第 4 章 ロックボルトで支保されたトンネルの解析的評価
4.3 ロックボルトで支保されたトンネル模型実験における解析的評価
4.3.3 ロックボルトの支保効果に関する解析的評価
第 4 章 ロックボルトで⽀保されたトンネルの解析的評価
したものと推察される.したがって,右上方に進展する塑性領域の抑制効果は,打設パター ンによる差違があまり顕著ではない.
また,ボルトを配置したケースについて,(b)のボルト長3cmでは,無支保に比べて同じ 載荷圧における塑性領域の範囲は多少縮小している程度である.これに対し,(c)のボルト長 5cmでは,全体的に塑性領域の進展が抑制されており,特に側壁部直近(θ = 90°)で顕著で ある.解析においてこのようにボルト長が長い5cmは3cmに比べて塑性領域の進展を抑制 すること,また,実験においては先の図-4.8および図-4.9に示したように,ボルト長5cm のほうが 3cm よりもトンネル壁面変位が小さい結果となったことから,本研究のケースで はボルト長5cm(0.5D程度)の効果が高いことが示された.
Detournay & M.St.John6)によれば,初期地山応力(:平均応力とܵ:偏差応力)と一軸 圧縮強さݍ௨(図中ではݍ )がわかれば概ね塑性領域の形状は図-4.17のように分類されると している.なお,横軸は平均応力を一軸圧縮強さで正規化した値であり,縦軸は偏差応力を 一軸圧縮強さで正規化した値である.
第 2 章の模型実験で使用した材料および載荷圧の値を本図に当てはめると,横軸は1.5以 上,縦軸は0.5以上の値を取る.したがって,塑性領域はⅡbに近いⅢであるところのウサ ギの耳に近い形状になることが伺える.
一方,Kastner7)によれば,鉛直方向および水平方向の無限遠方にそれぞれ௩およびの 応力(側圧係数ߣをȀ௩)を受ける無支保円孔の弾塑性境界は,近似的に次の関係式で表
図-4.17 無支保円孔における初期応力状態と破壊形態との関係6)に加筆
されるとした.
cosଶʹߠ ʹ ʹߠͳ ߣ ͳെ ߣ
ͳെ ʹߙଶ ͵ߙସ
4(ʹെ ͵ߙଶ) െ ൬ͳ ߣ ͳെ ߣ൰
ଶ ߙଶ
4(ʹെ ͵ߙଶ)
−ͳ ʹߙଶെ ͵ߙସ Ͷߙଶ(ʹെ ͵ߙଶ) +
݇ଶ
(ͳെ ߣ)ଶ ߙଶ(ʹെ ͵ߙଶ) = 0 ここで,
α=ݎ ܽ⁄ ܽ:トンネル半径
݇ ൌ ݍ௨⁄௩ ݍ௨:一軸圧縮強さ θ:天端からの角度(rad.) である.
図-4.18は,式(4.6)に基づいて求めた弾塑性境界を描画したものである.なお,模型実 験における外圧載荷に伴う地山のポアソン効果により地山と実験槽上蓋あるいは底板との 間に摩擦が発生するなどして,外圧の値がそのまま地山には作用せず一軸圧縮強さ程度少 なく作用していることを指摘している.したがって,たとえば図中の数値100kPaは,実験 においては一軸圧縮強さ分(64kPa)少なくなっていることを考慮し,100 + 64 = 164kPa時 の境界とほぼ同等と考えられる.
鉛直応力が100kPaで側壁部に塑性域が発生し,150kPaまで上昇するとその範囲は拡大し 天端近くにまで至っている.ただし,この段階ではまだ,天端部には塑性域が発生しておら
ず,200kPaでわずかに発生するようになる.
実験では,天端に打設されたロックボルトにはほとんど軸力が発生していないこと,また,
Kastner解では200kPaにおいても塑性領域がわずかであることを考えると,全面接着式のボ
ルトの作用効果が大きく発揮されるのはボルトを含む地山が塑性に達してからであるとい
(4.6)
図-4.18 Kastnerの示した弾塑性境界(側圧係数ߣ= 0.5) 数値:鉛直応力(kPa)
200
150
100
ݎ/ܽ
ߠ
1.0 2.0
1.0 2.0 3.0
第 4 章 ロックボルトで⽀保されたトンネルの解析的評価
う仮説を実証しているといえる.ただし,天端における塑性領域はわずかであるとはいえ,
そこを除けば塑性領域がかなりの範囲に達している.しかし,実験では側壁部からθ=30~ 60°程度でボルト長5cmであれば壁面変位抑制効果が発揮されている.このことから,塑性 領域が広範であっても,ボルト長や打設間隔が適切であればボルト頭部に発生する頭部軸 力がベアリングプレートを介してそのままトンネル壁面に支保内圧として変位増加を抑え ることができると考えられる.
ここで留意すべきは,二軸応力状態のトンネルの変形は弾性体と弾塑性体では全く異な ると言うことである.鉛直方向荷重が水平方向荷重より大きな場合(本研究では,側圧係数 0.5),弾性体中の円孔問題では,トンネル上下端は内空側にスプリングラインは地山側に変 形する.一方,弾塑性体では,たとえば弾塑性境界領域を横長の楕円で仮定して円孔の変形 を近似的に解いた青木ら 9)が示したように,スプリングライン周辺の塑性領域が発達する ことになる(図-4.19).その結果,スプリングラインは地山側ではなくトンネル内空側に変 位するとともに,その値はトンネル上下端の内空変位よりも大きくなる.
このように,土被りが小さいあるいは二軸応力場が想定されるような低強度地山では,ス プリングラインを中心とした側壁部の内空変位にも十分注意しなければならない.いわゆ る猫ひげボルトが実務で適用され効果を得ている事例があることの証左である.
図-4.19 鉛直応力の増加に伴う塑性領域の進展:(a)弾塑性境界までの距離;
(b)円孔表面の半径方向変位9)に加筆