第 6 章 地山-ボルト付着特性を考慮した鏡ボルトの力学モデル
6.2 鏡ボルト工の支保効果に関する数値解析と模型実験との比較
6.2.2 打設角度による補強効果
(1)地表面沈下の抑制効果
2.8D(448mm)掘削(最終掘削)後のトンネル縦断方向における uc/D を図-6.5 に示す.
打設角度が大きいほど地表面沈下量も大きくなるのがわかる.表-6.2 に示す配置では,水 平打設は6本/断面が存在し,放射状15°打設は鏡面外に若干ボルトが残置している状態で ある.放射状30°打設ではボルトが鏡面外に位置し鏡面内にはない状態になる.切羽後方約
-2 -1
0 1
2 3
0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0
切羽からの距離(
D) u
c/ D
ボルトなし 0°(水平)
15°(放)
30°(放)
図-6.6 打設角度と縦断方向地表面沈下(解析)
-2 -1
0 1
2 0.63
0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0
切羽からの距離(D) uc/D
ボルトなし 0°(水平)
15°(放)
30°(放)
図-6.5 打設角度と縦断方向地表面沈下(実験)
2Dでは,水平打設はボルトなしに比べて約22%の変位低減効果が見られるが,放射状15°
は15%の低減,放射状 30°は10%程度の低減となり,打設角度が増すにしたがって低減効 果が低くなっていくのがわかる.また,図-6.6 に示す最終掘削後における解析結果の場合 も,同様に打設角度が増すほど変位低減効果は低くなっている.
図-6.7 に示す最終掘削後の切羽位置 2.8Dにおける横断方向のuc/Dも同様に,打設角度 が大きいほど地表面沈下量が大きい.
これらの挙動は次のように説明できる.打設角度が大きくなると,残置したボルトも短く また角度も放射状であるためトンネル切羽から遠ざかるにしたがって鏡面積あたりの打設 密度が小さくなる.また,残置したボルト長も短くなるため縦断方向を含めた切羽周辺にお ける全鏡ボルトの合計打設長も短くなる.そのため,放射状打設ではボルトが残置していて も補強材としての役割は発揮されず,地表面沈下量が大きくなってしまうものと考えられ る.
(2)鏡面の安定性
図-6.8 に,数値解析における鏡ボルトの打設角度による鏡面中央部の最大押出し量を示 す.打設直後の切羽においては打設角度による影響は小さいが,打設後2ステップ掘削した 地点(放射状30°打設ではボルトが切羽面外に位置し切羽面内にはない状態)では,放射状 打設のケースがいずれも掘削直後の鏡面押出し量に比して0.05D(15°打設)~0.1D弱(30°
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 0.6
0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0
トンネルセンターラインからの距離(
D)
u
c/ D
ボルトなし 0°(水平)
15°(放)
30°(放)
図-6.7 打設角度と横断方向地表面沈下(実験)
第 6 章 地⼭-ボルト付着特性を考慮した鏡ボルトの⼒学モデル
打設)程度大きくなるのがわかる.一方,水平打設の場合は,打設直後と2ステップ掘削後 に変化はなく,0.18D程度の鏡面押出し量にとどまっている.
図-6.6および図-6.8をもとに算出したボルト打設角度に対する地表面沈下量および鏡面 押出し量の変位低減率(ボルトなしを基準)を図-6.9 に示す.実験と解析では比較してい
水平打設(0°) 放射打設(15°) 放射打設(30°)
0 10 20 30 40 50 60 70
変位低減率(%)
地表面沈下(掘削断面)-実験-
地表面沈下(切羽後方2D )-実験-
鏡面押出し量(打設断面)-解析-
鏡面押出し量(打設後2ステップ掘削)-解析-
図-6.9 打設角度と地表面地下および鏡面押し出し量低減率 ボルトなし 水平(0°) 15°(放射) 30°(放射) 0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
打設角度
鏡面押出し量(×D)
ボルト打設直後 打設後2ステップ掘削
図-6.8 打設角度と鏡面押出し量の最大値
る段階が異なるが,実験における地表面沈下量では水平打設が最も低減率が高く,いずれも 約 20~30%程度の低減率がある.一方,解析における鏡面押出し量は,前述の地表面沈下 量の考察でも述べたように,打設角度により切羽前方の打設密度および残置ボルトの数や 長さの効果で,水平打設の低減率が突出していることがわかる.
以上より水平打設の優位性が示されたことから,鏡ボルトの力学モデルは水平打設のみ を対象とする.
(3)鏡ボルトの軸力発現機構
軸力計測用ボルトを鏡面のほぼ中央に打設して,各打設角度による軸力の変化を考察し た.ここでは変位抑制効果の最も高かった水平打設の軸力を図-6.10に示す.
図-6.10を概観すると,
1) 最大軸力位置は鏡面近傍である.
2) 軸力分布は最大値から先端まで線形である.
が,主に第3ステップ以降に共通する挙動といえる.
さらに分析すると,打設後 2 ステップ時に最大の軸力を呈し,残長が短くなる 4ステッ プからは軸力の減少が見られる.また,1および2ステップ時のみ最大値が切羽前方にある.
ただし,力学モデル構築の簡便化を目的として,最大軸力発生位置はほぼ鏡面であるとみな す.
第 6 章 地⼭-ボルト付着特性を考慮した鏡ボルトの⼒学モデル
0 2 4 6 8 10 12 14 16 -5
0 5 10 15 20
ボルト打設後からの距離(cm)
0 2 4 6 8 10 12 14 16 -5
0 5 10 15 20
ボルト打設後からの距離(cm)
軸力(N)
(a) ボルト打設 (b) 1ステップ掘削
(c) 2ステップ掘削
0 2 4 6 8 10 12 14 16 -5
0 5 10 15 20
0 2 4 6 8 10 12 14 16 -5
0 5 10 15 20
(d) 3ステップ掘削
0 2 4 6 8 10 12 14 16 -5
0 5 10 15 20
(e) 4ステップ掘削
0 2 4 6 8 10 12 14 16 -5
0 5 10 15 20
(f) 5ステップ掘削 図-6.10 掘削ステップと水平打設の鏡ボルト軸力(実験)