第 2 章 軸対称応力場におけるトンネル挙動に関する模型実験
2.1 ロックボルトと地山の付着特性に関する引抜き試験
2.1.1 ロックボルトモデルの引抜き試験概要
(1)試験の目的
ロックボルトは地山(あるいはグラウト材.以下,省略)との相互作用で効果を発揮する.
とくにロックボルトの剛性に比べて極めて剛性の低い低強度地山においては,その効果は ロックボルトと地山との付着特性に基づく相対変位によって大きく変化する.そのことか ら,ロックボルトの作用効果を定量的に評価するにあたり,その付着特性を求めることが重 要である.
そこで,ロックボルト単体の引抜き試験により,ロックボルトと地山との付着特性を決定 づける要因を見出すことを目的とする.
(2)試験装置
引抜き試験は,図-2.1のような引抜き試験装置を用いておこなう.引抜き試験用土槽(縦
100mm×横100mm×高さ250mm)の中に後述の軸対称載荷実験(以下,本実験)と同じ地山
材料を詰め,そこに所定の長さのロックボルトを埋設する.ロックボルトは荷重変換器の先 端にある把持具で固定されており,荷重変換器を介して引き上げ装置でロックボルトを引 き抜く.
実験槽内には左右に側圧載荷用のプレッシャーバックを配してあり,コンプレッサーか らプレッシャーバックに供給される空気によって地山材料に左右から側圧を載荷する.ま た,コンプレッサーからの側圧は,圧力計をモニターしながら圧力調整弁でコントロールす る.
実験はロックボルト頭部の変位をダイヤルゲージによって,ロックボルトの引抜き荷重 を荷重変換器によって,側圧を圧力計によって計測する.
なお,計測項目は表-2.1のとおりである.
図-2.1 引抜き試験装置
第 2 章 軸対称応⼒場におけるトンネル挙動に関する模型実験
表-2.1 計測項目と計測数
計測項目 計測機器 計測点数
側圧(kPa) 荷重計 1
引抜き荷重(N) 荷重変換器 1
ボルト頭部変位(mm) ダイヤルゲージ 1
ボルト軸力(N) ひずみゲージ 5 (ボルト長:5cm) 10 (ボルト長10cm)
表-2.2 地山およびロックボルト等の諸物性
地山モデル
材 料 硫酸バリウム系 単位体積重量 () 15 N/mm3 弾性係数 (Er) 5 MPa 一軸圧縮強さ (qu) 64 kPa 粘着力 (cr) 19 kPa 内部摩擦角 (r) 30 deg.
ポアソン比 (r) 0.4 ロックボルト
モデル
材 料 アクリル
弾性係数 (Eb) 4,000 MPa
地山-ボルト間 粘着力 (cf) 5.9 kPa 内部摩擦角 (f) 24 deg.
(3)地山材料および軸力計測用ロックボルトモデル
地山モデル,ロックボルトモデルおよび地山-ロックボルト間の地山物性は表-2.2 の通 りである.地山モデルの弾性係数,粘着力および内部摩擦角は梨本ら1)の試験方法を適用し て求めた.トンネル軸方向のロックボルト段数に依存して締固めに要する回数が異なるた め,厳密には実験ケースすべて同一の地山物性とはならないが,締固め回数の差は少ないこ とから,すべて同一の物性として扱った.地山-ロックボルト間の物性は,本実験に先立っ て実施されたロックボルト引抜き実験2)の結果から得た値である.
ロックボルトは,最も一般的に使用されている全面接着型のロックボルトをモデル化し た.ロックボルトモデルは,地山と十分に付着し,実験時の応力状態において有意なひずみ 値を計測できなければならない.このことを考慮し,ロックボルトモデルは縦横 3mm の断 面とした.ロックボルトの作用効果は軸力が主体となってその効果を発揮することが従来 の研究から明らかになっている.ボルトモデルの径は曲げ剛性に大きく影響する.ここでは,
ロックボルトに生じる軸力と曲げを分離する必要があると判断し,ボルトモデルは二種類 とした.
