第 5 章 フィリピンにおけるバンドリングされた PPP の事例を用いた検証
5.1. 取り上げる事例の地域と事業の概要
5.1.3. ブトゥアン PPP 事例を取り上げる意義
第
5
章 フィリピンにおけるバンドリングされたPPP
の事例を用いた検証第
5
章 フィリピンにおけるバンドリングされたPPP
の事例を用いた検証このブトゥアン
PPP
事業を取り上げたのは以下の4
つの理由による。
開発途上国における事業であることフィリピンは、
2000
年以降毎年5%から 7%のペースで安定して経済成長を記録している
が、前述の通り、1人当たりのGDP
は2,947
米ドル(2016年)と「中所得国」に分類され ており、さらにブトゥアン市が位置するミンダナオ島はフィリピンの中でも開発が遅れて いる。 PPP
事業であること前述の通り、フィリピンは
PPP
への取組みが早く、PPP センターがイニシアティブをと って、PPPの導入を積極的に推し進めている。
地域開発を目的とした複数の事業であることA
社は、ブトゥアン市周辺エリアの地域開発に向けた動きを加速するため、2015年5
月11
日に現地企業2
社と「フィリピン国ミンダナオ地域開発に向けた包括提携の覚書」を締 結し、それに基づき複数のPPP
事業を3
社が共同で実施している。同社のプレスリリース によれば、これは「ブトゥアン市周辺エリアの地域開発に向けて、より一層一体的に推進す る包括提携」であり、「民間企業が主導して生産性の向上や高付加価値化を実現することで、地域の経済発展につなげ、ひいてはミンダナオ島の平和構築に資することを目指した、長期 にわたり、幅広い領域で共同事業を行うための包括提携」とある(長大[2015])。
つまり、ブトゥアン
PPP
事業は、当初からバンドリングを意図して企画された事業では ない。つまり、当初から複数事業の実施を企図して、規模の経済による費用削減効果が最大 化されるように事業構想、事業計画が立てられたわけではないため、その点において本研究 で定義するところのバンドリングが完全な形で成立してはいない。しかしながら、ブトゥア ンPPP
事業は、複数のPPP
事業について、A社を含む3
社すべてが調査段階から、出資・運営までを一体的に進めるもので、可能な限りリソースの共有をして費用削減を図り、規模 の経済による効果を働かせている点で、前述のバンドリングの定義に合致すると判断でき る。さらに、エリア(地域)とセクター(分野)の二軸をもとにしたバンドリングの
4
類型(表 4-4)にあてはめると、「同一エリア・非同種セクター型バンドリング」に該当する。
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の事例を用いた検証
情報の量と質が十分かつ適切であること治安上の理由や民間企業による事業活動が活発でないことから、ミンダナオに関するデ ータは本来的に少ない。一方、フィリピンは英語が公用語として用いられており、一次情報 にアクセスしやすいことに加えて、ブトゥアン
PPP
事業は日本企業のA
社が関与し、かつ 国際協力機構や経済産業省による支援を受けているため、FS 調査(事業可能性調査)の報 告書が公開されている。この4
つ目の理由は上記3
つと性質を異にし、事業そのものの性 質ではなく、事業に関する情報の量と質に関わるものであるが、英語と日本語の一次情報に 対する高いアクセス性とデータの信憑性は、検証結果の信頼性を担保する点で重要である。日本政府は今、3 つの重点分野を基本方針に、フィリピンに対する援助を実施しており、
その
1
つが「ミンダナオ島における平和と開発」である。ミンダナオの「開発による和平プ ロセスの促進を通じた平和の確保と定着及び貧困からの脱却を実現」するために、「インフ ラ整備や産業振興などによる地域開発に対する支援」を実施する背景には、裏を返せば、イ ンフラや投資環境が整備されれば、ミンダナオ島の資源を生かした産業振興・雇用創出を通 じて、紛争の根底にある貧困削減や和平の推進が実現できるということがある。ミンダナオ和平に向けたプロセスは、まだ民間セクターが積極的にリスクをとりにくい 開発の初期段階にあるため、先進国政府等の支援が不可欠である。ただ、持続的な経済開発 の実現には、公的支援を中心とした段階を脱して、民間が経済活動のイニシアティブをとる ステージに移行していくことが必要である。ブトゥアン
PPP
事業のケーススタディを通じ てバンドリングの意義が明らかになれば、持続可能な地域開発のビジネスモデルとして、ミ ンダナオ島の他の都市での適用の可能性が広がり、ミンダナオにおける平和と開発への貢 献が期待できる。さらに、ミンダナオに留まらず、他の開発途上の国や地域への適用可能性 もあり、こうした地域開発の貢献への応用性こそが、ブトゥアンPPP
事業をケーススタデ ィとして選定する意義といえる72
。72 NNA
[2017a
]は、国際シンクタンクの経済平和研究所の試算として、暴力と紛争によるフィリピンの経済損失について、2015年は
GDP
の8.4%に達しており、国民 1
人当たりの経済損失 が615
米ドルに相当するとし、紛争回避の重要性を報じている。第