第 2 章 地域開発における PPP の果たす役割と課題
2.2. 地域開発の手段としての PPP
2.2.1. 開発途上国における PPP の活用の現状
まず、2016年に新興国や途上国で
PPP
が活用されているセクターをみると、表 2-1に示 す通り、経済インフラやハードインフラに該当するセクターが多い。「経済インフラ」とは、道路、空港、港湾、鉄道といった交通系のほか、電気、ガス、水道といったエネルギー系、
通信施設など、大規模で広域にわたるものをいい、これに対して「社会インフラ」は、教育 機関、病院、刑務所、住宅施設、公共交通機関など、比較的小規模で、いわゆるハコモノ系 施設などをいう(瀧[2006])。また、こうした経済インフラや社会インフラなど「ハード面」
のインフラを総称する「ハードインフラ」に対して、国や社会の制度や仕組み、それらを担 う人材等、国家の運営を支える基盤をソフト面でインフラを支える「ソフトインフラ」と呼 ぶ区分もある(JICA[2011a])。
表 2-1
2016
年のEMDE
諸国におけるセクターごとにみた民間による 投資コミットメントがあったインフラのプロジェクト数プロジェクト数 投資額(
10
億米ドル) 比率エネルギー
162 43.8 61.4%
交通
53 25.7 36.0
%上水&下水
27 1.9 2.6
%計
242 71.4 100.0
%(原資料)PPI Database, World Bank, as of June 2017
(注)出所の資料は英語。
・EMDE:Emerging Markets and Developing Economy(新興国・途上国)
(出所)WB[2017],p.9
第
2
章 地域開発におけるPPP
の果たす役割と課題同様に
ADB
が推計した将来のインフラ需要も、表 2-2の通り、経済インフラやハードイ ンフラが多くなっている。表
2-2
アジアにおけるセクターごとのインフラ投資需要(2016
年~2030
年)セクター ベースライン推計 気候変動調整後推計 投資需要 年平均 比率 投資需要 年平均 比率 エネルギー
11,689 779 51.8% 14,731 982 56.3%
交通
7,796 520 34.6% 8,353 557 31.9%
通信
2,279 152 10.1% 2,279 152 8.7%
水と衛生
787 52 3.5% 802 53 3.1%
計
22,551 1,503 100.0
%26,166 1,744 100.0
%(注)出所の資料は英語。
・単位は
10
億米ドル(出所)
ADB
[2017a
],p.45
次に、PPP事業の事業規模についてみると、WB[2017]によれば、2016年までの
6
年間 を平均したPPP
の1
事業当たりの事業規模は約240
百万米ドルになる。これは開発途上国 だけでなく先進国も含んだデータである。一方、開発途上国における
PPP
事業を整理するため、フィリピンのPPP
センターのデー タをみると24
、PPPセンター全体で42
件のプロジェクト、計10,122
百万米ドルのPPP
事業 が実施中、もしくは実施完了の状態にあり、1
件当たりの事業規模は241
百万米ドルとなっ ている(表 2-3)。つまり、フィリピンにおけるPPP
の事業規模も、前述のWB[2017]で
みた先進国を含んだ数値と大差がないことがわかる。24
フィリピンはPPP
への取組みが早く、1990
年にアジア初となるBOT
法(Republic Act No.6957
) が制定されるなど、もともとPPP
の歴史が長い。アキノ前大統領の時代には、BOTセンターをPPP
センターに改組して、公共事業道路省(DPWH
)から国家経済開発庁(NEDA
)に移管させ ると共に、修正BOT
法(Republic Act No.7718)の改正を進めるなど、開発途上国の中ではPPP
に関する法制度面の整備が進んでいる。第
2
章 地域開発におけるPPP
の果たす役割と課題表 2-3 フィリピンにおける
PPP
の実施数と事業規模プロジェクト数(
A
) 事業規模(B
)(単位:百万米ドル)
1
件当たり事業規模(B/A)
エネルギー
1 2 2
IT 6 289 48
電力
15 6,317 421
不動産開発
8 450 56
道路
6 1,486 248
運輸
2 739 370
水道
4 839 209
計
42 10,122 241
(注)出所の資料は英語。
・実際には、
PPP Center
[2017
]には、43
のプロジェクトが掲載されているが、1
件の水道プ ロジェクトを削除して、42
プロジェクトを対象にした。削除したのは、民営化案件であり、ここで議論の対象としている
PPP
プロジェクトと性質を異にすることと、事業規模が1
案件で
7,000
百万米ドルと突出していたことによる(他の42
プロジェクトの合計の事業規模が10,122
百万米ドルであり、この1
案件だけで43
件全体の約7
割の事業規模を占めている)。(出所)PPP Center[2017]のデータから著者作成
フィリピンの場合、地方自治体は、過去
3
年間の平均歳入をもとに財政規模に応じて1
等 級から6
等級まで分類される。財政規模がもっとも大きなクラスである1
等級に分類され る歳入基準は、州(Province)が255
百万ペソ(約5,049
千米ドル)以上、市(City)が250
百万ペソ(約4,950
千米ドル)以上、町(Municipality)が35
百万ペソ(約693
千米ドル)以上となっており、反対に、財政規模がもっとも小さい
6
等級は、州と市がどちらも35
百 万ペソ(約693
千米ドル)以下、町が7
百万ペソ(約139
千米ドル)以下となっている25
(JICA[2006])。
つまり、表 2-3の
241
百万米ドルという1
件当たりの事業規模は、州や市の予算の歳入 の数十倍を超える水準にあり、地方自治体が事業主体となってPPP
をハンドルしていると は考えにくい。事業規模の大きさや、経済インフラやハードインフラが多いことを考え合わ せると、PPPの事業主体は国であると推察される。25
いずれも、米ドル建ての金額は、1ペソ=0.0198米ドルで計算(2017年6
月30
日の為替レー ト。出所:OANDA
(https://www.oanda.com/
))。第