第 4 章 ロックボルトで支保されたトンネルの解析的評価
4.1 引抜き試験およびトンネル模型実験のシミュレーション
4.1.1 有限差分法解析概要
解析には,微小変形から大変形までを連続的に再現できる三次元有限差分法1)FLAC3Dを 使用した.
FLAC3D は,土質・岩盤構造物の解析を目的として差分法をベースとする離散化解析手
法である.その定式化・計算の流れは図-4.1のようなサイクルとなる.
荷重の載荷または節点を取り囲んでいる要素の応力を用いて,次式より節点力を計算す る.
① 節点荷重もしくは節点を取り囲んでいる既知の要素応力 σijから,式(4.1)を用いて 節点力Fiを計算する.
ܨ
= 1
2 ߪ
ቀ݊
(ଵ)ܵ
(ଵ)+ ݊
(ଶ)ܵ
(ଶ)ቁ
ここで,
ܵ
:三角形領域の各辺の長さ,݊
:三角形領域を表す単位法線ベクトルで ある.② 運動方程式(4.2)を用いて節点力Fiから新しい加速度∑ி()
および速度ݑప̇を計算する.
ݑ
ప̇
(௧ା∆௧ଶ)= ݑ
ప̇
(௧ି∆௧ଶ)+ ܨ
(௧)∆ݐ
݉
ここで,
ݐ
:時刻ݐ
における状態である.(4.1)
(4.2)
③ 節点速度を積分して変位増分を得る.変位増分を累積すればこれが節点変位となる.
大変形解析を実施する場合には,式(4.3)を用いて座標ݔሺ௧)を更新する.
ݔ
ሺ௧ାο௧ଶ)= ݔ
ሺ௧)+ ݑ
ప̇
ሺ௧ାο௧ଶ)οݐ
④ 既知の節点速度から,式(4.4)によりひずみ速度݁పఫ̇ を計算する.
݁
పఫ̇ = 1 2 ቈ ߜݑ
ప̇
ߜݔ
+ ߜݑ
ఫ̇ ߜݔ
⑤ 材料構成則を用いてひずみ速度から新しい応力を計算する.
ߪ:ൌ ܯ ൫ߪ,݁ሶ,ܭ൯
以上の操作を図-4.1 のように繰り返し計算する.1 回の計算サイクルを実行すると1 回 の更新された地盤の変形が求められる3).この計算サイクルを繰り返す計算手法は陽解法と 呼ばれ,トンネル掘削解析などにおいて,施工過程の再現に適した解析法である.
4.1.2 地山およびロックボルトのモデル化
FLAC3D では,ロックボルトを一次元部材ケーブル要素でモデル化し,さらにケーブル
周辺に完全弾塑性のグラウトモデルを考慮することで,地山とロックボルトの相互作用を 評価する.
地山は,Mohr-Coulomb の破壊基準に基づき完全弾塑性モデルとした.
ロックボルトは一次元弾性ケーブル要素でモデル化し,ロックボルト-グラウト間のせ ん断挙動は完全弾塑性でモデル化する(図-4.2).
載荷実験において用いた地山材料の締め固め圧に応じた物性値を,梨本が一軸圧縮試験
(4.3)
(4.5)
(4.4)
力または応力
つり合い方程式
(運動方程式)
材料構成則
(応力/ひずみ)
加速度・速度・変位
①
②
③
④
⑤
図-4.1 FLACの計算プロセス2)を参考に作成
第 4 章 ロックボルトで⽀保されたトンネルの解析的評価
と三軸圧縮試験より求めている 4).その結果を参考にして地山モデルの物性値を設定した.
ロックボルトモデルで必要となる物性値は,ロックボルト自体の物性値と,ロックボルト と地山間の相互の関係を示すグラウトの物性値の二つある.ロックボルト自体の物性値は 弾性係数と断面積であり,これらは試験と計測結果より設定する.グラウトの物性値は,グ ラウトのせん断剛性,グラウトの粘着力,グラウトの内部摩擦角,グラウトの周長である.
これらは,載荷実験で使用した値とする.そこで,付着特性を評価できるグラウトの物性値 を検討するために,引抜き試験の解析を行う.長さ3cm と5cm の二軸応力場実験計測ロッ クボルトを対象として,拘束圧を100kPa と200kPa に設定したケースをそれぞれ解析する.
解析による引抜き荷重-引抜き変位曲線の勾配や降伏点を実験値と比較・検討し,グラウト の物性値を同定する.
4.1.3 ベアリングプレートを考慮した地山-ボルトモデル
本研究では,ロックボルトの効果を大きく分けて,地山とボルトの境界面に発生するせん 断応力により地山の変形を抑止するせん断応力効果と,ボルト頭部軸力がベアリングプレ ートなどを介して支保内圧を与えるとする支保内圧効果の二つとし,この両効果を包含し たモデルを考えている.ケーブル要素のボルト-グラウト間のモデル化によって,せん断応 力効果はモデル上期待することができるが,支保内圧効果に関しては評価できない.そこで,
支保内圧効果を与えるベアリングプレートを考慮するために,トンネル壁面付近にあるケ ーブル要素の付着節点を,地山に剛結合しモデル化する(図-4.3).
図-4.2 全面定着型ロックボルトの数値解析モデル5)