第 3 章 社会組織
第 1 節 集落の運営
(1)新沼の 6 つのブラク
[ ブラクの概況 ]
新沼は、上宿・下宿・上沖・下沖・中谷地・北谷 地という集落から構成されている。それぞれの集落を 住民はブラク(部落)とも呼ぶ(以下、ブラクと表 記)。この 6 つのブラクは、近世には新沼村を構成し、
1890(明治 22)年の町村制施行では高倉村に属して いた。1954(昭和 29)年の昭和の大合併時に高倉村 は古川市と合併することになる。しかし、古川市と三 本木町の生活圏の違いなどから、1955(昭和 30)年 に北谷地を除く旧新沼村の 5 つのブラクは分村し三 本木町に編入する。このような経緯から、2006(平 成 18)年の大崎市への合併まで 5 つのブラクと北谷 地は別の自治体に属していた。
これら 6 つのブラクは、地方自治体の定める行政 区や、任意団体である自治会の単位とも一致するため、
地元ではブラクのほか自治会やブラクの範囲を指す名 称として行政区または単に区とも呼ばれる。役職者の 選出や行事、予算の決定などはブラク単位で行なわれ る総会で決める。また、各ブラクには集会所があり、
上宿の「上宿集会所」、下宿の「下宿集会所」、上沖の
「上沖生活センター」、下沖の「大崎市三本木新沼地区 コミュニティセンター」、中谷地の「中谷地生活セン ター」、北谷地の「北谷地部落生活センター」がこれ にあたる。各集会所は、ブラクの行事や集まりで使わ れることから大広間と台所を備えており、いくつかの 集会所では敷地内に遊具を設置するなど子どもの遊び 場としても使われている。
さらにこのブラクを単位として、行事や清掃活動、
防災訓練、市からの事業を請け負っている。例えば、
上沖では 11 月にブラクの住民が参加する収穫祭が行 なわれ、下沖では 10 月に秋祭りを実施している。こ の行事で出される料理や景品は、全戸一律で徴収され る区費と、持ち寄りで賄われている。また、上沖では ブラク内にある学校法人古川学園が所有するグランド の草刈りを、学園から請け負っており、年 3 回各戸 から 1 名が参加することとしている。
先述した自治会を指して、以前は集落会や部落会 と称していたとも聞かれる。上宿では、上宿行政区を 集落会と呼び、集落会ではブラクの農業に関わる団体 が集まり話し合いをしていたという。また、北谷地で
は、普段行政区とはあまり呼ばずに部落会と呼ぶ。こ れは、現在も北谷地ではブラクのほぼ全戸が加入する 組織を「北谷地部落会」と称しているためである。
[班・トナリグミ・組]
各ブラクの自治会は、6 戸から 10 戸をひとまとま りの班として分けている。班はトナリグミ(隣組)や 組とも呼ばれる。各班には班長が 1 人おり、順番に 交代するか、もしくは班単位で話合いを持って交代す る。ただし、上沖では班長ではなく幹事と呼び、交代 する際には班で話し合い選出する。
班の数は上宿・上沖・下沖・中谷地では 4 班、下 宿は 8 班、北谷地では班とは呼ばず北組、中組、南 組の 3 つになっている。現在の班や組の編成はどの ブラクでも基本的に地理的に分割したものである。班 や組の構成は戸数の変動によって再編するブラクもあ れば、北谷地のように組の編成は昔から変わらないと いう場合もある。例えば、上沖は以前 5 班であった が、平成に入ってから戸数の減少によって班を再編し 4 班にするなど、家の立地と人数を基準に変更がなさ れている。班や組は、回覧板や連絡を回す単位となる が、各自治会では班長を役員としていることが多く、
班が自治会への代表者を出す単位ともなっている。
このほか、中谷地ではブラクの西側を上区、東側 を下区と分けており、この区ごとに集会所の掃除を交 替で行なっている。また、北谷地の中組と南組は戸数 が多いという理由から、それぞれ上・下という単位に 分かれているが、この単位は回覧板を回す単位でしか ない。
図 3-1 大崎市三本木新沼地区コミュニティセンター(下沖)
(2)ブラクの役職と集まり
[ブラクの役職]
ブラクにおいて、行政の中心となるのは区長をは じめとする役員である。役員とは任期を 3 年とする 区長、副区長、会計を 1 名ずつと監事、各班の班長 である。このほかにブラク内にはさまざまな役職があ るが、それは次ページ表 3-1 から表 3-6 にまとめた。
