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第 2 章 地域開発における PPP の果たす役割と課題

2.3. 地方自治体と PPP

2.3.2. 地方自治体の規模と事業規模

次に、地方自治体の規模と事業規模の関係をみるために、まず日本

PF I

PPP

協会[2015]

にある全

568

事業の

PFI

データと、総務省[2016a]の市町村レベルの人口データをマージ した。その後、①事業が中止になった

39

事業、②地方自治体以外(国、国立大学法人や独 立行政法人、一部事務組合など)が事業主体になっている

132

事業、③PFI事業実施後に自 治体合併などを経て、当該自治体名での人口データを保持しない

14

事業、④事業規模(金 額)が不明な

33

事業の計

218

事業を除外し、350事業を分析対象にすることとした。

図 2-9 は、この

350

事業を対象に、事業主体を「都道府県」「政令指定都市」「市・特別 区」「町村」に分類した後、都道府県(97事業)を除外して、事業規模別のデータを分析し たものである。「政令指定都市」、「市・特別区」、「町村」と移るに従って、事業規模が小さ い案件の割合が増加する傾向がみてとれる。

教育と文化

34%

生活と 福祉

4%

健康と環境 産業

17%

3%

まちづくり

16%

安心

5%

庁舎と宿舎

11%

その他

10%

0~10億円 10%

10~50億円 50~100億円 42%

25%

100~200億円 13%

200~1,000億円 8%

1,000億円~, 2%

2

地域開発における

PPP

の果たす役割と課題

(注)事業規模は、日本

PFI・PPP

協会[2015]における「イニシャルコスト」の金額を用いて いる。ここで「契約金額」でなく、「イニシャルコスト」の金額を用いたのは、①当初の資金 調達額を基準にした方が、

PFI

事業の事業類型(いわゆる「サービス購入型」など)や事業期間 等による事業ごとの個別的影響を受けないこと、及び②資金調達は民間セクターが担う役割 であり、民間セクターの視点で

