第 2 章 非線形光学の基本理論 11
2.7 量子論における非線形光学
ところが、一般に透明媒質では波長が短いほど屈折率が大きい。つまり、正常分 散となっている。ω2 > ω1に対してはn2 > n1である。そこで、n2 =n1を得るため に結晶の複屈折を用いる。図2.5に示すように、方解石を通して二重の像が見える。
図2.6に示したのは常光線と異常光線の定義である。常光線と異常光線に対する屈 折率ne、noが異なる。結晶の光学軸に対する入射角の関数である。 neとnoを用 いて結晶のSHGにおける位相整合角を計算できる。ここで、光学軸とは、ある特 定の入射方向では複屈折を示さないときこの方向を結晶の光学軸という。図2.5の 写真において、紙に対して方解石の角度を変えて、二重に見えなくなる方向は光学 軸である。複屈折を示す結晶ではこの光学軸が1つの場合は単軸結晶、2つの場合 は二軸結晶という。
Fig. 2.5方解石結晶による複屈折 Fig. 2.6常光線と異常光線
H′ = −2qp·A+q2A2
2m (2.89)
となる。H0は原子のハミルトニアン、H′は原子と電磁場と相互作用におけるハミ ルトニアンである。式(2.89)の右辺で、第2項は第1項より十分小さいので省略で きる。以下は第1項だけ計算する。pは原子の運動量演算子、Aはベクトルポテン シャルである。原子の波動関数のオーダーで、Aは常数と見なすことができる。
電子は電磁場と相互作用して、n状態からm状態に遷移するとき、入射光の周波 数と電子遷移の周波数が一致する場合
⟨n|H′|m⟩ ≈ −q
mA· ⟨n|p|m⟩
=−qE· ⟨n|r|m⟩
=−E· ⟨n|µ|m⟩
(2.90)
である。ここで、µ=−qrは双極子モーメント演算子、−µ·Eは電磁場と電気双 極子と相互作用するエネルギーである。
次に、Schr¨odinger方程式を解く。ここで摂動法を用いて方程式を解く。H′ = 0 のとき、Schr¨odinger方程式は
i¯h∂
∂tΨ = H0Ψ (2.91)
となる。その解は
Ψn=Un(r) exp (
−iEnt
¯ h
)
(2.92) となる。n= 1,2,· · · である。 式(2.92)を式(2.91)に代入すると
H0Ψn=EnΨn (2.93)
が得られる。
H′ ̸= 0のとき、方程式(2.87)式の解は、時間tで展開して Ψ (r, t) = ∑
n
an(t)Un(r) exp (
−iEnt
¯ h
)
(2.94)
となる。式(2.94)を式(2.87)に代入して、電磁場と電気双極子と相互作用するだけ 考えると
dak(t) dt = 1
i¯h
∑
n
⟨k|H′|n⟩an(t) exp (iωknt) (2.95) となる。ωkn≡ωk−ωnと定義する。an(t)をa(s)k (a(s)k ∝H′(s))で展開すると
ak =a(0)k +a(1)k +· · ·+a(s)k +· · · (2.96) になる。a(0)k は常数である。入射光が弱いときはH′が小さいため、式(2.96)は収束 する。式(2.96)を式(2.95)に代入すると
da(s)k dt = 1
i¯h
∑
n
⟨k|H′|n⟩a(sn−1)exp (iωknt) ; s = 1,2,· · · (2.97)
となる。
一方、入射光Eが極めて大きいとき、式(2.96)は収束しない。入射光Eを
E = ˜E(ωp) exp (−iωpt) (2.98) とおくと
H′ =−µ·E=−µ·∑
p
E˜ (ωp) exp (−iωpt) (2.99)
Hkn′ =⟨k|H′|n⟩=−µkn·∑
p
E˜ (ωp) exp (−iωpt) (2.100) となる。式(2.97)を時間で積分すると
a(s)k = 1 i¯h
∫ t
−∞
∑
n
Hkn′ a(sn−1)exp (iωknτ)dτ
= i
¯ h
∫ t
−∞
∑
n
µkn·∑
p
E˜ (ωp) exp [i(ωkn−ωp)τ][
a(sn−1)(τ)] dτ
(2.101)
となる。初期値a(0)n =δng(gは基底状態を表す)を式(2.101)に代入すると
a(1)m = 1
¯ h
∑
p
µmg ·E˜ (ωp)
ωmg −ωp exp [i(ωmg −ωp)t] (2.102) となる。さらに、a(1)m を式(2.101)に代入すると
a(2)n = 1
¯ h2
∑
p,q
∑
m
[
µnm·E˜ (ωq) ] [
µmg ·E˜ (ωp) ]
(ωng−ωp−ωq) (ωmg −ωp) exp [i(ωng−ωp−ωq)t] (2.103) が得られる。
原子波動関数の状態ベクトルとその共役ベクトルは
|Ψ(1)⟩=∑
m
a(1)m (t)Um(r)e−iωmt , ⟨Ψ(1)|=∑
m
a(1)m∗(t)Um∗ (r)eiωmt
|Ψ(2)⟩=∑
m
a(2)m (t)Um(r)e−iωmt , ⟨Ψ(2)|=∑
m
a(2)m∗(t)Um∗ (r)eiωmt
(2.104)
となる。2次の双極子モーメントp(2)は
⟨p(2)⟩
=⟨Ψ(0)|µ|Ψ(2)⟩+⟨Ψ(1)|µ|Ψ(1)⟩+⟨Ψ(2)|µ|Ψ(0)⟩
= 1
¯ h2
∑
p,q
∑
m,n
{µgn [
µnm·E˜ (ωq) ] [
µmg ·E˜ (ωp) ]
(ωng−ωp−ωq) (ωmg −ωp) +
[
µgn·E˜ (ωq) ]
µnm [
µmg ·E˜ (ωp) ] (ωng∗ +ωq)
(ωmg −ωp) +
[
µmg ·E˜ (ωq) ] [
µnm·E˜ (ωp) ]
µmg (ωng∗ +ωq) (
ω∗mg+ωp+ωq) }
e−i(ωp+ωq)t
(2.105)
となる。また、2次の非線形分極p(2)は P(2) =N⟨
p(2)⟩
=∑
r
p˜(2)(ωr)e−iωrt (2.106)
Pi(2)(ωp +ωq, ωp, ωq) =ε0∑
j,k
∑
p,q
χ(2)ijk(ωp+ωq, ωp, ωq)Ej(ωr)Ek(ωr) (2.107)
と定義されている。2次の電気感受率は χ(2)ijk(ωp+ωq,ωp, ωq) =
N
¯ h2
∑
m,n
[
µ(i)gnµ(j)nmµ(k)mg
(ωng−ωp−ωq) (ωmg −ωp)+ µ(i)gnµ(k)nmµ(j)mg
(ωng−ωp −ωq) (ωmg−ωp) + ( µ(j)gnµ(i)nmµ(k)mg
ω∗ng+ωq)
(ωmg −ωp)+ ( µ(k)gnµ(i)nmµ(j)mg
ω∗ng+ωq)
(ωmg−ωp) + µ(j)gnµ(k)nmµ(i)mg
(ω∗ng+ωq) (
ωmg∗ +ωp+ωq) + µ(k)gnµ(j)nmµ(i)mg
(ω∗ng+ωq) (
ωmg∗ +ωp+ωq) ] (2.108)
となる。
式(2.108)からわかるように、ポンプ光の周波数ωpはωmgに接近するとき、共鳴
が強くなり、2次の電気感受率P(2)が大きくなる。[33]