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第 2 章 本研究の理論的枠組みと先行研究

2.5 発話行為としての「再勧誘」

2.5.3 本研究の位置づけ

前節では、本研究の理論的枠組みとなる発話行為理論、ポライトネス理論、異文 化間語用論、中間言語語用論、勧誘に関する先行研究を概観した。ここでは、先行 研究の問題点と本研究において望まれる調査について述べ、上述の理論的枠組みを 本研究の考察においてどのように援用するべきかについて論ずる。

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先行研究からも分かるように、勧誘行動に関する研究が少ない上に、再勧誘に関 する研究や勧誘者と被勧誘者の意識に関する研究は皆無である。勧誘行動は、誘わ れたその場で承諾か断りの返答をすることは、返答を躊躇したり、考えてから返答 をしたりすることの方が多く、勧誘者と被勧誘者の間の一回だけのやりとりで実現 するとは限らない。したがって、言語行動の一つとして再勧誘行動に関する研究が 重要であると思われるが、相手に躊躇されたあとの再勧誘行動に関する研究はされ ておらず、勧誘表現や勧誘のパターンに関する比較研究がほとんどである。また、

勧誘に関する研究のほとんどが勧誘者側だけに焦点を当てており、勧誘者の誘い方 に対する被勧誘者の受け止め方や意識については言及されていない。

コミュニケーションというのは、自分の考えを相手に伝えると同時に相手の考え を理解することであると考えられるので、相手の立場に立って自分のメッセージを 発信することと、相手のことを考えてメッセージを受け取ることが重要である。し かし、異文化間コミュニケーションは非常に複雑であり、様々な要因が絡んでくる。

その要因を一つ一つ分析し解決していけば、自分の考えを表現しやすくなり、また 相手の考えに対する理解も早くなるだろう。このように相手の文化や価値観などを 理解した上で、相手に自分はどう映っているのか、どう見えているのかにも気を配 り、コミュニケーション上に生じる曖昧さやギャップを許容し、不安を恐れずに行 動することが重要であると考える。

そこで、本研究では日韓の「再勧誘」行動を取り上げ、そこに相手へのどのよう な配慮意識が現れるか、また、それを誘われる側はどのように感じ、受け止めるか を考察する。本研究における考察は2.2~2.4節で述べたポライトネス理論、異文化 間語用論、中間言語語用論に基づいて行う。まず、ポライトネス理論に基づき、両 母語話者と韓国人日本語学習者の「再勧誘」行動にみられるポライトネス・ストラ テジーの使用傾向とその背景にある意識について考察する。次に、異文化間語用論 の観点から両母語話者のコミュニケーション・スタイルと対人意識及び相手とのテ リトリー意識の差異について考察する。最後に、中間言語語用論の観点から韓国人 日本語学習者の「再勧誘」行動にみられる特徴について考察する。韓国人日本語学

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習者の言語形式の特徴を両母語話者の言語形式の特徴と比較した上で、学習者が母 語の干渉を受ける語用論的転移に焦点を当てて、韓国人日本語学習者の言語形式に 語用論的転移があるかどうかを検証する。さらに、「語用論的転移」のみならず、学 習者の言語形式が目標言語である日本語にどれぐらい近づいているかという観点か ら、学習者が目標言語に近づこうとする「アコモデーション」及び自らの母語とも 目標言語とも異なる「学習者特有の言語形式」も分析対象として考察を行う。

この3つの理論を本論文の考察においてどのように援用するかを以下の図1に改 めて示す。本研究の調査を通して、日韓の「再勧誘」行動の特徴と相違点を明らか にし、その根底にある相手への配慮意識をはじめとする対人意識を究明したい。

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図1 本研究の考察における理論的枠組み

本研究の考察における理論的枠組み

ポライトネス理論 異文化間語用論 中間言語語用論

この 3 つの理論に基づいて以下の点を考察する

▪日韓母語話者のポライトネ ス・ストラテジーの使用傾向

▪日本語学習者のポライトネ ス・ストラテジーの使用傾向

▪日韓のコミュニケーション・

スタイルの相違

▪日韓の対人配慮意識、相手 とのテリトリー意識の相違

▪韓国人日本語学習者にみられ る再勧誘の特徴と問題点

▪韓国人日本語学習者にみられ る母語と学習環境による影響

以上の考察を通して、本研究で明確にしたい点

・「再勧誘」行動にみられる日韓母語話者の類似点と相違点を明らかにする。

・韓国人日本語学習者にみられる「再勧誘」行動の語用論的特徴を明らかにする。

・両国のコミュニケーション・スタイルとその背景にある対人意識の違いを明らかにする。

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