PPP

への参画可能性を検討する本研究の趣旨にも合致している こと等による。

・ 事業規模の分類は、比較がしやすいように図

2-8

の金額分類に合わせている。

・「特別区」は、地方自治法第

281

条第

1

項で規定されたもので、いわゆる「東京

23

区」であ る。

(出所)日本

PFI

PPP

協会[

2015

]をもとに著者作成 図 2-9 地方自治体の種類別にみた

PFI

の事業規模別の実施状況

さらに地方自治体の規模と事業規模との関係を詳細にみていく。地域開発における

PPP

事業の特徴を検討する目的から、まず大規模な地方自治体を除くために、図 2-9 で用いた

350

事業のデータより、「都道府県」(97事業)と「政令指定都市」(71事業)が事業主体に なっている

168

事業を除外し、「市・特別区」(160事業)と「町村」(22事業)の

182

事業 を抽出した。次に、「市・特別区」の中にも、人口規模が

50

万人を超えるような大規模なと ころがあるため、「人口

20

万以上の市の申出に基づき政令で指定」(総務省[2016b])され る「中核市」の要件を基準に、人口

20

万人以下の地方自治体が事業主体となっている

110

事業に対象を絞り込んでいる

31

。さらに、「市・特別区」と「町村」においては、50億円ま での事業が、それぞれ全体の

86.9%と 100%を占めていることから、事業費が 50

億円まで の

104

事業を分析対象にした。

31

飯森ら[2014]も人口

20

万人未満の市町村を「一般市町村」と定義し、「政令指定都市」、

「中核市」などとは別に取り扱っている。

12.7%

20.6%

59.1%

57.7%

66.3%

40.9%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

政令指定都市

<n=71>

市・特別区

<n=160>

町村

<n=22>

0~10億円 10億円~50億円 50億円~100億円

100億円~200億円 200~1,000億円 1,000億円~

2

地域開発における

PPP

の果たす役割と課題

図 2-10は、この

104

事業について、事業規模を縦軸(Y軸)に、事業主体となっている 地方自治体の人口を横軸(X 軸)にとり、PFI 事業をプロットしたものである。ここから、

人口が少ない地方自治体ほど、PFIの事業規模が小さくなっている傾向がみられる

32

<n=104>

(注)都道府県や市町村といった地方自治体の種類を問わずに

104

事業をプロットしている。

(出所)日本

PFI

PPP

協会[

2015

]及び総務省[

2016a

]をもとに著者作成

2-10

人口

20

万人以下の地方自治体と事業規模の関係

飯森ら[2014]は、人口

20

万人未満の「一般市町村」の方が、政令指定都市や中核市ら と比べて、

PFI

を実施したことがある割合が低いことを明らかにしている。また、内閣府は、

2015年 12

月に「多様な

PPP/PFI

手法導入を優先的に検討するための指針」、いわゆる「PPP/PFI

優先的検討規定」を策定するように要請しているが、要請先は人口

20

万人以上の地方公共

32

人口

20

万人以下の地方自治体が事業主体となっている

110

事業(

50

億円以上の事業も含む)

を対象に、人口と事業規模についての相関をみても、強い相関はみられなかった(相関係数:

0.3、決定係数:0.06)。これは、1

つの自治体がある種類の公共施設を

1

つしか所有・運営せ

ず、従って人口規模が大きければ事業規模が大きい公共施設を

1

つ、逆に人口が少なければ事 業規模が小さな公共施設を

1

つ整備するということではなく、例えば学校や公民館のように、

一定の人口に対して

1

つの公共施設が整備されていることによる。つまり、人口が増加すると 公共施設を新たに整備して数を増やして対応するために、人口と

1

件当たりの事業規模の間に 相関関係がないのだと推察される。

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000

0 50,000 100,000 150,000 200,000

事業規模(単位:百万円)

人口(単位:人)

2

地域開発における

PPP

の果たす役割と課題

団体(181団体)が対象になっている。

これらは、一定程度以上の規模の自治体が中心になって

PFI

事業が実施されている現状 を反映している一方、自治体規模が小さいほど、

PFI

事業が成立しにくいことを示唆するも のだといえる

33

前節の分析で、事業主体が国と地方自治体の場合、地方自治体の方が、事業規模が小さい ことが明らかにされたが、地方自治体だけに限定して

PPP

の事業規模をみても、両者には 一定の関係性があり、地方自治体の規模が小さいと事業規模も小さくなる傾向にあること が明らかになった。

2.3.3. 「地域開発型 PPP

これまでの議論から、国や公社・公団といったレベルで実施される

PPP

は、有料道路や 空港、鉄道、港湾といった経済インフラやハードインフラが中心で、事業規模が大きいのに 対して、地方自治体が事業主体の

PPP

事業は、事業規模やセクターにおいて、国の事業と 異なる特徴がみられた。ここで本研究では、後者の地方自治体が実施する

PPP

事業を「地

域開発型

PPP」と定義する。表 2-7

は、この地域開発型

PPP

と一般的な

PPP

事業との違い

を整理したものである。

2-7

「地域開発型

PPP

」の特徴と一般的な

PPP

事業との比較

項目 地域開発型

PPP

参考:一般的な

PPP

事業主体(発注者) 主として地方自治体 主として国や公社・公団 事業規模 小規模なものが多い 大規模なものが多い セクター・分野 社会インフラが主、

ハードインフラとソフトインフラ

経済インフラが主、

ハードインフラが主

(出所)著者作成

将来のアジアのインフラ需要として推計された

8

兆米ドル(ADB[2009])や、それを更 新した

26

兆米ドル(ADB[2017 a])は、主に経済インフラやハードインフラで構成されて

33

自治体職員の能力の問題など公共部門における要因のほか、民間部門に起因する理由などが 考えられる。なお、前者に関しては、国土交通省[2017]によると、2016年

2

月に全自治体を

対象に、

PPP/PFI

の推進状況について実施したアンケート(

N=1,104

)で、「推進する具体的な予

定はない」(28%)理由は、「ノウハウなし」(81%)、「必要性を感じていない」(40%)、「地元 受注減少」(

14

%)、「その他」(

8

%)となっている。

2

地域開発における

PPP

の果たす役割と課題

いる。しかしながら、資金需要に対して公的な資金だけでは足りず、民間資金や

PPP

が求 められる構図は、地域開発や国際協力の分野も同様である。

ところが、本章で明らかにした地域開発型

PPP

の特徴である事業の小規模性は、民間企 業の参画を促す上でハードルとなり得るものである。そこで次章では、民間企業と

PPP

に ついて議論していくこととする。