ひとつは,本章で扱う等方応力場実験用の計測用ロックボルトモデルであり,そのモデル では曲げを考慮する必要がないため,軸力のみを計測対象としてモデル化をおこなった.軸 力のみを計測するために,ひずみゲージを直角二等辺三角形断面のアクリル棒の斜辺側面 に貼り付けた(図-2.2).もうひとつは,次章で扱う二軸応力場実験用の計測用ロックボル トモデルであり,そこでは曲げの影響も把握する必要があるため,後述のようにボルトモデ ルの相対する一組の両面にひずみゲージを貼りつけたものとした(第 3 章 図-3.4).
以下に具体的な作成方法を説明する.
1) ベアリングプレートの設置および引張試験に供するため,ボルト長さよりも4cm長 くする(図-2.3).
2) ひずみゲージは,ベース長 3mm,ゲージ長 1mm のものを使用し図-2.4 のように 7mm 間隔で貼り付ける.長さ 5cm のボルトモデルであれば,7個のひずみゲージ を貼ることとなる.
3) ゲージを貼り付けた2本のアクリル棒を,それぞれ直角二等辺三角形断面の斜辺側 面を重ね合わせる.これにより,一辺3mmの正方形断面のロックボルトモデルとな る.
4) ひずみゲージのポリイミド線(リード線)をひとつにまとめビニルテープで保護す る.
5) 計測用ロックボルトモデル完成後は,計測用ボルト単体の引張り試験を行い,ロッ クボルトの引張力とひずみとの関係から校正係数を求める.
図-2.2 軸力計測用ロックボルト(軸対称載荷実験)
第 2 章 軸対称応⼒場におけるトンネル挙動に関する模型実験
(4)試験手順と試験ケース
以下の手順に従って実験を実施する.
1) 地山材料を引抜き試験装置に地山材料をつめる.4層に分けて地山材料を詰め込み,
各層毎に10回締め固める.ロックボルトを把持具に挟み込んで固定し,さらに地山 材料を詰めて手で固める.このときにロックボルトが鉛直軸に対して傾いたたまま 地山内に固定されないように,ロックボルトが鉛直になっているかをチェックする.
2) 地山材料を詰め終えたら,鉄製の上蓋を置き,ネジで固定する.さらに開閉弁を閉 じる.
3) 圧力計,ダイヤルゲージ,ロードセルを静ひずみ測定器に接続する.
4) 引抜き試験用プログラムをロードし,圧力調整弁を少しずつ回し,所定の側圧にな るまで載荷する.この圧力はモニターしながら徐々に載荷していく.所定の側圧に 達 し た ら , 上 部 モ ー タ ー を 稼 働 さ せ 引 抜 き 試 験 を 開 始 す る . 引 抜 き 速 度 は
0.39mm/minでおこなう.試験は,ロックボルトの引抜き荷重がピークに達し,さら
にロックボルトがその荷重を維持したまま引き抜かれるまでおこなう.
引抜き試験はロックボルト長および側圧をパラメータとし,実験ケースを表-2.3 のよう に設定した.ボルト長については,後述の等方応力場および二軸応力場におけるトンネル模 型載荷実験で用いる3cm,5cmおよび10cmの3種類実施した.側圧は,模型載荷実験にお ける地山材料の締め固め圧200kPaまで与えた.あわせて引抜き試験でも軸力を測定し,そ の分布形状を計測した.
図-2.3 アクリル棒の切断
図-2.4 ひずみゲージの貼付位置
表-2.3 引抜き試験ケース 試験番号 ボルト長
(cm)
側圧
(kPa)
軸力分布 測定有無
1 3 50 -
2 3 100 計測
3 3 150 -
4 3 200 計測
5 5 50 -
6 5 100 計測
7 5 150 -
8 5 200 計測
9 10 50 -
10 10 100 計測
11 10 150 -
12 10 200 計測