第 6 章 米の SHG 顕微像観察 113
6.3 米種子における SHG の観察結果
Fig. 6.3 (a-g)は非発芽うるち米 (Oryzaglutinosa cv. Koshihikari)種子。(a)断面の顕微像。(b) 断面の写真。(c)5分間のヨウ素デンプン呈色反応後の顕微像。(d) (c)に対応する写真。(e)SHG 画像。(f)2PEF画像。(g) (e)の黄色フレーム内におけるSHG強度分布。(h-n) は非発芽もち米 (Oryzaglutinosacv. Shintaishomochi)種子。(h)断面の顕微像。(i)断面の写真。(j) 1時間のヨウ素 デンプン呈色反応後の顕微像。(k) (j)に対応する写真。(l)SHG画像。(m)2PEF画像。(n) (l)の黄 色フレーム内におけるSHG強度分布。すべての線形像は白色光照明によるものである。また、(e) と(l)のSHGと(f)と(m)の2PEF画像において、ノイズレベルの強度値を透明化処理し、信号の 強度値によって下のバーに示す擬似色をつけ、それに対応する線形像の上に重ねて表示したもので ある。(b)(d)(i)(k)の写真中のシアン色枠ボックスの領域は、顕微鏡画像の視野に対応する。(g)と (n)のSHG強度は各プロットに対応する縦列ピクセルの強度値の合計である。
まず、未発芽の玄米の種子断面を観察した。図6.3(a-f)は未発芽のうるち米 (Oryza-glutinosacv. Koshihikari)、図6.3(h-m)は未発芽のもち米(Oryzaglutinosacv. Shin-taishomochi)の二種類の米にけるヨウ素デンプン呈色反応前後の様子(図6.3(b,d,i,k))、 およびそれぞれの SHG (図6.3(e,l)) と 2光子励起発光 (2PEF)像 (図6.3(f,m))で
ある。もち米における呈色反応はうるち米より呈色がでにくく、iodine試薬にお よそ1時間で浸漬した後に撮影したが、その時には胚の部分が膨張していた(図
6.3(h,i,j,k))。うるち米ともち米の胚乳はいずれも呈色した。そして、それぞれの胚
乳からはSHGが観測された(図6.3(e) and 図6.3(l))。また、SHG信号は胚乳か らだけではなく、胚の糠側からも観察された未発芽のうるち米(Oryzaglutinosacv.
Koshihikari) と未発芽のもち米(Oryzaglutinosa cv. Shintaishomochi)のいずれ も、胚の糠側に沿って非常に強い SHG信号が観察された(図6.3(e) and (l)). 一 方胚乳からの2PEF信号がほとんどなかった(図6.3(f)と図6.3(m))。
Fig. 6.4 (a-d)は非発芽うるち米(Oryzaglutinosacv. Koshihikari)。(a)胚側から撮った写真。(b)線形 の顕微像。(c)SHG像。(d)2PEF画像。(e-h)は非発芽もち米(Oryzaglutinosacv. Shintaishomochi)。
(e)胚側から撮った写真。(f)線形の顕微像。(g)SHG画像。(h)2PEF画像である。すべての線形像 は白色光照明によるものである。また、SHGと2PEF画像において、ノイズレベルの強度値を透明 化処理し、信号の強度値によって下のバーに示す擬似色をつけ、それに対応する線形像の上に重ね て表示したものである。
胚の糠側に沿った非常に強いSHG信号を調べるために、図6.4のように胚の糠 側の外壁を観察した。胚の糠側では、非発芽うるち米(Oryzaglutinosa cv. Koshi-hikari)と未発芽のもち米(Oryzaglutinosacv. Shintaishomochi)のいずれにおいて も、SHGシグナルが確認された。胚軸に沿って非常に強い粒子状のSHGスポット が観察された(図6.4(c)と図6.4(g))。2PEF 信号 (図6.3(d, h)) はSHGとは全く別 の分布で観察された。一方、胚乳部分の外壁を調べた結果、非常に強度が弱いSHG が発生する箇所が観察されたが、2PEFは観察されなかった(図を省略した)。 その強いSHGスポットの起源を確認するために、胚に存在するSHGの発生があ り得る物質のSHG活性を調べた。3つの物質すなわちα-アミラーゼ、グルコース
結晶、マルトース結晶におけるSHG活性をSHG顕微鏡で確認した。その結果、表 6.1に示す二つともSHGが発生した。
Table 6.1三種の試薬におけるSHG
Sample α-amylase試薬 グルコース結晶 マルトース結晶
SHG Active Active Active
Fig. 6.5各試薬における線形図とSHG図。(a)α-アミラーゼ試薬の線形像。(b)α-アミラーゼ試薬の SHG像。(c)グルコース結晶の線形像。(d)グルコース結晶のSHG像。(e) マルトース結晶の線形 像。(f)マルトース結晶のSHG像。(g) セロロース試薬の線形像。(h)セロロース試薬のSHG像。
(i)アミロース試薬の線形像。(j)アミロース試薬のSHG像。(k)アミロペクチン試薬の線形像。(l) アミロペクチン試薬のSHG像。(m)各試薬におけるSHG強度のグラフ。
Table 6.2各溶媒で洗った 剥離物 におけるSHG
Bran No-washing Water Washed Ethanol Washed DMF Washed SHG Detected Not detected Detected Not detected
さらに糠のSHGを調べた。糠の作り方は市販の精米機で7分づきで加工した。
7分づきとは、玄米から糠と胚の一部を剥がす精米加工である。その剥がれたも の(以下、 剥離物 と呼ぶ)が胚を含む糠である。まず、糠ではヨウ素デンプン 呈色反応でデンプンがないことを確認した。次に、SHG顕微鏡でSHGが発生する
ことを確認した。そして、精米加工で剥がれた粉状の糠を水、エタノール、N,N-dimethylformamide (DMF)三つの溶媒に入れ、十分にかき混ぜてから、濾紙で回収
した。回収したものを乾燥し、それぞれをSHG顕微鏡で観察した結果は表6.2に示 している。エタノールで洗ったものだけSHGが発生し、水とDMFで洗ったものは SHGが発生しなかった。 剥離物 におけるSHGの起源を確認するため、水、エタ ノール、N,N-dimethylformamide (DMF)の三つの溶媒で 剥離物 を洗う比較実 験をしたのが表6.2にまとめ、三つの可能性があるものそれぞれの溶媒における溶 解性は表6.3に示す。
Fig. 6.6もち米(Oryzaglutinosacv. Shintaishomochi)を精米機で7分づき糠(糠と胚の一部を含ん でいる「以下、 剥離物 と呼ぶ」)。各溶媒で洗浄したあとの 剥離物 における線形図とSHG図。
(a)オリジナルな7分づき糠の線形像。(b)オリジナルな7分づき糠のSHG像。(c)水で洗った後の 線形像。(d)水で洗った後のSHG像。(e)エタノールで洗った後の線形像。(f)エタノールで洗った後 のSHG像。(g) N,N-dimethylformamide (DMF)で洗った後の線形像。(h) N,N-dimethylformamide (DMF)で洗った後のSHG像。
Table 6.3三つの候補は三種の溶媒における溶解性
Water Ethanol DMF
(i)α-amylase Soluble Insoluble Insoluble (ii) Glucose, Maltose Soluble Insoluble Soluble (iii) Leukoplasts Insoluble Unknow Unknow
Residue (iii) (i), (ii), (iii) (i), (iii)
SHG of Residue No Yes No