第 4 章 結果
4.2 調査 2-誘われ方に対する意識調査
4.2.1 設問①の結果-再勧誘をやめられた場合
84
回答がみられ、グループ間に意識差が確認された。
最後に、「次回への勧誘」の使用には、相手の都合が悪そうだから無理に誘って はいけないという配慮やその勧誘を相手が気にしないようにするための働きかけが、
各グループに共通した意識としてみられた。一方、JJには「相手に負担をかけたく ないから」、「親しい仲であっても相手を優先すべきだから」といった回答がみられ、
KKには「親友である自分の誘いを躊躇されたら、腹が立つから」といった回答が みられ、両者の間に意識差があることが分かった。
85
表31 再勧誘をやめられた際の被勧誘者の意識
JJ KK KJSL
気にしない 14.5(27) 8.3(16) 11.8(22)
ホッとする / 助かる 31.2(58) 17.6(34) 17.2(32) 勧誘に応じない / 断る 12.4(23) 8.8(17) 11.8(22)
寂しい / 残念に思う 15.6(29) 23.8(46) 23.7(44)
気になる 5.9(11) 4.7(9) 2.2(4)
申し訳ない 13.4(25) 20.2(39) 16.1(30)
考え直す 2.2(4) 5.7(11) 7.5(14)
勧誘に応じる 3.2(6) 7.3(14) 8.1(15)
その他 1.6(3) 3.6(7) 1.6(3) 合計 %(回答数) 100(186) 100(193) 100(186)
表31の結果をもとに、被験者グループ間における回答に有意な差があるかどう か調べるためにイ二乗検定を行った結果、χ2 =36.796, df =16, p <.01となり、回答 と被験者グループの間には、有意な関連性があることが分かった。被験者グループ と回答のどの組み合わせが有意な関連性を示しているかを検証するために残差分析 を行った。
表32に示したように、JJは「ホッとする / 助かる」の回答が、H0における推 定値よりも有意に多く(p < 0.01)みられ、「寂しい / 残念に思う」、「考え直す」、
「勧誘に応じる」の回答がH0における推定値よりも有意に少ない(p < 0.05)。KK は「ホッとする / 助かる」の回答がH0における推定値よりも有意に近い水準で少 ないことが分かった。KJSLは「考え直す」の回答がH0における推定値よりも有意 に近い水準で多く、「ホッとする / 助かる」の回答がH0における推定値よりも有意 に近い水準で少ないことが分かった。
86
表32 調整済み残差(再勧誘をやめられた場合)
回答にみられる意識
気にしない ホッとする 断る 寂しい 気になる 被験者 JJ
KK KJSL
1.6 3.7 .7 -2.2 1.4
-1.7 -1.8 -1.2 1.2 .4
.2 -1.9 .5 1.1 -1.7
回答にみられる意識
申し訳ない 考え直す 勧誘に応じる その他 被験者 JJ
KK KJSL
-1.4 -2.3 -2.1 -.8
1.6 .4 .8 1.5
-.2 1.8 1.3 -.8
上記の結果から、KJSL はJJ よりもKK により近い傾向を示しており、対人意 識は学習言語などに影響されにくいと言える。これは、KJSL が再勧誘の意味公式 をはじめとする再勧誘の仕方において、学習言語や学習環境に影響され JJ に近い 傾向を示したことと対照的である。学習者が選択する言語表現形式が必ずしも学習 者の対人意識、対人感情を反映したものではないということは、異文化コミュニュ ケーションにおいて留意しておくべき事柄であると思われる。
次に、上述した全体についての結果をもとに、各場面における回答に相手との上 下関係や勧誘の負荷の度合いによる違いがみられるかを検討する。
表33にみられるように、JJは負荷の度合いが大きい場面(場面2、4、6)でよ り「ホッとする / 助かる」、「勧誘に応じない / 断る」、「気になる」、「申し訳ない
(場面3、4を除く)」の回答率が高く、負荷の度合いが小さい場面(場面1、3、5)
では「気にしない」、「寂しい / 残念に思う」の回答率が高いことが分かった。
87
表33 再勧誘をやめられた際のJJの場面別意識傾向
場面1 場面2 場面3 場面4 場面5 場面6 気にしない 23.3(7) 8.6(3) 13.3(4) 3.3(1) 23.4(7) 16.7(5)
ホッとする / 助かる 30.0(9) 51.4(18) 20.0(6) 41.9(13) 13.3(4) 26.6(8) 勧誘に応じない / 断る 6.7(2) 8.6(3) 10.0(3) 16.1(5) 10.0(3) 23.3(7)
寂しい / 残念に思う 13.3(4) 0.0(0) 23.4(7) 12.9(4) 40.0(12) 6.7(2)
気になる 6.7(2) 14.3(5) 0.0(0) 9.7(3) 0.0(0) 3.3(1)
