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請求権問題はどのように処理されたのか

第7章   政権交代と情報公開   文書公開の意味と権力、民主化という側面から考察

Ⅲ. 請求権問題はどのように処理されたのか

2. 評価;1950,60年代文書保存状況と関連して

一番目、公文書の再活用、不足な紙資源を補充するための一つの方法で、永久保存文書以外の公文書は、

再び収集してリサイクル(末端官吏証言)9)

二番目、チャート文化の導入、米軍事学校卒業後帰国した軍人たちが5・16クーデターで政権を奪取後、

行政報告がチャート形態に変わることで、文書保存が不可能な状況、行政報告文化の変化が文書保存には災 いとなる10)

三番目、政治的・理念的に問題になる公文書の廃棄処分;農地改革資料焼却命令(チャン・サンファン) 四番目、管理がいいかげんなことによる亡失

事実上1960年代は公文書の受難時代と言われるほど、文書の保存状態が劣悪、幸い外交文書だったた め、この程度でも残っているということ

(資料5 參照)

個人請求権消滅に関する交渉当時、韓国政府の認識は李圭星(イ・ギュソン)請求権分科委員会首席代表が 外務部長官に、1965年4月10日と20日、26日の三回報告した文書に比較的よく現れている。李圭星は個人請 求権消滅後の対処に対して、1965年4月3日の請求権協定基本合意を言及しながら、"完全かつ最終的にすべ ての請求権が解決されたと解釈できるから、この問題に関しては将来、両国がそれぞれ国内的にどのように 消化して処理するかという問題だけが残っており、したがって特別に問題はない"と発言した。これに対し て日本側は、国内で処理するという方針に異議を提起せずに、"具体的にどういうものが消滅したかという ことを確実にしておかなければならない"として、'①北朝鮮地域の請求権の法的問題、②朝鮮総督府と韓国 政府間の継承問題、③在日韓国人の請求権消滅の範囲、④第2次大戦終結時点の解釈問題、⑤その他'に関す る協議を要求した。

この文書からわかるように、韓国が個人請求権問題の消滅を、それぞれ国内問題として処理することで、

韓日協定の早期妥結を急いだ反面、日本は個人請求権問題が将来提起されることがないように、完全に消滅 させて明文化することに重点を置いていた。しかし日本側が確認しなければならない課題として提起したの は、在日韓国人問題と北朝鮮関係の法的問題であって、日本軍慰安婦問題や被害補償訴訟が韓国国民から提 起されるという想定は含まれなかった。韓日両国政府すべて、個人請求権消滅に植民地支配の被害補償が、

どこまで含まれるのかという主題は十分に扱わなかった。

個人請求権の消滅範囲は請求権協定合意議事録(g)に、"韓日会談で韓国側から提出された韓国の'対日要求 要綱'(いわゆる8項目)に属するすべての要求が含まれ、したがって対日要求要綱に関しては、いかなる主張 もできない"となっている。問題は韓日会談で、要綱として具体的に議論された部分に対する権利が消滅し たのか、でなければ財産権の一部を除いたすべての権利が対象になったのかということであった。

日本軍慰安婦、在韓被爆者、サハリン残留韓国人問題に対して日本に補償を要求し、日本政府も法的補償 を否定しながらも、人道的、道義的支援の必要性を認めて、部分的に対応したということは、韓日会談当 時、この問題が議論されていないことを反証している。B C級戦犯の場合はさらに明らかだ。

第一次韓日会談在日韓人法的地位委員会第29次会議(1952年2月4日)で、韓国側がB C級戦犯問題に対する 日本政府の方針を質問したことに対して、"日本側からそれは別個の問題だから、別途研究するという返事 があった"という記録がある。11) 韓日両国政府がBC級戦犯を交渉対象から除外することに合意したというこ とは、請求権が消滅しない課題が残ったことを意味する。1965年7月5日、駐日大使金東祚(キム・ドンジョ) が外務部長官に送った文書で、在日韓人戦犯団体の‘同進会’が、日本国政府に対する補償請求権が、韓日間 請求権協定によって消滅したのか問い合わせた。12) これに対して外務部長官は、1965年9月28日付「同進会 の問い合わせに対する回示」で、"日本の徴用および徴兵等の理由で発生した韓国人の対日請求権に関して は、‘対日請求要綱’の一環で韓日会談を通して日本政府に請求してきたが、本件の連合国の勝利及び戦後の 念で、"韓日請求権協定に署名した時点で権利関係が明確でなかったもの"であると説明したが、控訴審判決 はこの二種類を区分せずに、不法行為に基づいた損害賠償請求も含めて、国内措置法(法律第144)により 消滅したと判断した。依然争点として残っているということを意味する。

11) 「第29次在日韓国人法的地位分科委員会経過報告(1952.2.4)」第一次韓日会談、8110111012ページ 12) 「韓国出身戦犯補償」第7次韓日会談請求権協定関係説明資料,韓日会談請求権関係者料196566147366

