における木質バ イオマスの調達価格は、5,000kW の発電規模を基準として算出されています。
グリーン発電会津(5,000kW)の燃料用木質バイオマスの年間需要は、
84,000
㎥/年とされています。これは、会津地域における年間の素材生産量(67,000㎥
/年、H21
年)の約1.3
倍に相当します。このことから、大規模な木質バイオマスエネルギー利用施設への木質燃料の安定供給のためには、地域における生産 性の向上と素材生産事業の規模拡大が必要となります。
また、効率的な林業経営の為には、生産性の向上が不可欠であることから県 内でも高性能林業機械の整備が進められています。
具体的な導入事例としては、ハーベスタによる伐木・造材を始め、グラップ ル付きフォワーダによる集材の作業効率の向上など、従来の施業システムとは 大きく変わった車両系作業システムがあります。また、架線系作業システムも、
移動速度が早いリモコン式搬器や荷上力の大きいタワーヤーダでの集材なども みられるようになってきました。
また、県内には傾斜
35°を超える急峻地や、地質上地盤が脆く、作業道開設
が難しいケースもあることから、地形・地質に合った作業システムを構築する 必要があります。27
表 3-3 路網整備の考え方について
区分 作業 システム
最大到達距離(m) 作業システムの例 基幹路網
から
細部路網
から 伐採 木寄せ・集材 枝払い・
玉切り 運搬 緩傾斜地
(0~15°) 車両系 150~200 30~75 ハーベスタ グラップル
(ウインチ) プロセッサ フォワーダ トラック
中傾斜地 (15~30°)
車両系
200~300
40~100 ハーベスタ
チェーンソー
グラップル
ウインチ プロセッサ フォワーダ トラック
架線系 100~300 チェーンソー スイングヤーダ
(タワーヤーダ) プロセッサ フォワーダ トラック
急傾斜地 (30~35°)
車両系
300~500
50~125 チェーンソー グラップル
ウインチ プロセッサ フォワーダ トラック
架線系 150~500 チェーンソー スイングヤーダ
タワーヤーダ プロセッサ フォワーダ トラック 急峻地
(35°~) 架線系 500~1500 500~1500 チェーンソー タワーヤーダ プロセッサ トラック
この表は、林業機械の進歩・発展や社会経済的条件に応じて調整されるものである。
【出典】路網整備の考え方について、林野庁 平成23年3月 (検討委員会最終とりまとめより抜粋)
[参考]
・燃料利用のための集材方法(全木集材)
燃料用材を低コストで効率的に集める集材方法として、全木集材(図 3-4)を行い、土 場で一括して造材・仕分けし、枝葉は大量に溜まった所でバンドル化して収集したり、チ ップ化する方法があります。特に皆伐現場などで、搬出量が大量である場合には、燃料用 材も低コストで収集しやすいと言えます。ただし、搬出距離が長くフォワーダを使用する 場合などは、短幹集材が主流となるので枝葉を収集しようとするとコストが上がってしま います。燃料用材の搬出には、施業地毎に支出(人件費や燃料費等)と収入(材の販売費)
を想定し、採算性の分岐を意識しながら収集の可否を判断する必要があります。
また、既往の研究によればチップ化により 2 倍量の林地残材を輸送可能であるケースが 示されていますi。なお、土場でチップ化を行う場合は、大型車や自走式チッパーの進入が 可能で、チッパーの回送経費を含めても、原木輸送より経済性を確保できる燃料用材の量 とそれに応じた土場の確保が必要です。
i G. Andersson, A. Asikainen, R. Björheden, P. Hall, J. Hudson, R. Jirjis, D.Mead, J. Nurmi and G.
