第 5 章 ロックボルトで支保されたトンネルの簡便力学モデル
5.2 簡便力学モデルを用いたトンネル安定性簡易判定手法
5.2.2 ロックボルト支保特性曲線
いずれのケースも実験値近似線勾配は
ߚ
=0.4 の理論直線勾配とほぼ等しいことから,いく ら載荷圧を増しても付着度係数は0.4を越えることはない.この
ߚ
=0.4 の値そのものの物理的意味については次の2点を念頭に置かなければならな い.第一に,有効支保内圧理論値の算定にはロックボルト引抜き試験の付着特性が用いられ ていることである.引抜き試験の地山はほぼ等方側圧下にあり,トンネル周辺地山のように 劣化してはいない.つまり,引抜き試験で得られた付着特性から有効支保内圧を算定すると 過大な値を与えることになる.本研究の理論展開では塑性後の強度劣化を考慮していない が,実験では強度劣化が生じているものと推定できる.このことから,地山劣化時の付着特 性を用いれば,図-5.4 で与えられた各理論線の勾配は小さくなり,載荷圧を増していくと 各近似線はߚ
=1.0に漸近していく挙動となると考えられる.第二に,ロックボルト打設パターンにかかわらず近似線勾配が同一付着度係数
ߚ
=0.4 の理論線勾配と一致することから,
ߚ
はロックボルトの寸法や打設パターンといった幾何学的 条件には依存せず,地山とロックボルト間の付着抵抗あるいはベアリングプレートのトン ネル壁面における設置状況などの力学的条件に依存すると推定できる.図-5.4 で示した結 果はいずれも周方向打設間隔30°であるため,ベアリングプレートの設置個数すなわちトン ネル壁面に占めるベアリングプレートが同一である.したがって,ベアリングプレートがト ンネル壁面に占める割合もߚ
を特定するひとつの要因になるものと推察される.このことを 示唆する興味深い事例がある.鄭ら 2) はロックボルトとベアリングプレートに関する模型 実験において,ベアリングプレートを大きくすることによってロックボルト頭部軸力が大 きくなることを示し,さらに軸力の最大値がロックボルト頭部側に移行することを示して いる.この現象については斉藤ら3)も数値解析で示している.これらの知見によれば,ベア リングプレートの占める割合が増加するとロックボルト全長に生じる軸力が増すのに加え,最大軸力がトンネル壁面に移行することから,たとえばベアリングプレートがトンネル壁 面を覆うような状況にあれば
ߚ
が1.0の完全一体化となることも推察される.便宜的には,ロックボルトとベアリングプレートあるいは地山との不完全な一体化は付 着度係数
ߚ
を低減することで表現すればよい.ߚ
の低減により結果的にボルト頭部軸力が 小さくなるので,支保内圧も小さくなる.第 5 章 ロックボルトで⽀保されたトンネルの簡便⼒学モデル
を固定して考える.
付着度係数
ߚ
とロックボルト長係数をパラメータとする関数をܨ(ߚǡߟ)ൌ െ として,次の3つの状態を仮定する.
1)ܨ(ߚǡߟ) >0 : 安定
2)ܨ(ߚǡߟ) =0 : 極限つり合い状態 3)ܨ(ߚǡߟ) <0 : 不安定
ܨをここでは変数ߚ とߟ の関数として定義しているが,もちろん他の変数をとってもܨ を表現することができる.したがって,以後任意に選択した変数によって計算されるܨ を 単にܨ 値とよぶこととする.
トンネルの安定を論じるには,トンネルの変形量も考慮しなければならないが,ここでは 3つの状態を力のつり合いのみによって便宜的に表現する.
この3つの状態を具体的に例示するため,ロックボルトの打設間隔
ܵ
ݖ=2.5cm および߮
=30deg.で外圧୭=300 kPaの場合のܨ(ߚǡߟ)を考える.このときܨ値は,図-5.5のように,ロ ックボルト長と地山-ロックボルト間の付着度係数に関する特性曲面を描く.この曲面を ロックボルト支保特性曲面と呼称する.図中 z 軸のܨȀ୭は,極限つり合い状態からどの程 度有効支保内圧が上回るか(正:安定)あるいは下回るか(負:不安定)に関して内圧換算
(kPa)で示される値を外圧(初期地山応力)で正規化した値として例示している.
実験ケースすべてについて各載荷段階における同様の特性曲面を描き,それを(ߚǡߟ)面上
図-5.5 ロックボルト支保特性曲面の一例
(=30deg.,SZ=2.5cm,po= 300kPa)
-1.0 0 +1.0
1.0 0.8
0.6 0.4
0.2
0.0 0.2 0.5
1.0 1.5
2.0
-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0
F
/
p0
l+0.5
±0.0
-0.5
に射影すると図-5.6 となる.この図からロックボルトの支保特性曲面の性質として以下の ことが明らかである.ただし,等値線上の数値はܨ値(െ )である.
1) 付着度係数が大きいほど必要なロックボルト長は短くてよい.
2) 載荷圧が高い段階になるほど,また打設間隔が密なほどܨ値の感度が高くなる.
3) トンネル半径と同じ程度のロックボルト長(ߟ =1.0)であればロックボルト長をそ れ以上長くしたとしても,付着度係数に与える安定側ܨ値(>0)の増加はそれほど 大きくはならない.
4) ロックボルト打設間隔が既知であるとの前提のもとに,付着度係数ߚが決まればボ ルト長を求めることができる.
この例では,ロックボルトの打設間隔を固定して考えたが,何らかの物性試験で付着度係 数を求めることができれば,ロックボルトの長さおよび打設間隔に関するロックボルト支 保特性曲面を描くことができる.
0.2 0.5 1.0 1.5 2.0
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
l
0
+100 +200
-100
0.2 0.5 1.0 1.5 2.0
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
l
0
+100 +200
-100
0.2 0.5 1.0 1.5 2.0
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
l
0
+100
0.2 0.5 1.0 1.5 2.0
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
l
0
0.2 0.5 1.0 1.5 2.0
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
l
0
+100
-100
0.2 0.5 1.0 1.5 2.0
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
l
0
+100 +200
-100
(a) XX3025 (po=100kPa) (b) XX3025 (po=200kPa) (c) XX3025 (po=300kPa)
(f) XX3040 (po=300kPa) (e) XX3040 (po=200kPa)
(d) XX3040 (po=100kPa)
曲線上の数値は,pb-prの値(kPa)を表す
図-5.6 各載荷段階におけるロックボルト支保特性曲面(SZおよび:一定)
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