第7章 政権交代と情報公開 文書公開の意味と権力、民主化という側面から考察
IV. 「戦争責任・戦後補償」から「植民地責任」へ
4. 韓日会談文書公開訴訟 の意義
「戦後補償問題は,韓日請求権協定で最終的に解決されたのか?」というのが,韓国側の公開訴訟,日本 側の公開訴訟を始めるきっかけであったあったことは,先ほどお話ししました。
韓日協定には,2条と3条があります。2条について,日本の裁判所は,個人の請求権をも完全に放棄 する規定であると解釈しており,同条の存在を盾にして,戦争責任を回避しつづけてきました。
上記の戦後補償裁判でご紹介したとおり,日本の裁判所は,国家無答責や,時効・除斥期間において問 題となる論点について,被害者の請求を妨げる結論を出す最終的な根拠として,韓日請求権協定における請 求権放棄規定の存在を出してくるわけです。
つまり,戦後補償裁判で争われていることの本質は,まさに,韓日請求権協定における請求権放棄規定 の解釈に関する紛争であったといえます。
日本の裁判所では,韓日請求権協定における請求権放棄規定を個人の請求権をも完全に放棄する規定で あると解釈してきましたが,果たして,それが正しい解釈であったのか,間違っているのか,それは,結 局,韓日会談でどのような議論がなされていたかを検討する必要があり,そうでなければ,韓日請求権協定 第2条の正しい解釈はできないといえるでしょう。
その正しい解釈を求めるという点が,戦後補償に韓日会談文書の全面公開を求める訴訟が寄与出来る点 であり,その意義があると言えます。
そして,正しい解釈を決められないというのであれば,韓日請求権協定には,やり直しを求めることが できる条項が3条に規定されておりますので,これに基づいて,韓日両政府が,再度,戦後補償に関して話 し合いをもつ必要があると考えていますが,これについては,公開訴訟の次の課題として検討しなければな らないと思っています。
以上