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第 4 章 民間企業の PPP 参入を促す手法としての「バンドリング」の意義と有効性

4.3. バンドリング効果の検証

4.3.2. 仮想プロジェクトのシミュレーションによる検証

本項では、財務モデルを構築して、仮想プロジェクトを想定した上で具体的な数値を用い たシミュレーションを行い、バンドリング効果の検証を行う。

(1)

仮想プロジェクトの概要

想定したプロジェクトの概要(シミュレーションの前提条件)は、表 4-7の通りである。

これは仮想のプロジェクトであり、金額の通貨や単位は設定していないが、初期投資額に対 する収入や、収入に対する支出や収支の割合、各事業段階の期間などの変数は、実際に存在 するプロジェクトのデータを参考に条件設定したものである。具体的には、次章で取り上げ る「アシガ川小水力発電」(表 5-1の#1のプロジェクト)を参考にして、初期投資額に対す る収入の割合を

16.7%(表 5-3

に記載の通りアシガ川は

17.9%)、収入に対する純収支(簿

価)の割合を

80.0%(同 80.0%)とした(表 4-8)。その他、運営期間は、フィリピンにお

ける電力の固定価格買取制度(FIT)に基づき、再生可能エネルギーに適用される買取期間 の

20

年とし、割引率は

8% 66

としている。

66

いわゆる伊藤レポート(経済産業省[

2014

])は、グローバルな機関投資家が日本企業に期待 する資本コストの平均が

7%超との調査結果をもとに、資本コストの水準は個々の企業で異な

るものの、グローバルな投資家と対話をする際の最低ラインとして

8

%を上回る

ROE

を達成す べきとの提言をまとめている。なお、ROEが

8%超というのは、約 9

割のグローバル投資家が 想定する資本コストを上回る水準になるという。

4

民間企業の

PPP

参入を促す手法としての「バンドリング」の意義と有効性

表 4-7 シミュレーションの前提条件となる仮想プロジェクトの概要

項目 数値

トランザクション・コスト

50

初期投資額

1,500

事業期間

25

収入/年(A)

250

支出/年

(B) 50

収支/年

(A-B) 200

割引率

8%

(注)単独のプロジェクトベースの数値であり、バンドリング効果が一切発現していない想定の ものである。

・「トランザクション・コスト」は、

50

1

単位とした。つまり、例えば

5

つの事業をバンドリ ングする場合、バンドリング効果がある

With

ケースの場合は

50

、一方、バンドリング効果が

ない

Without

ケースの場合は

250

(=

50 × 5

事業)の費用が、初期投資額とは別に計上される。

・「初期投資額」は、「調査計画・設計」と「建設」に分類した。複数年にわたって実施される場 合、実施期間にわたって均等に投資されるものとした。

・「事業期間」は、「調査計画・設計」が

2

年、「建設」が

3

年、「運営」が

20

年で

1

つの事業を 構成するものとし、全体の事業期間が

25

年とした。なお、運営に関して、21年目以降の運営は 考慮しておらず、従って、

21

年目以降のターミナルバリュー(継続価値)もシミュレーション の計算に含んでいない。

・「収入」と「支出」の数値は、運営期間の全期間にわたり、物価上昇率(CPI)は見込まず、一 定で推移するものとした。

・「割引率」は、議論を簡素にするため、株主資本コスト:8%とし、融資は想定していない。

WACC

(加重平均資本コスト):

8

%(={株主資本コスト:

8

%×株主資本比率:

100

%}+{借

入コスト

0%×負債比率:0%})を用いることとした。なお、本ケースでは融資を見込んでい

ないため影響はないが、

WACC

の算出において実効税率は考慮していない。

表 4-8 仮想プロジェクトとアシガ川小水力発電プロジェクトの概要の比較

項目 仮想プロジェクト アシガ川小水力

数値 割合 額(千

PHP

) 割合

初期投資額

1,500

1,503,098

収入/年(A)

250

対初期投資額:16.7%

269,665

対初期投資額:17.9%

支出/年(B)

50

対収入:20.0%

54,033

対収入:20.0%

収支/年(A-B)

200

対収入:80.0%

215,632

対収入:80.0%

4

民間企業の

PPP

参入を促す手法としての「バンドリング」の意義と有効性

表 4-7 の仮想プロジェクトを単独で実施した場合の経済性は、表 4-9 の通りである。シ ミュレーションは、このような経済性の事業を複数実施した場合を想定して検証を進めて いく。

4-9

仮想プロジェクトの単体の経済性(

IRR

NPV

規模/事業数/開始

IRR NPV

中規模/実施事業数:1/開始:2018年

9.6% 183.5

(注)計算の緒元となっている財務モデルは「別添資料」に掲出した。

IRR

NPV

は、別添

1.

の「プロジェクト

#1

」のキャッシュフローから算出したものである。

(2)

シミュレーションの方法

シミュレーションによる検証は、この仮想プロジェクトをバンドリングして同時に実施 した場合を想定し

67

、バンドリング効果があるケース(With ケース)と、バンドリング効 果がないケース(Withoutケース)を設定し、それぞれのケースで算出した

IRR

NPV

を 比較する方法で行う。

なお、バンドリング効果を反映した

With

ケースにおける

IRR

NPV

の算出にあたって は、図 4-11内に波線で示した通り、一定の合理的根拠を有する「①初期投資額の減少」と

「③-2 支出の減少」に限定し、これらの「①初期投資額の減少」と「③-2 支出の減少」の 具体的な削減率は、常見ら[1995]を参考にした(表 4-10)。

67

このシミュレーションでのバンドリングは、後述する前提条件から、バンドリングの

4

類型

(表

4-4

)のうち、「同一エリア・同種セクター」の事業を対象に想定する。なお、この

4

型の中では、いわゆるシナジー効果の大きさから、この「同一エリア・同種セクター」の事業 群が、規模の経済がもっとも働き、費用の削減率も大きくなるが、このシミュレーションでは、