ただし、調査で確認できたものを記載しているため、
全ての役職を網羅しているわけではない。なお、上 宿では、先述の役職者に加え区長への諮問役の役員 3 名を置いている。また上沖では区長経験者は終身の顧 問に就任し、役員の相談を受けることとしている。
役職者は役員の話し合いで選出する。決まった順 番があるわけではなく、副区長が区長になる場合もあ れば、まったく別の人が選ばれることもある。選出の 基準は明確ではないが、時間の融通が効く農家や定年 退職した人が優先され、その人が役職を引き受け承認 されれば役職に就く。指名された場合でも断ることが でき、その場合は再度話し合いが続けられる。ただ し、役職者は再任されることが多く、何期か継続して 就くことが多い。例えば、下宿で役員を決める際には、
班長全員で候補者を誰にするか話合い、班長のうち 1 名が総会の際に候補者を指名するといったこともあ る。上沖の場合は、基本的に会計から副区長、区長の 順番で就くことが多いとされるが、定型化したもので はない。
役職者はブラクごとに決定されるが、区長の役割 は、ブラクの代表者として集会の招集や行事の計画、
行政からの通達をブラク内の住民に知らせるといった ものである。また、住民の相談も受け、場合によって は定期的に開催される広域の区長会議で発言し、行政 に要請をすることもあり、地域の顔役ともいえる。副 区長は区長を補佐する役で、会計はブラクの予算の管 理、監事はこれを監査する役である。
北谷地の場合 5 つのブラクとは違い、役職者は会 長、副会長、会計、理事、区長としている。これは、
先述の通り北谷地の全戸が加入する組織を部落会とし ているためで、以前からこの体制をとってきたと説明 される。特に会長は普段、常会長と呼ばれており、こ れは以前ブラクの総会が常会と呼ばれていたからと説 明される。北谷地では、予算の決定や部落会の運営は 会長が行ない、区長はそれに対して助言をする役割と する。また、区長は行政の連絡をブラク住民に回す役
割もある。このように、会長と区長が併存しているの は、行政区となった際に区長を選出するように言われ、
既存の役割を残したまま区長を追加したためとのこと である。
[寄合・座談会]
各ブラクでは、年に 3 回程度、寄合や座談会、も しくは役員会と称する集会を開き、行事計画や予算案、
破損した建物の修復、次の役職者の候補、行事などブ ラクの運営について話し合う。この集まりには、ブラ クの区長、副区長、会計、監事、班長が参加して行な われるが、話し合われる内容によってはほかの役職者 が参加することや、区長、副区長、会計だけが集まる こともある。
例えば中谷地の場合、後述する総会の直前、田植 え後、収穫後の年 3 回集まり、次年度の予算案やブ ラクの行事について役員によって話し合われている。
また上沖の場合は、基本的に役員会と称して区長・副 区長・会計・監事が集まるが、11 月に行なわれる収 穫祭前には各班の幹事を交えて拡大役員会を開く。こ れは、ブラクの収穫祭の前に、各班に属する家の参加 人数を集約するためである。
このほか、各ブラクでは急遽話し合いが必要な場 合にも集まる。
[総会]
各ブラクの運営は、区長を中心とした役員によっ て進められるが、最終的な議決が行なわれるのは年 始か年度末に 1 度行なわれる総会である。ここには、
各戸の代表者 1 名が集会所に参集する。家の代表者は、
男女問わないが、基本的に戸主がこれに参加する。総 会では、ブラクの行事や事業の報告、次年度の計画、
収支決算、次年度予算案の提案、役員の改選が行なわ れる。また、大崎市より年間事業計画がある場合はこ こで通達される。総会は、上宿・下宿・上沖・下沖・
中谷地では 3 月の第 1 日曜日、北谷地では 1 月の第 2 日曜日に行なわれているが、開催日の直前に不幸が あった場合は変更することもある。このほか、急遽話 し合いが必要な場合には、臨時総会を開く場合もある。
先述の総会の後には、親睦を目的として中谷地で は親睦会、北谷地では新年会を催している。また、上 宿では総会後に農業に関わる興農組合の総会も行な い、その後さらに全員参加でブラクの課題について話 し合いが持たれる。