第 四 章 音楽科の教育内容
第4節 音楽科の授業構造について
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このようにして考えてみると、音楽科の授業構造は、次のようにして検討 されなければならないのではあるまいか。
この節では、いよいよ授業する前段として、音楽科の題材をどう構造的に とらえていくかについて考えてみたい。
教材の構造化については、本章第2節でも述べたが、広岡の提唱した音楽 科教材の構造化は、おおいに参考になるものの、そのままの形では利用でき ない。それには、次の二つの理由がある。
1.これから授業作りに向けて取り上げる題材は、広岡の考えているよ うな一つの教材からなるものではなく、複数の教材群から構成されて いることが多い。
2.音楽科の授業全体を考えた場合、広岡のように教材の側からだけ出 i発した構造化理論では、系統性もi発展性もなく、その学習の範囲もあ いまいなままになってしまう恐れがある。
1.ある中心教材を決める。
2。その中心教材の構造を分析する。
3.2より中心観念を導き出す。
4.2より教材の基本要素を考える。
5.3の立場から、学習指導要領の指導内容や主な学年系統の関連をみ
る。
6.教材群を選ぶ。
7.題材(主題)を決定する。
8.教育目標を決定する。
上記のような流れは、固定的なものではなく、いくつかのことが平行して 考えられることもある。また、上記の流れとは逆に、教育目標の方からのア プローチも考えられるが、いちおうの順序を示してある。
これらを解決するためには、音楽科の学習のスコープとシークェンスを考 えた場合、一つの教材の側からの構造化へのアプローチとともに、それが、
より普遍的な教育内容の基準を表わしたものに裏打ちされていなければなら
ない。
そこで、「ゆめをのせて」 (中山知子作詞、市川都志春作曲)を中心教材 とした場合の、授業構造化の例を順に示してみたい。
まず、楽曲を示してみよう。
(教育芸術社版 音楽教科書、 「小学生の音楽 6」p12より)
」 == l12 t−120 中ILI知子作詞 市川都志暮作Tlll
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まず、「ゆめをのせて」の構造を分析する作業である。
音楽科教材の構造を明らかにするためには、教材曲を要素に分けてとらえ なければならない。その要素の数は、「リズム」 「メロディー」 「ハーモニ ー」はどうしても欠かせないものであるが、指導者によりまちまちである。
音楽的な表現力が高まる指導にしていくためには、教材の分析の段階で、
音楽の要素的な面をしっかりおさえて、それを子どもたちにどう結び付けて いくかという配慮が必要である。そのことが、子どもたちの音楽性を高め、
さらに子どもたち自身で、自分たちの演奏を評価する土台を作り、一人立ち できる音楽生活につながるものと思われる。
そこで、中心教材「ゆめをのせて」の場合、次のように要素をとらえ、分
析した。
要 素 そ の 内 容
ア.リ ズ ム r」 ・≠フリズム、b4)リズムの対比、ブレス ρ.
C.メロディー 反復、対比、曲の山 ウ.ハーモニー. 3度の音程
エ. 拍 :子 4分の4拍:子
等. 速 度
」=//2〜/20、ρL
カ. 調 性 二短調〜へ長調〜二短調 の転調 キ。 音 色 やわらかい歌声
ク渇 強 弱
皿P、皿f、〈、〉
ケ. 歌 詞 全体の内容表現、発音 コ. 形 式 二部形式、転調による対比
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このようにして分析してみると、教材「ゆめをのせて」の中心観念と基本 要素は、次のようになるのではあるまいか。
中心観念 基本要素
二短調〜へ長調〜二短調と変化していく曲想の美しさ
/.aとbの対比したリズム
。2.繰り返しと変化のあるメロディー 3。3度音程二心の美しいハーモニー
このような教材の構造に即して、学習指導要領や指導内容、主な学年系統 の関連をみると次のようになる。
0 学習指導要領との関連
A表現(1)のア、イ、ウ、キ、
ア。「範唱や範奏を聴いて歌うこと。また、へ長調及び二短調 の旋律を三唱したり視奏したりすること。」
イ. 「リズムフレーズの拍の流れを感じ取り、りズムや速度の 変化に応じて、演奏したり、身体表現したりすること。」
ウ。「曲想を味わい、また、歌詞の内容を理解して演奏の仕方 を工夫すること。」
キ.「和声の響きを味わって合唱や合奏をすること。」
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○ 学年の指導内容との関連(巻末資料参照)
ユ。範唱や範奏を聴いて演奏させる。
2.楽譜を見て演奏させる。
4。曲の持つ味わいを感じ取って演奏の仕方を工夫させる。
8。和声の響きを感じ取りながら、聴いたり演奏したりさせる。
0 主な指導内容の学年系統
「視 9 e視奏について」
第3学年 : ハ長調
第4学年 : ハ長調・イ短調 第5学年 : へ長調
eg 6学年 : へ長調・二短調
「歌唱教材について」
