第 3 章 研究方法
3.1 調査方法論の検討
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話では発話の内容だけではなく、発話の仕方も大きく異なることが報告されている
(Yuan2001)。
3つ目の方法は、談話完成テスト(Discourse Completion Test:DCT)である。
この方法は、大量のデータを短期間に収集することができ、データを書き起こす労 力と時間も必要としない。また、自然談話の収集では実現が難しい被験者の背景や 状況的文脈などをコントロールすることもでき、こういった実施の容易さと効率性 が長所である。その一方で、DCTによって得られたデータは自然談話のデータと異 なるという指摘もある(Beebe & Cummings 1996)。しかし、DCTで得られたデ ータが自然ではないからといって、その方法が全く有効ではないということにはな らない。話し手の持つ言語学的知識と社会語用論的知識を知る上では有効な手段で あるという指摘もある(Kasper 2000)。そこでDCTの有効性を検証した研究の幾 つかを以下に挙げる。
Bodman & Eisenstein(1988)は、談話完成テストやオープン・ロールプレイな どによって得られた英語母語話者と第2言語学習者の感謝の産出データを比較分析 した。その結果、談話完成テストによる筆記のデータは、感謝で使われる語彙や表 現は口頭談話と共通していると指摘している。
Rintell & Mitchell(1989)は、書きことばと話しことばで応答が異なるかを検 証するため、同じ言語産出アンケートの筆記版(DCT)と口頭版(ロールプレイ)
を使って英語母語話者と第2言語学習者の依頼と謝罪を比較分析した。その結果、
母語話者、第2言語学習者ともにストラテジーの範囲や語法形態などに類似点が多 かったが、筆記の方がより直接的で、第2言語学習者に限っては口頭の応答が筆記 よりも有意に長いという違いが判明した。そして、収集方法の違いよりも第2言語 学習者の文法能力の方がデータに影響を与えることを示唆した。
Beebe & Cummings(1996)は、アメリカ英語母語話者の依頼に対する断りを電
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話の会話とDCTを用いて比較分析した。その結果、DCTは断りの「基準的な型」
やその遂行に影響する社会的・心理的要因を明らかにし、断りのストラテジーの初 期的な分類をするのに役立つと指摘している。
Sasaki(1998)は、日本人英語学習者の依頼と断りをDCTとロールプレイを用
いて比較分析した。両者とも発話行為の主要行為部(head act)は似ているが、ロ ールプレイの返答の方がより長く、ストラテジーの種類、数ともにより多かったと 述べている。この結果から、DCTは発話行為の主要行為部に使われるストラテジー を調べるのに、ロールプレイはストラテジーの使用頻度やターンの連続によって遂 行されるより複雑な発話行為の実現を調べるのに適していると指摘している。
以上の先行研究で指摘されているように、DCTはある言語社会の母語話者の典型 的な言語行動を把握することができ、言語行動のストラテジー分類に役立つという 長所を持っていると考えられるので、本研究の調査ではDCTを採用することにし た。なお、DCTで測定できない側面を補うために、意識調査とDCT調査後に行っ たフォローアップ・インタビューの内容も参考にして考察を行うことにする。
本研究は、日本語母語話者と韓国語母語話者、韓国人日本語学習者の「再勧誘」
に現れる意味公式を見出すことと、再勧誘における勧誘者と被勧誘者の意識にみら れる特徴を見出すことを研究目的とする。本研究では、勧誘者が相手を誘い、その 誘いを相手から躊躇された際に、勧誘者がどのように勧誘を続けるのか(再勧誘)、
またその際にどのような相手への配慮意識が現れるのかを分析する。なお、本研究 では誘われる側も分析の対象とし、相手に躊躇する返答をした後に勧誘者から誘い 続けられる場合とそれ以上は誘われない場合、どのように思うのかを意識調査で調 べる。これらの調査を行う目的は、一回目の誘いを相手から躊躇された際に、韓国 語母語話者は誘い続ける傾向がみられたのに対し、日本語母語話者は誘いをやめる 傾向が強いという鄭在恩(2006)の結果を踏まえ、その結果が日韓の間に存在する 価値観や意識の差異によるものと見なし、それを検証することである。
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