第 7 章 切羽形状を考慮した鏡補強工における力学モデル
7.1 切羽形状に関する模型実験とシミュレーション手法
7.1.3 底面摩擦場を考慮した DEM 解析
第 7 章 切⽻形状を考慮した鏡補強工における⼒学モデル
底板のスライド速度は0.5 mm/secとし,その間2 100秒(35分)録画した.
ここで,
ܤ
௫,ܤ
௬,ܤ
ఏ:底面摩擦力のݔ,ݕ,θ方向成分ݔሶ
,ݕሶ
:要素中心の ݔ方向並進速度およびݕ方向並進速度,ߤ
,ݔሶ
,ݕሶ
:底面摩擦係数,底板速度のݔ,ݕ方向成分,݉
,݃
:円要素の質量,重力加速度.(3)解析モデルおよび物性
解析モデルは図-7.4 のように模型実験と同スケールとし,解析ケースは実験ケースと同 じベンチ長を変えた3ケースとした.表-7.2 に無支保モデルの DEM 解析に用いる物性値 を示す.要素間摩擦角は,要素どうしの接触力に基づく摩擦角であり,要素集合体としての 摩擦角つまり地山の内部摩擦角とは異なる.要素間摩擦角を求めるために,ステンレス棒で 矩形モデルを作成し安定勾配に達するまで崩したときの安息角をまず求めそれを内部摩擦 角としてDEM解析における目標値に設定する.つぎに,DEM解析で三軸圧縮試験を行い,
要素間摩擦角と内部摩擦角との関係から,内部摩擦角(目標値)と合致する要素間摩擦角を 求める.円要素および線要素は,それぞれ地山の粒子および実験装置境界あるいはトンネル 境界をそれぞれ表している.仮想縦弾性係数および仮想せん断弾性係数比は過去の実施例 を参考に設定した.なお,本研究で採用した地山は崩壊挙動を視認しやすくすることを目的 に粒状体かつ非粘着性地山材料とし,支保工モデルは鏡面以外の変形をおさえることを目 的に設置したものである.したがって,それらから得られる実験あるいは数値解析における 諸物性は特定の地山を対象としているものではない.
半径
ݎ
,質量密度ߩ
,奥行き長݈
の円形要素の質量݉
と慣性モーメントܫ
は次式で与えられる.
݉ ൌ ߩ
ߨݎ
ଶ݈ , ܫൌ ݉ ݎ
ଶ⁄ 2
(7.4)図-7.4 解析モデルの例(ベンチ長0.5D)
第 7 章 切⽻形状を考慮した鏡補強工における⼒学モデル
表-7.2 DEM解析に用いる諸物性 円-円要素 円-線要素 仮想縦弾性係数
N/mm2 200
反発係数 0
仮想せん断弾性係数比 0.25 要素間粘着力
N/mm2 0
要素間摩擦角
deg. 50
単位体積重量
N/mm2 7.70×10-3
底面摩擦係数 1.946 径
mm φ1=2.5mm,φ2=5.0mm
混合比 φ1:φ2=3:2
法線方向ばねのばね係数
ܭ
と法線方向ダッシュポットの粘性係数ߟ
は次式で定められるものとする.
円形要素-直線境界間
ܭ
= 2݇
݈ , ߟ
= 2ℎ
ඥܭ
݉
円形要素݅-円形要素݆間
ܭ=݇ܣ⁄൫ݎ+ݎ൯
ߟ
= 2ℎ
ටܭ
݉
݉
൫݉
+ ݉
൯
ここで,仮想弾性係数
݇
は,円形弾性体の接触による弾性変位を円形剛体間のばねの弾 性変位で表す仮想的な弾性係数である10).ܣは接触面の有効面積である.要素間のダッシュポットを表す法線方向減衰定数
ℎ
は次式で与えられる11).ℎ
= ඥ(ln ݁ )
ଶ⁄ {ߨ
ଶ+ (ln ݁ )
ଶ}
ここで,
(ln ݁ )
は反発係数の自然対数である.仮想縦弾性係数および仮想せん断弾性係数比(7.5)
(7.6)
(7.7)
は過去の実施例を参考に設定した.
接線方向のばね係数
ܭ
௦ および粘性係数ߟ
௦ は,低減率ݏ
によって次のように与えら れるものとする12).ܭ
௦= ܭ
∙ ݏ , ߟ
௦= ߟ
∙ √ ݏ
要素間粘着力は実験と同じくゼロとした.解析時間とスライド速度に関しては,摩擦実験 における最終的なスライド量と等しくなるように,ステップごとの時間増分を1.0×10-5sec,
ステップ数を300 000回,解析対象時間を3 sec とし,解析上のスライド速度を解析上5.0 mm / secに設定した.
(4)解析手順
はじめに,地山要素を上方から落下させてパッキングする.地山要素を十分に敷き詰める ためにパッキング時のみ要素間摩擦角を 1°とし,パッキング後は所定の摩擦角に戻す.つ ぎに,切羽を含むトンネルとなる要素を消去し,所定の切羽形状を作成する.その際,切羽 面に線要素を設置しておくことで,トンネル内部への地山要素の流出を防いでいる.つづい て,地山全体に疑似重力を与え,パッキング時と同様に地山要素の速度を収束させる.
その後,土被りを調整し,再び疑似重力を与えて地山速度が収束したのちに切羽面の線要 素を除去し,摩擦実験と同じように底面摩擦力を与えて地山挙動を解析する.