Weetman(2002)Production of Forest Energy,“J.Richardson, R.Bjorheden, P.Hakkila, A.T.Lowe and C.T.Smitheds,Bioenergy from sustainable Forestry, Kluwer Academic Press”
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図 3-4 集材方法の区分と残材発生
【出典】生物資源,第3巻第2号
・「森林・林業再生プラン実践事業」による取組
高知県の香美(かみ)、物部(ものべ)両森林組合では、これまで11か所の団地(約6千ha)
で施業集約化を行い、間伐に取り組んでいます。この地域は、35 度以上の急傾斜地が約 4 を占める地形であることから、「森林・林業再生プラン実践事業」では、タワーヤーダと 高性能搬器の導入、これらによる作業システムを念頭においた路網整備・搬出間伐に取り 組み、生産性の検証を行っています。
同事業では、10路線、13kmの路網整備を実施するとともに、(1)短距離では林業用トラ クタに取り付けたウインチ(トラクタはタワーヤーダの牽引にも使用)、(2)中距離ではオー ストリア製のタワーヤーダと搬器、(3)長距離では集材機と荷揚げ用ウインチを内蔵した高 性能搬器というように、集材距離に応じて複数のシステムを組み合わせ、従来のシステム
も含めて118haで搬出間伐を行いました。
タワーヤーダを使った作業システムの一つの事例の結果をみると、間伐の生産性は7.6㎥
/人日(全国平均3.6㎥/人日)、生産コストは 6,470円/㎥(全国平均8,763 円/㎥)であり、
同事業では、架線の架設及び撤去の時間の短縮、プログラムによる搬器の自動運転、荷揚 げ速度の上昇による生産性や安全性等の向上について検証が進められています。
全木集材
全幹集材
短幹集材
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図 3-5 ウインチを内蔵した高性能搬器
【出典】林野庁ウェブページ
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/23hakusyo_h/all/a46_01b.html
(2) 高性能林業機械の導入による生産性の向上
・大量の燃料用木質バイオマスを安定的に供給するには、高性能林業機械 の導入等により、生産性の向上が必要です。
・高性能林業機械による生産性の向上には、各素材生産事業者が林地毎の 目標を持ち、機械の稼働率を上げる事を中心に展開を行う必要がありま す。
[解説]
生産性の向上を図る為には、高性能林業機械等による森林施業の機械化が不 可欠です。高性能林業機械の導入を進めることで、労働安全衛生の確保、労働 強度が軽減されます。そこに加えて、施業の効率化を進めるには、いかに高性 能林業機械の稼働率を高められるかが重要になることから、高性能林業機械の 稼働率を指標の一つとし、各林地における生産性の把握、作業の振り返り、フ ィードバックを行うなど作業システムをよく検討しておく必要があります。
参考として、県内の高性能林業機械保有台数の状況を図 3-6 に示しました。
これによると突出して保有台数が多いのは県南地域です。
なお、「福島県農林水産業振興計画」では、東日本大震災からの復興需要に対 応した建築材料や再生可能エネルギー源としての木質バイオマス等県産材の需 要拡大と安定供給が求められていることを踏まえ、平成
32
年度までに高性能林 業機械を現行の190
台から283
台以上にすることを目標としています。30
図 3-6 方部別の高性能林業機械保有台数(平成 22 年 3 月 31 日現在) ※林業振興課調べ
[参考]
農林水産省:高性能林業機械化促進基本方針より引用<作業地分散型>
①緩傾斜地タイプ(傾斜
20
度未満)フェラースキッダ、ハーベスタ等による伐採に対して、フォワーダによる 運材を組み合わせることで、作業員
3~4
人で生産量27~36m
3/日を目標と
します。②急傾斜地タイプ(傾斜
20
度以上)小型フェラースキッダ等による伐採を基本とし、タワーヤーダ等の運材及 びプロセッサによる造材などを組合せることで、作業員
3~4
人で16.5~
22m
3/日程度を目標とします。
<作業地集中型>
①緩傾斜地タイプ(傾斜
20
度未満)ハーベスタ、フェラーバンチャ等による伐採とグラップルによる集積、集 材距離と出材量に対応したスキッダ、無人フォワーダ等による運材の組合 せにより、作業員3~4人で生産量 30~40m3
/日程度を目標とします
②急傾斜地タイプ(傾斜20
度以上)急傾斜地用ハーベスタ、急傾斜地用フェラーバンチャ等による伐採と集材 距離に対応した能力のタワーヤーダや分岐式モノレールによる運材及びプ ロセッサ等による造材の組合せにより、作業員3~4人で1日当たり生産 量 22.5~30m3
/日程度を目標とします。
0 10 20 30 40 50 60 70 80 高 性 能 林 業 機 械 の 保 有 台 数
(台
)
その他 ハーベスタ スイングヤーダ タワーヤーダ スキッダ フォワーダ プロセッサ フェラバンチャーフェラーバンチャー
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