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第 5 章 考察

5.4 中間言語語用論からの考察

5.4.1 韓国人日本語学習者にみられる語用論的転移

韓国人日本語学習者が再勧誘の意味公式の使用頻度や言語表現、言語意識におい

10 一般に態度、言動、表情、身振り、手振り、音声表現法、視線、ことばの速度、間隔などによって、同じ 内容の言葉を聞いても聞き手が感じるニュアンスは変わってくるが、その全体を「非言語伝達」という(洪 2007:268)。

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て母語からの影響を受けていると思われる箇所がいくつか観察された。

第4章の表10に示されているように、韓国人日本語学習者は調査1の周辺部分 の意味公式の使用傾向と、特に周辺部分の意味公式の一つである「詫び」の使用頻 度が低いという点が韓国語母語話者に類似している。

表10 調整済み残差(周辺部分)

意味公式

あいづち 相手への負担軽減 詫び 遺憾表明 被験者 JJ

KK KJSL

.6 -.1 1.8 -2.1

.7 .6 -.9 -1.2

-1.2 -.4 -1.1 3.1

日本人は相手に迷惑をかけたり、相手に何かをやってもらったりする際に一言お 礼を言ったり、手間をかけたことに対して謝ったりするのは当たり前のことだが、

韓国人は親しい間柄では一々言わない傾向が強い。韓国人は一々言わなくてもお互 いの気持ちは分かるもので、むしろ相手から一々言われた方がよそよそしくて水臭 いと感じる傾向が強い。

第4章の表32に示されているように、調査2の設問①にみられた意識調査の結 果においても韓国人日本語学習者と韓国語母語話者の類似性が観察される。

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表32 調整済み残差(再勧誘をやめられた場合)

回答にみられる意識

気にしない ホッとする 断る 寂しい 気になる 被験者 JJ

KK KJSL

1.6 3.7 .7 -2.2 1.4

-1.7 -1.8 -1.2 1.2 .4

.2 -1.9 .5 1.1 -1.7

回答にみられる意識

申し訳ない 考え直す 勧誘に応じる その他 被験者 JJ

KK KJSL

-1.4 -2.3 -2.1 -.8

1.6 .4 .8 1.5

-.2 1.8 1.3 -.8

この両者はいずれも、相手に再勧誘をやめられた際の意識の中で、「ホッとする / 助かる」の回答がH0における推定値よりも有意に近い水準で少なく、「寂しい / 残 念に思う」が正の数値を示している。日本語母語話者は「ホッとする / 助かる」の 調整済み残差が+3.7、韓国語母語話者は-1.8、韓国人日本語学習者は-1.9であった。

そして、「寂しい / 残念に思う」の調整済み残差は、日本語母語話者は-2.2、韓国 語母語話者は+1.2、韓国人日本語学習者は+1.1であり、韓国人日本語学習者は韓国 語母語話者に近い傾向を示していた。

最後に、調査2の設問②にみられた意識調査の結果においても同様の類似性が観 察される。第4章の表40に示されているように、韓国人日本語学習者は相手に誘 い続けられた際の意識の中で、「押し付けがましい / しつこい」の調整済み残差が 負の数値を示しており、「嬉しい / 有難い」と「勧誘に応じる」の調整済み残差は 正の数値を示している。

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表40 調整済み残差(誘い続けられた場合)

回答にみられる意識

気にしない 断る しつこい 面倒だ 苛立ち 被験者 JJ

KK KJSL

-.3 .4 3.2 2.4 1.3

-1.4 -1.3 -1.0 -.6 -.4

1.7 .9 -2.2 -1.8 -.9

回答にみられる意識

困る 申し訳ない 嬉しい 勧誘に応じる その他 被験者 JJ

KK KJSL

.3 .1 -2.3 -2.3 -.9

-1.4 .5 1.4 2.0 .4

1.1 -.6 .8 .3 .4

日本語母語話者は「押し付けがましい / しつこい」の調整済み残差が+3.2、韓国 語母語話者は-1.0、韓国人日本語学習者は-2.2であった。また、「嬉しい / 有難い」

の調整済み残差は、日本語母語話者は-2.3、韓国語母語話者は+1.4、韓国人日本語 学習者は+0.8であった。そして、「勧誘に応じる」の調整済み残差は、日本語母語 話者は-2.3、韓国語母語話者は+2.0、韓国人日本語学習者は+0.3であり、韓国人日 本語学習者は韓国語母語話者に近い傾向を示していた。

大崎(1998:123)は、韓国人は親しくなると招かれた相手の家の冷蔵庫の中を 勝手に開けて、ビールを飲んだりすることは当たり前であり、韓国では「親しき仲 に迷惑」と述べている。そして、韓国では親密性を保とうとすると継続して迷惑を かけ合わなければならないと指摘し、親友とは相手に迷惑をかけることができ、ま たそれを受け入れることのできる間柄という。大崎の指摘のように、韓国では親し い間柄であれば、お互いに迷惑をかけ合い、無理なことも言い合えるという考え方 を持っている。そして、そういったやりとりの中で韓国人はお互いの関係性を確認

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することが多い。そのため、相手からの頼まれ事や少し強引な誘いにも承諾するこ とが多く、そのことが自分は相手に好かれていると感じたり、必要とされる存在で あると判断したりすることにつながる。したがって、以上の意識調査の結果は韓国 人の考え方を支持する結果であり、韓国人日本語学習者が日本語で話すとき、その 話し方は日本語の影響を受けていても、対人意識は影響されにくく変わらないもの であることが検証された。