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第 3 章 研究方法

3.3 データの分析

3.3.1 調査 1

3.3.1.1 意味公式の分類と認定作業

本研究では分析単位として「意味公式(semantic formulas)」を用いる。この用 語はFraser(1980)、Cohen & Olshtain(1981、1983)、Beebe et al.(1990)な どの英語の先行研究に用いられた。また、日本語の先行研究でも、生駒・志村(1993)、

藤森(1994、1996)において、使用されている。

調査1の設問①の談話完成テストで得られた回答から意味公式を抽出し、その意 味公式を機能別に分類した。回答で得られた発話を大きく主勧誘部分と周辺部分に 分けて、それぞれを意味公式に分類した。勧誘場面において、勧誘者は必ずしもス トレートに再勧誘を行うわけではなく、相手や場面への配慮に基づく何らかの前置 きをしてから再勧誘を行うことも考えられる。そこで、本研究では勧誘者が本題で ある再勧誘に入る前に行う様々なストラテジー部分を「周辺部分」と定義する(鄭

2009:116)。「周辺部分」にみられた発話には、相手の躊躇に対するあいづちや再

勧誘が行われる前の相手への気配り発話が含まれる。それに対して、「主勧誘部分」

には勧誘者の再勧誘の明言とみられる発話と再勧誘を成功させるための都合の尋ね、

代案や解決策の提示、そして再勧誘を諦める発話と次回への勧誘も含まれる。

意味公式の分類作業は最初に筆者が行い、それを日本語母語話者1名と韓国人日 本語学習者1名にコーディングを協力してもらった。コーディングが一致しなかっ

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た発話は3名で協議して、妥当性の高い基準を採用した。

なお、意味公式の分類と使用頻度だけではなく、その意味公式の言語表現にも注 目して分析を行う。この分析によって数値の上だけでは把握しにくい被験者間の特 徴や違いが明確になり、量的分析だけではなく質的分析も可能になると考える。

以下に、本研究で用いる意味公式の一覧と最も多くみられた日本語と韓国語の代 表的な回答例を提示する。

{周辺部分}

1. 「あいづち(同意、共感、了解)」:相手の躊躇する答え方から、その勧誘が相 手にとって不都合であると察する発話である。

発話例 ・そうですよね。

・그렇구나.(そうなんだ)

2. 「相手への負担軽減」:相手の負担を軽くするための条件を述べ、勧誘を強制し ないことを伝える発話である。

発話例 ・無理にとは言いません。

・만약에 시간 괜찮으시면. (もし、お時間よろしければ)

3. 「詫び」:謝罪することにより、相手に負担をかけることに気づいていること を知らせる発話である。

発話例 ・急に誘って、ごめんね。

・바쁜데 미안해.(忙しいのに、ごめんね)

4. 「遺憾表明」:相手の躊躇する答え方に残念な気持ちを示す発話である。

発話例 ・Aさんが来ないと残念だな。

・같이 가면 좋을걸. 안타깝네.(一緒に行けばいいのに、残念だね)

56 {主勧誘部分}

1. 「都合・理由の尋ね」:相手の都合や躊躇する理由を尋ねる発話である。

発話例 ・いつごろなら大丈夫ですか?

・왜 그래? 바뻐?(どうした?忙しい?)

2.「代案・解決策の提示」:何らかの代案や解決策を提示して勧誘を続ける発話で ある。

発話例 ・少し日程を調整してみます。

・알바 날짜 못 바꾸나?(バイトの日にち、変更できない?)

3. 「誘導発話」:褒めや相手にとって魅力的な情報を与える発話である。

発話例 ・先生がいらっしゃらないと意味がないですよ。

・니가 없으면 재미없어.(君がいないと楽しくないよ)

4. 「共同行為要求」:直接的な表現で共同行為を要求する発話である。

発話例 ・Aさんと一緒に行きたいよ。

・교수님이 참석해 주셨으면 좋겠어요.(先生に参加していただけたら、

嬉しいです)

さらに、「共同行為要求」にみられた表現のバリエーションを次のように分類し、

その発話例を挙げる。

①「勧誘」

・一緒に行きましょう。

・가자, 가자.(行こう、行こう)

②「希望」

・先生の歌が聴きたいです。

・같이 밥 먹고 싶은데.(一緒にご飯食べたいんだけど)

③「依頼」

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・何とか時間を作ってください。

・꼭 참가해 주세요.(ぜひ参加してください)

④「意向」

・先生もいかがでしょうか。

・같이 어때?(一緒にどう?)

⑤「可能性の打診(以下、「可能」と表記)」

・一日もバイト休めない?

・여행 갈 수 있어?(旅行に行けそう?)

⑥「その他」

「命令」

・알바 셔~.(バイト休んでよ~)

「相手に判断を委ねる表現」

・よく考えて決めてね。

「強引に押し切る表現」

・갈거지? 뭘 먹을래?(行くよね?何を食べる?)

「返答を促す表現」

・뭘 망설여? 확실히 말해.(何を迷っているの?はっきり言え)

5. 「勧誘の諦め」:相手の躊躇を受け止め、勧誘をやめる発話である。

発話例 ・じゃ、バイト頑張ってね。

・혼자서 갔다오지뭐.(一人で行ってくるね)

6.「次回への勧誘」:今回の勧誘は諦め、次回への勧誘を示す発話である。

発話例 ・またお誘いします。

・그럼, 다음에 같이 가.(では、今度一緒に行こう)

なお、調査1の設問②の意識調査で得られた回答の分類、分析は4.1.2章で行う。

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