第 5 章 フィリピンにおけるバンドリングされた PPP の事例を用いた検証
5.1. 取り上げる事例の地域と事業の概要
5.1.2. 検証対象事業の概要
本検証のためのケーススタディとして用いるのは、フィリピンで進んでいる複数の
PPP
事業である。これは、本邦建設コンサルタントのA
社が、2011年からフィリピンのミンダ ナオ島の北東部にあるブトゥアン市を中心としたエリアで、地域開発を目的に複数のPPP
事業に取り組んでいるものである(以下「ブトゥアンPPP
事業」)。ブトゥアン
PPP
事業は、A 社を中心に、ブトゥアン市に本社を置く現地企業らと共に、地域経済開発の実現を目指して、計画・調査段階から出資、建設、運営まで一貫して、複数 の
PPP
事業に取り組むものである。3つの段階を踏みながら、それぞれのPPP
事業で品質 や生産性の向上と付加価値創出を図り、その上で各事業をサプライチェーンとして結び付 けて、PPP 事業全体で雇用創出や賃金上昇などを通じた地域経済開発の実現を目指してい る。ミンダナオ島
ルソン島 マニラ
北スリガオ州
北アグサン州 南スリガオ州
南アグサン州 ブトゥアン市
セブ カラガ地域
第
5
章 フィリピンにおけるバンドリングされたPPP
の事例を用いた検証図 5-2は、ブトゥアン
PPP
事業の全体構想を示したものである。第1
段階では、電力と 水など基礎インフラの安定供給を図り、第2
段階で、農林水産の豊富な資源を生かした一次 産品(コモディティ)の安定供給体制を整備する。最後の第3
段階では、地域の強みを最大 限に生かすべく、農林水産・食品加工系の工業団地(経済特区)の開発を予定している。(出所)加藤・宗広[
2016
]をもとに著者作成図
5-2
ブトゥアンPPP
事業の全体構想各事業の詳細を整理したのが、表 5-1であるが、基礎インフラの整備事業から、農業系・
水産系の事業、そして工業団地の開発事業まで、一見すると関連性がない多様なプロジェク トが、雇用創出を通じた地域開発という
1
つの目的のもと、それぞれの事業が一体的に進む ものである。エネルギー事業 上水供給事業
水産系事業 農業系事業
生産~加工~流通~販売 まで農林水産業の「6次産 業化」を実現する環境配慮
型工業団地の開発・運営
官民連携(PPP)で 雇用創出・賃金向上
を通じて 地域開発を実現 第1段階
基礎インフラの 整備
第2段階 地域基幹産業の
一次産品
(コモディティ)の 安定供給
第3段階 工業団地の
開発・運営
林業系事業
・現状、頻繁に起こる停電
・電力需要は増加傾向
・不定期に断水が発生
・水需要は増加傾向
・主食の米の低い生産性の解 消と、高付加価値化
・農民の大半が貧困層
・かつて主要産業だったエビ 養殖池の放棄面積の拡大
・雇用の減少
・新産業開発の必要性
・乱伐による環境破壊から森 林伐採禁止で木材産業衰退 農林水産・
食品加工系 工業団地
(経済特区)
開発・運営 事業
段階 現状/課題 課題解決のための事業
•
小水力発電事業•
バイオマス発電事業•
風力発電事業•
太陽光発電事業•
地熱発電事業•
上水供給事業•
稲作事業•
精米・加工事業•
エビ養殖事業•
鰻養殖・加工事業•
バイオマス発電事業第
5
章 フィリピンにおけるバンドリングされたPPP
の事例を用いた検証表 5-1 ブトゥアン
PPP
事業の個別プロジェクトの概要(注)各事業のデータは、以下
5
つのプロジェクトについてはそれぞれの公開データの情報に 基づくもので、残り5
つのプロジェクトについては、A
社へのヒアリングから整理した。#2
.タギボ川小水力発電:国際協力銀行(JBIC
