第 5 章 考察
5.4 中間言語語用論からの考察
5.4.2 韓国人日本語学習者にみられる学習環境の影響
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することが多い。そのため、相手からの頼まれ事や少し強引な誘いにも承諾するこ とが多く、そのことが自分は相手に好かれていると感じたり、必要とされる存在で あると判断したりすることにつながる。したがって、以上の意識調査の結果は韓国 人の考え方を支持する結果であり、韓国人日本語学習者が日本語で話すとき、その 話し方は日本語の影響を受けていても、対人意識は影響されにくく変わらないもの であることが検証された。
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表11 主勧誘部分の意味公式とその全体的使用頻度
主勧誘部分 JJ KK KJSL 意味公式 %(使用回数) %(使用回数) %(使用回数)
1. 都合・理由の尋ね 21.4(49) 23.2(63) 18.6(52) 2. 代案・解決策の提示 12.2(28) 9.2(25) 11.1(31)
3. 誘導発話 11.4(26) 18.0(49) 15.4(43)
4. 共同行為要求 19.7(45) 33.8(92) 27.1(76)
5. 勧誘の諦め 14.4(33) 7.0(19) 13.9(39)
6. 次回への勧誘 21.0(48) 8.8(24) 13.9(39)
合計 %(使用回数) 100(229) 100(272) 100(280)
表12 調整済み残差(主勧誘部分)
意味公式
都合・理由 代案・解決策 誘導 共同行為要求 諦め 次回 被験者 JJ
KK KJSL
.2 .9 -1.9 -3.1 1.5 3.5
1.1 -1.0 1.7 3.0 -3.0 -3.2
-1.2 .2 .1 -.1 1.5 -.2
以上にみられる数値上の差だけでなく、言語表現においても韓国人日本語学習者 には日本語母語話者に近いものが観察された。例えば、「そうですよね」、「お忙しい ですよね」、「バイト忙しいんだね」のような相手の置かれている状況に共感を示し、
相手に配慮した表現を用いてから「次回への勧誘」と「勧誘の諦め」を示す発話が 多くみられた。こういった特徴がみられた韓国人日本語学習者の発話例を(104)
~(107)に挙げる。
(104)そうですよね。お忙しいですよね。それでは、また今度でいいです。【KJSL23】
147
(105)バイト忙しいんだね。大丈夫だよ。バイト頑張ってね。【KJSL25】
(106)ご都合がよければのことだったので、全然大丈夫です。【KJSL19】
(107)そっか、忙しいのか。今回は無理か~。【KJSL27】
次に、第4章の表25に示されているように、韓国人日本語学習者は周辺部分の
「あいづち」の使用頻度は男性の方が高く、「相手への負担軽減」の使用頻度は女性 の方が高かった。この結果は日本語母語話者に近い傾向を示すものであった。
表25 周辺部分にみられる男女差
周辺部分 JJ KK KJSL
意味公式 男性 女性 男性 女性 男性 女性 あいづち 48.1(38) 40.8(31) 37.2(13) 55.3(21) 50.8(33) 27.1(19)
相手への負担軽減 31.6(25) 38.2(29) 51.4(18) 26.3(10) 29.2(19) 38.6(27)
詫び 12.7(10) 9.2(7) 0.0(0) 10.5(4) 4.6(3) 7.2(5)
遺憾表明 7.6(6) 11.8(9) 11.4(4) 7.9(3) 15.4(10) 27.1(19)
合計 %(使用回数) 100(79) 100(76) 100(35) 100(38) 100(65) 100(70)
また、表47の残差分析の結果からも分かるように、日本語母語話者においては、
男女間に有意差はみられないものの、「あいづち」、「相手への負担軽減」、「遺憾表明」
において、韓国人日本語学習者と日本語母語話者は同様の傾向を示している。まず、
「あいづち」において、男性は正の数値を示しており、女性は負の数値を示してい る。「相手への負担軽減」と「遺憾表明」においては、男性が負の数値を、女性は正 の数値を示している。
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表47 調整済み残差(被験者グループの周辺部分の男女差)
意味公式
あいづち 相手への負担軽減 詫び 遺憾表明 JJ 男
女
.9 -.9 .7 -.9
-.9 .9 -.7 .9
意味公式
あいづち 相手への負担軽減 詫び 遺憾表明 KJSL 男
女
2.8 -1.1 -.6 -1.7
-2.8 1.1 .6 1.7
意味公式
あいづち 相手への負担軽減 詫び 遺憾表明 KK 男
女
-1.6 2.2 -2.0 .5
1.6 -2.2 2.0 -.5
これらの結果から、韓国人日本語学習者は、母語とは異なる日本語の話し方や日 本人の言語習慣にも影響を受けており、中間言語の特徴がみられたと言える。
Shimizu(2009)、House(1996)でも指摘されているように、第二言語環境に置 かれている学習者の方が目標言語の母語話者に近い傾向がみられ、語用論的流暢さ において優れていると言えよう。