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第 4 章 結果

4.1 調査 1-再勧誘に関する調査

4.1.2 設問②の結果-意識調査のカテゴリー化

ここでは、調査1の設問②から得られた回答をカテゴリー化して分類した。

・ 設問② なぜそのように(設問①の回答のように)言うか。

勧誘を相手に躊躇されたら、その後どのように言うかという設問①を与えて自由 記述で答えてもらった。そして、なぜそのように回答したのかという設問②を与え て意識調査を行った。ここでは、設問②で得られた被験者の回答をまとめてカテゴ リー化し、出現数の多かった回答例、並びに使用された意味公式を以下の表に示す ことにする。表29は周辺部分の意味公式にみられた被験者の意識のまとめであり、

表30は主勧誘部分の意味公式にみられた意識をまとめたものである。

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表29 周辺部分の意味公式の使用にみられる意識

周辺部分

意味公式 意味公式の使用にみられた意識

「あいづち」

(同意、共感、了解)

相手の状況に共感できるから

相手の忙しい状況を承知しているから 忙しければ次回でいいと思うから

「相手への負担軽減」 少しでも前向きに考えてもらえるように 今後の関係を良好に保つために

相手が断りやすいように 勧誘に応じやすいように

「詫び」 急に誘ったから

相手にとって、その勧誘が不都合だと思ったから 相手の状況を考えるべきだったから

「遺憾表明」 それ以上は誘えないと思ったから

躊躇の返事から勧誘に応じてもらえないと思ったから

(KK)

一緒に行きたいこちらの気持ちが相手に伝わらなかったか ら

(KJSL)

相手が忙しそうだから、すぐに勧誘を諦める

表29にみられるように、周辺部分における意味公式の使用にみられた被験者の 意識をいくつかにまとめることができた。

まず、「あいづち」の使用には、被勧誘者の置かれている状況を承知したり、躊 躇の返事に共感を示したりする勧誘者の配慮意識が働いていることが分かった。

次に、「相手への負担軽減」の使用には、その勧誘を相手が断りやすいようにす るための配慮と勧誘に応じやすいようにするための働きかけの両方が勧誘者の意識

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「詫び」の使用には、相手を急に誘ったり、相手の都合を先に考えるべきなのに まず誘ったりしてしまったことに対して申し訳なかったという勧誘者の意識が窺え た。

「遺憾表明」の使用には、相手の躊躇する返事から、勧誘には応じてもらえず、

それ以上は誘えないと受け止め、そのことを残念に思う気持ちが勧誘者の意識にあ る。そして、KKにだけ「一緒に行きたいこちらの気持ちが相手に伝わらなかった から」という回答もみられた。また、KJSLには「相手が忙しそうだから、すぐに 勧誘を諦める」という回答がみられ、相手への配慮として「遺憾表明」が用いられ ていることが窺えた。

表30 主勧誘部分の意味公式の使用にみられる意識

主勧誘部分

意味公式 意味公式の使用にみられた意識

「都合・理由の尋ね」 断りやすくするために

相手に他の予定があるかもしれないから

(JJ)

相手に考える余裕を与えるために

(KK,KJSL)

一緒に行きたいという気持ちに気づいて欲しいから 一緒に行きたくないかもしれないから

「代案・解決策の提示」 一緒に行きたい気持ちを相手に伝えるために 相手の都合に合わせるために

相手が誘いに乗ってくる可能性があるから積極的に誘う

(KK)

家庭教師のアルバイトだからこそ融通が利くと思うから

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「誘導発話」 積極的に誘った方が相手に伝わると思うから

相手が誘いに乗ってくる可能性があるから積極的に誘う

(JJ)

相手の様子をみるために

最後の判断は相手に任せるために

(KK,KJSL)

相手が断りやすいようにユーモア混じりで誘う 誘いに乗ってもらえるために最後まで説得する

「共同行為要求」 相手が誘いに乗ってくる可能性があるから積極的に誘う 1回で勧誘をやめると相手が可哀想だから

相手ともっと仲良くなりたいから 相手との思い出を増やしたいから 相手も楽しみが増えると思うから

(JJ)

相手が行きたくなければ、はっきりと断ってくれると思うの で、もう一度誘う

最後の判断は相手に任せるために

(KK)