ページ

戦犯裁判に起因した韓国人戦犯の被害に関しては、当初より日本に対する請求対象ではなかったし、協定調 印後の国内措置として個人請求権補償問題の検討対象からも除外される。日本人戦犯に対する日本政府の補 償措置は、戦後日本が独立を回復した後に取った措置なので、在日韓国人に対しては、その補償理由の特異 性を考慮して措置するよう13)、適切な時期に日本側に促すことを指示すること"15) として、B C級戦犯が「

当初から」請求の対象でないことを明確に明かた。

一方2006年韓日協定文書の公開以後、被害者救済措置が検討された当時、注目を引いたのは、韓日協定 交渉過程で日本が被徴用死亡者と負傷者に援護法適用を示唆した発言だった。1962年2月8日に開かれた第6 次韓日会談韓日請求権小委員会第10次会議で、宮川新一郎首席代表は"徴用者補償金に関しては、韓国側は 生存者に対し精神的苦痛に対する補償を請求しているが、その当時韓国人の法的地位が日本人であったとい う点に照らして、日本人に支払われていない補償金は支払えないと考える。しかし死亡および傷病者に対し は、当時の国内法によって給与金が支払われたので、未支払のものがあれば被徴用者未収金として整理でき るだろうから、その項目で検討するのが良いだろうと考えられ、したがって被徴用者補償金という、独立し た項目では応じにくい」14)と発言した。外務省もまた、軍人・軍属と徴用者に対する'見舞金'支給を検討した ことがある。15)

このように交渉当時、日本政府が徴用者に、補償の代わりになる慰労金まで検討したという事実は、200 5年7月22日韓国政府が日本から貰った請求権資金の性格を判断する時、一つの参考資料になった。しかし"

日本から貰った資金が、強制動員の不法(日帝支配自体が国際法的に、また歴史的に不法)に対する賠償的性 格なのか、特別な犠牲にあった被害者に対する援護的性格なのかは確実でない"と判断して、強制動員被害 者に対する慰労金支給は"韓国政府が政治的次元など別途の考慮で提起したこと"として強制動員被害者の権 利が消滅していないことを明らかにした。16)

2. 韓国政府の最終的な解釈

2005年8月韓日協定文書公開以後、強制動員被害者に対する補償問題を解決するための政策を発表して、

請求権協定に対する韓国政府の最終的な見解を明らかにした。韓国政府の総合的で最終的な見解であるだけ に、その意味が大きいので主要内容を紹介すると、次の通りだ。17)

① 韓日請求権協定は基本的に、日本の植民地支配賠償を請求するためのものではなかったし、サンフランシ スコ条約第4条に基づいて韓日両国間の財政的・民事的債権・債務関係を解決するためのものだった。

② 日本軍慰安婦問題など、日本政府・軍など、国家権力が関与した反人道的不法行為に対しては、

13) 「同東進会の問い合わせに対する回示」第7次韓日会談請求権協定関係説明資料、韓日会談請求権関係者料1965‐

661473105ページ

14) 「一般請求権小委員会第10次会議録(1962.2.8)」第6次韓日会談請求権委員会会議録、750235236ページ。日 本文書(122017ページ)では墨塗り

15) アジア局、「韓国側対日請求権に対する大蔵、外務両省による事情の上位に対し(1962.2.15)」、17991ページ。

16) 「国務総理室韓日修交会談文書公開灯台本企画団活動白書」, 8082ページ。

17) 国務調整室報道資料「韓日会談文書公開、後続対策関連民官共同委員会開催」,2005年8月26日。

請求権協定によって解決されたと見ることはできず、日本政府の法的責任が残っている。

③ サハリン同胞、原爆被害者問題も、韓日請求権協定対象に含まれなかった。

④ 韓日協定当時、韓国政府は日本政府が、強制動員の法的賠償・補償を認めないことによって、‘苦痛を受 けた歴史的被害事実’に基づいて、政治的次元から補償を要求したし、このような要求が両国間無償資金 算定に反映された。

⑤ 請求権協定を通じて日本から貰った無償3億ドルは、‘個人財産権(保険、預金など)、朝鮮総督府 の対日債権など、韓国政府が国家として持つ請求権、強制動員被害補償問題解決性格の資金など’が包括 的に考慮されている。

⑥ 請求権協定は請求権各項目別の金額決定ではなく、政治交渉を通した総額決定方式で妥結したので、各項 目別受領金額を推定することが困難だが、韓国政府は受領した無償資金の内、相当金額を強制動員被害 者の救済に使わなければならない、道義的責任があると判断される。

⑦ 韓国政府は日帝強制占領下、反人道的不法行為に対しては外交的対応方案を持続的に講じて行き、日本軍 慰安婦問題に関してはUN人権委等国際機構を通じて、問題提起を継続する。

この解釈はこの間、強制動員被害者たちが日本政府と企業を相手に、訴訟を行う時曖昧な態度を取った韓 国政府の見解とは違い、法的責任と道義的責任を区分して、明らかに被害者の権利を認めたという点で、そ の意義は大きい。しかし韓国政府が不法行為に対して、日本政府に法的責任があるということを明らかには したが、慰安婦問題など強制動員被害者問題が外交問題で飛び火するのを憂慮して、日本政府を相手に積極 的な要求はしなかった。被害者たちが韓国政府に責任を追及できる名分を残しておいたのだ。