削減率の多寡ではなく、削減率の有無を確認することでバンドリング効果の有無を検証する目 的から、この

4

類型の分類による削減率の差異まで考慮していない。

4

民間企業の

PPP

参入を促す手法としての「バンドリング」の意義と有効性

(注)図

3-4

をもとに強調破線を追加して作成した。

(出所)著者作成

図 4-11 シミュレーションにおける分析の対象

4-10

公共工事の発注規模と間接工事費・一般管理費等の低減

公共工事の発注規模

1.5

2

3

5

倍 間接工事費と一般管理費等の低減

1.5

%減

2.5

%減

3.7

%減

5.0

%減

(注)上段の発注規模と、下段の低減率の相関係数は

0.9493

と高い。

(出所)常見ら[

1995

]をもとに著者作成

本項で実施するシミュレーションは、表 4-7 の仮想プロジェクトを複数バンドリングし て実施することとしているため、実施事業の数と、事業規模の倍率の数値は等しくなる。そ こで、実施事業数の増加に応じて発現するバンドリング効果による「①初期投資額の減少」

と「③-2 支出の減少」の削減率は、表 4-10のデータを参考に、事業規模の増加(倍率)を、

バンドリングする事業実施の増加(数)と同義に扱い、これを転用することとした。

以上から、常見ら[1995]の事業規模「2倍」を本シミュレーションの事業数「2」に、同 様に事業規模「3倍」を事業数「3」、事業規模「4倍」を事業数「4」、事業規模「5倍」を事 業数「5」とみなして、それぞれの削減率を採用した(表 4-11)。なお、常見ら[1995]の研 究は、費用のうち「間接工事費・一般管理費等」だけを対象に、

1

つの工事の発注規模に応 じた低減を取り扱っているのに対して、本シミュレーションでは、直接費や間接費に分解を せずに、初期投資額と支出の全体に削減率を乗じている。このシミュレーションは、バンド リング効果の大小の検証ではなく、バンドリング効果の有無の検証を目的としている。つま り、IRRや

NPV

の変化の幅が問題なのではなく、両者がそもそも向上するのか、向上する

NPVの増加

①初期投資額の減少 ②キャッシュイン時期 の早期化

③ネットキャッシュ フローの増加

④割引率

(r=資本コスト)の低下

③-2 支出の減少

③-1 収入の増加

④-2 ポートフォリオ効果

④-1 レバレッジ効果

4

民間企業の

PPP

参入を促す手法としての「バンドリング」の意義と有効性

のであれば両者がどのように変化するのか(正比例なのか、曲線的に逓増するのかなど)の 検証を目的にしているため、シミュレーション自体やその結果に影響を及ぼすものではな い。

4-11

事業数と初期投資額と支出の低減

実施する事業の規模

1

2

3

4

5

実施する事業の数

1 2 3 4 5

初期投資額・支出の低減

0% 2.5%減 3.7%減 4.3%減 5.0%減

(注)実施事業数「

4

」のケースについて、常見ら[

1995

]に「

4

倍」のデータがないことから、

4-10

の発注規模と削減率の関係(相関係数:

0.9493

)から、回帰式(

y=1.160x-0.360

)を求め

て、「4.3%」を算出した。

(出所)著者作成

バンドリングする事業の実施数は、常見ら[1995]が、事業規模が

5

倍までを対象に扱っ ていることから、このシミュレーションでも、事業規模が

5

倍、すなわち

5

つの事業をバン ドリングするケースをベースケースとした。ここまでの条件に基づいて、表 4-7 の仮想プ ロジェクトを

5

つバンドリングして実施した場合の

With

ケースと

Without

ケースの経済性 は、表 4-12の通りである。

なお、トランザクション・コストは、表 4-7に記載の通り、Withケースの場合はバンド リングした

5

事業でまとめて

50

が、Withoutケースの場合は 5つのプロジェクトごとに見 込んで、計

250(=50×5

プロジェクト)が発生するものと想定した。

4

民間企業の

PPP

参入を促す手法としての「バンドリング」の意義と有効性

表 4-12 仮想プロジェクトを

5

つバンドリングした場合の経済性(IRRと

NPV)

経済性の指標

IRR NPV

バンドリング効果の有無 有 無 増減 有 無 増減 規模/事業数/開始

10.5% 9.6% +0.9

ポイント

1,360.5 917.3 +443 +48.3%

中規模/5/2018年

(注)計算の緒元となっている財務モデルは「別添資料」に掲出した。

IRR

NPV

は、別添

1

. の「プロジェクト

#1

」から「プロジェクト

#5

」のキャッシュフローを合算して算出したもので ある。

・「バンドリング効果の有無」にある「有」が

With

ケース、「無」が

Without

ケースである。

・「①初期投資額の減少」「③-2 支出の減少」と、「トランザクション・コスト」の大小について の反映の有無が、バンドリング効果の有無の間の数値差となっている。

(3)

シミュレーションのシナリオ

表 4-12の

5

つの事業によるバンドリングをベースケースにして、①実施事業数の違いと、

②事業規模の違いによる

2

つのシナリオを設定した上で、それぞれ

With

ケースと

Without

ケースの比較を通じてバンドリング効果の差異をみることにした。図 4-12 は、「①事業数 の増減」と「②事業規模の大小」の

2

つのシナリオ下でのバンドリング効果の検証を示した ものである。