心の中では行きたいと思っているはずだから

相手が目上であれば、1回目の誘いからOKという返事はし にくいと思うから

(KK,KJSL)

仲の良い友達であれば、ちょっと強引に誘ってもいいと思う もう一度誘うのが礼儀だから

「勧誘の諦め」 無理に誘うのは失礼だから 相手の意思を尊重すべきだから

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(JJ)

他のメンバーの中に苦手な子(嫌いな子)がいるかもしれな いから

心の中では勧誘に応じて欲しいと思っていても、無理に誘え ないから

(JJ,KJSL)

無理に誘って相手を困らせたくないから

(KK)

行きたくなければ、行かなくてもいいと思うから

相手が躊躇するのを見て、相手は行きたくないと思ってそれ 以上は誘わない

「次回への勧誘」 バイトがあるのに無理に誘ってはいけないから 都合が悪そうだから

無理矢理に誘いたくないから 相手が乗り気ではないと思ったから 急に誘ったことだから気にさせないように

(JJ)

相手に負担をかけたくないから

親しい仲であっても相手を優先すべきだから

(KK)

親友である自分の誘いを躊躇されたら、腹が立つから

表30にみられるように、主勧誘部分における意味公式の使用にみられた被験者 の意識をいくつかにまとめることができた。周辺部分とは違って、グループ間に異 なる回答が数多くみられた。

まず、「都合・理由の尋ね」の使用では、相手の都合を考え、その勧誘を断りや すいようにするための配慮意識として用いられている点が共通していた。その一方、

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JJには「相手に考える余裕を与えるために」という回答が多数みられたのに対して、

KKとKJSLには「一緒に行きたいという気持ちに気づいて欲しいから」、「一緒に 行きたくないかもしれないから」という回答が多数みられた。

次に、「代案・解決策の提示」の使用には、一緒に行きたい気持ちを相手に伝え たり、相手の都合に合わせたりして積極的に誘うという回答が共通してみられた。

「誘導発話」の使用には、積極的に誘った方が相手に自分の気持ちが伝わるとい う意識と、躊躇の返事があっても誘い続ければ誘いに乗ってくる可能性があるとい う意識が働いていることが窺えた。また、JJには「相手の様子をみるために」、「最 後の判断は相手に任せるために」といった回答がみられたのに対し、KKとKJSL には「相手が断りやすいようにユーモア混じりで誘う」、「誘いに乗ってもらえるた めに最後まで説得する」といった回答がみられ、両者の意識差が窺えた。

「共同行為要求」の使用には、1回で勧誘をやめると相手が可哀想だという回答 と、相手との思い出を増やしたいという回答が共通した意識としてみられた。また、

JJには「相手が行きたくなければ、はっきりと断ってくれると思うので、もう一度 誘う」や「最後の判断は相手に任せるために」といった回答がみられたのに対し、

KKには「心の中では行きたいと思っているはずだから」や「相手が目上であれば、

1回目の誘いからOKという返事はしにくいと思うから」という回答がみられ、両 者の間に意識差が窺える。さらに、KKとKJSLには「仲の良い友達であれば、ち ょっと強引に誘ってもいいと思う」、「もう一度誘うのが礼儀だから」という回答が 共通してみられた。

「勧誘の諦め」の使用には、無理に誘うのは失礼であり、相手の意思を尊重すべ きだという回答が共通した意識としてみられた。また、JJには「他のメンバーの中 に苦手な子(嫌いな子)がいるかもしれないから」、「心の中では勧誘に応じて欲し いと思っていても、無理に誘えないから」という回答がみられた。さらに、「無理に 誘って相手を困らせたくないから」という回答がJJとKJSLに共通してみられた。

それに対し、KKには「行きたくなければ、行かなくてもいいと思うから」、「相手 が躊躇するのを見て、相手は行きたくないと思ってそれ以上は誘わない」といった

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回答がみられ、グループ間に意識差が確認された。

最後に、「次回への勧誘」の使用には、相手の都合が悪そうだから無理に誘って はいけないという配慮やその勧誘を相手が気にしないようにするための働きかけが、

各グループに共通した意識としてみられた。一方、JJには「相手に負担をかけたく ないから」、「親しい仲であっても相手を優先すべきだから」といった回答がみられ、

KKには「親友である自分の誘いを躊躇されたら、腹が立つから」といった回答が みられ、両者の間に意識差があることが分かった。