申し訳ない 10.0(3) 14.3(5) 20.0(6) 16.1(5) 3.3(1) 16.7(5)
考え直す 0.0(0) 2.8(1) 0.0(0) 0.0(0) 3.3(1) 6.7(2)
勧誘に応じる 10.0(3) 0.0(0) 10.0(3) 0.0(0) 0.0(0) 0.0(0)
その他 0.0(0) 0.0(0) 3.3(1) 0.0(0) 6.7(2) 0.0(0) 合計 %(回答数) 100(30) 100(35) 100(30) 100(31) 100(30) 100(30)
表33の各場面におけるJJの回答に有意な差が認められるかどうか調べるために カイ二乗検定を行った結果、χ2 =79.468, df =40, p <.01となり、場面と回答には有 意な関連性があることが分かった。場面と回答のどの組み合わせが有意な関連性を 示しているかを検証するために残差分析を行った。
表34に示したように、目上の相手に誘われる場面である場面1(負荷の度合い、
小)において、「勧誘に応じる」の回答がH0における推定値よりも有意に多い(p <
0.05)。目上の相手に誘われる場面である場面2(負荷の度合い、大)において、「ホ
ッとする / 助かる」、「気になる」の回答がH0における推定値よりも有意に多く(p
< 0.01、p < 0.05)、「寂しい / 残念に思う」の回答がH0における推定値よりも有意 に少ない(p < 0.01)。目下の相手に誘われる場面である場面3(負荷の度合い、小)
において、「勧誘に応じる」の回答がH0における推定値よりも有意に多い(p < 0.05)
ことが分かった。目下の相手に誘われる場面である場面4(負荷の度合い、大)に おいて、「気にしない」の回答がH0における推定値よりも有意に少ない(p < 0.05)。
88
同等の相手に誘われる場面である場面5(負荷の度合い、小)において、「寂しい / 残念に思う」、「その他」の回答がH0における推定値よりも有意に多く(p < 0.01、
p < 0.05)、「ホッとする / 助かる」の回答がH0における推定値よりも有意に少な
い(p < 0.05)ことが分かった。同等の相手に誘われる場面である場面6(負荷の度
合い、大)において、「勧誘に応じない / 断る」の回答がH0における推定値よりも 有意に多く(p < 0.05)、「考え直す」の回答がH0における推定値よりも有意に近い 水準で多い。
表34 調整済み残差(再勧誘をやめられた場合;JJの場面別)
回答にみられる意識
気にしない ホッとする 断る 寂しい 気になる 場面 1
2 3 4 5 6
1.5 -.2 -1.0 -.4 .2
-1.1 2.9 -.8 -2.8 2.3
-.2 -1.4 -.4 1.3 -1.5
-2.0 1.4 .7 -.5 1.0
1.5 -2.3 -.4 4.0 -1.5
.4 -.6 2.0 -1.5 -.7
回答にみられる意識
申し訳ない 考え直す 勧誘に応じる その他 場面 1
2 3 4 5 6
-.6 -.9 2.3 -.8
.2 .3 -1.2 -.8
1.2 -.9 2.3 .8
.5 -.9 -1.1 -.8
-1.8 .5 -1.1 2.4
.6 1.9 -1.1 -.8
表35に示されているように、KKは負荷の度合いが大きい場面(場面2、4、6)
89
では「気になる」、「申し訳ない」の回答率が高く、他方、負荷の度合いが小さい場
面(場面1、3、5)では「気にしない」の回答率が高いことが分かった。
表35 再勧誘をやめられた際のKKの場面別意識傾向
場面1 場面2 場面3 場面4 場面5 場面6 気にしない 10.0(3) 0.0(0) 10.0(3) 3.3(1) 23.3(7) 6.5(2)
ホッとする / 助かる 20.0(6) 14.3(6) 16.7(5) 36.7(11) 6.7(2) 12.9(4) 勧誘に応じない / 断る 10.0(3) 2.4(1) 3.3(1) 6.7(2) 10.0(3) 22.6(7)
寂しい / 残念に思う 26.6(8) 31.0(13) 20.0(6) 13.3(4) 20.0(6) 29.0(9)
気になる 6.7(2) 9.5(4) 0.0(0) 3.3(1) 0.0(0) 6.5(2)
申し訳ない 10.0(3) 19.0(8) 26.7(8) 36.7(11) 10.0(3) 19.3(6)
考え直す 10.0(3) 9.5(4) 3.3(1) 0.0(0) 6.7(2) 3.2(1)
勧誘に応じる 6.7(2) 14.3(6) 10.0(3) 0.0(0) 10.0(3) 0.0(0)
その他 0.0(0) 0.0(0) 10.0(3) 0.0(0) 13.3(4) 0.0(0)
合計 %(回答数) 100(30) 100(42) 100(30) 100(30) 100(30) 100(31)