)「フィリピン共和国ミンダナオ島におけるタ ギボ川小水力発電事業の案件発掘・形成調査」(平成28
年1
月)#3.ワワ川小水力発電は:JICA
「フィリピン国 南アグサン州ワワ川小水力発電事業準備調査(
PPP
インフラ事業)報告書」(平成28
年5
月)#4.バイオマス発電:経済産業省「フィリピン国ミンダナオ島:バイオマス燃料輸出及び発
電事業調査報告書」(平成28
年2
月)#5.風力発電:経済産業省「フィリピン国:ミンダナオ島カラガ地域における風力発電事業
調査報告書」(平成29
年2
月)#10
.工業団地開発・運営:経済産業省「フィリピン国・ミンダナオ島タギボ工業団地におけ る水インフラ導入可能性調査 調査報告書」(平成29
年3
月)・事業費の円建ての金額は、
1
ペソ=2.33
円(2016
年8
月22
日の三菱東京UFJ
銀行TTS
レー ト)で計算(出所)著者作成
段階
#
プロジェクト名 概要 事業費 状況 運営開始A社の役割
日本企業参画 第1段階:基礎インフラ
(電気・水)の 安定供給
1
アシガ川小水力発電
発電容量:8MW 流れ込み式
12億ペソ
(28億円) 建設中
2017年中
予定出資:◯
役員派遣:◯
コンサル提供:◯
調査:×
融資:JBICツーステップローン 発電機:日系メーカー
2
タギボ川小水力発電
発電容量:5MW 流れ込み式
7.5
億ペソ(18.5億円)
プレ
FS
済2019
年度(予定)
出資:◯
役員派遣:◯
コンサル提供:◯
調査:JBIC(2015年)
融資:未定 発電機:日系メーカー
3
ワワ川小水力発電
発電容量:12.8MW
(2.6MW+10.2MW)
流れ込み式
35
億ペソ(81.6億円)
FS済 2020
年度(予定)
出資:◯
役員派遣:◯
コンサル提供:◯
調 査 :
METI
(2012年 ) ,JICA(2014年)
融資:未定 発電機:未定
4
バ イ オ マ ス発電
発電容量:2MW もみ殻を活用
4.3億ペソ
(10億円)
プレFS 済
2020年度
(予定)
出資:◯
役員派遣:◯
コンサル提供:◯
調査:METI(2015年)
融資:未定 発電機:未定
5
風力発電 発 電 容 量 :150MW
(2MW×75基)
136億ペソ
(318億円)
プレFS 済
2020
年度 から(予定)
出資:◯
役員派遣:◯
コンサル提供:◯
調査:
METI(2016年)
融資:未定 発電機:未定
6
上水供給3万m
3/日から8万m
3/
日 へ の 供 給 力 向 上 の投資と上水供給5.7億ペソ
(13.2億円)
運営
開始
2016
年出資:◯
役員派遣:×
コンサル提供:×
調査:×
融資:JICAツーステップローン パイプ等:日系メーカー 第2段階:
一次産品の 品質・生産性
の向上と 安定供給
7
農業:稲作・精米
生産性向上とジャポ
ニカ米の生産 非公表 運営中
2015年
出資:◯
役員派遣:×
コンサル提供:×
調査:×
融資:-
精米機:日系メーカー
8
水産:エビ養殖
水質改良資材ルオール を使った養殖池の回 復
非公表 プレFS 済
2020年
(予定)
出資:◯
役員派遣:×
コンサル提供:×
調査:JICA(2014年)
融資:-
9
水産:鰻養殖
日 本 の 養 鰻 技 術 を
取り入れた養鰻事業 非公表 運営中
2016年
出資:◯
役員派遣:×
コンサル提供:×
調査:×
融資:×
加工機械等:日系メーカー 第3段階:
雇用創出と
賃金上昇
10
工業団地開発・運営 開発面積:140ha
35.6億ペソ
(
83
億円)プレFS 済
2020年度
(予定)
出資:◯
役員派遣:◯
コンサル提供:未定
調査:METI(2016年)
融資:未定 各インフラ:未定
第