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鏡吹付けコンクリートを有する地山の DEM 解析

第 7 章 切羽形状を考慮した鏡補強工における力学モデル

7.2 切羽形状における切羽周辺地山の挙動

7.2.2 鏡吹付けコンクリートを有する地山の DEM 解析

第 7 章 切⽻形状を考慮した鏡補強⼯における⼒学モデル

り,その有用性が確認されている.本研究ではこれを参考とし,図-7.5 左のように,切羽 面に同一径円要素を配列し要素間に引張強度を与えることで吹付けのような連続体を再現 した.このとき,吹付けの破壊強度は図-7.5 右のようにクーロンの破壊基準にしたがうも のとし,引張強度

ߪ

( ≤ 0 ) は要素間粘着力

ܿ

と要素間摩擦角

߮

から以下のように計算

される.

ߪ

൒ െܿή…‘–߮

のとき

ߪ

ߪ

൏ െܿή…‘–߮

のとき

െܿή…‘–߮

さらに,吹付け円要素間のばね配置を単一ばねではなく分布ばねとし,曲げ強度を発揮す るモデルを作成した.地山要素間のばね配置は,図-7.6 左のように要素間の接触面に1組 のばねとダッシュポットを配置させている.それに対し,吹付け円要素間は図-7.6 右のよ うに要素間の接触面に3組のばねとダッシュポットを配置させた.

このとき,1組のばねに与えられる法線方向ばね係数

ܭ

と接線方向ばね係数

ܭ

は,それ ぞれ以下のように算出される.

ܭ

ൌ ݇

ܣ ʹݎܰ ⁄ ܭ

ൌ ݇

ܣ ʹݎܰ ⁄

(7.9)

(7.10)

吹付け軸力

図-7.5 吹付けモデル(円形切羽)と破壊基準の例

第 7 章 切⽻形状を考慮した鏡補強⼯における⼒学モデル

ここで,

ܣ

は要素間接触面の面積であり,同一径の円形要素間の有効面積に一致する.ま た,

ݎ

は円要素半径を表しており,

ܰ

はばねの組数である.

吹付けモデルと支保工を模したステンレス製の板との接点は,ばね係数を極めて大きく することで剛結に近くなるよう設定した.

(2)鏡吹付けの物性

鏡吹付けは,5 mmの同一径の円要素に引張強度を与える.圧縮強度 ݂ୡ୩= 18 N/mm2 を想 定し,引張強度を約1/10の1.8 N/mm2とする.その他の物性や解析方法は無支保のケース と同一である.

(3)解析手順

パッキングは無支保モデル同様に行う.次に,切羽を含むトンネルとなる要素を消去し,

切羽を作成する.その際,切羽面には吹付けモデルとして吹付け円要素を配置する.この段 階では,吹付け円要素は,変位を拘束した完全固定とし,トンネル内部への要素流出を防ぐ.

つづいて,安定のために疑似重力を与え,パッキング同様に地山要素の速度を収束させる.

その後,土被りを調整し,再び疑似重力を与えて地山の速度が収束したら,吹付け円要素 の変位を自由とし,摩擦実験と同じように地山モデルに底面摩擦力を与えて地山挙動を解 析する.

吹付けは,全断面掘削工法では鏡全面に,ベンチカット工法では上半のみ設置することと する.

(4)解析結果

全断面掘削工法と部分掘削工法を比較して示す(表-7.5).切羽形状は直壁,円,楕円,

円弧の4種類である.後者はベンチ長0.5Dを示す(図-7.7).

直壁形切羽では,スライド量5mmですでに吹付けを押し出すように変位していることが 図-7.6 地山および吹付けそれぞれの要素間ばねの概念

わかる.スライド量を増やしていくと吹付けは曲げ引張破壊を起こし,切羽が大規模に崩壊 していく.なお,吹付けに引張破壊が生じたのは,後述のようにスライド量がわずか0.25mm であった.また,直壁形切羽では,切羽前方の緩み範囲が大きく,地表面直下まで進展して いる.

円形切羽では,スライド量を大きくしても切羽面の上部に少し変位が生じるのみである.

これは,後述するように,円形切羽などの曲面切羽では吹付けが外力に対してアーチ効果を 発揮し圧縮部材として機能することによる.したがって,地山からの押出しに効果的にに抵 抗する.明らかに直壁形切羽に比べて変位量および変形範囲が少ない.変位あるいは変形範 囲が上部に集中している要因は,円では上半部分がいわゆるオーバーハングとなり,地山の 押出しの影響を受けやすいからだと思われる.ただし,スライド量を増しても,変位量は大 きくはならず,また変形領域もそれほど広がっていない.

楕円形切羽では,円と同様に吹付けによるアーチ効果が発揮された結果として変位およ び変形の範囲が小さい.ただし,変位や変形の範囲が集中しているのは,切羽中央部とその 周囲であり,この点では円とは異なる.これは楕円形切羽の形状として,天端および下部の 曲率が大きく,中央部は曲率が小さいことによる.そのため,切羽中央部は地山からの押出 しに対して変形しやすくなったと考えられる.

円弧形切羽では,円形切羽や楕円形切羽と同様に吹付けのアーチ効果により変位および 変形の範囲が小さいことが分かる.また, 円弧形切羽は,円形切羽と比べてオーバーハン

表-7.5 鏡吹付けを施した切羽におけるDEM解析による変形挙動

第 7 章 切⽻形状を考慮した鏡補強工における⼒学モデル

グ部が短いこと,また楕円形切羽と比べて曲率が一定であること等から吹付けのアーチ作 用が発揮されやすいと考えられる.その結果,他の曲面切羽と比べて,変位量が小さくまた スライド量を増しても変形範囲がほとんど拡がらないという特徴がある.

ベンチ形切羽では,前述したように直壁形切羽と類似の挙動を示している.すなわち,ス ライド量5mmですでに吹付けは引張破壊を起こし,切羽が崩壊している.ただし,直壁と 比べて切羽断面が小さいため,切羽近傍地山の変位量や崩壊範囲は小さい.

以上より,円弧形切羽の優位性をその挙動とともにまとめる.すなわち,スライド量5mm で円,楕円,円弧はいずれも変位が2から4mmであり,この間に円要素どうしが接触して いき徐々にアーチ作用が現れはじめている段階にあると考えられる.したがって,それ以降 のスライド量ではアーチ作用が形成されたあとの変形挙動であり,とくに円弧形切羽では 要素間のアーチ作用が他の形状の切羽に比して効果的に発揮されスライド量5mmからほと んど変位量が変わらなくなったものと考えられる.

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