表35の各場面におけるKKの回答に有意な差が認められるかどうか調べるため にカイ二乗検定を行った結果、χ2 =76.535, df =40, p <.01となり、場面と回答には 有意な関連性があることが分かった。場面と回答のどの組み合わせが有意な関連性 を示しているかを検証するために残差分析を行った。
表36に示したように、目上の相手に誘われる場面である場面2(負荷の度合い、
大)において、「勧誘に応じる」の回答がH0における推定値よりも有意に多く(p <
0.05)、「気にしない」の回答がH0における推定値よりも有意に少ない(p < 0.05)。
目下の相手に誘われる場面である場面3(負荷の度合い、小)において、「その他」
の回答がH0における推定値よりも有意に多い(p < 0.05)ことが分かった。目下の 相手に誘われる場面である場面4(負荷の度合い、大)において、「ホッとする / 助 かる」と「申し訳ない」の回答がH0における推定値よりも有意に多い(p < 0.01、
90
p < 0.05)。同等の相手に誘われる場面である場面5(負荷の度合い、小)において、
「気にしない」、「その他」の回答がH0における推定値よりも有意に多い(p < 0.01)
ことが分かった。同等の相手に誘われる場面である場面6(負荷の度合い、大)に おいて、「勧誘に応じない / 断る」の回答がH0における推定値よりも有意に多い(p
< 0.01)。
表36 調整済み残差(再勧誘をやめられた場合;KKの場面別)
回答にみられる意識
気にしない ホッとする 断る 寂しい 気になる 場面 1
2 3 4 5 6
.4 .4 .3 .4 .6
-2.2 -.6 -1.7 1.2 1.7
.4 -.1 -1.2 -.5 -1.3
-1.1 3.0 -.5 -1.5 -.4
3.3 -1.7 .3 -.5 -1.3
-.4 -.8 3.0 .7 .5
回答にみられる意識
申し訳ない 考え直す 勧誘に応じる その他 場面 1
2 3 4 5 6
-1.5 1.1 -.1 -1.2
-.2 1.2 2.0 -1.4
1.0 -.6 .6 2.0
2.4 -1.5 -1.7 -1.2
-1.5 .2 .6 3.1
-.1 -.6 -1.7 -1.2
表37にみられるように、KJSLは負荷の度合いが大きい場面(場面2、4、6)で は「ホッとする / 助かる」、「寂しい / 残念に思う」、「申し訳ない」の回答率が高 く、負荷の度合いが小さい場面(場面1、3、5)では「気にしない」、「勧誘に応じ
91
ない / 断る」、「勧誘に応じる」の回答率が高いことが分かった。
表37 再勧誘をやめられた際のKJSLの場面別意識傾向
場面1 場面2 場面3 場面4 場面5 場面6 気にしない 16.1(5) 5.7(2) 16.7(5) 6.7(2) 20.0(6) 6.7(2)
ホッとする / 助かる 12.9(4) 25.7(9) 13.3(4) 23.3(7) 10.0(3) 16.7(5)
勧誘に応じない / 断る 12.9(4) 8.6(3) 16.7(5) 6.7(2) 16.7(5) 10.0(3)
寂しい / 残念に思う 25.8(8) 31.4(11) 10.0(3) 20.0(6) 16.7(5) 36.6(11) 気になる 3.2(1) 5.7(2) 0(0) 3.3(1) 0(0) 0(0)
申し訳ない 19.4(6) 20.0(7) 10.0(3) 20.0(6) 6.7(2) 20.0(6)
考え直す 6.5(2) 2.9(1) 10.0(3) 16.7(5) 10.0(3) 0(0) 勧誘に応じる 3.2(1) 0(0) 20.0(6) 3.3(1) 13.2(4) 10.0(3)
その他 0(0) 0(0) 3.3(1) 0(0) 6.7(2) 0(0)
合計 %(回答数) 100(31) 100(35) 100(30) 100(30) 100(30) 100(30)
表37の各場面におけるKJSLの回答に有意な差が認められるかどうか調べるた めにカイ二乗検定を行った結果、χ2 =50.718, df =40, p >.05となり、場面と回答に は有意な関連性が認められなかった。
以上の各グループの結果にみられたように、負荷の度合いが大きければ「ホッと する / 助かる」の回答率が高くなることが分かった(KKの場面1、2を除く)。ま た、「申し訳ない」の回答率も高くなることが分かった(JJの場面3、4を除く)。 一方、回答数は少ないものの、負荷の度合いが小さい場面で「気にしない」の回答 率がより高いことが分かった。なお、目上の相手に対する場面1、2において、JJ は「ホッとする / 助かる」の回答率が高かったのに対して、KKとKJSLは「寂し い / 残念に思う」の回答率が高く、その差が目立つ。そして、全てのグループは、
目上の相手に誘われ、負荷の度合いが大きい場面2において、総回答数が最も多か