第 4 章 民間企業の PPP 参入を促す手法としての「バンドリング」の意義と有効性
4.3. バンドリング効果の検証
4.3.3. バンドリング効果による IRR と NPV の向上の意義
前項でみたように、様々なバリエーションのバンドリングを通じてシミュレーションを 実施した結果、効果の大小はあれど、バンドリング効果が発現することは確認ができた。一 方で、固定費の割合など、バンドリングする対象事業の性質等によっては、バンドリング効 果による
IRR
の改善幅が、1%にも満たない水準のケースもあることがわかった。そこで本項では、日本の
PPP/PFI
事業のデータを用いながら、IRR
の改善が、例えば0.2%
や
0.5%といったレベルであっても、バンドリングする意義があるのかどうかについて検討
する。
要因 評価指標への影響
①初期投資額の減少
•
コスト削減等による初期投資額の減少。回収すべき初期投資額 が減少することで、IRRやNPVのほか、投資回収期間とROIも向上 する。②キャッシュイン時期の 早期化
•
コスト削減や工期短縮等により運営開始時期が早期化し、投資 回収が前倒し(早期化)される。IRRやNPVのほか、投資回収期間 も向上する。③ネットキャッシュフロー の増加
•
収入の増加やコスト削減による運営期間中のネットキャッシュフ ローの増加。IRRやNPVのほか、投資回収期間とROIも向上する。④割引率の低下
•
ポートフォリオ効果によるリスクの減少から、割引率の減少につな がり、NPVが向上する。尚、割引率の低下は、IRR自体を直接的 に向上させるものではないが、IRRを評価する際のハードルレート の低下をもたらすことで、理論上は、民間事業者の意思決定にポ ジティブな影響を及ぼすことになる。第
4
章 民間企業のPPP
参入を促す手法としての「バンドリング」の意義と有効性表 4-24は、日本の
PPP/PFI
事業における代表企業70
の件数を示したものである。選定代 表企業については、16社のうち8
社が建設業で占められており、217案件のうち136
案件(62.7%)が建設業に属する企業によるものである。同様に、参加代表企業については、16 社のうち
10
社を建設業が占め、400
案件のうち266
案件(66.5%)が建設業の企業による。日本における
PPP/PFI
の事業者は、建設業が高い比率を占めていることがわかる。表
4-24
日本のPFI
における代表企業ランキング選定代表企業ランキング 参加代表企業ランキング
企業名 件数 企業名 件数
1
大林組37 1
大林組82
2
大成建設24 2
三菱UFJ
リース37
3
清水建設23 2
大和リース37
4
鹿島建設17 4
鹿島建設30
4
東洋食品17 5
大成建設29
6
三菱UFJ
リース16 6
清水建設27
7
大和リース12 7
東亜建設工業20 7
長谷工コーポレーション12 8
新日鉄住金19
9
九電工10 9
奥村組18
10
奥村組9 10
淺沼組17
11
東亜建設工業8 11
西松建設16
12
新日鉄住金7 12
安藤・間15
12
日立製作所7 12
三菱商事15
14
グリーンハウス6 14
日立製作所14
14
戸田建設6 15
伊藤忠商事12
14
新日鉄住金エンジニアリング6 15
熊谷組12
(注)太字は著者によるもので、建設業を表している。
(出所)日本
PFI・PPP
協会[2015]をもとに著者作成70
一般的なPFI
事業では、設計、建設、維持管理、運営までの業務が一括して発注される。1
つ の企業がこれらすべての業務をカバーすることはできないため、「民間事業者は、代表企業を立 て、設計、建設、維持管理、運営等を担う各企業で構成される構成企業グループ(コンソーシ アム)を形成しPFI
事業に応募する」(内藤ら[2012],p.10)のが一般的である。このとき、コ
ンソーシアムを構成する構成企業(代表企業を含む)は、落札したときに、PFI
事業を実施する ために設立するSPC
の出資者になるのが通例である。なお、表 4-24の「選定代表企業」は、落札したコンソーシアムの代表企業だった件数を示すものであり、「参加代表企業」は、応募し たコンソーシアムで代表企業だった件数を示している。後者は、落札したかどうかは問うてい ないため、件数が多くなっている。
第
4
章 民間企業のPPP
参入を促す手法としての「バンドリング」の意義と有効性建設業は、図 4-20に示す通り、売上高経常利益率が
2%前後で推移しており、他の産業
と比較して相対的に低いことがわかる。(注)年度表記だけ、元号から西暦に変更した。
(出所)建設業情報管理センター[
2017
],p.9
図 4-20 建設業の売上高経常利益率1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
第
4
章 民間企業のPPP
参入を促す手法としての「バンドリング」の意義と有効性同様に、建設業の規模に応じた利益率をみても(図 4-21)、いずれの規模でも利益率は
5%を下回る水準にあり、また小規模な建設業者ほど営業利益率が低いことがわかる。こ
こから、バンドリング効果により、たとえ1%に満たないようなわずかな収益率の改善で
あっても、バンドリングによりIRR
が改善する効果は小さくないことがわかる。(原資料)財務省「法人企業統計」
(原資料注)
総利益率=(売上高-売上原価)÷売上高 販管費率=一般販売管理費(※)÷売上高
営業利益率=(売上高-売上原価-一般販売管理費)÷売上高
(※)一般販売管理費:役員や本社職員等の給与、福利厚生費、事務費、広報宣伝費、賃料、
償却費、租税公課等
(注)年度表記だけ、元号から西暦に変更した。
(出所)国土交通省[2016],p.18
図
4-21
建設業の企業規模別の売上高営業利益率本章で明らかにしたように、バンドリングは、民間企業の参入を促すために必要な一定の 収益量と収益率を確保して、地域開発型