第/学年 : 第2学年 : 第3学年 : 第:4学年 : 第5学年 :
第6学年
単音の曲
単音の曲、輪唱曲及び簡単な二部合唱曲 第2学年と同じ
単音の曲、輪唱曲及び二部合唱曲
単音の曲、輪唱曲、二部合唱曲及び簡単な三部 合唱曲
単音の曲、輪唱曲、二部合唱曲及び三部合唱曲
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次に、今までの考察をもとにして、「ゆめをのせて」を中心教材とした教 材群を、下記のように決め、それぞれの教材観とその関連を示した。
中心教材
副教材
「ゆめをのせて」 (中山知子作詞、市川都志春作曲)
「メリーさんのひつじ」 (高田三九三訳詞、外国曲)
「ドナドナ」 (安井かずみ作詞、セクンダ作曲)
「野いちご」 (阪田寛夫作詞、フィンランド民謡)
中心教材の「ゆめをのせて」は、4分の4拍子、A(a・5)B(b・5)の二 部形式の曲である.。及びぬ二短調で刀1」DJisのリズムによる反復が特 徴になっているのに対して、bはへ長調で、付点四分音符によるのびのびと
したリズムとなっている。また歌詞は、生きる喜び、希望、あこがれを明る く生き生きと歌っており、子どもたちにとっても好まれる内容であると思わ
れる。
り
「メリーさんのひつじ」は、ハ長調、4分の4拍子、a・aの一部形式の外 国(Z・・J・曲であり、」.♪川JJJIIのリズムで始まるかわいらしいメ・デ・
一に歌詞をつけたもので、とても親しみやすい曲である。
「ドナドナ」は、二短調、2分の2拍子、A(。励B(b・9)C(,・、ぎ)
の小三部形式の曲で、Bの部分はへ長調に転調している。フォークソングと して流行したこの曲は、哀愁を帯びた旋律にぴったりの歌詞がつけてあり、
親しみの持てる曲となっている。
「野いちご」は、二短調、4分の2拍子、a・♂の一部形式の曲である。音 域が//度とかなり広いので、歌わせるには、その点への配慮が必要である。
「季節の歌」としての扱いとともに、二短調の関連教材としての取り上げ方
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もできる曲である。
中心教材と副教材との関連を考えてみると、「ゆめをのせて」を中心とす るこの学習主題の中で、指導の核となるものは、二短調の調性に慣れさせ、
さらにへ長調との違いに感覚的に気づきながら表現させることである。そこ で、それらの目標を達成させるための副教材として、三曲を取り上げてみた。
「メリーさんのひつじ」は、長調と短調の違いに気づかせ、二短調の厚田・
視奏の導入に使い、さらに発展して「野いちご」で、その学習を定着させた いと思っている。 「ドナドナ」は、 「ゆめをのせて」と同じ二短調〜へ長調
〜二短調の転調を含む曲なので、発展教材として扱いたいと思っている。
最後に、題材名(主題名)と教育目標を決定する作業に入る。
この際は、中心教材「ゆめをのせて」の教材構造化の例を参考にする必要 がある。そして、教材の持つ中心観念・基本要素と、主題名・教育目標との 関連を、基本的には次のように考えたい。
主題名
教育目標
中心観念より導き出す
(/)技能目標に関するもの
(2)態度目標に関するもの
基本要素より導き出す
このように、中心観念は主題と関わり、基本要素は技能目標に関わり、そ の技能目標と態度に関わる目標とで、教育目標を構成するのである。
なお、主題によらない題材の場合は、申心観念も教育目標に関わり、その 場合は、総括目標的性格を帯びてくると考えられる。
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このような基本的な考え:方から、この教材群の題材(主題)名と教育目標 は、次のように設定された。
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※ 第四章における引用文献・注釈など
題 材(主題) へ長調と二短調 目 標
(/)へ長調と二短謂の違いを感覚的にとらえさせ、曲想を生かして 創造的に表現する能力を養う。
(2)音楽を形づくっている要素に気づきながら、互いに協力して、
豊かな表現をめざす態度を身につけさせる。
(1)広岡亮鰭「教育内容の現代化」(明治図書)1967、P・115
(2) (1)と同書、P。121〜124
(3) (1)と同書、P。134
(4) 「i新編 音楽科教育法」 (音楽之友社)1970
この章では、音楽科の教育内容と授業の構造などについて考察してきたが、
授業づくりを考えた場合、「何のために、何を教えるのか」の視点だけでな く、「どのように教えるのか」という観点でのアプローチが是非必要である。
この節で示した授業構造化の例も、実際にどのように学習に組み入れて、ど のようにして指導していくのかが、最も重要な問題である。それが解決しな い限り、目標・内容・方法が相互に関連した授業づくりは実現しない。
そこで、次章では、音楽科の授業の:方法という面で考察し、今まで示した 音楽教育の目的、音楽科の目標、教育内容、授業構造を、具体的にどのよう
に指導していくかについて述べてみたい。